12/20/2024

やや強気
ヘルスケア・リアルティ・トラスト
やや強気
HRは、非中核資産の売却や株式数の削減を進めながら、FAD(株主還元可能利益)の成長に向けた体制を整えています。市場が本格的に注目する前の現在の水準は魅力的に映ります。
【高配当:REIT】ヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR)予想配当利回り7.3%は魅力的!注目の米国高配当REITの将来性に迫る!

Brooklyn Bridge during daytimeヴェンカット・ ラガーヴァンヴェンカット・ ラガーヴァン
  • 本稿では、注目の米国高配当REITであるヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR:予想配当利回り7.3%・配当性向79.5%・配当金0.31ドル)の最新の財務パフォーマンスと配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 配当収入は確実なリターンであなたの経済的将来を強固にする存在であり、どのような経済環境の嵐にも耐えうる、安定した配当が得られる投資先の選び方を学ぶことは大事であると考えています。
  • ヘルスケア・リアルティ・トラストは、医療オフィスビル(MOB)に特化したREITとして、安定した予想配当利回りと市場の変動に強いビジネスモデルを展開しています。
  • 同REITは合併や物件売却を通じて資産効率を向上させつつ、高齢化や外来診療需要増加への対応を進め、堅調な財務基盤と将来的な成長を見込んでいます。

はじめに

ブルックリン橋は1883年に完成しました。この橋は、鋼鉄製のケーブルとフランスで開発された圧気潜函(かっきせんかん)工法を初めて採用した吊り橋として知られています。人間の手で築かれたこの構造物は、優れた工学技術と洗練された設計の象徴であり、二重支持構造という斬新なアイデアが取り入れられています。

マンハッタンとブルックリンを結ぶイースト川に架かるこの橋は、2つの花崗岩製の吊り塔で構成されており、橋の主ケーブルにかかる張力を上向きに伝え、デッキ(道路部分)にかかる圧縮力を地面に分散する役割を担っています。その安定性を証明するために、著名な興行師P.T.バーナムは、21頭の象を引き連れてプロムナードを渡らせたという逸話も残っています。

140年以上にわたり、ブルックリン橋は数えきれない通勤者の重み、自然の猛威、そして時の試練に耐え続けてきました。この橋を支える二つの巨大な花崗岩の塔は、荷重を分散させることで安定性を確保し、荒天や潮の変化にも揺るがない堅固な構造を実現しています。そのおかげで、この象徴的な橋は長きにわたりその存在感を誇っています。

この「二重の支え」という考え方は、建築にとどまらず、投資の世界にも共通するものがあります。堅実なポートフォリオもまた、ブルックリン橋のように、強力で補完的な投資対象によって市場の変動に耐えるバランスと回復力を備えています。

本稿では、その「支え」の一つになり得る予想配当利回り7%超えのヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR)について解説していきます。医療分野に特化した米国REITについて、詳しく見ていきましょう!


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ヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR):予想配当利回り7.3%・配当性向79.5%・配当金0.31ドル

REIT(不動産投資信託)の一部門である医療オフィス(MOB:Medical Office Building)はオフィス物件に分類されますが、一般的なオフィスビルとは異なり、リモートワークの影響を受けません。患者の診察や医療検査の多くが対面での対応を必要とするためです。

さらに、医療用外来施設には、通常のオフィスビルとは大きく異なる建築仕様が求められます。高い天井や強化された配管システム、耐荷重の高い床、十分な駐車スペース、強力な電力供給能力、ストレッチャー対応のエレベーター、生物廃棄物の処理システム、特殊なフロア設計が必要です。また、医療専用の床材、電波遮蔽設備、非常用発電機、医療用冷蔵設備なども求められ、これらは手術や画像診断、検査室、患者のリハビリなどの医療活動を支える重要な要素となっています。

過去10年間で、アメリカの病院入院数は15%減少した一方、外来受診数は10%増加しました。これは、アクセスのしやすさ、利便性、そして経済的な理由から、患者が外来診療を選ぶ傾向が強まっていることを示しています。

図1:患者は病院受診よりも外来診療を選択

(出所:Nuveen

さらに、アメリカでは高齢化が進んでおり、特に80歳以上の人口は今後10年間で50%増加すると予測されています。この高齢化により、外来診療の需要は65%増加すると見込まれています。しかし、対応準備は十分とは言えません。医療オフィスビル(MOB)はREITのサブカテゴリの中で建設中の物件割合が最も低く、この需要増加への対応が課題となっています。(詳細はこちら

在庫に占める建設中物件の割合(%)

(出所:ヘルスケア・リアルティ・トラストの2024年10月プレゼンテーション資料

そして、ヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR)は、660件の物件を運営しており、総面積は3,870万平方フィートに達します。そのうち93%が医療オフィスビル(MOB)です。同社は全米トップ100の医療システムのうち56のシステムと提携しており、大半の物件はこれらの医療システムのキャンパス内または隣接地に位置しています。

2022年半ば、ヘルスケア・リアルティ・トラストはヘルスケア・トラスト・オブ・アメリカ(HTA)との合併を完了しました。この合併により、MOBに特化した純粋なREITとして、業界最大規模の所有者と運営者が統合されました。しかし、合併完了から2年が経つ中で、同REITのポートフォリオは728件から660件に減少し、4つの市場から撤退しました。それにもかかわらず、FFO(Funds From Operations)は概ね安定しており、1株あたり約0.38〜0.39ドルを維持しています。2023年第3四半期には、1株あたり0.39ドルのFFOを発表し、年間FFO予測範囲を1.55ドル〜1.56ドルに絞り込みました。この予測は、第4四半期に中央値で0.39ドルのFFOを見込んでいます。

