マイクロン・テクノロジー(MU)HBM(高帯域幅メモリ)戦略:半導体/セミコンダクター・カンファレンスでの発表を徹底分析
ウィリアム・ キーティング- マイクロン・テクノロジー(MU)は、2023年に業界全体のビット数の2%未満だったHBMが、2024年には4%に達し、CAGR(年平均成長率)50%で成長すると予測している。
- HBM 3E製品は競合製品に比べて消費電力が30%以上少なく、2025年にはHBM関連の売上高が数十億ドルに達すると期待されている。
- さらに、同社はエヌビディア(NVDA)を含む複数の顧客とHBMのパートナーシップを強化しており、将来の世代ではHBMの複雑さが増し、カスタム製品の需要が高まると予測している。
※「マイクロン・テクノロジー(MU)2024年第3四半期決算プレビューと成長予測:AIサーバー需要が牽引する驚異的な業績回復」の続き
マイクロン・テクノロジー(MU)のHBMビジネスに関して
5月30日に開催されたゴールドマン・サックス(GS)のグローバル・セミコンダクター・カンファレンスでは、マイクロン・テクノロジー(MU)のチーフ・ビジネス・オフィサーであるスミット・サダナ氏が出席しており、その中で、HBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)の話題に関しては、複数の発表があった。
まず、予想される成長率に関してだが、マイクロン・テクノロジーは、2023年にDRAM業界全体のビット数の~2%をベースとして、CAGR(年平均成長率)が50%になると予想している。
(原文)Sure so last year HBM was less than 2% of the industry bits and this year ought to be somewhere around 4% in that range we do expect HBM bits to grow in the medium term in the 50 percent CAGR sort of range again based on the 2023 base year of course the industry bit growth rate say to high teens kind of a range but I would say that the HBM growth continues to be strong the demand continues to be extremely robust.
(日本語訳)昨年、HBMは業界ビットの2%未満でした。そして今年は4%前後になるはずです。この範囲では、HBMのビットは中期的にCAGR50%の範囲で成長すると予想しており、これは2023年を基準年としており、もちろん業界のビット成長率は10%台後半と言えるでしょう。しかし、HBMの成長は引き続き力強く、需要は非常に堅調であると言えるでしょう。
さらに、同社は、同社のHBM 3Eの消費電力は競合製品よりも少なくとも30%低いと主張している。
(原文)And we are seeing a lot of that significant demand because HBM 3E product is an industry leading product with some very breakthrough type of power consumption capability that's at least 30% below competitive offerings..
(日本語訳)HBM 3E製品は、競合製品よりも少なくとも30%低い、非常に画期的な消費電力能力を持つ業界をリードする製品であるため、私たちはそのような大きな需要を目の当たりにしています。
本当にそうなのかどうかは、時間が経てばわかるだろう。
マイクロン・テクノロジーの主張について独立した検証は行われていないが、今のところは彼らの言葉を信じるのが賢明だろう。
おそらくサダナ氏が語った中で、最も注目すべきポイントは、HBMの市場シェアが既存のDRAMの市場シェアに匹敵するまでに上昇するにつれて、同社のHBM関連の売上高が成長すると予想しているそのスピードに関してである。
(原文)So we have spoken about several hundreds of millions of dollars of fiscal 24 revenue with HBM and going to FY 25 and calendar 25 getting to multiple billions of revenue in HBM and that's the trajectory we're on so now it is about you know we have the space we have the tools and slots in orders and everything all in place and now it's the operational aspect of sampling the product with high quality which is you know what we always focus on and we feel good about our ability to deliver on those goals which we have outlined as being getting to our HBM share on a quarterly basis sometime during calendar 2025 being similar to our worldwide DRAM supply share which is in the low 20 percent range
(日本語訳)2024年度にはHBMで数億ドルの売上を達成し、2025年度にはHBMで数十億ドルの売上を達成する予定です。そしてそれが、私たちが今辿っている軌道なのです。スペースは確保できたし、ツールも発注枠もすべて整っています。そして今、私たちが常に注力しているのは、高品質の製品をサンプリングするというオペレーション面です。そして、我々は、自ら描いている目標を達成する手ごたえを感じています。具体的には、四半期ベースで、2025年暦年のある時点で、HBMのシェアをDRAMの世界シェア(20%台前半)と同程度にすることです。
2024会計年度の数億ドルから2025会計年度の数十億ドルへの成長は、特に2026会計年度以降に何が起こるかを考えると、先に述べたHBMの年平均成長率50%を念頭に置いても、驚異的な成長であると言える。
マイクロン・テクノロジーは以前、H200製品向けにHBMを供給するため、エヌビディア(NVDA)と提携していることを明らかにしていた。
しかし、同社はエヌビディアとの提携を進めているだけでなく、複数の異なる顧客と提携している。
(原文)Certainly when it comes to HBM our goal is to have that diversification there as well so definitely very strong engagement and partnership with the leading GPU company we also have really good engagements and really good work and partnerships with all of the large HBM customers around the world and consequently our focus is to get the qualifications done and ramp with all of those customers as soon as they're able to ramp and given the specs of the product we see extremely strong interest from our customers to bring our product to market because when they ship their processors with our HBM it actually you know has lower operating cost for their end customers due to the power consumption benefits that we bring so we do expect that we will have a diversified slate of customers going into next calendar year and with each succeeding quarter we have a better diversification so long term engagements for future roadmap related products even beyond HBM 3E so HBM 4E really strong engagement very exciting place to be.
