05/02/2025

インテル(INTC)の18Aはいつローンチされるのか?18Aに対する期待とは?

Intel computer processor in selective color photographyウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄である「インテル(INTC)の18Aはいつローンチされるのか?」という疑問に答えるべく、足元で開かれたDirect Connectイベントで発表された内容の詳細を詳しく解説していきます。
  • インテルは最先端プロセス「18A」に対する期待を慎重に調整し始めており、顧客対応や設計の多様化に向けて18APや18A PTなどの新バリエーションを導入しています。
  • 一方で「14A」プロセスへの注力が強調されており、18Aの知見を活かした第2世代技術の導入や、High NA EUVの採用可否を含めた検討が進められています。
  • 講演では「Copy Exactly方式」からの脱却や、ファウンドリー戦略の変革が示され、インテルの競争力と顧客対応力の再構築に向けた動きが強く意識されました。

※「インテル(INTC)のファウンドリー事業の将来性とは?Direct Connectイベントの詳細に迫る!」の続き

前章では、インテル(INTC)のDirect Connectの概要とCopy Exactly(CE)からの脱却、並びに、PDF Solutionsとの関係性に関して詳しく解説しております。

本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、前章も併せてご覧ください。

インテル(INTC)の18Aに対する期待の引き下げ

チャンドラセカラン氏は基調講演の中で少なくとも2回、18Aについて「浮き沈みがある」と言及しました。

「チームは引き続き前進しており、18Aでのリスク生産の開始を承認しました。」

「18Aは浮き沈みがありながらも順調に進展しており、2025年後半の量産に向けて自信を持っています。」

また、「Intel 3でTSV(シリコン貫通ビア)対応を計画中であり、将来的にファウンドリー・ノードとして活用可能になるかもしれない」と述べました。

次のスライドでは、18Aが順調であることを聴衆に安心させようとしました。

「欠陥密度は当社の計画通りに推移しており、2025年後半の終盤には高い生産水準に向けて立ち上げが可能となる見込みです。最良のウエハーでは、すでに目標とする欠陥密度を達成しています。」

しかしこの好材料の後に、彼は18Aに対する期待を少し引き下げ始めました。

「顧客からのフィードバックによれば、18Aは幅広い市場を対象としたものではなく、ハイパフォーマンス・コンピューティングを念頭に設計されたわけではありません。」

「18Aは、今後構築するすべてのノードの基盤です。しかし、数年前を振り返ると、設計に関与する意見はほぼ一つしかありませんでした。今後は多様な設計スタイルに対応する必要があります。より多くのVT(しきい値電圧)バリエーションを提供し、特性を改善する必要があります。18APは18Aとの設計互換性があり、すでに2つの製品が18APでテープアウト済みです。18APにおいて過去の設計作業のほとんどを再利用できます。」

ちなみに、18Aに対するこのような制約が存在することをインテル(INTC)が認めたのは今回が初めてではありません。注目すべきは、インテルがいま、18Aの課題を修正しようとしている点です。その解決策は、設計上の課題に対応するための18Aの新バリエーション2種です:

「次の改訂版は18APで、性能をさらに8%向上させることを目指しています。リボン幅の追加や設計マージンの最適化も含まれています。より幅広い顧客層をターゲットにしています。」

「TSV対応も18A上で実現し、“18A PT”として提供予定です。これにより、長期的な製品寿命が実現されます。」

ここから強く感じられるのは、インテルが明確に18Aに対する市場の期待を調整しようとしていることです。確かにリスク生産は始まっており、インテルはPanther Lakeの量産ローンチが年末に予定通り行われると主張しています。

しかし私の見立てでは、18Aのローンチは、かつて何度も延期された10nmプロセスの導入と似たようなものになるのではないかと感じています。すなわち、やや消極的で物足りない形でのスタートです。この件については、私は2019年当時にかなり詳しく論じています。

その際の結論は以下のとおりです:

「表面的には、インテルはIce Lakeの発売により10nmプロセスの問題を解決したかのように見えますが、実際には、同社は直近の戦略の一環として14nmの生産能力をさらに拡大しており、2021年末まで14nmを維持する計画を立てています。さらに、待望の10nm版を発売したのと同じ月に、クライアント向けプロセッサの14nm++版も発売しました。もしインテルがこれを10nmプロセス問題の「成功裏の解決」と考えているのであれば、その基準は非常に低いと言わざるを得ません。」

