半導体におけるDRAMとNANDの違いとは?2024年3Qの半導体メモリの価格推移見通しとメモリメーカーの動向を徹底分析!

- 本稿では、「半導体市場におけるDRAMとNANDの違いとは?」という基本的な概念の解説から、2024年度第3四半期の半導体メモリ市場(DRAM・NAND)の総売上高と関連銘柄の動向に関して詳しく解説していきます。
- 2024年度第3四半期の半導体メモリ市場では、マイクロン・テクノロジー(MU)、SKハイニックス(000660.KS)、サムスン電子(005930.KS)が楽観的な見通しを示していますが、供給制約により従来製品の供給に懸念があるようです。
- AI対応PCやスマートフォンの需要が増加し、それに伴いDRAMやHBMの需要も高まっており、特にHBMの供給不足が、これらの半導体メモリ企業の価格上昇と収益性の向上に寄与する見込みです。
- 2025年にはHBM市場でのシェア拡大が期待されており、顧客との長期契約(LTA)の傾向が強まっていますが、従来のメモリ製品の供給には引き続き制約が続く可能性があるように見えます。
※「半導体メモリとは?24年2Qの半導体メモリ業界(NAND・DRAM)の売上高と価格推移、半導体メモリメーカーの動向に迫る!」の続き
半導体市場におけるDRAMとNANDの違いとは?
DRAMとNANDは、半導体市場において欠かせない2つのメモリ技術であり、異なる特性と用途を持っています。
DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)は揮発性メモリであり、電源を供給している間のみデータを保持します。これは、パソコンやサーバー、ゲーム機などの作業メモリとして使用され、データの高速な読み書きが求められる場面で活躍します。DRAMはアクセス速度が非常に速く、プロセッサがデータを迅速に処理するために必要不可欠です。ただし、電源が切れるとデータが消失するため、長期的なデータ保存には不向きです。
一方、NANDフラッシュメモリは、不揮発性メモリとしてデータを電源を切っても保持できる特性があり、主にストレージデバイスに使用されます。スマートフォン、デジタルカメラ、USBメモリ、SSD(ソリッドステートドライブ)など、データの保存が必要なデバイスには欠かせない技術です。NANDは、セル構造により高密度でのデータ保存が可能で、コストパフォーマンスに優れていますが、書き込み速度はDRAMに比べて遅いという特徴があります。
両者は、デジタル機器の性能と機能性を支える重要な要素であり、それぞれの市場動向や技術革新は業界全体に大きな影響を与えます。NAND市場は、容量の増加と価格低下が進んでおり、特にSSDの普及に伴って需要が拡大しています。DRAM市場も、データセンターや高性能コンピューティングの需要増加により、成長を続けています。これらのメモリ技術は、未来のデジタル社会を支える基盤として、今後もさらなる発展が期待されます。
関連用語
※SSD(ソリッドステートドライブ):データをフラッシュメモリに保存するストレージデバイス。従来のハードディスクドライブ(HDD)に比べて、高速なデータ読み書き速度、耐衝撃性、静音性などの特徴がある。パソコンやサーバー、モバイルデバイスなどで広く使用されている。
2024年度第3四半期:半導体メモリ市場(DRAM・NAND)の見通し
現在の四半期である、2024年度第3四半期の売上高見通しについては、マイクロン・テクノロジー(MU)、SKハイニックス(000660.KS)、サムスン電子(005930.KS)のいずれも楽観的でありながら、多少の懸念もあるようです。マイクロン・テクノロジーに関しては、売上高が中間値で76億ドルと予測されており、前四半期比で10.5%の増加が見込まれています。
マイクロン・テクノロジーは、2024年暦年のPCおよびスマートフォン部門での成長は控えめであると予想しており、PCは「一桁台前半」、スマートフォンは「一桁台前半から中盤」の成長を見込んでいます。それでも、同社は2025年以降のPC市場の成長については楽観的であり、AI対応PCが従来のPCよりも40~80%多くのDRAMを必要とすると指摘しています。
では、決算説明会の遣り取りで注目すべき点を幾つか見ていきましょう。
(原文)These devices feature high performance Neural Processing Unit chipsets, and we expect these devices will have 40% to 80% more DRAM content than today’s average PC. We expect next-gen AI PCs to make up a meaningful portion of total PC units in CY25, growing each year until most PCs ultimately support AI PC specs.