物件数の減少にもかかわらずFFOが安定しているのは、稼働率の向上、賃料収入の増加、コスト管理の改善によるものです。これらの要因は、ヘルスケア・リアルティ・トラストの物件がより効率的に利用されており、安定した財務パフォーマンスを維持していることを示しています。

この2年間で、ヘルスケア・リアルティ・トラストは「配当の補填を見込む」段階から「配当を十分に補填できる」状態へと改善しました。予測される通常FFOによると、現在の四半期配当である1株あたり0.31ドルは、控えめな79.5%の配当性向に収まると見られています。

また、ヘルスケア・リアルティ・トラストはNuveenとのジョイントベンチャー(JV)を進めており、1億9300万ドルで8件の物件譲渡を完了しました。今年に入ってからこれまでに、同REITはNuveenやKKRとのJVおよび資産売却を通じて8億ドルを超える取引を完了し、約7億ドルの収益を平均キャップレート6.6%で実現しています。そして、同REITは、年間のJVおよび売却収益の見込みを10億〜11億ドルに引き上げました。

これらの取引がJV形式で行われているため、ヘルスケア・リアルティ・トラストは物件管理手数料を引き続き受け取り、さらにJV内で一部の持分を保有し続けることで、将来的な収益にも参加することができます。この仕組みにより、ヘルスケア・リアルティ・トラストは継続的にキャッシュフローを生み出すとともに、将来的な利益成長にも貢献できます。また、売却およびJVで得た収益は、企業の負債返済や株式の自社買い戻しに充てる計画です。

さらに、ヘルスケア・リアルティ・トラストは、第3四半期に43.1万平方フィートのリース契約を締結し、引き続き力強いリース活動を展開しています。また、将来4四半期分の契約に相当する堅実なリースパイプラインを維持しています。

稼働率も着実に改善しており、第3四半期末時点で複数テナントのポートフォリオ稼働率は86.5%に達しました。ヘルスケア・リアルティ・トラストは2024年度末には稼働率が86.3%から86.8%の範囲に収まると予想しています。さらに、第3四半期には複数テナントの純営業利益(NOI)が3.5%増加し、現金ベースのリーススプレッドは3.9%を記録しました。加えて、年初来のテナント維持率は83.8%となり、2023年度の79.3%から上昇しています。

つまり、ヘルスケア・リアルティ・トラストは四半期ごとに空室率を減らし、新規リースではより高い賃料を得ながら、既存テナントの維持率も向上させています。これらは、ポートフォリオ管理が効率化されていることを示しており、同REITの運営の改善を裏付けるものです。

加えて、年初来、ヘルスケア・リアルティ・トラストは総額4億4700万ドルの自社株買いを実施しました。また、10月には2025年7月満期の無担保タームローンの残高1億ドルを完済し、第3四半期末時点で調整後EBITDAに対する純負債の比率は6.7倍となりました。さらに、第3四半期末時点でクレジットファシリティを通じて約13億ドルの流動性を確保しています。

また、第3四半期から第4四半期にかけてインサイダーによる自社株式の買い付け取引が増加しており、これは経営陣が合併後の再建計画やMOB(医療オフィスビル)に特化したビジネスモデルの将来的な価値に自信を持っていることを示していると考えられます。

HRのインサイダー取引(四半期別の購入および売却)

(出所:Marketbeat)

2025年に向けて、ヘルスケア・リアルティ・トラストの稼働率のさらなる改善と純営業利益(NOI)の成長が期待されています。また、REITセクター全体の評価額は、追加の利下げや同REITの安定した業績による好調なマクロ経済環境の影響で、さらに上昇すると見込まれています。

以上より、供給が限られた重要な物件を運営するこの割安なREITは、安定した7.3%の予想配当利回りを提供しており、配当収入を重視するインカム投資家にとって魅力的な収益源となるでしょう。

ヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR)に対する結論

医療と住宅ローンは、人々の生活に欠かせないものであり、基本的なニーズを満たす重要な役割を果たしています。このように、ヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR)は強固な基盤を持つビジネスモデルを備えており、投資家の収益ニーズを支える存在です。それは、二重の支柱によって長年にわたりその堅固さを誇り続けているブルックリン橋に例えられます。

ヘルスケア・リアルティ・トラストは、高齢化が進むアメリカで需要が増加している医療オフィスビル(MOB)に焦点を当て、十分に裏付けられた配当を提供しています。そして、同REITは、ポートフォリオに必要な安定性をもたらし、市場の変動に対しても投資家に安心感を提供する存在として位置付けられていると見ています。

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・キンベル・ロイヤルティ・パートナーズ(KRP:予想配当利回り11%)

・ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES:予想配当利回り8.9%)

・ブルー・アウル・キャピタル(OBDC:予想配当利回り9.7%)

・アレス・キャピタル(ARCC:予想配当利回り8.6%)

・アポロ・コマーシャル・リアル・エステート・ファイナンス(ARI:予想配当利回り11%)

・ベライゾン(VZ:予想配当利回り6.3%)

・グローバルX MLP ETF(MLPA:予想配当利回り7%)

・AT&T(T:予想配当利回り5%)

・エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ(EPD:予想配当利回り6.9%)

リアルティ・インカム(O:予想配当利回り5.6%


アナリスト紹介:ヴェンカット・ ラガーヴァン

📍インカム・高配当担当

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