インテル(INTC)株価上昇理由とは?最新の2024年第3四半期決算は厳しい状況ながらも業績がやや改善傾向?
ダグラス・ オローリン- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるインテル(INTC)の10月31日に発表された最新の2024年第3四半期決算の分析を通じて、同社の株価上昇理由、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- インテルの2024年第3四半期決算では、減損処理や在庫調整が行われ、厳しい状況ながらも業績がやや改善されているとの評価がされています。
- 外部委託の増加に伴い、粗利率の低下が予想されていますが、Intel 18Aの生産増強やファウンドリー活用度向上により、2026年に粗利率の改善が期待されています。
- NEX部門や高度なパッケージング事業の成長が見られるものの、インテルは依然としてCPU依存からの脱却とファウンドリーサービスの強化を模索している状況です。
インテル(INTC)の最新の2024年度第3四半期決算発表に関して
インテル(INTC)は10月31日に最新の2024年第3四半期決算を発表しており、今回の四半期決算はまずまずの結果であったという印象を受けました。
減損処理が行われ、少しずつ状況が改善しているようにも見えます。
まだ厳しい状況ではありますが、今回は設備や投資、Gaudiの在庫などに対する大幅な減損処理が行われたため、「総清算の四半期」とも言えるかもしれません。
2024年度第3四半期決算
・Non-GAAP EPS:マイナス0.46ドル
・GAAP EPS:マイナス3.88ドル
・売上高:132.8億ドル(FactSet予想の130.2億ドルを上回る)
2024年度第4四半期ガイダンス
・EPS(特別項目除く):0.12ドル(FactSet予想の0.08ドルを上回る)
・売上高:133億~143億ドル(FactSet予想:136.6億ドル)
・Non-GAAPベースの粗利率:39.5%
注目すべきポイントは、アマゾン(AMZN)以外に2社の新しい外部顧客を獲得したことです。
ただし、ファウンドリー事業の拡大と同時に、主力のCPU製品を依然として外部に委託している状況です。
製品のシンプル化も進めつつ、AI分野ではGPUクラスターの最上位ノードを戦略の軸としています。
言い換えれば、インテルは「ポストCPU」時代における自社の立ち位置を模索しているのです。
さらに、新しい「長期ガイダンス」を提示しましたが、その内容はGDP成長率程度にとどまる印象です。
市場をリードする製品の時代は遠ざかりつつあるのかもしれません。
下記は最新の決算説明会での遣り取りの一部です。
(原文)We continue to size the business to support trend line revenue growth of 3% to 5% annually, with the ability to scale up to 7% to 9% as demand dictates.
(日本語訳)当社は、年間3~5%の売上成長を目標に事業規模を調整しつつ、需要に応じて7~9%の成長にも対応できるよう体制を整えています。
(原文)We anticipate that our 2024 gross and net capital investments will be approximately $25 billion and $11 billion, respectively.
(日本語訳)また、2024年の設備投資額は総額で約250億ドル、純投資額は約110億ドルを予定しています。
さらに、設備投資が削減されましたが、市場予想よりも厳しい内容でした。
2~5億ドルという額は、期待されていた5億ドルを下回り、半導体設備業界にとっては依然として厳しい状況です。
(出所:インテルの2024年第3四半期決算資料)
来年の粗利率も外部委託の影響で悪化が見込まれていますが、「ウェハー生産が戻れば改善する」という期待が寄せられています。
(原文)As our mix of outsourced products and CCG grows in calendar year 2025, and we ramp Intel 18A to support Panther Lake, gross margin expansion could be muted, particularly in the second half. We expect gross margin fall-through to significantly improve in 2026, driven by the vastly improved cost structure of Intel 18A, the return of tiles to a meaningfully underutilized Intel Foundry and operational efficiencies.
(日本語訳)2025年には、外部委託製品やCCGの割合が増えるとともに、Panther Lake対応のためにIntel 18Aの生産を拡大することで、特に後半は粗利の伸びが鈍化する可能性があります。しかし、2026年には、Intel 18Aによるコスト構造の大幅な改善や、Intelファウンドリーの活用度向上、運営効率の改善により、粗利率が大幅に向上すると期待しています。
インテルは現在、わずかなパッケージングの利益を確保しようと奮闘し、主力製品を外部委託しながら、18Aの成功に望みを託している状況です。
一方で、厳しい状況に見えますが、少なくともパッケージング事業では損益分岐点に達しています。
(原文)That said, we saw a nice growth, right, quarter-on-quarter in the external foundry business, and we did break profitable for the advanced packaging portion of that business in Q3. So we are seeing nice growth characteristics, nice business characteristics, and we'll be giving more updates as we go forward.
(日本語訳)とはいえ、外部ファウンドリー事業は四半期ごとに順調に成長しており、第3四半期には高度なパッケージング部門で黒字化を達成しました。このように、事業として良い成長が見られますので、今後も状況を随時お知らせしていきます。
ちなみに、インテルのNEX部門(Network and Edgeは、ネットワークおよびエッジコンピューティング向けの製品とソリューションを提供する事業部門)は堅調に成長しており、これはサムスン電子(005930.KS)がマーベル・テクノロジー(MRVL)製品からXeon(インテルが主にサーバーやワークステーション向けに提供している高性能プロセッサシリーズ)に切り替えたことが影響しているかもしれません。
(出所:インテルの2024年第3四半期決算資料)
さらに、Altera(1983年に設立されたアメリカの半導体企業でインテルが買収)も四半期ごとに成績が向上し、EBITベースで損益分岐点に達しました。
これ以上目立った情報は少ないですが、インテルは最低限の期待を上回り、Gaudiの減損処理も行い、なんとか成長を維持しています。
粗利率は今後40%台にとどまる見込みで、主力製品の外部委託も続いています。
それでも、当初の懸念ほど悪くない四半期だったと言えるでしょう。
次の焦点は18A(インテルが開発中の最先端半導体製造プロセス技術で、1.8nmクラスのプロセスノード)です。
成功を祈っていますが、今の状況は決して楽観視できません。
もし実現すればインテルの価値は大きく上がるでしょうが、そこに至るまでに自社の強みを大きく削っているのも事実です。
果たしてIFS(インテル・ファウンドリー・サービス: インテルが提供する半導体受託製造サービスで、他社の設計したチップをインテルの製造技術を用いて生産)がCPU独占の価値に匹敵するものになるかどうかは疑問が残ります。
以上より、インテルはかつての栄光から離れ、不完全な姿で存続することになるかもしれません。
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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
📍半導体&テクノロジー担当
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