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05 - 06 - 2024

ラムリサーチ(LRCX)株価予想:最新の2024年3Q決算は堅調も、今後数カ月で株価はさらに下落する可能性も?

ウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、4月24日に発表されたラムリサーチ(LRCX)の2024年度第3四半期決算分析を通じて、同社の株価予想と今後の見通しを詳しく解説していきます。
  • 最新の決算では、売上高は前四半期比・前年同期比ともにほぼ横ばいで、予想をわずかに上回る着地となっています。
  • 同社は、企業データの80%以上が依然としてHDDに保存されている現状を踏まえ、性能とコストの向上を支える技術によってSSDへのシフトを加速させています。
  • 2024年にはゲート・オール・アラウンド・ノードの出荷額が10億ドルを超える見込みで、AIの進展による高速で電力効率の高いデバイスへの需要増が同社の成長機会を拡大しているように見えます。

※「ラムリサーチ(LRCX)決算速報:最新の2024年第3四半期決算は予想を上回る着地!」の続き

ラムリサーチ(LRCX)のAI関連の取り組みに関して(続き)

(原文)We believe, however, that AI's impact on storage is still ahead and represents a key vector of long-term growth for our NAND business. More advanced AI applications need faster, more power-efficient, and higher-density NAND storage. NAND-based enterprise solid-state drives or eSSDs, are 50 times faster in read-right capability, two to five times more power efficient, and use 50% less space at the system level compared to hard disk drives or HDDs.

(日本語訳)しかし、AIがストレージに与える影響はまだ先であり、当社のNAND事業にとって長期的な成長の重要なベクトルであると考えています。より高度なAIアプリケーションには、より高速で電力効率に優れ、高密度のNANDストレージが必要です。NANDベースのエンタープライズ・ソリッド・ステート・ドライブ(eSSD)は、ハードディスク・ドライブ(HDD)に比べて、読み取り速度が50倍速く、電力効率が2~5倍高く、システム・レベルでの使用スペースが50%少なくて済みます。

このことは、先週SKハイニックス(000660.KS)が発表し、私の同僚であるジム・ハンディがここで取り上げたことを説明するのに役立つだろう。

(原文)The company attributed the bulk of its sales increase (the highest Q1 on record) to recent AI strength, but the fact that SK hynix dominates the market for AI's most profitable DRAM chip - HBM - seems not to be what drove the quarter's revenues. Instead most of the quarter's growth was in NAND flash. Executives explained that there was a significant demand increase for high-capacity enterprise SSDs, which they believe are going to on-premises AI applications where companies are moving their AI inference tasks from the cloud into their offices out of security concerns.

(日本語訳)同社は、売上高の増加(第1四半期としては過去最高)の大部分を最近のAIの好調によるものだとしているが、AIで最も収益性の高いDRAMチップであるHBMの市場をSKハイニックスが独占しているという事実は、今四半期の売上高を押し上げたものではなさそうである。代わりに、当四半期の成長の大半はNANDフラッシュであった。大容量のエンタープライズ向けSSDの需要が大幅に増加しており、これらの大容量のエンタープライズ向けSSDは、セキュリティ上の懸念からAI推論タスクをクラウドからオフィス内に移行するオンプレミスAIアプリケーションに向かうと考えられると幹部は説明している。

この6ヶ月の間に、マイクロン・テクノロジー(MU)とウエスタン・デジタル(WDC)の株価は非常に上昇したことから、以前は、私は保有するマイクロンとウエスタン・デジタルを手放そうと考えていた。

今は、SSDに対する需要の強さというレンズを通して、じっと様子を見ようと思っている。

もちろん、HDDからSSDへの移行はかなり以前から始まっていた。

実際、10年前には多くの人がHDDの完全な終焉を予測していた。

しかし、HDDの分野での並外れた技術革新のおかげで、HDDはまだ存在し、今後も長い間存在し続けるだろう。

今回の決算説明会議では、ラムリサーチ(LRCX)から、エンタープライズ・ストレージの80%以上が依然としてHDDであり、SSDがこの領域を侵食する大きなチャンスであることを学んだ。

(原文)Today, over 80% of enterprise data is stored on HDDs. And we expect this mix to shift in favor of SSDs as NAND capability and cost continue to improve. This is where Lam is playing a key role by enabling technologies, which are critical for both performance and cost scaling. In deposition, for example, Lam is leading the transition from tungsten to molybdenum in the word line to improve device access time and reduce stack height per storage cell.

(日本語訳)現在、企業データの80%以上はHDDに保存されている。NANDの性能とコストが向上し続けるにつれて、この構成はSSDに有利にシフトしていくと予想しています。そこでラムリサーチは、パフォーマンスとコストの両面で重要な技術を実現することで、重要な役割を果たしています。例えば成膜では、ラムリサーチはワードラインのタングステンからモリブデンへの移行を主導し、デバイスのアクセス時間を改善し、ストレージ・セルあたりのスタック高さを削減しています。

ラムリサーチ(LRCX)を取り巻く技術の変遷

半導体プロセス技術の面では、ゲート・オール・アラウンド(GAA)とバックサイド・パワー・デリバリー(BSD)という2つの大規模な技術移行が目前に迫っている。

インテル(INTC)はこの2つの技術のトップランナーになるつもりであるのに対し、TSMC(TSM)はいつものように、より慎重なアプローチを取るだろう。

いずれにせよ、これらの移行はラムリサーチ(LRCX)の耳に心地よいものであり、同社はこれらの移行を可能にするツールのアップグレードを提供することで、大きな利益を得ることができる。

(原文)Finally, on the foundry logic side. Lam tools, including selective etch and ALD, are well positioned to help enable the move from FinFET to gate all around, a key transition needed to improve transistor performance per watt by 15% to 20%.

