KLA(KLAC)の将来性とは?最新の2023年第4四半期決算分析を通じて今後の見通しに迫る!

- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるKLAコーポレーション(KLAC)の最新の2023年第4四半期決算分析を通じて、同社の今後の見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 2023年第4四半期の売上は予想をやや上回り、24億9,000万ドルに達し、中国市場からの売上は依然として高い水準を維持しています。
- 2024年の半導体製造装置市場(WFE)は横ばいか小幅な増加を見込み、KLACもこの安定した需要を見越して業績の回復を期待しています。
- KLACは顧客プロジェクトの遅延により売上が一時的に減少するものの、6月期には成長が回復し、年間を通じて徐々に業績が改善されると予想しています。
KLA(KLAC)の最新の2023年第4四半期決算に関して
KLA(KLAC)の2023年第4四半期の売上高は、わずかにガイダンス中央値を上回り、前四半期比3.6%増、前年同期比15.6%減の24億9,000万ドルの着地となった。
また、純利益は前四半期比1億5,800万ドル減の5億8,300万ドルとなっている。
2023年暦年では、KLACの売上高は前年同期比8%減の96億ドルとなった。
KLACは昨年、ASML(ASML)を除くすべての競合他社を上回る業績を上げたが、その主な要因は、メモリ・セグメントへのエクスポージャーが比較的小さかったことによる。
今やすっかりおなじみのパターンとなったが、KLACの中国顧客帰属売上高は、前四半期の43%から若干減少したとはいえ、41%という高水準を維持した。
なお、下記のKLACからのコメントにもある通り、同社は2024年も中国関連事業は好調を維持すると確信している模様である。
「中国については、全体的には前年比横ばいと見ています。昨年あたりから何度も話しているように、私たちはインフラ投資の恩恵を受けています。ただし、レチクル側よりもウェハー側で消化が進んでいる部分もあるので、その部分は多少減少すると予想しています。そして、その分、ファウンドリーが若干高くなり補完すると見ています。」
「メモリの部分は、別の顧客に出荷する可能性があります。ですから、全体としては横ばいになると見ています。また、中国の動向についてはかなり良い感触を得ています。」
同社の今年度の見通しについては、ラム・リサーチ(LRCX)との類似点が目立った印象を受けている。
まず、彼らは、半導体ウェーハ製造装置(WFE)市場が800億ドル台半ばから後半の規模に向けて緩やかに増加すると見ている。
「2024年暦年のWFE需要は80億ドル台半ばから後半になり、2023年暦年の予想水準からほぼ横ばいから小幅に上昇すると現在のところ予想しています。」
また、より広範な見通しにおいても、同様の警戒感と不確実性が見られた。
「WFE投資については、暦年の下半期が上半期よりも好調になると予想しています。このWFEの予測は、業界の需要に関する我々の現在のトップダウン評価を反映したものです。メモリについては、WFE投資は低水準からやや増加し、高帯域幅メモリ容量と最先端ノード開発に重点が置かれると予想しています。」
加えて、メモリ市場に関しては、消費者市場がより高い成長レベルに達するまで、稼働率は落ち込んだレベルで推移すると警告している。
「NANDとDRAMの両工場は、消費者市場が工場の稼働率を近年の高いレベルに戻すのに必要な成長レベルにまだ戻っていないため、低い稼働率レベルにとどまっています。」
「顧客がこの余剰生産能力を消費し、ノード移行に注力するようになれば、新たな投資が行われると予想されます。最先端ノードへの投資が緩やかな成長レベルに戻り、レガシーノードへの投資は2023年に向けて減少し、中国のレガシーノードへの投資は現在の水準に比較的横ばいで推移することから、ファウンドリーロジックはわずかに増加すると予想されます。」
これらの見通しの結果、当四半期のガイダンスは前四半期比8%減の23億ドル、前年同期比では約5%減となっている。
「KLACの3月期ガイダンスは以下の通りです。売上高は23億ドル、プラスマイナス1億2,500万ドルを見込んでいます。ファウンドリーロジックが約60%、メモリがセミプロセス制御システム売上高の40%と予想されています。」
そして、同社はこの前期の落ち込みを顧客プロジェクトの遅延によるものだとしている。
「KLACの全体的な需要は、ガイダンスの範囲プラスマイナスで、現在の事業水準前後で安定している。現時点では、KLACの売上高は3月期に底を打つことになるが、その主因はここ数カ月に発生した顧客プロジェクトの遅延によるもである。」
