12/25/2024

【半導体】マイクロン・テクノロジー(MU)の将来性とは?最新の2025年度第1四半期決算分析を通じて今後の株価見通しに迫る!

A micro processor sitting on top of a tableウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるマイクロン・テクノロジー(MU)の12月18日に発表された最新の2025年度第1四半期決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • マイクロン・テクノロジーの2025年度第1四半期決算では、売上高が87億ドルに達し、前年同期比84%増と記録的な成果を上げたが、ガイダンス下方修正により株価が急落しました。
  • HBM市場の急成長が同社の成長を牽引し、2028年までに市場規模が4倍、2030年には1,000億ドルを超えると予測されています。
  • 在庫過剰とレガシー市場での中国の競争が課題となる中、2025年後半にはPC市場とスマートフォン市場の成長による回復が期待されています。

マイクロン・テクノロジー(MU)の最新の2025年度第1四半期決算発表に関して

先週、2024年12月18日に発表されたマイクロン・テクノロジー(MU)の2025年度第1四半期決算は、まさに「物議を醸す」内容だったと言えるでしょう。序盤は順調で、主要な指標がガイダンスをしっかりと達成していました。

下記は、決算説明会における遣り取りの一部です。

(原文)Micron delivered fiscal Q1 revenue and gross margins at the midpoint and EPS above the midpoint of the guidance range. Total fiscal Q1 revenue was approximately $8.7 billion, up 12% sequentially and up 84% year over year, and reached a new record.

(日本語訳)マイクロン・テクノロジーの2025年度第1四半期決算では、売上高と粗利益率がガイダンスの中央値を達成し、1株当たり利益(EPS)はそれを上回りました。売上高は約87億ドルに達し、前期比で12%、前年同期比で84%増加し、新記録を更新しました。

売上高・純利益・純利益率

(出所:筆者作成)

直近の2025年度第1四半期は、マイクロン・テクノロジーが過去10年以上で最も深刻だった業界の低迷から徐々に立ち直り、7四半期連続で成長を記録した節目の時期となりました。この回復の大きな要因として、加速コンピューティングの旺盛な需要を支える最先端DRAMへの需要の高まりが挙げられます。特にHBM(高帯域幅メモリ)の需要は急激に拡大しており、これに対応できる企業は世界でもわずか3社しか存在せず、マイクロン・テクノロジーはその1つです。

(原文)Our HBM shipments were ahead of plan, and we achieved more than a sequential doubling of HBM revenue. Revenue from our largest data center customer was approximately 13% of total company revenue. The HBM market will exhibit robust growth over the next few years

(日本語訳)HBM(高帯域幅メモリ)の出荷は計画を上回り、収益は前期比で2倍以上に増加しました。最大のデータセンター顧客からの売上は、全体の約13%を占めています。今後数年間、HBM市場は力強い成長が見込まれています。

この成長がどれほど力強いものになるのか、そしてそれがマイクロン・テクノロジーにどのような影響をもたらすのか、非常に興味深いところです。

(原文)In 2028, we expect the HBM TAM to grow four times from the $16 billion level in 2024 and to exceed $100 billion by 2030. Our TAM forecast for HBM in 2030 would be bigger than the size of the entire DRAM industry, including HBM, in calendar 2024.

(日本語訳)2028年には、HBMの総市場規模(TAM)が2024年の160億ドル規模から4倍に拡大し、2030年には1,000億ドルを超えると予想しています。この2030年のHBM市場規模は、2024年時点のDRAM業界全体(HBMを含む)の規模を上回る見込みです。

(原文)This HBM growth will be transformational for Micron, and we are excited about our industry leadership in this important product category.

(日本語訳)HBM市場のこの成長は、Micronにとって画期的な変化をもたらすものであり、この重要な製品分野で業界をリードできることに非常に期待しています。

ここでの重要なキーワードは「Transformational(画期的な変化)」であり、このテーマは本メモ全体を通じて繰り返し登場します。

(出所:マイクロン・テクノロジーの2025年度第1四半期決算資料

この変革は、マイクロン・テクノロジーのデータセンターマーケットセグメントを通じて最もよく表れています。このセグメントでは、2025年度に前年比400%以上の収益増を達成しました。収益の増加はDRAMやHBMだけでなく、データセンター向けSSDの出荷が過去最高を記録したことにも支えられています。

こうした状況の中、同社は今四半期(2025年第2四半期)の売上を79億ドルと予測しています。これは前期比で約9%の減少ですが、前年比では約67%の増加にあたります。

(出所:マイクロン・テクノロジーの2025年度第1四半期決算資料

とはいえ、この見通しは市場の期待を裏切り、投資家にとっても満足できる内容ではありませんでした。その結果、同社の株価は時間外取引で約17%下落する事態となりました。

(出所:Yahoo Finance)

この結果、同社の株価は52週高値から約43%下落し、2021年初頭、つまり4年前とほぼ同じ水準に戻っています。これは厳しい状況です。

では、何が起きているのでしょうか?同社のHBM収益は新たに加わったものであり、従来の製品からの収益をさらに押し上げるはずでした。さらに、メモリ業界全体はこの1年以上、回復基調にありました。実際、SKハイニックス(000660.KS)やサムスン電子(005930.KS)では過去6四半期連続で、マイクロン・テクノロジーでも過去5四半期連続で、DRAMとNANDの平均販売価格(ASP)が上昇してきました。この回復がここにきて逆転してしまったのでしょうか?詳しく掘り下げてみましょう。

