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06 - 16 - 2024

インテル(INTC)半導体ファウンドリー事業上の戦略とリスク:IFSの競争優位性を維持するための対策と競合他社への対応

ウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • インテル(INTC)はサードパーティ・ファウンドリー事業において限られた経験しか持っていないため、関連する経験を持つ有能な従業員を雇用し続ける必要がある。
  • IFS(インテル・ファウンドリー・サービス)を主要な半導体製造プロバイダーとして確立する上で、TSMCやサムスン電子等の既存の競合他社と激しい競争に直面。
  • 競争力のあるファウンドリービジネスを維持するためには、最先端のプロセス技術と製造能力を維持するための高額な継続投資が必要であり、この投資は顧客の約束よりも先に行わなければならないことがある。

※「インテル(INTC)2023年年次報告書(アニュアルレポート):ファウンドリー事業に潜むリスク分析と今後の見通し&将来性」の続き

インテル(INTC)の2023年の年次報告書:競争が激しく、資本集約的なサードパーティ・ファウンドリー事業の経験は限定的

(原文)Our limited third-party foundry experience also means we must continue to hire and retain talented employees with relevant foundry experience with respect to both leading-edge and legacy nodes.

(日本語訳)また、私たちがサードパーティ・ファウンドリー事業において限られた経験しか保有していないということは、最先端ノードとレガシー・ノードの両方に関して適切なファウンドリー経験を持つ有能な従業員を雇用し、維持し続けなければならないということでもあります。

もしこの内容が、資金調達を検討しているスタートアップのプレゼンテーション資料に書かれていたとしたら、話はすぐに終わってしまうだろう。

続いてインテル(INTC)は、彼らが争うことになるであろう手ごわい競合他社を列挙している。

(原文)As we pursue our strategy to establish IFS as a major provider of foundry capacity to manufacture semiconductors for others, we will face intense competition from well-established competitors such as TSMC, Samsung, Global Foundries (GF), United Microelectronics Corporation (UMC), and Semiconductor Manufacturing International Corporation (SMIC).

(日本語訳)我々は、IFS(Intel Foundry Services:インテル・ファウンドリー・サービス)を半導体製造ファウンドリーの主要プロバイダーとして確立する戦略を推進しており、TSMC(TSM)、サムスン電子(005930.KS)、グローバル・ファウンドリーズ(GFS)、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクス・コーポレーション(UMC)、セミコンダクター・マニュファクチャリング・インターナショナル・コーポレーション(981 HK)など、既に確立された競合他社との激しい競争に直面すると想定しています。

そして、これらの競合他社との競争において成功するために、インテルが達成しなければならないことがある。

(原文)To succeed, we will need to compete effectively across factors such as availability and time-to-market of manufacturing technology; advances in manufacturing processes in areas such as performance, performance per watt, and density; multi-chip packaging; system integration; manufacturing capacity; price; margin; ease of use; quality; yields; customer satisfaction; and ecosystem support.

(日本語訳)成功するためには、製造技術の可用性と市場投入までの時間、性能、ワットあたりの性能、集積度といった分野における製造プロセスの進歩、マルチチップ・パッケージング、システム統合、製造能力、価格、マージン、使いやすさ、品質、歩留まり、顧客満足度、エコシステムのサポートといった要素で効果的に競争する必要があります。

もちろん、これには莫大な費用がかかる。

(原文)Building and maintaining a competitive foundry business requires high ongoing investments to maintain leading-edge process technology and manufacturing capacity, which investments in many instances must be made ahead of customer commitments and may not be recouped.

(日本語訳)競争力のあるファウンドリー・ビジネスを構築・維持するには、最先端のプロセス技術と製造能力を維持するための高額な継続投資が必要であり、この投資は多くの場合、顧客との約束よりも先に行わなければならず、回収できない可能性がございます。

さらに、自社の顧客と競合するという事実もある。

(原文)Moreover, many of the largest potential IFS customers are fabless semiconductor companies whose products compete with our own. As a result, our strategy requires us to overcome customer concerns regarding protection of confidentiality information, intellectual property, and foundry capacity, among other competitive concerns, to attract and retain such customers.