そして、この状況は6月期には改善され、緩やかな前四半期成長への回復が見込まれている。
「6月期の出荷計画における現在の早期計画に基づくと、6月期には連続的な成長が戻り、暦年の残りも続くと予想している。」
今後のKLA(KLAC)の見通しについて
内容としては、ラム・リサーチ(LRCX)に関する考察と非常によく似ている。
さらに、KLA(KLAC)のバックログに関するアナリストのティモシー・アルキュリ氏とCFOのブレン・ヒギンズ氏の非常に興味深いやり取りをもう少し掘り下げてみたい。
そもそも、KLACが前回の決算報告からほとんど変わっていないことは注目に値する。
10月の時点で、KLAは2024年が少なくとも前半まではどのように展開するかをすでに描いており、そして今、まさにそれが起こっている。
実際の成長は見えず、下半期が上半期より良くなるという漠然とした希望があるだけである。
このような背景から、ラム・リサーチの決算の際にお伝えしたのと同じ懸念、すなわち、「株価はこの1年で驚異的な上昇を遂げたが、回復のスピードは遅く予想よりも時間がかかっており、さらに、今後2四半期は、あまり良いニュースは期待できない」という点を改めて強調したい。
そして、決算説明会において、アナリストのティモシー・アルキュリ氏とCFOのブレン・ヒギンズ氏のやり取りは、下記のような流れで始まった。
「ブレン、私はブック・トゥ・ビル(販売額に対する受注額の割合)についてお伺いしたかったのです。それで、その指標は、5四半期連続で1を下回っています。実際には、少し上がっており、0.9まで上がっています。つまり、ある種の定常状態に達しているわけです。しかし、現在RPOに滞留しているものは、以前は4カ月から5カ月分の滞留期間があったため、以前バックログに滞留していたものとはかなり異なる動きをしているように見えます。」
「そして今、もし半分が12ヶ月以上に、半分が12ヶ月以内に滞留していると仮定するならば、つまり、以前とそれほど変わらないということだと思います。しかし、50億ドル以上の金額が12カ月を超えて滞留しており、これは以前にはなかったことです。では、COVID以前とCOVID以後を見て、何が変わったのでしょうか?なぜ、50億ドル相当のブッキングや RPOが12ヶ月以上滞留しているのでしょうか?リードタイムがそれほど長くなっているわけではないと思っております。リードタイムが長いことは理解しているが、常にリードタイムは長いと思います。それで、御社にとって何が変わったのでしょうか?」
この質問に対してヒギンズ氏は次のように答えている。
「そうですね。この部分を考える最も簡単な方法は、顧客がグリーンフィールド・プロジェクトを計画している施設に関連した注文を出すことだと思います。つまり、スケジュールが注文の原動力になっているわけです。そのため、リードタイム中心ということになっています。」
「その顧客は2025年にオープン予定のプロジェクトを持っています。そして、その開業予定時期にツールが欲しいということで、私たちに注文を出すわけです。多くの場合、中国との取引があり、そのスケジュールと連動した注文や入金があります。そのため、それらが最大の要因です。そして、おっしゃる通り、これは少し新しい現象です。」
「19年から22年にかけて大規模な増産が行われた後、このような状況が見られるようになったと思います。そして各四半期、それはかなり一貫しています。そして、毎四半期、そのバックログの一定量を調整してきました。しかし、それはかなり一貫しており、だいたい50%ほどとなっております。そのため、当四半期では、貸借対照表をご覧いただければお気づきのように、繰延システム売上が少し増加していることがお分かりいただけると思います。これは、先ほどお話ししたような、出荷額が売上高を上回ったことによるものです。それがRPOを押し下げることとなりました。しかし、売上高に対するブック・トゥ・ビルは実際にはプラスでした。」
「しかし、トレンドラインに関しては、ご質問の本質を変えるものではないと思います。12月期は少し良くなり、私たちが考えていたことと一致し、少しプラスとなりました。」
一方で、前四半期の決算説明会では、ヒギンズ氏はこれらの顧客からの前払い金について言及し、その額は約8億ドルにのぼると指摘していた。
「来年を見据えた場合、これらの顧客との契約残は大きな意味を持ち、これらの顧客のために8億ドル以上の手付金を確保しています。そのため、来年に向けてはこうした需要がある程度持続すると期待しています。また、リックが話したようなセグメント全体がそうだと思います。」
しかし、これは、12ヶ月以上滞留している約50億ドルの注文のごく一部である。
