中立ハブスポットハブスポット / HUBS / 中立:CRM銘柄の2024年1Q決算速報・競合他社分析と今後の株価予想・将来性(HubSpot)
- ハブスポット(HUBS)はオンライン販売、マーケティング、顧客関係ソフトウェアのスイートを提供するテクノロジー企業である。
- 同社は2024年5月8日に2024年度第1四半期決算を発表しており、成長を遂げてはいるが、営業損失は依然として大きい。
- 営業損益分岐点に達するまで、私の同社に対する見通しは「中立」とする。
ハブスポット(HUBS)について
ハブスポット(HUBS)は2024年5月8日、2024年度第1四半期決算を発表し、売上高とコンセンサス利益の予想を上回った。
同社は、世界中の企業向けにオンライン販売、マーケティング、カスタマーサービス・ソフトウェアを提供しているテクノロジー企業である。
そして、経営陣は、「採算度外視の成長」よりも、「成長と収益性のバランスの取れたアプローチ」を模索している。
しかし、営業損失は継続し、業績にはばらつきがある一方で、同社は引き続きマクロ経済の逆風と躊躇する顧客に直面している。
そのため、私の同社に対する短期的な見通しは「中立」としている。
ハブスポット(HUBS)の概要と市場
ハブスポット(HUBS)は、マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置く、顧客関係管理およびオペレーション管理業界セグメントにおけるインバウンドマーケティング、セールス、カスタマーサービス・ソフトウェアの大手プロバイダーである。
同社の使命は、インバウンド・マーケティングを通じて企業の成長を支援することである。インバウンド・マーケティングとは、割り込みではなく、関連性が高く、役に立つコンテンツやインタラクションを通じて顧客を惹きつける戦略である。
同社の最高経営責任者(CEO)はヤミニ・ランガン氏である。
テクノロジー業界で24年以上の経験を持つランガン氏は、成長、オペレーショナル・エクセレンス、イノベーションの推進において強力なバックグラウンドを持っている。
そして、同社が提供するソフトウェアとサービスには次のようなものがある。
HubSpot CRM:基本的な顧客関係管理機能を提供する無料のプラットフォーム。
Marketing Hub:顧客の獲得と取り込みを支援するツール群。
Sales Hub:営業チームがより早く、より多くの案件を成約できるように設計されたツール群。
Service Hub:ビジネスが顧客とつながり、顧客の期待を上回るサービスを提供できるように設計されたツール群。
CMS Hub:マーケティング担当者が、訪問者一人ひとりにパーソナライズされたウェブサイトを構築・管理できるコンテンツ管理システム。
Operations Hub:統合機能の向上、堅牢なデータ品質ツール、柔軟なビジネスプロセスの自動化、強力なデータ準備ツール。
Grand View Research社のレポートによると、世界の顧客関係管理(CRM)ソフトウェア市場規模は、2022年に588億ドルと評価され 、2023年から2030年にかけて13.9%の大幅な複合年間成長率(CAGR)で拡大すると予測されている。
市場成長の原動力となっているのは、顧客サービスの超パーソナライゼーション、AIと自動化の活用、強固なソーシャルメディア顧客サービスの導入といった継続的なトレンドである。
CRMソフトウェアは、顧客情報の収集、分析、活用を促進し、顧客エンゲージメントの強化、営業・マーケティングプロセスの合理化、全体的な顧客満足度の向上を実現する。
これらの要因により、コスト削減、レスポンスタイムの向上、顧客満足度の向上が可能になり、業界を問わずCRMプラットフォームの導入が進んでいる。
そして、同市場の主要企業には、2022年4月にCRMアナリティクスを開始したセールスフォース(CRM)などがある。この新機能は、さまざまな業界の営業、マーケティング、サービスチームにAIを活用した洞察を提供している。
CRMアナリティクス内の検索インサイトは、セールスフォースの顧客が検索に関連するあらゆるデータセット、ダッシュボード、次善のグルーピングを発見するのに役立っている。
また、CRMソフトウェア市場の他の注目すべき企業には、Microsoft Dynamics(MSFT)、Zoho CRM、Monday.com CRM(MNDY)、SugarCRM、Oracle CRM(ORCL)、SAP CRM(SAP)、Adobe CRM(ADBE)などがある。
