ラムリサーチ(LRCX)今後の株価見通し:最新の2024年第3四半期決算は好調で株価は大幅上昇!今後の更なる成長に期待!
ウィリアム・ キーティング- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるラムリサーチ(LRCX)の10月23日に発表された最新の2024年第3四半期決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 最新の決算では、売上高を41.7億ドルと発表し、全四半期と予想をわずかに上回る結果を示しましたが、粗利益率は48.2%と顧客構成の変化やインセンティブ報酬の増加が影響し前期比でわずかに低下した。
- 2025年にはWFE市場全体の成長を見込み、特にNANDやGAA、BSPDなどの技術移行が進むことで、同社はこれらの分野で利益を得る好ポジションにあるように見えます。
- 株価は決算後に6%以上上昇し、2025年以降の技術移行や市場成長見通しが投資家の信頼を集めている一方で、中国市場の売上減少が続くことも事実であるが、他地域の売上がそれを補完する形で改善している点は注目に値します。
ラムリサーチ(LRCX)の最新の2024年第3四半期決算に関して
ラムリサーチ(LRCX)は2024年10月23日に最新の2024年第3四半期決算の売上高を41.7億ドルと発表し、予想をわずかに上回りました。
前四半期比で7.8%増、前年同期比では19.8%増となり、これで5四半期連続の増収となります。
ただし、今回の売上高は、約2年前の2022年第4四半期に記録した過去最高の52.8億ドルからは約11億ドル低い水準です。
ラムリサーチの四半期別売上高推移:2005年第3四半期~2024年第三四半期(暦年)
(出所:筆者作成)
Non-GAAPベースの粗利益率は48.2%で、予想の47%をわずかに上回りましたが、前四半期比ではわずかに減少しました。
下記は、最新の決算説明会における遣り取りの一部です。
(原文)Gross margin decreased a little sequentially, however, reflecting a decline in customer mix as well as an increase in incentive compensation. These factors were partially offset by improved factory utilization as we continue to make progress on our operational initiatives.
(日本語訳)粗利益率は前期比でわずかに低下しましたが、これは顧客構成の変化やインセンティブ報酬の増加が影響しています。ただし、運営効率改善に向けた取り組みが進む中で、工場稼働率の向上がこれらの影響を一部相殺しました。
今後の見通しとして、同社は2024年第4四半期決算の売上高を中央値で43億ドルと予想しており、前四半期比で3.1%、前年同期比で14.4%の増加を見込んでいます。
(出所:ラムリサーチの2024年第3四半期決算資料)
全体的に見ると、それほど目立った結果ではありませんが、時間外取引で同社の株価は6%以上上昇し、その後の通常取引でもその上昇を維持しました。
(出所:Yahoo Finance)
決算発表で市場が好意的に反応した理由は何だったのでしょうか?
では、最新の決算を詳しく見ていきましょう。
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ラムリサーチ(LRCX)の株価は最近のピークからすでに36%下落
今週の決算でラムリサーチ(LRCX)の株価が急騰した理由は複数ありますが、最も大きな要因は、昨年からの株価の動きにあると思います。
同社の株価は、昨年7月10日頃に113ドルのピークを迎え、その後数ヶ月かけて大幅に下落し、8月初めには約54ドルまで落ち込みました。
その後は上下を繰り返していましたが、2週間前にASML(ASML)の影響で半導体関連株全体が約10%下落し、同社もその一部でした。
(出所:Yahoo Finance)
つまり、今回の決算を迎える時点で同社の株価はすでに大幅に低下していたため、わずかな上方修正でも株価を押し上げる要因となったのです。
実際、これは理にかなっています。現在の同社株は、ちょうど1年前と同じ価格で購入できますが、同社(および同業他社)はすでに2年間の低迷期を乗り越え、2025年には半導体製造装置(WFE)市場全体が成長に戻ると多くが予測しています。
この見通しについては、決算説明会でCEOが慎重ながらも次のように言及しました。
(原文)For our normal cadence, we will provide the full details of our 2025 WFE outlook on our January earnings call. However, at this point, our early view for next year is for WFE growth from 2024's mid-$90 billion range. More importantly, we see an outstanding opportunity for Lam to outperform overall WFE growth in 2025.