(日本語訳)確かにHBMに関して言えば、我々の目標はそこでも多様性を持たせることであり、GPUのリーディングカンパニーと非常に強力な関わりとパートナーシップを持つことは間違いありません。また、私たちは世界中のHBMの大口顧客すべてと本当に良い関係を築き、良い仕事とパートナーシップを築いています。その結果、私たちの焦点は、認定を完了させ、これらの顧客すべてと、製品のスペックを考慮し、立ち上げが可能になり次第、一緒に立ち上げることです。私たちは、私たちのHBMを搭載したプロセッサーを出荷することで、私たちがもたらす消費電力の利点により、エンドユーザーの運用コストを削減できるため、私たちの製品を市場に投入したいという顧客の強い関心を目の当たりにしています。そのため、来年は多様な顧客を獲得できるものと期待しています。また、四半期を追うごとに多様化が進んでおり、HBM 3Eだけでなく、将来のロードマップに関連する製品の長期的な契約も増えており、HBM 4Eは本当に強力なエンゲージメントを持ち、非常にエキサイティングな状況です。
HBMの将来のロードマップについて、より具体的には、HBMがすぐにコモディティ製品になり、その結果価格が下がるリスクについて議論する際、サダナ氏はHBMの複雑さを強調し、層数が現在の8層から12層、16層、そしておそらくそれ以上へと増加するにつれて、この複雑さは増加の一途をたどるだろうと述べている。
(原文)But we even if you look at it from a gross margin perspective our expectation on HBM on a long-term basis is through the cycle for HBM, gross margin to be a accretive to the core business margin because of the product capability because of the value it brings to our customers because of the complexity of the product but even more so as we think about going from the current version of HBM 3E which is an 8 high stack in 2025 as we go through the calendar year it will transition more and more of the mix to 12 high and that is even more complex product to do than the eight high.
(日本語訳)しかし、売上総利益率の観点から見たとしても、長期的にHBMに期待することは、HBMのサイクルを通じて、売上総利益率がコア事業の利益率にプラスになることです。なぜなら、製品の能力、顧客にもたらす価値、製品の複雑さ、そして2025年に8ハイスタックである現行バージョンのHBM 3Eから移行することを考えれば、なおさらです。2025年には8ハイスタックのHBM 3Eの現行バージョンから12ハイスタックに移行する予定です。そしてそれは、8ハイスタックよりもさらに複雑な製品になります。
(原文)Future generations of HBM may go to like 16 High so again that will be further increase in complexity and as we look past HBM 4 to like HBM 4E type of products there is a desire amongst multiple customers to figure out ways because every customer has slightly different approach in terms of how they are creating value and in they look at their subsystem.
(日本語訳)将来の世代のHBMは16ハイスタックになるかもしれません。そのため、複雑さはさらに増すでしょう。HBM 4からHBM 4Eのようなタイプの製品に目を向けると、複数の顧客の間で、価値を生み出す方法やサブシステムに対する見方について、顧客ごとに少しずつ異なるアプローチがあるため、解決策を見出したいという要望があります。
上記の段落の最後の文章は、顧客がプロセッサ/GPUの選択肢を競合製品と差別化するために求めている、あるレベルのカスタマイズを示唆しているという点で特に興味深い内容である。
これは、数カ月前にSKハイニックス(000660.KS)について言及したカスタムメモリ・ソリューションの話題にぴったりと当てはまる。
サダナ氏はさらに、HBMのベースダイに独自のロジックを追加するために顧客とどのように関わっているかについて、より具体的に説明している。
(原文)Different customers have different ideas about how to create some level of differentiation in HBM usage point forward in as long as it is the same type of HBM that everyone is using for example we built HBM 3E product of course it has to be qualified with different processes but ultimately it's the same product but customers are thinking about HBM 4E and beyond Generations that they need to find some way to create that differentiation and how HBM and works with their processor and one approach is to put you know some logic into the base die of the HBM and that then makes HBM product mode of a custom product to a customer and then you make a HBM product into a custom product then it becomes more of ASIC light engagement model because now your core design for the base with customers logic embedded in it with your own.
