06/16/2024

インテル(INTC)今後の見通し:2023年年次報告書の分析を通じてファウンドリー事業に潜むリスクを徹底解説!

a close up of a computer chip with the word intel core on itウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、インテル(INTC)の最新の2023年年次報告書(アニュアルレポート)の分析を通じて、ファウンドリー事業に潜むリスクを洗い出し、同社の今後の見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • インテルの2023年版年次報告書には、ファウンドリー事業に関する厳しい警告が記載されており、これには、資本支出や政府補助金に伴うリスクが含まれています。
  • 同社のファウンドリー計画は2021年から問題視されていましたが、2022年の年次報告書には触れられておらず、2023年版に初めてリスク項目として記載されています。
  • 同社の年次報告書は、次世代プロセス技術の遅れや製造コストの上昇、競合他社との競争によるリスクについて詳述されており、特に、ダイサイズの増加や製造供給の制約が懸念されています。

インテル(INTC)のファウンドリー事業に関するリスクについて

そう、これはインテル(INTC)の2023年版年次報告書の「リスク」セクションに記載されている、ファウンドリー計画に関するかなり厳しい警告である。

もちろん、企業はForm 10-Kリポートの「リスク」欄に、戦争から自然災害まで、ありとあらゆるリスクシナリオを書いている。

それは、まるで新しいアプリをダウンロードした後に同意しなければならない40ページの利用規約のようである。

では、なぜインテルがファウンドリー事業について述べていることに注意を払う必要があるのだろうか?

理由は簡単である。

今後、インテルが「何」を言うかよりも、「いつ」言うかが重要であると見ている。

2021年3月からインテルのファウンドリー計画が問題視されていたにもかかわらず、2022年の年次報告書にはインテルのファウンドリー事業に関連するリスクについて何も触れられていない(詳細はこちら)。

では、なぜ今になってファウンドリー事業に関する言及が記載されたのだろうか?

2023年の年次報告書には、次のような見出しでもうひとつ新たなリスク項目が詳述されている。

(原文)“Our Smart Capital approach to capital spending, alternative financing arrangements and pursuit of government grants involves risks and may not be successful.”

(日本語訳)「資本支出、代替的な資金調達方法、政府補助金の追求に対するスマート・キャピタルのアプローチにはリスクが伴い、成功しない可能性がある。」

しかし、スマート・キャピタル・プログラムは2022年8月に開始されている(詳細はこちら)。

(日本語訳)インテルがスマート・キャピタルを推進、世界初の製造ビルドアウト向け半導体共同投資プログラムを導入

繰り返すが、なぜ2023年の年次報告書で初めてこのような記載がなされたのだろうか?

インテルが説明したこれら2つの新しいリスク・カテゴリーをさらに詳しく見る前に、インテルが10nmプロセス・ロードマップで問題に直面し始めた頃の、インテルの過去の年次報告書から実際の例を紹介したい。

これは、インテルが2019年の年次報告書で10nmロードマップの遅れに対して指摘した内容である。

ちなみに、インテルが年次報告書でダイサイズの大型化について言及したのはこれが初めてである。

また、理由を説明することなく、単に「製品コストの増加」に言及している点にも注目していただきたい。

インテル(INTC)の2019年年次報告書

(原文)Risks inherent in the development of next-generation process technologies include production timing delays, lower-than-anticipated manufacturing yields, and product defects and errata. For example, we announced earlier in 2018 that volume production on our 10nm process technology was being delayed from the second half of 2018 into 2019. We have made progress on improving 10nm yields during 2018, and we expect 10nm-based volume client systems on retail shelves for the 2019 holiday season. However, the delays in our transition to next-generation process technology may allow competitors to take advantage of potential improvements in performance, energy efficiency, cost and/or other features that may be offered by new process technologies developed by third-party foundries. Furthermore, without the benefit of next-generation process nodes, including additional competitive features on our products may result in larger die size products, manufacturing supply constraints and increased product costs.