ハブスポット(HUBS)の最近の財務動向
ハブスポット(HUBS)の四半期別の総売上高(オレンジ色の列:Total Revenues)は右肩上がりを続けている一方で、四半期別の営業利益(青色の線:Operating Income)はマイナスのままだが、ブレークイーブンに向けて一進一退を続けている。
四半期別の売上総利益(オレンジ色の列:Gross Profit)は増加傾向にあるが、四半期別の販売費および一般管理費(青色の線:Selling General & Admin Expensens, Total)も増加しており、営業レバレッジが低下していることが分かる。
一方で、希薄化後の1株当たり利益(EPS)は直近四半期でプラスに転じている。
(上記グラフのデータはすべて百万USD単位・GAAPベース)
また、過去12ヶ月で、同社の株価は31.14%上昇したのに対し、iシェアーズ・エクスパンデッド・テクノロジー - ソフトウェアETF(IGV)の上昇率は37.44%となっている。
ハブスポット(HUBS)のバリュエーションとその他の指標
以下は、ハブスポット(HUBS)に関連するバリュエーションの表である。
指標 | 値 |
企業価値 / 売上高(予想) | 11.4 |
企業価値 / EBITDA(予想) | 56.4 |
株価売上高倍率(直近過去12か月) | 13.6 |
売上高成長率(予想) | 20.7% |
純利益率 | -8.1% |
EBITDAマージン | -3.7% |
時価総額 | $30,040,000,000 |
企業価値 | $29,300,000,000 |
営業キャッシュフロー | $350,970,000 |
実績EPS(直近過去12か月) | -$2.67 |
予想EPS | $7.38 |
一株当たりフリー・キャッシュフロー(直近過去12か月) | $5.73 |
また、40%ルールとは、ソフトウェア業界の経験則であり、売上高成長率と営業利益率の合計が40%以上であれば、その企業は、ソフトウェア企業として、許容できる成長と営業利益率の軌道に乗っていることを示すものである。
下表のように、同社の直近の調整前40%ルールの計算値は、2023年第4四半期決算時点で17.7%であったため、この点で同社は改善が必要であると言える。
40%ルール・パフォーマンス(調整前) | 2024年第1四半期 |
売上高成長率 | 20.7% |
営業利益率 | -3.6% |
合計 | 17.0% |
ハブスポット(HUBS)の見通し
直近の市場のアナリスト向けの決算説明会議では、ハブスポット(HUBS)の経営陣の準備発言として以下の点が強調されている。
売上高
前年同期比23%増収(恒常為替レート・ベース)の好調なスタートを切った。
受注残 / 予約
計算上のビリング額は6億4,100万ドルで、前年同期比22%の伸びを示した(恒常為替レート・ベース)。
コスト / 経費
経営陣は、営業利益率が前年同期比で120ベーシス・ポイント増加し、営業利益率が15%となったことを強調した。
また、売上原価の計算ミスが発見され、営業利益に影響を与えた。
キャッシュフロー
2024年第1四半期のフリー・キャッシュフローは1億400万ドルで、売上高の17%に相当する。
貸借対照表
当四半期末の現金および有価証券の合計は18億ドルであった。
海外事業
当四半期の海外からの売上高は恒常為替レート・ベースで 24%増加し、現在では総売上高の47%を占める。
買収
Clearbitの買収により、第1四半期には約800社の顧客が増加した。
売上高ガイダンス
第2四半期:6億1,700万~6億1,900万ドル(中間値で前年同期比17%増)。
2024年通期:25億5,000万~25億6,000万ドル(中間値で前年比18%増)。
売上高ガイダンスにおいては、為替が増収の逆風となる見込みである。
また、経営陣によると、以前から厳しいマクロ環境は続いており、予算は厳しく、顧客の意思決定サイクルは長期化しているとのことである。
一方で、同社はAIの革新に引き続き注力し、プラットフォーム全体にAIを組み込んでいる。
加えて、経営陣は、スイートからより包括的な顧客プラットフォームへの転換に引き続き重点を置くと述べている。
そして、同社の株価は買収の思惑から上昇したが、同社のバリュエーションは同業他社と比較してもかなり割高な水準にあると言える。
以上より、営業赤字が続き、営業損益分岐点への進捗にばらつきがある現状を踏まえると、ハブスポット(HUBS)に対する私の見通しは「中立」である。