(日本語訳)通常のスケジュール通り、2025年のWFE(半導体製造装置)市場の見通しについては、1月の決算発表で詳細をお伝えします。ただし、現時点での来年の見通しとしては、2024年の約900億ドル台中盤からWFE市場の成長を見込んでいます。さらに重要なのは、2025年にはラムリサーチがWFE全体の成長を上回る大きなチャンスがあると考えています。
ただし、同社はこれ以上の具体的な予測や詳細については、アナリストからの質問に対して慎重な姿勢を貫きました。
ラムリサーチ(LRCX)は中国の売上減少にもかかわらず、四半期および通年での成長を予測
2週間前のASML(ASML)の発表と同様に、ラムリサーチ(LRCX)も2024年第4四半期には中国からの売上比率が第3四半期の37%から約30%に減少すると予想しており、この水準は来年も続くと見られています。
(出所:ラムリサーチの2024年第3四半期決算資料)
一見するとこれはネガティブな要素に思えるかもしれませんが、中国市場が正常化することは予想されていたため、特に驚きはありません。
それに加え、中国での売上が減少しても、同社は今四半期および来年に成長を見込んでいます。
私自身、中国の売上が減少することで、その他の地域の売上がそれに追いつかず、2025年初頭に再び低迷するのではないかと心配していました。
しかし、決算発表から判断する限りでは、中国以外の地域の売上がちょうどタイミング良く成長しており、むしろ中国の減少分を十分に補っているようです。
ラムリサーチ(LRCX)はNANDの課題にもかかわらず成長
ラムリサーチ(LRCX)のCEOのティム・アーチャー氏は冒頭で、NAND投資がまだ回復していないことを明確に述べました。
(原文)When combined with our solid outlook for the December quarter, Lam's performance points to strong execution in an industry environment where NAND spending has yet to recover.
(日本語訳)第4四半期の堅調な見通しと合わせて、ラムリサーチのパフォーマンスは、NAND投資がまだ回復していない状況下でも強力な実行力を示しています。
一見するとネガティブに思えますが、それでも同社は売上をゆっくりとですが成長させています。
アーチャー氏がここで言いたいのは、NANDの生産能力に対する投資が回復していないということです。
ただし、技術移行への投資は確実に進んでいます。
(出所:ラムリサーチの2024年第3四半期決算資料)
現在、2つの技術移行が進行しています。
1つは、NANDのレイヤー数を200層以上に増やす移行。
もう1つは、タングステン(タングステンは約3,422°Cという非常に高い融点を持ち、金属の中で最も高い耐熱性を持つことで知られている)からモリブデン(約2,623°Cの高い融点を持ち、優れた耐熱性や耐食性が特徴)への移行です。
このモリブデンへの移行は、トランジスタを接続し、電力を供給する金属層に使われるタングステンをモリブデンに置き換える業界全体の動きです。
そのため、生産能力の増加がなくても、同社はこれら2つの技術移行によってNAND分野で利益を得ることができます。
ラムリサーチ(LRCX)のゲート・オール・アラウンド(GAA)と背面電源供給(BSPD)
来年、ラムリサーチ(LRCX)が恩恵を受けるのはNANDの技術移行だけではありません。
ゲート・オール・アラウンド(GAA:トランジスタ構造の一種で、従来のFinFETの後継となる技術)や背面電源供給(BSPD:トランジスタに電力を供給する新しい方法)への移行も同様に、同社にとって追い風となります。
これらの技術は、エッチングや成膜など、同社の得意分野のプロセスを多く必要とするためです。
(出所:ラムリサーチの2024年第3四半期決算資料)
(出所:ラムリサーチの2024年第3四半期決算資料)
もちろん、ゲート・オール・アラウンドや背面電源供給の恩恵を受けるのは同社だけではありません。
主要なプレイヤーはすべて、この移行の恩恵を受けるでしょう。それでも、2025年以降、厳しい状況が続くWFE分野にとって、良い追い風となるでしょう。
インテルとサムスンの遅延によるラムリサーチ(LRCX)への影響
インテル(INTC)やサムスン電子(005930.KS)のスケジュール遅延がラムリサーチ(LRCX)の2025年の見通しに悪影響を与えるのではないかと心配する投資家もいるかもしれません。
これは、あるアナリストが同社の決算説明会において尋ねた内容でもあります。
(原文)I think there's one customer that's doing really well, maybe two others that are doing not so well. Is the net-net in your view as it pertains to the '25 outlook, is that unchanged relative to 90 days ago? Or have you seen any kind of shifts in the outlook when you think about overall leading-edge foundry and logic?
