インテル / INTC:新財務報告形式&ファウンドリービジネス&今後の株価見通し・将来性- Part 1(Intel)
ウィリアム・ キーティング- インテル(INTC)は新しい財務報告の方法を導入し、ウェビナーで公開した。Form 8-K SEC提出書類の添付図にあるように、財務指標の報告方法が変更された。
- この新しい報告形式は、同社のファウンドリー損益が過去3年間、常に営業損失を計上しており、その総額は170億ドルを超えていることを明らかにしている。
- また同社は、5N4Y戦略で示されたプロセス技術の改善にもかかわらず、Intel 10やIntel 7のような非効率な古いプロセス・ノードによって悪化した売上総利益率と売上高の減少という課題に依然として直面している。
概要
インテル(INTC)の待望の新セグメントによる報告形式は、今週、少数の選ばれた市場のアナリストが直接参加するウェビナーの形で発表された。
ゲルシンガーCEOとジンスナーCFOのボディランゲージを観察するだけでも、ウェブキャストを見る価値がある。
下記のスナップショットは、ビデオの32分頃、両氏がQ&Aコーナーの最初の質問に耳を傾けているときのものである。
この2人を見ていると、まるで校長室に連れてこられた2人の小学生を思い出す。
彼らがどのように指で遊んでいるかに注目して欲しい。
果たして、これは何を意味しているのだろうか?
話がそれたが、一言で言えば、インテルが行ったことは、次の図に示すように、自社に対する見方と外部への報告方法を見直すことである。
これは、デビッド・ジンスナー最高財務責任者(CFO)のこれまでの更新から予想されていたこととほぼ同じである。
その結果、下記のような数字を見るのではなく、
今後は、我々はこのような数字を見ることになるだろう。
注:上記はウェビナーと同日に提出されたForm 8-K SECファイルから引用したもので、こちらからご覧いただけます。
まず、インテルが新しい財務報告形式に従って数字を再配分することは、完全にインテル自身のコントロール下にあること、つまり、ファウンドリー損益の営業損失の大きさを決めるのはインテル自身であることに留意する必要がある。
そして、ここでは、2021年は財務諸表の再表示の対象となる3年間のうちの最初の年であることからも、2021年の同社の業績に基づいて議論することは有益である。
また、記録的な年となった2020年に続き、2021年もインテルにとって記録的な年となっている。
以下は、インテルの2021年第4四半期決算発表の要約である。
純利益は前年比5%減の200億ドル、売上総利益率は55.4%で前年同期比0.5ポイントの減少に留まった。
このような背景があった一方で、同社は、2021年を振り返ってみると、新しく構築されたファウンドリーに関する損益は、実際には~50億ドルの営業損失であったと語っている。
インテル自身がそう言うのであれば十分フェアだが、誰が実際に気にするのだろうか?
2023年まで早送りして、比較のために2023年第4四半期の決算発表を見てみると、次のようになる。
売上高は明らかに2020年/2021年に比べて大幅に減少している。
これは、事業売却、世界的な半導体不況、PC出荷台数の落ち込み、サーバー出荷台数の前年同期比約18%減など、様々な要因が重なった結果である。
しかし、より大きな問題は売上総利益率であり、2021年の55.4%から2023年にはわずか40%にまで落ち込んでいる。
この事実については後ほど説明する。
しかし、一旦は下記の点について考えてみよう。
「インテルによれば、プロセス関連の問題はすべて解決され、5N4Y戦略は確実に軌道に乗り、新しいノードは予定通りにリリースされている。」とのことである。
では、なぜ売上総利益率が低下しているのだろうか?
プロセス技術がもはや問題ではないのであれば、売上総利益率は改善するか、少なくとも安定に近づいているはずではないのだろうか?
とは言え、一旦は新しい財務モデルに話を戻そう。
事前によく予告されていたように、ファウンドリーの損益は短絡的で、過去3年間で170億ドル以上の営業損失を出していることが明らかになった。
不思議なことに、これはインテルが米国CHIPS法から得る予定の約200億ドルとさほど離れていない。
間違いなく、米政権は今後3年間で、彼らの善意がインテルの損失を食い止める手助けになることに、そして、その損失の大きさに静かに困惑していることだろう。
この財務報告の形式変更の発表が、2週間前のCHIPS法による資金援助の祝賀会の後に予定されていたのは、実に良いことだった。
新しい報告形式をさらに掘り下げる前に、Form 8-K提出書類をスキャンしている間に、上記報告書の「全社未配分費用」項目の内訳に非常に面白いものがあることに気づいた。
株式報酬(Share-based compensation)が2021年の~20億ドルから2023年には~32億ドルへと50%も増加していることにお気づきだろうか?
