10/29/2024

ラムリサーチ(LRCX)今後の株価展望:最新決算は好調で株価上昇!ロジックやファウンドリへの投資増に注目!

a computer chip with the word gat printed on itダグラス・ オローリンダグラス・ オローリン
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるラムリサーチ(LRCX)の2024年10月23日に発表された最新の2025年第1四半期決算(暦年:2024年第3四半期)の分析を通じて、同社の今後の株価展望と将来性を詳しく解説していきます。
  • 最新決算では、中国市場の影響はあるものの、予想を上回る業績と今後の成長見通しが示され株価は上昇し、特にロジックやファウンドリへの投資増が注目されています。 
  • 2025年には、エッチングと成膜技術の需要が増加すると予測され、バックサイドパワーや高度なパッケージング技術が先端分野で導入されることで、ラムリサーチのポートフォリオに好影響が期待されています。 
  • ASMLの中国向けDUVツール需要が減少する見込みである一方、ラムリサーチや他の装置メーカーは引き続き堅調なパフォーマンスを維持する可能性が高いと考えられます。

ラムリサーチ(LRCX)の最新の2025年度第1四半期決算に関して

ラムリサーチ(LRCX)は10月23日に最新の2025年度第1四半期決算(暦年:2024年第3四半期)を発表しましたが、業績は素晴らしいものでした。

今回の焦点は「中国、中国、中国」といった感じで、ほとんどの質問も中国に関するものでした。

しかし、見出しから受ける印象ほどには悪い結果ではなく、むしろ私の「リソグラフィー(半導体製造プロセスにおいて、シリコンウェハー上に回路パターンを描く技術)のピーク説」が裏付けられたように思います。

2025年度第1四半期決算

・Non-GAAPベースのEPS:0.86ドル(FactSet予想:0.81ドル)

・売上高:41.7億ドル(FactSet予想:40.6億ドル)

2025年度第2四半期ガイダンス

・調整後EPS:0.87ドル +/- 0.10ドル(FactSet予想:0.84ドル)

・売上高:43億ドル +/- 3億ドル(FactSet予想:42.4億ドル)

・Non-GAAPベースの粗利益率:47.0% +/- 1%

中国の売上比率は徐々に減少する傾向にあり、ロジック(半導体チップの一部で計算やデータ処理などの演算を行う部分で、CPUやGPUのこと)やファウンドリ(半導体メーカーから製造を受託して実際に半導体を製造する企業や工場)への投資の割合が増えている点も興味深いです。

次世代において、これらの分野の支出がさらに増える可能性があり、メモリ企業としてのイメージが強かったラムリサーチが、他の主要企業と同等にロジック経由の売上高を上げるまでに変化しているのは非常に大きな変革です。

(出所:ラムリサーチの2025年度第1四半期決算資料

次に、中国市場について見ていきましょう。

下記は最新の決算説明会における遣り取りの一部です。

(原文)We expect domestic China WFE will be down in the second half relative to the first half, with China's share of Lam's overall revenue normalizing to the 30% range in the December quarter. For our normal cadence, we will provide the full details of our 2025 WFE outlook on our January earnings call. However, at this point, our early view for next year is for WFE growth from 2024's mid-$90 billion range. More importantly, we see an outstanding opportunity for Lam to outperform overall WFE growth in 2025. This is due to the critical role that etch and deposition play as fundamental enablers of higher performance, more scalable semiconductor device architectures.

(日本語訳)中国国内の半導体製造装置(WFE)市場は、2024年後半には前半に比べて縮小し、12月期にはラムリサーチ全体の売上に占める中国の割合が30%程度に安定すると見込んでいます。通常通り、2025年のWFE市場見通しの詳細は1月の決算発表でお伝えする予定ですが、現時点では2024年の約900億ドル中盤から成長する見通しです。さらに、2025年にはラムリサーチがWFE市場全体の成長を上回るチャンスがあると期待しています。これは、エッチングと成膜が高性能で拡張性のある半導体デバイスを実現するための重要な基盤技術として役割を果たしているからです。

中国市場は縮小傾向にありますが、少しややこしいのは、「縮小する」と言いつつ、その後の説明で「売上比率として縮小する」と話している点です。

私の考えでは、他の事業が成長しており、その影響で製品構成が変わってきているのだと思います。

来年の中国売上は前年比30%減にはならず、ファウンドリの成長がその分を補い、10%台の減少にとどまる見込みです。

(原文)We said that we believe year-on-year WFE overall would be up next year. Specifically, our view for China WFE next year would be that it is lower. For all -- you can pick all the variety of reasons that you may have just listed. And that as a percent of Lam's total revenue, China would represent a lower percentage next year than this year.

(日本語訳)来年のWFE全体は前年比で増加すると見ていますが、中国のWFEは減少する見込みです。その理由はいくつか考えられますが、来年のラムリサーチの総売上に占める中国の割合は、今年よりも低くなると予想しています。

中国市場がなくなるわけではありません。

ただ、これまでのサイクルでは「ラムリサーチが排除されることはない」と強く思っていましたが、これからの5年間は状況が異なると考えています。

中国には高い生産性を持つ優れたツールが多数存在し、これからの5年間は制約ではなく競争が主なテーマになるでしょう。

(原文)Yes, Vivek, maybe I'll take it. This is Doug. Yes, China is trending down a little bit right now, but let me be very, very clear. It's not going away. It's just trending lower as a percent of our overall revenue. That's partly due to the fact that, yes, we -- as we sit here today, we look at China WFE as lower next year. But other things are strengthening at the same time. So when you look at the percent of the total revenue, it's trending a little bit lower. But let me be very clear. It's not going away.

