【半導体】マイクロン・テクノロジー(MU)の強みはHBM?最新の2025年第2四半期決算分析を通じて将来性に迫る!

- 本稿では、注目の米国半導体関連銘柄である「マイクロン・テクノロジー(MU)の強みとは?」という疑問に答えるべく、最新の2025年第2四半期決算の詳細な分析を通じて、同社の将来性を詳しく解説していきます。
- 同社は2025年第2四半期決算で売上高81億ドルを計上し、HBMの売上が好調だった一方で、NANDの価格下落により売上総利益率が低下しました。
- HBM事業は計画を上回る成長を続けており、2025年以降もTAMの拡大が見込まれる中で、同社の売上も大幅な増加が期待されています。
- 一方で、NAND事業は供給過剰や中国勢との競争により再び逆風に直面しており、同社は設備投資の見直しやノード移行の抑制によって対応を進めています。
マイクロン・テクノロジー(MU)の最新の2025年第2四半期決算発表に関して
マイクロン・テクノロジー(MU)は3月20日発表の最新の2025年第2四半期決算において、売上高が81億ドルであると発表しました。これは前四半期比で8%の減少となりましたが、前年同期比では38%の増加となり、ガイダンスの上限に達する結果となりました。売上総利益率は37.9%で、ガイダンスで示されていた中央値の38.5%をわずかに下回る水準でした。
今後の見通しとして、同社は当四半期の売上高を88億ドルと予測しており、これは前四半期比で8.6%の増加となる見込みです。ただし、売上総利益率については、36.5%へと大きく低下する見通しです。この利益率の低下については、事前に用意された説明の中で簡単に触れられていました。
「第3四半期(会計年度)の売上総利益率は前四半期比で低下すると予測しています。これは、コンシューマー向け製品の出荷量が増加する影響を含んでいます。さらに、NANDの生産能力の未活用が引き続き売上総利益率に重くのしかかっています。」
今回の決算説明会ではHBM(高帯域幅メモリ)に関する多くの好材料がありましたが、市場はそれよりも売上総利益率の低下に注目し、金曜日には株価が8%以上下落しました。その結果、年初来の上昇率は12.5%にまで縮小しました。
(出所:Yahoo Finance)
では、マイクロンのHBMロードマップは現在どうなっているのでしょうか?そして、NAND事業では一体何が起きているのでしょうか?それでは詳しく見ていきましょう!
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マイクロン・テクノロジー(MU)の売上総利益率
このテーマは、マイクロン・テクノロジー(MU)の質疑応答セッションにおいて特に大きな注目を集めました。まず、事前に用意された説明の中で、前四半期の売上総利益率低下について、次のような説明がありました。
「2024年度第2四半期の連結売上総利益率は37.9%で、前四半期比で160ベーシスポイントの低下となりました。主な要因は、特にNANDにおけるコンシューマー向け市場セグメントでの価格設定や、前述のとおりNAND製品の構成がコンシューマー向けへとシフトしたことによるものです。一方で、DRAMポートフォリオにおける高付加価値製品への構成比率の継続的なシフトが、これらの要因の一部を相殺しました。」
先ほども述べたとおり、同社は今四半期の見通しでさらに大きな売上総利益率の低下が予想される理由として、同じ2つの要因を挙げています。同社はそれを包み隠すことなく率直に伝えており、NAND事業が再び下り坂にあることを認めています。そして、この件については後ほど詳しく触れます。
マイクロン・テクノロジー(MU)のHBMロードマップ
HBMに関しては、出荷面においてマイクロン・テクノロジー(MU)は計画以上の進捗を見せています。
「2024年度第2四半期において、データセンター向けDRAMの売上高は過去最高を記録しました。高帯域幅メモリ(HBM)の売上高は前四半期比で50%以上増加し、四半期売上として10億ドルを超える新たなマイルストーンに到達しました。HBMの出荷量は当初の計画を上回っており、現在進行中の増産体制が順調に進んでいることを示しています。」
この前四半期にHBMの売上高が倍増したことに続き、今四半期はさらに50%の増加となりました。
「高帯域幅メモリ(HBM)の出荷は計画を上回り、HBMの売上高は前四半期比で2倍以上の成長を達成しました。」
同社はこの機会を利用して、2025年のHBMの対応可能な全体の市場規模(TAM)の見通しを更新しました。今年の時点で350億ドル超へと引き上げており、これは前四半期の300億ドル、さらにその前の四半期の250億ドルからの上方修正となります。
💡2025年第1四半期決算時点
「HBM市場のTAMの見積もりを引き上げ、2025年には300億ドルを超えると予想しています。」
💡2025年第2四半期決算時点
「HBMに対する強い需要を受けて、2025年のHBMのTAMの見積もりを再び引き上げ、350億ドル超になると見込んでいます。」
念のため申し添えておくと、2025年分のHBMはすでにすべて完売しており、この点については事前に用意された説明の中でも再度強調されていました。
💡2025年第1四半期決算時点
「これまでにもお伝えしているとおり、当社のHBMは2025年通年分まで完売しており、この期間の価格もすでに確定しています。」
💡2025年第2四半期決算時点
「前回も申し上げたように、マイクロンの2025年のHBM供給分はすでにすべて完売しております。」
同社がHBM市場におけるシェアについて掲げている目標を、皆さまもご記憶されているかもしれません。
「2025年暦年の第4四半期には、年間換算ベースでHBM市場におけるシェアが、当社のDRAM全体の供給シェアと同程度に達する見込みであり、計画通り順調に進んでいます。」