(日本語訳)皆が使っているHBMが同じタイプである限り、HBMの使用においてある程度の差別化を生み出す方法について、お客様によって考え方が異なります。例えば、私たちはHBM 3E製品を作りました。もちろん、それは異なるプロセスで認定されなければなりません。しかし、最終的には同じ製品です。ただし、顧客はHBM 4Eやその先の世代について考えており、彼らは差別化を生み出し、HBMと自社のプロセッサーをどのように連携させるか、何らかの方法を見つける必要があります。そして、1つのアプローチは、HBMのベースダイにロジックを組み込むことです。そうすることで、HBM製品を顧客向けのカスタム製品モードにすることができます。そして、HBM製品をカスタム製品にするのです。そうなると、お客様のロジックを組み込んだベースのコア設計に、自社のロジックを組み込むことになり、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)のライト・エンゲージメント・モデルに近くなります。
同社にとって、このような顧客との緊密な協業には複数の利点がある。
具体的には、カスタマイズすることで、特定のHBM製品がその顧客だけのものになり、その顧客しか購入できなくなる。
(原文)Much better visibility and coordination much better ownership on part of the customer for the orders that they place because it's a custom product it's not like I can sell it to somebody else and so a lot of foundational changes can happen in the industry driven by that and that's a really exciting trend I think for the HBM business and and of course then it also changes the dynamic versus how you viewed the business it's margin profile it's stability versus the rest of the portfolio.
(日本語訳)カスタムメイドの製品であるため、より良い可視性と調整、顧客側の注文に対するより確実なオーナーシップ(所有権)を得ることができます。それらの製品は他の誰かに売れるわけではありません。そのため、HBM業界では多くの基礎的な変化が起こる可能性があります。これはHBM事業にとって本当にエキサイティングな傾向だと思います。そしてもちろん、これはあなたがこの事業を、マージンプロファイルや他のポートフォリオに対する安定性等をどのように見ていたかに対して、ダイナミックな変化をもたらすものでもあります。
サダナ氏は、このような状況を業界の「Foundational Change(基盤的変化)」と呼んでいる。
現実的な観点からは、マイクロン・テクノロジーはこれらのHBM顧客とどのような長期契約(LTA)を結ぶことができるかに集約される。
同社は既に数年前に顧客との間で長期契約の概念を導入していたが、そのほとんどは供給契約に重点を置いたもので、価格に関する拘束力のある約束はなかった。
このため、現在の不況期には、マイクロン・テクノロジーの観点からはまったく役に立たないものとなっている。
しかし、今回のHBMの長期契約では、上記の様なことはなく、2025年までの価格設定がすでに含まれているのである。
(原文)Now as it relates to HBM and HBM related agreements, they are different from the previous agreements and LTAs that we have done for one like you said previous agreements focused mainly on volume let's say volume by quarters. HBM agreements have pricing in them as well so even though we are still in the first half of calendar 24 most of calendar 25 pricing in volume is done and so it's really a very different place to be and the terms and conditions in these agreements also are a lot more robust now you know obviously we always work with customers and it's a very important relationship so it's really something they both sides generally work together to ensure that you know these agreements are structured in a way that ultimately work out for both sides but definitely these agreements on the HBM side are different than the other agreements.
(日本語訳)さて、HBMとHBM関連の契約に関しては、我々がこれまで結んできた契約やLTAとは異なっており、ひとつには、おっしゃるとおり、これまでの契約は主に数量に重点を置いており、例えば四半期ごとの数量が中心でした。HBMの契約には価格設定も含まれています。ですから、まだ2024年暦年の前半ではありますが、2025年暦年の価格設定はほとんど終わっています。そのため、実際に非常に異なった状況になっています。また、これらの契約における条件も、現在ではより強固なものになっています。ご存知のように、私たちは常に顧客と一緒に仕事をしています。そして、それは非常に重要な関係です。ですから、これらの契約が最終的に双方にとってうまくいくような形で構成されるよう、両者が協力し合うのが一般的です。しかし、HBM側のこれらの契約は、間違いなく他の契約とは異なります。
これが、同社が2025年までにHBMの売上が数十億ドルになると自信を持って語ることができる理由である。
しかし、同社にとっての潜在的な利益は、HBM関連の契約だけにとどまらないと見ている。
この様に考えてみよう。
同社とその同業他社は、少なくとも3四半期、場合によっては4四半期にわたって、DRAMとNANDを原価割れで販売せざるを得なかった。
合わせて数百億ドルの損失であろう。
現在、マイクロン・テクノロジーはHBM製品について、顧客から価格設定を約束させることに苦労はしていないように見える。
しかし、これらの顧客は通常のDRAMやNAND製品も必要としている。
マイクロン・テクノロジーが黒字転換するには、HBMに加えてDRAMとNANDでも利益を上げる必要がある。
もしHBMの顧客が、同社のDRAMとNANDに原価を下回る価格設定を主張すれば、同社を採算割れにしてしまうだろう。
そうなれば、マイクロン・テクノロジーは不幸になり、HBMのパートナーも不幸になるだろう。
ここで私が言いたいのは、マイクロン・テクノロジーとHBMの顧客との関わり合い(エンゲージメント)のレベルがこれまでに前例がないほど高いということである。
まさに、カスタム・メモリ・ソリューションの新時代であると言える。
マイクロン・テクノロジーには、価格設定が組み込まれた適切な長期契約がもたらされている。
そして、これはマイクロン・テクノロジーにとって、この種の長期契約をHBM顧客向けのDRAMやNAND製品にも適用する絶好の機会であり、いわば一種のパッケージ取引と言えるだろう。
マイクロン・テクノロジーが業界をリードしたいのはこの点であり、もし同社がこの点に関してリードすれば、同業他社もこの流れに続くだろう。
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