その答えに納得がいかなかったのか、アルキュリ氏がフォローアップの質問を下記の通り返している。
「了解しました。確かに上がっていますね。しかし、私が言いたいことは、その利点は何なのかということです。もし私がその顧客で、御社のリードタイムがそれよりもかなり内側にあるとしたら、私が中国の顧客で、御社のバックログにありながら12カ月以上先のものを予約するメリットは何でしょうか?私が心配しているのは輸出管理の問題と、おそらく、私が頭金を支払っているので、その頭金が私にツールを受け取る権利を与えていると考えているからかもしれません。それがそれらの理由の一部でしょうか?私はまだ、なぜ私があなたのリードタイムをはるかに上回るような方法で滞留する必要があるのか理解できていません。」
そして、下記の通り、ヒギンズ氏はまたしても、顧客が必要な時期よりずっと前に注文を出すという現象について説明しようとしている。
「もしあなたが新規の顧客であり、私たちとの新しい関係を持っている場合、信頼性を示すことが重要です。つまり、「私たちはこれを望んでいます。私たちは関与したいと考えています。ファブ(工場)をサポートするためのリソースを配置してほしい」というようなリクエストをする時です。これには時間がかかります。そして、多くの場合、これには注文の一部に対する頭金も含まれます。ですので、要するに、もし新規顧客の一人であれば、自社のファブが開設される際に、これが生産拡大の障害やボトルネックにならないようにしたいと考えるでしょう。」
「また、多くの場合、私たちにとって新しい顧客であれば、そうではありません。あるいは、あなたが知っている顧客は、それほど前から注文を予約しているとは言いません。しかし、私たちが彼らの計画をサポートする用意があることを確認したい顧客もいます。だから、そのような計画について信頼できることを確認するために、私たちに注文を出してくるのです。」
そして、下記のヒギンズ氏への最後の発言においては、アルキュリ氏は納得していないようで、少し皮肉っぽくさえなっている。
「Well, that's a ton of customers that we actually never heard of before. OK, Bren. Thanks(今まで聞いたこともないようなお客さんばかりだよ。オーケー、ブレン。ありがとう」
このやりとりが私たちの注意を引いたのは、KLACと競合他社との大きな違い、つまり機器のリードタイムを浮き彫りにしているからである。
ツールの性質上、KLACのリードタイムは同業他社よりもはるかに短い。
そして、同社の最も長いリードタイムは、第5世代光学検査ツールのリードタイムで、現在7-9ヶ月である。
この結果、一般的にKLACの顧客は、同業他社の顧客ほど前もって発注する必要がないということになる。
しかし、12カ月枠外の受注が非常に多い(50億ドル相当)という事実は、これらの受注のかなりの部分が、12カ月枠内の受注よりも確定していない可能性が高く、解約の可能性が高いプロジェクトに関するものであることを示唆している。
ただし、私はこの点を過度に誇張するつもりはない。
なぜなら、オーダーブック(注文書)はオーダーブックに過ぎないからである。
しかし、私の直感では、KLACの受注残、特に12ヶ月を超える受注残は、例えばASML(ASML)のケースに見られるような強固なものではない。
そのため、KLACはより多くのリスクを抱えており、今後、キャンセル等を経験する可能性が高いと見ている。
今期、このような遅延が1件発生し、その長さは最大1年、金額は約2億ドルに上ったという事実は、この仮説を裏付けるものであると考える。
さらに、その他のKLA(KLAC)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、KLAのページにアクセスしていただければと思います。
また、私のプロフィール上にて、私をフォローしていただければ、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることが出来ます。
私の半導体に関するレポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います。
アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング
📍半導体&テクノロジー担当
キーティング氏のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、キーティング氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。