今回との違いは、インテルがもはや成熟したプロセス(Intel 10nm)をバックアップ策として使えない点にあります。もし18Aが期待に応えられなかった場合、唯一の選択肢は再びTSMC(TSM)に頼ることになるのです。

インテル(INTC)の14Aのプロモーション

チャンドラセカラン氏は基調講演の中で、14Aに多くの時間を割いて語りました。特に、18Aで得られた知見、たとえば第2世代のRibbonFETやBack Side Power Delivery(背面電力供給)技術を14Aに活かすという点を強調していました。こうなると、そもそも第1世代のそれら技術に何か問題があったのではないかと疑問を抱かざるを得ません。

「14Aの進捗は順調で、18Aから得られた多くの知見を活用しています。第2世代のRibbonFETおよびBSPDを採用します。エコシステムパートナーとは、今回はより早期から連携を開始しています。」

「PDKと連携して、正しいデータを収集できるように取り組んでいます。Copy Exactly方式からの脱却に伴い、各工場にはコスト、歩留まり、信頼性の改善に取り組んでもらう必要があります。」

なお、前述のスライドのタイトルには「14Aは競争力のあるPPA(性能・電力・面積)を提供し、2027年にリスク生産を開始予定」と記されていました。これは裏を返せば、「18Aには競争力のあるPPAがない」とも解釈できます。

いずれにせよ、今回の講演からはインテル(INTC)が18Aよりも14Aに注目を集めさせたいという強い意図が伝わってきました。今後の動向に注視すべきです。

High NAに関する疑問符

講演の最後の部分で、チャンドラセカラン氏はHigh NA(高開口数)EUVリソグラフィに関する進捗についても触れました。

「2台目のHigh NA EUV装置をオレゴンに設置済み。装置は期待通りの性能を発揮しています。14Aについては、High NAとLow NAのいずれの採用も依然として選択肢にあります。両者の歩留まりは同等レベルを達成しています。」

この発言から読み取れるのは、インテル(INTC)が現時点では14AでHigh NAを使用するかどうかについて、まだ最終判断を下していないということです。業界初のHigh NA装置導入を急いだインテルの姿勢とは裏腹に、その活用方針は依然として不透明なままです。

インテル・プロダクツ部門の不在

インテル・ファウンドリーにとって極めて重要な顧客であるインテル・プロダクツ部門のCEO、MJ氏がイベントに登場しなかったことは、非常に目立っていました。それにもかかわらず、基調講演ではMediaTekとUMCという外部のファウンドリー顧客2社が登壇しました。では、なぜMJ氏は参加しなかったのでしょうか?

私の見解では、MJ氏はインテル社内における競争相手の象徴であり、将来のファウンドリー顧客にとっては自分たちが対抗すべき「社内顧客」を体現しています。もし彼女が登壇していれば、インテル・ファウンドリーがいくら外部顧客を歓迎すると言っても、実際には最優先で対応するのは彼女の部門であるという現実を、顧客候補たちに嫌でも意識させることになってしまいます。だからこそ、MJ氏は不在だったのだと思われます。

さらに言えば、LBT氏が最近、クライアントおよびデータセンター部門のリーダーたちを自身の直属に置くと決定したことを踏まえると、MJ氏はいま、自身の進退を慎重に検討している最中かもしれません。

まとめ

講演の締めくくりにおいて、チャンドラセカラン氏はAIが製造能力の向上にどう活用されているかを示すため、ロボット犬をステージに登場させました。このロボット犬には背中に熱センサーが搭載されており、インテル(INTC)のサブファブ内を歩き回って、モーターやポンプの過熱を探知するという役割を担っています。

私にとってこのデモは、今日のインテルにおいて「イノベーション」とされているものの象徴的な、やや寂しい光景に映りました。イベントにおいて指摘してきた数々の問題点はさておき、チャンドラセカラン氏は非常に優れたプレゼンターであり、自身が取り上げた全てのトピックについて深い知見を持っていました。それだけに、なぜ彼が講演の締めくくりにこのような軽薄な演出を選んだのか、私には理解しかねます。

いずれにせよ、今回のイベントで最も重要なポイントは、「Copy Exactly」方式からの撤退、そしてそれが意味するところにあると考えます。もしこれが警鐘でなければ、他に何があるでしょうか。以上が私の所感です。今後の展開を見守りたいと思います。

付録

インテル(INTC)のグローバル拠点は多様性に富んでいます。ポーランドとドイツが「一時停止中」と記載されており、オハイオのキャンパスは「ウエハーファブ」として示されています。これは、同社が「オハイオ拠点は2030年以降まで稼働しない可能性が高い」と発言しているにもかかわらずです。