インテルの純利益を、2021年の~200億ドルから2023年の約17億ドルにまで引き下げたチームが、その過程で彼ら自身に追加で10億ドル(2024年4月時点:約1500億円)の報酬を支払ったことを知れば、市場の投資家はきっと喜ぶだろう。
果たして、万が一、実際に純利益が増加した場合、再度、彼らは自身に報酬を支払うのだろうか。
また話がそれたが、新しい報告形式の詳細に戻ると、下記のスライドは、2023年というたった1年のケースで、これがどのように機能するかを示している。
私には、上の図にある「インテル製品は健全に成長している(Intel Products healthy and growing)」という表現は、少し楽観的すぎるように思われる。
クライアント・コンピューティング・グループ(OCG)の営業利益率(OM:Operating Margin)は33%とまずまずの状態だが、データセンター&AIグループ(DCAI)の営業利益率は13%で、ネットワーキング&エッジ・グループ(NEX)の営業利益率はわずか4%となっている。
それでも、インテル製品の損益は、最終的に売上総利益率60%、営業利益率40%という目標を達成できると考えるのが妥当だろう。
一方、ファウンドリー部門は、「IDM1.0の決定とトランジスタのリーダーシップを取り戻すための戦略的投資の重荷を背負っている」ため、現在営業利益率がマイナス37%と低迷している。
そして、インテルのファウンドリー損益マージンがどれほど悲惨であろうと、売上総利益率40%、営業利益率30%を目標としている。
この目標のタイムラインはいつだろうか?
下記の通り、2030年がターゲットとなっている。
そして、ここではTSMC(TSM)との比較が役に立つ。
TSMCの23年度第4四半期の売上総利益率は53%となっている。
つまり、2030年になっても、インテルはファウンドリー損益の売上総利益率がTSMCに匹敵するとは考えていないということである。
これは、インテルが、2026年に量産を開始する18Aでプロセスの主導権を奪還すると主張しているにもかかわらずである。
プレゼンテーション・スライドからもう1ページ、インテルのファウンドリー損益のROIC(投下資本利益率)がプラスに転じるまでのロードマップを紹介したい。
上記のグラフからも、ROICは〜2027年までマイナスのままであり、プラスに転じるのはそこから2030年までの間ということになる。
そして、ウェビナーでインテルが語ったことを要約すると、次のようになる。
1. 5N4Yプロセスロードマップに関する限り、すべて順調である。
2. インテルが新たに定義したファウンドリー損益は、過去3年間、年間50億ドルから70億ドルの営業損失を出している。
3. これらのファウンドリー損益の営業損失は、2024年、そしておそらく2025年においてもほぼ変わらないだろう。
4. インテルの黒字化、あるいは少なくともインテルのファウンドリー損益の黒字化は、同社の18Aプロセスが大量生産に入る時期を背景にして考えるべきである。
そして、上述の通り、これは2026年に予定されている。
要するに、インテルは投資家に対して、長期的な、本当に長期的な投資をした方が良いということを明確に伝えるフレームワークを勇敢にも提示したということである。
実際、これだけ言及されているのだから、念のため2030年を考えておこう。
ただし、投資家があまり感心していないことを知ったとしても、大きな驚きではないだろう。
インテルの株価はウェビナー後の2日間で10%以上下落している。
そして、今年に入ってからは、20%ほど下落している。
タイトルに掲げた質問に戻ろう。
この新しい財務報告形式は、インテルのオープンで透明な新時代を象徴するものなのか、それとも単に不透明化を図っているのか?
Part 2以降で、私たちはその疑問に答えていきたい。
おそらくさらに重要なこととして、ウェビナーから得られた、主に質疑応答セッションで得られた、かなり重要なデータを共有したい。
具体的には下記の通りである。
1. インテルが予測する2030年までの工場ネットワーク利用率
2. インテルの10nmプロセスに対する見解(現在も非常に多く使用されている)
3. 2026年までのインテルの量産プロセス・ノードの構成(これは大いに驚かせるだろうし、投資家なら心配になるかもしれない)
4. インテルは、インテル ファウンドリー・サービス(IFS)がブレークイーブンを達成するためにウェーハ枚数を増やす必要はないと語っている。
では、なぜそうなのだろうか?
その理由を説明していきたい。
※続きは「インテル / INTC:新財務報告形式&ファウンドリービジネス&今後の株価見通し・将来性- Part 2(Intel)」をご覧ください。