(日本語訳)これらのデバイスには高性能なニューラルプロセッシングユニットが搭載されており、現在の平均的なPCと比べて40%から80%多くのDRAMが必要になると期待されています。次世代のAI対応PCが、2025年のPC市場で大きな割合を占め、最終的にはほとんどのPCがAI対応仕様を備えるようになると見込んでいます。
そして、下記の通り、同社はスマートフォン分野でも同様の動きみられることと予想しています。
(原文)Micron's leading LP5X is enabling the recent 12GB and 16GB AI phone releases at all Android tier 1 customers, representing a 50% to 100% increase over last year’s flagship models.
(日本語訳)マイクロン・テクノロジーの最新LP5Xは、昨年のフラッグシップモデルと比べて50%から100%増となる12GBおよび16GBのAI対応スマートフォンを、全てのAndroid Tier 1顧客に提供しています。
また、マイクロン・テクノロジーは、DRAMの供給が今後数四半期で「逼迫する」ことを以前から予測しており、これはDDR5およびHBMへの重点的な取り組みによるものです。同社は、HBMがDDR5の3倍のウェハー供給を必要とすることを改めて強調しています。
(原文)As discussed previously, the ramp of HBM production will constrain industry supply growth in non -HBM products. Industry wide, HBM3E consumes approximately three times the wafer supply as D5 to produce a given number of bits in the same technology node. With increased performance and packaging complexity, across the industry, we expect this trade ratio for HBM4 to be even higher than the trade ratio for HBM3E. We anticipate strong HBM demand due to AI, combined with increasing silicon intensity of the HBM roadmap, to contribute to tight supply conditions for DRAM across all end markets
(日本語訳)以前にも触れたように、HBMの生産拡大は非HBM製品における業界全体の供給成長を制約するでしょう。業界全体では、HBM3Eは同じ技術ノードで同じビット数を生産するためにDDR5の約3倍のウェハー供給を必要とします。技術の進化とパッケージングの複雑化が進む中で、HBM4のトレードオフ比率はHBM3Eをさらに上回ると予想しています。AIによる強いHBM需要と、HBMロードマップにおけるシリコン集約度の増加が相まって、全てのエンドマーケットにおけるDRAMの供給逼迫に寄与するでしょう。
関連用語
※ニューラルプロセッシングユニット(NPU):AIや機械学習タスクを高速に処理するために特化されたプロセッサ。画像認識や自然言語処理などのAI関連の計算を効率的に行う。
※LP5X:最新世代の低電力DRAM (Low-Power DDR5X) で、スマートフォンやモバイルデバイスにおいて、高速かつ省電力なメモリ性能を提供。
※フラッグシップモデル:企業が提供する製品の中で最も高性能かつ高機能な主力モデルを指す。一般的に最新技術が搭載され、最も多くの機能が含まれている。
※HBM(High Bandwidth Memory):高速でデータを転送できる次世代メモリ技術で、主に高性能コンピューティングやグラフィックカードで使用される。
※DDR5(Double Data Rate 5):DRAMの最新世代規格で、前世代のDDR4に比べてデータ転送速度が向上し、より効率的な電力消費が可能。
※HBM3E:高帯域幅メモリ(High Bandwidth Memory)の第3世代の拡張版で、従来のHBM3よりもさらに高いデータ転送速度と効率を提供するメモリ技術。主にAI、グラフィックス、データセンター向けの高性能コンピューティングで使用される。
※HBM4:高帯域幅メモリの第4世代で、HBM3Eに比べてさらに高速で効率的なメモリ技術。次世代のAIや高性能コンピューティング用途での需要を見越して開発されている。
マイクロン・テクノロジーは、この供給逼迫状況が価格上昇を促し、その結果、収益性の改善に貢献すると明確にしています。
(原文)As the memory industry is still recovering from the challenging environment in 2023, this tight supply environment will help drive the considerable improvements in profitability and ROI that are needed to enable the investments required to support future growth.