(日本語訳)さらに、IFSの潜在的な最大顧客の多くは、当社と競合するファブレス半導体企業です。その結果、当社の戦略では、このような顧客を引き付け、維持するために、機密情報の保護、知的財産、ファウンドリーの能力など、競争上の懸念事項に関する顧客の懸念を克服する必要があります。

また、これらすべての新規または拡張能力の建設には困難が伴うことが想定される。

(原文)Our construction projects to expand capacity require available sources of labor, materials, and equipment. Increasing demand for such sources, including from other foundries; supply constraints, labor shortages, and other adverse market conditions; issues with permits or approvals; on-site incidents; and other construction issues arise from time to time and can result in significant delays and increased costs for our projects, as well as legal and reputational harm.

(日本語訳)生産能力を拡大するための建設プロジェクトには、利用可能な労働力、資材、設備の供給源が必要です。他のファウンドリーからの需要も含め、こうした供給源に対する需要の増加、供給制約、労働力不足、その他の不利な市場環境、許認可に関する問題、現場での事故、その他の建設上の問題等が時折発生し、その結果、当社のプロジェクトに大幅な遅延とコスト増をもたらし、法的損害や風評被害をもたらす可能性がございます。

そして、最終的な結論は下記の通りとなっている。

(原文)These significant hurdles to our foundry strategy make it highly risky and our success highly uncertain.

(日本語訳)このような重大なハードルが、私たちのファウンドリー戦略を非常にリスクの高いものにしており、私たちの成功は非常に不確実なものとなっているのです。

ここで、新たに追加された「スマート・キャピタル・リスク」の項目を見てみよう。

当項目は次のように始まっている。

資本支出、代替融資の手配、政府補助金の追求に対する当社のスマート・キャピタル・アプローチにはリスクが伴い、成功しない可能性があります。

(原文)As we pursue our IDM 2.0 strategy, we have utilized our Smart Capital approach to capital spending in an effort to appropriately time and scale our capital investments. To support our capital investments, we have pursued alternative financing arrangements, such as our 2022 joint investment with Brookfield in the manufacturing expansion of our Arizona campus, and expect to enter into similar arrangements in the future.

(日本語訳)IDM2.0戦略を追求する中で、当社は資本支出に対するスマート・キャピタル・アプローチを活用し、資本投資の適切なタイミングと規模を図ってきました。資本投資を支援するため、当社は2022年のアリゾナ・キャンパスの製造拡張におけるブルックフィールドとの共同投資など、代替融資の取り決めを追求しており、今後も同様の取り決めを行う予定です。

(原文)These transactions may fail to advance our business strategy, may include unfavorable pricing or other terms, and may fail to achieve their anticipated benefits. Our partners may also fail to satisfy financial or other obligations on which we rely and we may fail to resolve any potential disputes. Any of these risks, including our ability to effectuate any additional transactions at all, could have a material adverse effect on our business, results of operations, financial condition, or cash flows, which may limit our ability to raise sufficient capital for our required investments.

(日本語訳)これらの取引は当社の事業戦略を推進できない可能性があり、不利な価格設定やその他の条件が含まれる可能性があり、期待された利益を達成できない可能性があります。また、当社のパートナーは、当社が依存する財務上の義務またはその他の義務を履行しない可能性があり、当社は潜在的な紛争を解決できない可能性があります。これらのリスクは、追加的な取引をまったく実施できない場合も含め、当社の事業、業績、財務状況、キャッシュ・フローに重大な悪影響を及ぼす可能性があり、必要な投資に十分な資本を調達する能力が制限される可能性があります。

上記のようなリスクを考えると、インテル(INTC)にとっては、「スマート・キャピタル」ではなく、「リスキー・キャピタル」と呼んだ方が適切だったかもしれない。

実際、私は「スマート・キャピタル」アプローチが好ましくない理由に関して、過去に何度もレポートを執筆しており、今回のForm 10-Kのリスク欄への記載は、そうした私の考えをサポートするものであると言える。

スマート・キャピタルのアプローチには、米国とEU当局からCHIPS法の資金を得ることも含まれているが、ここにも不確実性が内在している。

(原文)In addition, as part of our Smart Capital approach, we have applied for, received, and expect to receive additional grants and incentives from domestic and foreign local, regional and national governments. Legislation in the US and EU has been adopted to provide government funding for semiconductor manufacturing expansions in those regions, but there is uncertainty as to the amounts and timing of funding we may receive and as to the conditions and restrictions that may apply to us as a recipient of such funding.