(日本語訳)1社は非常に好調だと思いますが、他の2社はあまり良くないようです。2025年の見通しに関して、90日前と比べて全体的に変化はありましたか?それとも、先端ファウンドリやロジックの見通しに何か変化が見えましたか?
これに対する答えは、意外にも率直でした。
(原文)Well, I don't think it's really changed from our perspective in the last 90 days, but that's because generally, if I think about what's driving our business, it's a little less has to do with volume as much as technology inflections. And so, as you move forward from a node that wasn't gate-all-around to one that's gate-all-around, that creates opportunities for Lam that some companies might actually be somewhat of a similar opportunity. But for Lam, because we can now penetrate new tools like selective etch and ALD at rates that we had not been able to previously, we think that that may be why it hasn't changed as much for us. We see it as a positive opportunity.
(日本語訳)過去90日間で私たちの見方が大きく変わったとは思いません。それは、当社のビジネスを動かしているのが、量の問題よりも技術的な変革によるところが大きいからです。たとえば、ゲート・オール・アラウンド(GAA)を採用していないノードから、GAAを採用するノードに移行することで、ラムリサーチにとって新たなチャンスが生まれます。他社にも同様の機会があるかもしれませんが、ラムリサーチの場合、これまでよりも高い割合で選択的エッチングやALD(原子層堆積)といった新しいツール市場に参入できるようになっており、そのために見通しがあまり変わらないのだと考えています。私たちはこれを前向きな機会と見ています。
要するに、サムスン電子やインテルが先端ノードで問題を抱え、スケジュールを延ばしているものの、2024年第4四半期や2025年に予定されているツールの納品はキャンセルされていないようです。
なぜなら、両社とも、量産に入る前に先端ノードを稼働させるためのツールがまだ必要だからです。
実際、延ばされているのは量産のタイミングであって、初期段階の準備は進行しています。
おそらく、2026年以降に予定されていたツールの納品はキャンセルされたり、延期されたりしているのでしょう。
そう考える理由としては、ラムリサーチが繰延収益の残高について説明したことからです。
(原文) Our deferred revenue balance at the end of the quarter was $2.05 billion, an increase of $495 million from the June quarter. This grew mainly due to customer advance payments. I believe our deferred revenue balance will trend lower into calendar year 2025, but you will likely continue to see fluctuation quarter to quarter.
(日本語訳)今期末の繰延収益残高は20億5000万ドルで、6月期と比べて4億9500万ドル増加しました。この増加は主に顧客からの前払いによるものです。2025年にかけて繰延収益残高は減少していくと考えていますが、四半期ごとの変動は引き続き見られるでしょう。
ラムリサーチ(LRCX)の最新決算への結論
ASML(ASML)の厳しい決算発表(私の見方では、市場は過剰反応し過ぎだと思います)の後、ラムリサーチ(LRCX)は控えめながらも予想を上回る結果と慎重ながら前向きな2025年の見通しを示し、多くの不安を和らげました。
同社は、今後の主要な技術移行や、AI関連分野を除く半導体業界全体の徐々に進む回復から恩恵を受ける好位置にいます。
今回の決算発表による株価の急騰があったものの、同社の株価はまだ1年前の水準に戻っただけです。
しかし、私は現在の株価水準が長く維持されるとは思えません。
今後の動向に注目です!
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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング
📍半導体&テクノロジー担当
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