(日本語訳)メモリ業界が2023年の厳しい環境からまだ回復途上にある中で、この供給逼迫状況は、将来の成長を支えるために必要な投資を可能にするための、収益性とROIの大幅な改善を促進するでしょう。
また、マイクロン・テクノロジーは、予想される不足分について具体的な数字を示しており、現在の会計年度末には、ウェハー生産能力が2年前のピーク時と比較して10%以上減少するだろうと述べています。
(原文)We continue to project we will end fiscal 2024 with low double digit percentage less wafer capacity in both DRAM and NAND than our peak levels in fiscal 2022.
(日本語訳)私たちは、2024会計年度末までにDRAMおよびNANDのウェハー容量が、2022会計年度のピーク時と比較して10%以上減少する見込みです。
このテーマについては以前にも触れましたが、再度強調する価値があります。PCおよびスマートフォンにおけるDRAM需要の増加というAI主導のトレンドと、ウェハー容量の不足は、今後12か月間およびそれ以降のマイクロン・テクノロジーの売上高と収益性を押し上げる新たな追い風となるでしょう。これらの追い風はもちろん、マイクロン・テクノロジーがHBM製品から期待しているものに加わります。最近、マイクロン・テクノロジーのこの点について、以前のレポートにおいて詳しく取り上げております。
マイクロン・テクノロジー(MU)2024年第3四半期決算プレビューと成長予測:AIサーバー需要が牽引する驚異的な業績回復
仮に、読者の皆さんが、HBMがマイクロン・テクノロジーの業績にどれほど影響を与えるかを忘れてしまっていたとしても、同社は最近の決算発表において、下記の通り、再びその重要性を思い出させてくれました。
(原文)HBM: Our HBM shipment ramp began in FQ3, and we generated over $100M in HBM3E revenue in the quarter, at margins accretive to DRAM and overall company margins. We expect to generate several hundred million dollars of revenue from HBM in FY24, and multiple $Bs in revenue from HBM in FY25. We expect to achieve HBM market share commensurate with our overall DRAM market share sometime in CY25. Our HBM is sold out for CY24 and CY25, with pricing already contracted for the overwhelming majority of our 2025 supply. We are making significant strides towards expanding our HBM customer base in CY25, as we design-in our industry-leading HBM technology with most of the major HBM customers.
(日本語訳)HBM: 当社のHBM出荷拡大は第3四半期に始まり、四半期で1億ドル以上のHBM3Eによる売上高を達成し、DRAMおよび全社の利益率を向上させました。2024会計年度にはHBMから数億ドルの売上高を見込み、2025会計年度には数十億ドルの売上高を見込んでいます。2025年には、当社の全体のDRAM市場シェアと同等のHBM市場シェアを達成することを期待しています。2024年と2025年の供給はすでに完売しており、2025年の供給の大部分の価格はすでに契約済みです。2025年には、主要なHBM顧客のほとんどと、当社の業界をリードするHBM技術を設計に組み込むことで、HBM顧客基盤の拡大に向けて大きな進展を遂げています。
サムスン電子(005930.KS)に関しても非常に似た状況です。最近公表された最新のHBM製品の認定に関する課題が報じられてはいるものの、これらの問題はほぼ解決されており、強い需要が見込まれています。
(原文)For servers, we expect the portion of AI servers in the market to continuously increase as major cloud service providers and general enterprises expand their AI investment in the second half. Considering that, AI servers equipped with HBM also feature high content per box in terms of conventional DRAM necessity, strong demand is expected to continue across-related products such as HBM, DDR5, sub-SSD and so on.