(日本語訳)さらに、スマート・キャピタル・アプローチの一環として、当社は国内外の地方政府、地域政府、国家政府から追加の助成金や奨励金を申請し、受領しており、また受領する見込みである。米国とEUでは、これらの地域における半導体製造の拡大に政府資金を提供する法案が採択されていますが、当社が受け取る可能性のある資金の額や時期、またそのような資金の受領者として当社に適用される可能性のある条件や制限については不確実性があります。

インテルはさらに、政府からの資金提供が遅れたり、インテルにとって受け入れがたい条件が課されたりして、最終的にうまくいかない可能性について、いくつかの例を挙げている。

(原文)For example, we expect to receive substantial grants from the US government under the CHIPS Act to support significant planned new fabrication facilities in the US and the German government under the EU Chips Act to support significant planned new fabrication facilities in Germany. However, governments may choose not to award grants and incentives in sufficient amounts or in a timely manner to support our capital investment plans and to offset the higher costs of operations in many of the locations of our facilities as compared to those of many of our competitors, or we may be unable to comply with the requirements and limitations of such grants and incentives. To the extent such funding is below our expectations, we elect not to accept any grants or incentives due to burdensome compliance requirements, or we are required to return any amounts received from any grants or incentives due to an inability to comply with any requirements or limitations contained therein, our anticipated cash requirements would increase.

(日本語訳)例えば、米国では米国CHIPS法に基づいて米国政府から多額の助成金を受け、また、ドイツでは欧州半導体法(European Chips Act)に基づいてドイツ政府から多額の助成金を受け、大規模な新規製造施設の建設が計画されています。しかし、各政府は、当社の設備投資計画を支援し、競合他社の多くと比較した際の、当社の施設の立地の多くにおける高い操業コストを相殺するのに十分な金額、または、タイムリーに、補助金や奨励金を支給しないことを選択する可能性があり、または、当社は、そのような補助金や奨励金の要件や制限を遵守できない可能性がございます。このような資金調達が当社の予想を下回ったり、弊社が負担の大きいコンプライアンス要件を理由に助成金や奨励金の受け入れを見送ったり、あるいは、助成金や奨励金に含まれる要件や制限を遵守できないために助成金や奨励金から受け取った金額を返還しなければならなくなったりした場合、予想される必要資金は増加することになります。

ここには多くのことが書かれているが、ある重要な事実を振り返るために少し立ち止まる価値がある。

ファウンドリー計画、また、オハイオとドイツの新グリーンフィールド拡張は、すべてインテルにとって現時点では全く不必要なものである。

現在のところ、インテルが新たなシェルを構築し、需要が見込まれた際にツールを備え付けるという計画が理にかなっていると言える。

また、インテルは、過去50年間そうしてきたように、そしてTSMC(TSM台湾積体電路製造)がそうし続けているように、自社でそれを行う余力を持っているはずである。

ファウンドリーの場合は2021年から、スマートキャピタルの場合は2022年から存在していたのに、なぜ今になってこうしたリスク要因が現れたのかという疑問に話を移そう。

企業が行っている活動をForm 10-Kのリスクセクションに反映させる必要がある時期を決定するものは何だろうか?

単刀直入に言えば、法務チームが、もしそれらの事項が記載されていなければ、物事が期待通りあるいは計画通りに進まなかった時に訴訟を起こされる可能性があると判断した時に反映させる傾向にある。

少なくとも、ゲルシンガーCEOが、潜在的な欠点や落とし穴、彼の計画でうまくいかない可能性のあるあらゆる点をすべて列挙する必要はないことは確かである。

しかし、これらの計画はもはや単なる紙の上のアイデアという訳ではない。

巨額の資金が投入され、コミットメントがなされ、マイルストーンが目前に迫っている。

もしインテルが失敗し始めたら、法務チームは喜んで2023年の年次報告書のリスクセクションを指し示し、「警告したはずだ」と言うだろう。

そして、これはまさに彼らが今行ったことなのである。

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