(日本語訳)はい、Vivek、私から説明します。Dougです。確かに今、中国市場は少し縮小傾向にありますが、はっきりと申し上げます。中国市場が消えるわけではありません。全体の売上に占める割合が少し下がっているだけです。これは、来年の中国のWFE市場が縮小する見込みである一方、他の分野が同時に成長しているためです。その結果、売上全体に占める割合が若干低下していますが、改めて申し上げますが、中国市場がなくなるわけではありません。

また、彼らは「規制に関して現時点での最善の見積もりを持っている」と述べていますが、ロビイスト(企業や業界団体などの依頼を受けて、政策や法案が自分たちの利益に有利になるように、議員や政府の関係者に働きかける職業の人)に資金を出していることもあり、強気な見方をしている可能性が高いです。

実際には、輸出規制の影響が予想以上に大きくなる可能性もあるでしょう。

(原文)Yes. I think that the view we've given you contemplates our best understanding of and our best estimate of what we think will happen. And so I don't know if you call that a guess, an educated guess. I mean, I doubt all of you guys are just guessing. You have sources of information, and so I think that that's just -- that's our view. And the best we can say right now is what we've said about our -- how we see China WFE, both through the next quarter as well as into next year.

(日本語訳)そうですね。今回お伝えした見解は、現時点での最も信頼できる理解と見積もりに基づいたものです。これを「予測」と呼ぶか「根拠ある推測」と呼ぶかは別として、皆さんも何かしらの情報源に基づいているのだと思います。私たちとしては、これが現時点での見解であり、今お伝えできる最善の内容として、次の四半期や来年にかけての中国のWFEに対する見通しを示しています。

とにかく、ここで重要なポイントをお伝えしたいと思います。

皆が中国市場にばかり注目していますが、もちろん世界全体を忘れてはいけません。

TSMC(TSM)はキャパシティが不足すると大規模な増強を行う傾向があるため、来年は先端ロジック分野が成長する見通しです。

また、これはリソグラフィーのシェアが失われつつあることの最たる証拠だと考えています。

Gate All Around(GAA:トランジスタ構造の一種)、バックサイドパワー(チップの「裏側」から電力を供給する技術)、パッケージング(製造した半導体チップを保護し、外部との接続ができるようにするプロセス)などの分野で「さらなるチャンス」が広がっており、エッチング(シリコンウェハー上にパターンを形成する際に、不要な部分を削り取る加工技術)や成膜(シリコンウェハー上に材料を薄く積層する工程)がシェアを獲得し始めています。

技術の進化には逆らえません。

(原文)And so as you move forward from a node that wasn't gate-all-around to one that's gate-all-around, that creates opportunities for Lam that -- some companies, it might actually be somewhat of a similar opportunity. But for Lam, because we can now penetrate new tools like selective etch and ALD at rates that we had not been able to previously, we think that, that may be why it hasn't changed as much for us. We see it as a positive opportunity.

(日本語訳)従来のノード(半導体プロセス技術の世代や進化を示す単位)からGate All Aroundのノードへ移行することで、ラムリサーチには新たなチャンスが生まれています。他社にとっても似たような機会かもしれませんが、ラムリサーチの場合、これまで対応が難しかった選択的エッチングやALD(半導体製造において、ウェハー上に原子単位の薄い膜を非常に均一に積層する技術)といった新しいツールを導入できるようになったことが大きいと考えています。私たちはこれを大きな成長機会と捉えています。

(原文)We also see -- again, we can't put an exact timing on it. But we have said we believe in 2025, you start to see the introduction of what we would consider to be quite etch and dep-intensive inflections like the backside power distribution and further advanced packaging use in leading-edge logic/foundry. And so those are things that I think primarily benefit companies with portfolios that look like Lam's. Etch and deposition is strong. And so I don't know, I can't speak to everybody's outlook, but I know that the way we look at these technology transitions, they're quite favorable for our portfolio setup.

(日本語訳)また、正確な時期はまだ断言できませんが、2025年にはエッチングと成膜を多用するような変革が見られると考えています。例えば、バックサイドパワー分配や、より高度なパッケージング技術が先端ロジックやファウンドリの分野で導入されるでしょうこれらの変化は、特にラムリサーチのようなポートフォリオを持つ企業にとって大きなメリットとなります。エッチングと成膜の需要は非常に高く、技術の進化が私たちのポートフォリオにとって有利に働くと考えています。他社の見通しについてはわかりませんが、当社にとっては非常にポジティブな展開です。

ASML(ASML)に期待している皆さん、そろそろ現実を直視する時です。

ASMLについてもう一つ触れると、DUVツール(深紫外線リソグラフィー装置:半導体製造プロセスで使用される露光装置の一種)のリードタイムが長かったことで、中国市場からの売上が一時的に大きく増えていたと見ています。

中国企業はこの規制がかかることを予測して先行して大量注文を行っていましたが、現在その調整が進んでいる状況です。

私の見解では、これにより長期的に大きな逆風が生じるでしょう。

というのも、大量注文の時期に見込まれていた中国からの収益が、実際には大幅に減少することが予想されるからです。

要するに、ラムリサーチ、アプライド・マテリアルズ(AMAT、ASMインターナショナル(ASMIY)、KLA(KLAC)、東京エレクトロン(露光トラック:シリコンウェハーを露光装置に送り込み、露光前後に処理を施すための装置)は引き続き好調ですが、リソグラフィー分野は厳しい状況が続くかもしれません。

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📍半導体&テクノロジー担当

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