(日本語訳)サーバー市場では、主要なクラウドサービスプロバイダーや一般企業が年後半にAIへの投資を拡大するにつれて、AIサーバーの占める割合がさらに増加すると予想しています。そのため、HBMを搭載したAIサーバーは、従来のDRAMに比べて1台あたりのメモリ需要が高くなるため、HBMやDDR5、サブSSDなどの関連製品への強い需要が引き続き見込まれます。
また、同社は、AI対応のPCやスマートフォンにおける「1台あたりのメモリ需要」の増加という追い風にも言及しています。
(原文)For PC and mobile, demand still has momentum, thanks to the effect of peak seasonality and increased content per box, driven by the expansion of on-device AI featured models.
(日本語訳)PCおよびモバイルでは、ピークシーズンの影響やAI機能を搭載したモデルの普及に伴うメモリ搭載量の増加が後押しとなり、依然として強い需要が続いています。
しかし、一方で、PCおよびスマートフォンの顧客在庫に関しては、多少の懸念があり、「2024年後半の成長が限定的になる可能性がある」と述べています。これは注視すべき点です。
(原文)Considering the elevated customer component inventories in the first half of the year, there might be some possibility that the growth in demand for the second half would be limited.
(日本語訳)年初の顧客のコンポーネント在庫が増加していることを考慮すると、年後半の需要成長が制約される可能性があります。
マイクロン・テクノロジーと同様に、サムスン電子もAIサーバー需要に対応するために、HBMやサーバーDRAM、サーバーSSDにリソースを集中させているため、PCおよびモバイル向けの従来のメモリ製品の供給が引き続き制約されると警告しています。
(原文)In terms of industry supply, as capacity is being concentrated on HBM, server DRAM, and server SSD in response to AI server demand, it is expected that the conventional bit supply of cutting-edge products for PC and mobile application will be continuously constrained.
(日本語訳)業界全体の供給に関しては、AIサーバー需要に対応するため、HBM、サーバーDRAM、サーバーSSDに生産能力が集中しており、PCおよびモバイル用途向けの最新製品の供給は引き続き制約される見込みです。
関連用語
※サブSSD:通常のSSDよりも容量や性能が控えめな、比較的低価格帯のSSDを指すことが多い。エントリーレベルのデバイスや特定の用途に使用されることがある。
※サーバーSSD: サーバーSSDは、サーバーに特化したSSDで、高速なデータ転送速度と高い耐久性が特徴。データセンターやクラウドサービスなど、大規模なデータ処理や保存が必要な環境で使用される。
※サーバーDRAM: サーバーDRAMは、サーバーに特化したメモリで、高い信頼性とパフォーマンスが求められる。通常、エラー訂正機能(ECC)を備えており、サーバー環境でのデータ処理を安定して行うために使用される。
半導体メモリ市場(DRAM・NAND)の見通しに対する結論
メモリ業界には依然として強い追い風が吹いています。HBMや高性能DRAM製品に対する旺盛な需要、PCやスマートフォンなどのプレミアムデバイスにおけるDRAMやNANDの搭載量の増加、そして旧世代製品の供給が逼迫する兆しなど、いずれも今後の売上高成長と利益拡大に寄与する要因です。
加えて、顧客がメモリパートナーとの関係をより深めようとしていることも見逃せません。特にHBM設計に関してはその傾向が顕著です。HBMが2025年まで業界全体でほぼ完売しているという事実は、より堅固な長期契約(LTA)への移行を示していると言えます。まだ確定的なことは言えませんが、こうしたLTAの取り組みが、より一般的な製品にも広がっていくのではないかと感じています。加えて、もしあなたが、マイクロン・テクノロジー(MU)やSKハイニックス(000660.KS)のような企業に、どうしても必要なHBMを頼っているなら、他の主流製品を彼らからコスト以下で購入しようとするでしょうか?私にはそうは思えません。では、今後の展開に引き続き注目していきたいと思います。
関連用語
※プレミアムデバイスとは、高性能で高品質な特徴を持ち、通常は高価格帯に位置するデバイスを指します。主に、最新技術や素材が使用され、優れたパフォーマンスやデザインを提供することが特徴です。例として、ハイエンドスマートフォンや高性能PCが挙げられます。
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