まず、決算説明会で、マイクロン・テクノロジーはガイダンスを下方修正した主な理由として、特定の在庫が過剰であることと、レガシー市場における中国からの競争という2つの要因を挙げました。それぞれについて順に見ていきましょう。

マイクロン・テクノロジー(MU)の在庫レベルに関して

全体的な視点で見ると、マイクロン・テクノロジー(MU)が指摘しているのは、サムスン電子が「デカップリング(分離)」、SUMCOが「二極化」と表現した現象に関連していると考えられます。この現象については、両社が数カ月前の2024年第3四半期決算発表で言及しています。

基本的な考え方は単純です。最先端製品の需要は好調である一方、旧世代製品の需要は低迷しており、景気後退前の勢いを取り戻せていません。マイクロン・テクノロジーのCEOであるSanjay Mehrotra氏も、この点についてスピーチの中で言及しました。

(原文)We had previously shared our expectation that customer inventory reductions in the consumer-oriented segments and seasonality would impact fiscal Q2 bit shipments. We are now seeing a more pronounced impact of customer inventory reductions. As a result, our fiscal Q2 bit shipment outlook is weaker than we previously expected.

(日本語訳)これまで、消費者向けセグメントにおける顧客の在庫削減や季節的な要因が、2025年度第2四半期のビット出荷に影響を与えると予想していることをお伝えしてきました。しかし、現在では、顧客の在庫削減の影響が当初の見込みよりも顕著であることが分かっています。その結果、第2四半期のビット出荷見通しは以前の予測よりも弱いものとなっています。

これらの在庫削減がいつまで続くのかについて、彼は来春には状況が改善し、2025年後半に向けてより力強い成長の道が開けるだろうと楽観的な見解を示しました。

(原文)We expect this adjustment period to be relatively brief and anticipate customer inventories reaching healthier levels by spring, enabling stronger bit shipments in the second half of fiscal and calendar 2025.

(日本語訳)この調整期間は比較的短期間で終わると予想しており、春までには顧客在庫が健全な水準に達すると見込んでいます。その結果、2025年度および暦年後半にはビット出荷が力強く回復すると期待しています。

ここでの状況をより具体的に理解するには、メモリの主要な従来型エンドマーケットであるPCとスマートフォンの2つのセグメントに注目する必要があります。PC市場に関しては、年初に期待されていた前年比での出荷台数の増加は、今や完全に消え去ってしまいました。

(原文)Turning to the PC. The PC refresh cycle is unfolding more gradually, and we expect PC unit volume growth to be flattish in calendar 2024, slightly below prior expectations.

(日本語訳)PC市場に目を向けると、リフレッシュサイクルは緩やかに進行しており、2024年のPC出荷台数はほぼ横ばいになると見込まれています。この見通しは、以前の予想をわずかに下回るものです。

今後を見据えると、マイクロン・テクノロジーは2025年に状況が改善すると予想していますが、その時期はやはり後半になると見ています。

(原文)We expect PC market units to grow in the mid-single-digit percentage range in calendar 2025, with growth weighted toward the second half of the calendar year.

(日本語訳)2025年のPC市場の出荷台数は、前年比で約5%前後の成長を見込んでおり、その成長の多くは暦年後半に集中すると予想しています。

スマートフォン市場の状況は、PC市場に比べるとやや良いと言えます。

(原文)Turning to mobile. Smartphone unit volumes in calendar 2024 remain on track to grow in the mid-single-digit percentage range, and we expect low single-digit percentage growth in 2025, both consistent with our prior expectations.

(日本語訳)スマートフォン市場については、2024年の出荷台数が前年比で数パーセント台半ばの成長を見込んでおり、2025年も数パーセント台前半の成長になると予想しています。これらの見通しは、これまでの予測と一致しています。

つまり、マイクロン・テクノロジーへの影響を及ぼしている在庫調整の主な原因はPCセグメントにあるようです。このことから、来月予定されているLenovo、デル・テクノロジーズ(DELL)、ASUS、Acerなどの2024年第4四半期決算発表でも、同様の傾向が示されることが予想されます。

次章では、マイクロン・テクノロジーがガイダンスを下方修正したもう1つの理由であるレガシー市場における中国からの競争に関して詳しく解説していきます。

※続きは「【半導体】マイクロン・テクノロジー(MU)の株価下落理由とは?レガシー市場における中国からの競争激化が原因?」をご覧ください。

その他のマイクロン・テクノロジー(MU)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、マイクロン・テクノロジーのページにてご覧いただければと思います。

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加えて、マイクロン・テクノロジーを含む半導体メモリメーカー​の2024年第3四半期の動向、並びに、競合のサムスン電子の決算に関する分析を下記のレポートにおいて詳しく解説しております。

同社への理解を一層深める上で、インベストリンゴのプラットフォーム上より、是非、併せてご覧いただければと思います。

半導体メモリメーカー​の動向

サムスン電子の決算分析


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