トランプ政権が米国の製造業を優先課題としたことについては歓迎しています。

過去の実績は将来の成功を保証するものではありません。顧客ごとに製品開発のやり方は異なります。当社は、より迅速に業界のEDA標準を取り入れていく方針です。

IP(知的財産)は、開発の加速、性能の適正確保、互換性の確保において鍵を握っています。Synopsysはそのリーダーの1社であり、インテルにとって強力なパートナーです。インテルとSynopsysの間では、多くの優れたコラボレーションが行われており、長年にわたる協業の歴史があります。18Aでは早期から取り組みを開始しており、完全に対応済みです。次世代プロセス技術に取り組む際に重要なのは反復スピードです。現在14Aで取り組んでいる作業も、その点では同様です。

パッケージングは非常に差別化されています。インテルは新技術の立ち上げにおいて、劇的な進展を遂げています。顧客からの声としてはどうでしょうか?

顧客は選択肢を強く求めており、シリコン需要は非常に大きいです。インテル・ファウンドリーが選択肢として存在すること、そして北米にテクノロジー・ファウンドリーがあることは、顧客にとって非常に重要です。設計難易度の差は縮小しており、18Aは今や業界標準と同等の水準に達しています。

デジタル設計フローと有効化においては、Cadence Designがこの分野のリーダーです。インテルにとっても強力なパートナーです。AIの爆発的な拡大など、いくつかのメガトレンドが進行しています。あらゆる領域でAIの取り組みが進んでおり、AIデータセンターのインフラに関する話題も多くありますが、今後は「フィジカルAI(物理AI)」がより大きなテーマとなるかもしれません。1兆ドルの市場予測はむしろ控えめすぎるかもしれません。

AIは多くのルーチン業務の自動化に活用されています。設計プロセスへのAI活用には大きなチャンスがあります。インテル・ファウンドリーに対する印象については、LBT氏がインテルに加わったことに喜びの声があり、「国家的資産」と称される存在です。常に「チーム、テクノロジー、顧客」について語られています。今後は顧客の声にもっと耳を傾ける必要があります。技術面では、パッケージングでの連携が見られるのは良いことです。インテルは背面メタルの導入で先陣を切りましたが、エコシステムとの協力なしには実現できません。インテル単独では不可能であり、パートナーとの連携が不可欠です。インテルに対して最も期待していることは?――本当に今後が楽しみです。

DFM(製造性設計)は歩留まりの向上とコスト効率に貢献しています。Siemens EDAはインテル・ファウンドリーにとって素晴らしいパートナーです。長年にわたり協力関係にあり、18Aの認証取得済みで、18APにおけるパフォーマンスチューニングも行っています。先端パッケージングチームとは15年以上にわたり継続的なパートナーシップを築いています。ファブレス顧客の期待としては、「予測可能性」が最も重要です。信頼できる顧客中心のソリューションを構築しています。EMIBは低レイテンシ・低消費電力・低コストを実現する、非常に興味深い技術プラットフォームであり、AI用途にも特に適しています。ソフトウェアは主要な差別化要因となっており、もはやハードウェアチームがソフトウェアチームに引き継ぐ時代ではありません。

「どうすれば共に世界を変えられるか?」――それにはシステムベースのアプローチを推進する必要があります。シリコンへのアクセスは、国家的な優先事項となりつつあります。これは社会にとって大きな変化をもたらす可能性があります。工学系の卒業生は不足しており、多くの技術者が定年を迎えつつあります。世界は、先端ノードの製造を提供できるインテル・ファウンドリーの成功を必要としているのです。

Design for Yield(歩留まり設計)とPDF Solutionsについて

PDF Solutions。インテルは4年前からPDFSを使用し始めました。最適化には共同作業が必要であり、R&D(研究開発)は設計の初期段階から連携する必要があります。製造に設計情報を持ち込む必要があります。PDFは顧客支援において独自の立場にあります。コラボレーション。世界でもっとも統合された製品群。統合分析。インテルが顧客とより密に連携するための触媒となることを目指しています。

14Aの技術的課題と展望

14Aのジオメトリはより小さく、複雑です。イノベーションによって利益は得られますが、それをどう使いこなすかが重要です。背面電力供給を導入する際には、設計者がその機能を最大限活用できるようになる必要があります。そのためには、より早期からの関与が不可欠です。18Aと14Aはいずれも先端パッケージングを前提に設計されており、非常に複雑なテストフローを伴います。


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