(日本語訳)最後に、ファウンドリー・ロジック側について。選択エッチングやALDを含むラムリサーチのツールは、FinFETからゲート・オール・アラウンドへの移行を可能にするのに適した位置にあり、この移行は、ワット当たりのトランジスタ性能を15%から20%向上させるために必要な重要な移行です。

(原文)We see our shipments for gate all around nodes in calendar year 2024, exceeding $1 billion. Lam tools are also enabling foundry logic inflections such as backside power delivery, molybdenum interconnects, and dry photoresist processes for EUV patterning. Our traction with customers is strong on these inflections. And together, they represent a multibillion-dollar growth opportunity for Lam as AI drives a greater need for faster, more power-efficient devices.

(日本語訳)ゲート・オール・アラウンド・ノードの出荷額は、2024年暦年には10億ドルを超えると見ています。ラムリサーチのツールはまた、バックサイドパワーデリバリー、モリブデン配線、EUVパターニング用ドライフォトレジストプロセスなど、ファウンドリ・ロジックの変遷を可能にしています。そして、こうした変化において、私たちの顧客に対する牽引力は強いものとなっています。また、AIによってより高速で電力効率の高いデバイスへのニーズが高まる中、これらの製品はラムリサーチにとって数十億ドル規模の成長機会となります。

ラムリサーチ(LRCX)の決算に関する結論

前回1月下旬にラムリサーチ(LRCX)について書いたとき、そのメッセージは明らかに暗いものであった。

しかし、現在も状況はほとんど変わっておらず、それは今四半期のガイダンスや通期見通しの欠如が明確に示している。

過去3ヵ月間、同社の株価は史上最高値の1007ドルまで上昇したが、現在は約10%安の908ドルで取引されている。

過去18ヶ月で3倍弱の上昇、更には、33.3倍という歴史的に高い直近12カ月ベースの実績PERの水準からも、一般的に、私はこの銘柄を割高と見ている。

そのため、私には、同社株式の上昇は砂上の楼閣のように見える。

実際に、2023年の売上高は前年比25%減であった。

今年、第4四半期のガイダンスを達成すれば、通年の売上は約150億ドル、前年比6%増となる。

これは、24年度下期が24年度上期に比べてどの程度良くなるかによって明らかになるだろう。

要するに、同社は2025年まで2022年の最高売上高を更新するチャンスがない可能性が高く、それさえも確実ではないということである。

同社について私が懸念するもう一つの点は、中国からの売上高への依存度が高まっていることである。

米国からこれ以上の規制が課されないという最良のシナリオであっても、中国向け売上が大幅に減少し始めることは間違いない。

ここで重要になるのはタイミングである。

他地域への売上が回復し始めた矢先にこのようなことが起これば、両者は相殺され、成長から遠ざかり続けることになりかねない。

以上より、私は、ラムリサーチの株価は今後数カ月でさらに下降する可能性が高いと見ている。

そして、個人的には、700ドル以下では再び買い目線で臨みたいと思っている。


アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

ウィリアム・キーティング氏は、インテル、AMD、サムスン、アップル、マイクロン・テクノロジー等の企業の製品、ロードマップ、技術、および、それらの企業の主要な装置サプライヤーである、ASMLAMAT、キヤノン、ニコン等を専門とする半導体 / テクノロジー・リサーチ・コンサルティング会社、Ingenuity (Hong Kong) Ltd.の創立者兼最高経営責任者(CEO)です。

キーティング氏は、半導体業界において重要性の高いニッチなテーマを専門としています。具体的には、ムーアの法則の将来性、特にムーアの法則(EUVSDANanoImprint)を維持するためのリソグラフィの重要性、音声、画像、パターン認識、暗号通貨マイニングのためのディープラーニング(ニューラルネットワーク)などの特殊なアプリケーションにおけるGPUやその他のカスタムアーキテクチャの役割と成長などが挙げられます。また、メモリの将来、特に3D NANDの台頭と新しいメモリ技術の出現について、定期的にクライアントとのディスカッションを開催しています。

Ingenuity (Hong Kong) Ltd.を設立する以前は、1992年から2014年までインテル・コーポレーションに勤務していました。当初はAIシステムのスペシャリストとして採用され、その後、同社の最先端の300mmファクトリーネットワークをグローバルにサポートするファクトリーオートメーションシステム(ロボット、データベース、ネットワーク、サーバー、クライアント等)の責任者となりました。2000年には、社内にITコンサルティング・グループ(IT Flex Services)を設立し、500人規模のグローバルチームに成長させ、同グループは現在もインテルのIT部門の中核を担っています。2005年には、APAC、中国、日本担当のIT部門のディレクターに任命され、同地域にあるインテルの全オフィスと製造施設のITシステム(インフラ、ネットワーク、データセンター、ERP、セールス、マーケティングシステム、ビジネスインテリジェンスなど)を統括していました。

また、キーティング氏のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、キーティング氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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