(日本語訳)次世代プロセス技術の開発に内在するリスクには、製造時期の遅延、予想を下回る製造歩留まり、製品の欠陥やエラッタ等がございます。例えば、当社は2018年初めに、当社の10nmプロセス技術の量産が2018年後半から2019年に延期されると発表しました。当社は2018年中に10nm歩留まりの改善に向けて前進し、2019年のホリデーシーズンには10nmベースの量産クライアント・システムが小売店の店頭に並ぶと予想しています。しかし、当社の次世代プロセス技術への移行の遅れにより、競合他社が、サードパーティーのファウンドリーが開発した新しいプロセス技術によって提供される可能性のある性能、エネルギー効率、コスト、および/またはその他の機能の潜在的な改善を利用できるようになる可能性があります。さらに、次世代プロセス・ノードの恩恵がなければ、当社製品に競争力のある機能を追加することで、ダイサイズの大型化、製造供給の制約、製品コストの上昇を招く可能性があります。

その翌年、今度は2つの異なる文脈で、ダイサイズについて再び言及されている。

インテルは、新しい製造能力への大規模な投資について大々的に発表したが、当時は、信じられないかもしれないが、同社は単に需要に追いつくことができなかったのである。

インテル(INTC)の2020年年次報告書

(原文)However, despite increasing 14nm wafer capacity, we did not see a commensurate increase in client CPU unit volume as wafer capacity was largely consumed by increases in modem and chipset volumes, and unit die sizes. Our focus on capacity expansion and meeting customer expectations is critical as we move into 2020.

(日本語訳)しかし、14nmウェハの生産能力は増加したものの、ウェハーの生産能力はモデムやチップセットの生産量の増加やダイサイズの増加によってほとんど消費されたため、それに見合ったクライアントCPUの数量増加は見られませんでした。弊社としては、2020年に向けて、生産能力の拡大と顧客の期待に応えることに注力することが重要です。

しかし、インテルのクライアントPC向けプロセッサーのダイサイズは、AMD(AMD)との競争に打ち勝つため、より多くのコアを追加するために拡大し続けている。

そのため、これらの大型ダイはより多くのウェハー面積を消費し、その結果、チップの生産能力を向上させることができなかった。

また、更なる問題があった。

より大きなダイはより多くのウェハー面積を消費するだけでなく、より多くの欠陥の対象となり、その結果、歩留まりが低下していることをインテルが初めて認めたのである。

(原文)Furthermore, when the introduction of next-generation process nodes is delayed, including additional competitive features in our products can result in larger die size products, manufacturing supply constraints, and increased product costs. Lower manufacturing yields and longer manufacturing throughput times, compared to previous process nodes, can increase our product costs and adversely affect our gross margins, and can contribute to manufacturing supply constraints. In addition, as the die size of our products has increased and our manufacturing process nodes have shrunk, our products and manufacturing processes have grown increasingly complex and more susceptible to product defects and errata, which can also contribute to production timing delays and lower yields.

(日本語訳)さらに、次世代プロセス・ノードの導入が遅れた場合、当社の製品に競争力のある機能を追加すると、ダイ・サイズが大きくなり、製造供給が制約され、製品コストが上昇する可能性があります。以前のプロセス・ノードと比較して、製造歩留まりが低下し、製造スループット・タイムが長くなることで、当社の製品コストが上昇し、売上総利益率に悪影響を及ぼす可能性があり、製造供給制約の一因となる可能性があります。さらに、当社製品のダイ・サイズが大きくなり、製造プロセス・ノードが縮小するにつれて、当社製品と製造プロセスはますます複雑になり、製品の欠陥やエラッタの影響を受けやすくなり、結果、生産時期の遅れや歩留まりの低下にも繋がります。

念のため申し添えておくが、この情報は4年以上前に発表された2020年の年次報告書に記載されていたものである。

インテルの過去5年程の苦境についてご存知の方なら、上の段落の説明が、当時のインテルの問題を正確に説明しているとお気づきだろう。

しかし、このレベルの詳細が決算説明会や質疑応答で明らかになることはほとんどなかった。

私はこの例を、企業のForm 10-Kリスク・セクションの詳細の中に極めて有用な情報が埋もれている可能性があることを説明するために使っただけである。

そして、各投資家はそれらの情報を探し出し、見た瞬間にそれが何であるかを認識する必要がある。

では、上記で説明した2つの最新リスク項目を掘り下げていきたい。

インテルのファウンドリー計画に関する新しいリスク項目は、同社が着手しようとしているベンチャー事業に関して、同社が「限られた経験しか保有していない」という驚くほど正直な自己評価から始まっている。

※続きは「インテル(INTC)半導体ファウンドリー事業上の戦略とリスク:IFSの競争優位性を維持するための対策と競合他社への対応」をご覧ください。

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