この件について簡単に試算してみましょう。同社のDRAM市場シェアは通常20〜25%の間にありますが、ここでは22.5%と仮定します。これに基づくと、2025年第4四半期までにHBMの年間換算売上高は78億ドルに達する計算になります。これを80億ドルと見なすと、2025年末時点の四半期ベースの売上高は20億ドルとなり、現在の10億ドルから倍増することになります。
これをわかりやすく言い換えると、同社のHBM売上は2024年に数億ドルだった水準から、2026年には80億ドルにまで拡大する見通しです。これは非常に印象的な成長ですが、さらに先を見据えた予測も可能です。以下は、2025年度第1四半期の決算説明会で同社が述べた内容です。
「2028年には、HBMのTAMが2024年の160億ドル規模から4倍に拡大すると予想しており、2030年までには1,000億ドルを超える見込みです。」
つまり、2028年の市場規模は640億ドル、2030年には1,000億ドルになるということになります。ここに同社の市場シェア22.5%を当てはめると、2028年には144億ドル、2030年には225億ドルの売上となります。これを年ごとにまとめると、以下のようになります。
✅ 2025年:60億ドル
✅ 2026年:80億ドル
✅ 2028年:144億ドル
✅ 2030年:225億ドル
※なお、2025年の数値は、現在の四半期売上が10億ドルであること、そして同社が2025年第4四半期までに四半期売上を20億ドルにするという目標を掲げていることをもとにした筆者の概算です。参考までに申し上げると、直近の同社のDRAM全体の売上(HBMを含む)は、同社の2025年度第2四半期においてわずか61億ドルでした。
これらの数字は非常に驚異的ですが、鵜呑みにしすぎるべきではないとも感じています。というのも、TAMの予測というものは、基本的に楽観的になりがちであり、特に長期的な見通しほど信頼性は低くなる傾向があるからです。とはいえ、今後5年間にわたってHBM市場のTAMがどう推移していくのかを注視することは非常に興味深いと思います。
今後を見据えると、2026年向けの契約に関する議論もすでに進行中であり、これらの多くは価格と数量があらかじめ決められた形になると強く予想しています。
「当社は2026年に向けたHBMの供給に対して非常に強い需要を確認しており、2026年通年のHBM需要に関する契約について、現在お客様と協議を進めております。」
マイクロン・テクノロジー(MU)のNANDの現状はどうなっているのか?
売上総利益率に関する懸念を除けば、NAND部門の現状がマイクロン・テクノロジー(MU)の最新の決算報告における最大のマイナス材料だったと言えるかもしれません。NANDの売上は19億ドルで、前年同期比では18%増加しましたが、前四半期比では17%減少しており、これで2四半期連続の減収となりました。
(日本語訳)NAND(2025年度第2四半期)
・売上高は19億ドルで、全体の23%を占めました
・前年同期比で18%増加しました
・前四半期比では17%減少しました
・ビット出荷量は前四半期比でわずかに増加しました
・平均販売価格(ASP)は前四半期比で10%台後半の下落となりました
(出所:マイクロン・テクノロジーの2025年度第2四半期決算資料)
さらに、平均販売価格(ASP)の下落率が「10%台後半」とかなり急激で、前四半期の3%の下落と比べても大きな差がありました。
マイクロン・テクノロジーの四半期毎のNAND売上高(単位:10億ドル)
(出所:筆者作成)
このNANDに関して、CEOのサンジャイ・メロートラ氏は事前に用意された説明の中で次のように述べています。
「これまでにもお話ししてきたとおり、NANDの技術ノード移行は、全体のビット出力を大幅に増加させる効果があります。NAND業界において需給バランスを持続的に維持するためには、ノード移行の間隔を長く取ることに加え、業界全体での設備投資(CapEx)やウェハー生産能力の継続的な削減が必要です。また、NAND業界におけるウェハー生産能力の稼働率が低下していることは、短期的なNAND市場の需給環境の改善に寄与すると考えています。」
「NANDにおいては、現在も引き続き工場の稼働率が十分でなく、ウェハーの生産量はこれまでの水準と比べて10%台半ばの割合で減少しています。当社は、現在未稼働となっているNAND製造装置の一部を再利用し、資本効率の高い形で最先端ノードへの転換を進めていく計画です。この戦略により、2025年度末時点のNANDウェハー生産能力は、2024年度末と比較して構造的に10%以上削減される見込みです。今後も、需要の伸びに応じて、新技術ノードの立ち上げペースや工場の生産能力・稼働率、設備投資額の水準などを含め、NANDの供給を慎重に管理してまいります。」
ここで行間を読むのはそれほど難しくありません。NANDは再び下落局面に向かっているということです。6四半期連続で増収を記録した後、NANDの売上は直近で2四半期連続で減少しています。これを受けて、同社は再び生産を削減せざるを得ない状況にありますが、今回はさらに踏み込んだ対応として、次世代技術ノードの立ち上げを遅らせるという決断を下しています。
なぜこのようなことが起きているのでしょうか?その背景には、いくつかの要因が組み合わさっていると考えられます。
✅ コンシューマー向け最終市場での需要低迷
✅ 過去2年間にわたり能力関連の設備投資(CapEx)を削減してきたにもかかわらず、依然として残る供給過剰
✅ 中国、特に長江メモリ(YMTC)による競争の激化
この3つの要因のうち、どれが最も大きいかを見極めるのは難しいですが、個人的には中国からの競争が現実味を帯びてきていると感じています。そして、ここに最大の問題があると思われます。マイクロン・テクノロジーは、より多くのNANDビット(層数の増加)を市場に投入する時期を遅らせるため、技術ノードの移行ペースを落とす戦略を取っていますが、こうした戦略に中国勢が追随する可能性は低いでしょう。彼らの目的は市場シェアの獲得であり、層数の多い製品への移行を加速すればするほど、その目標に近づくことができます。
要するに、DRAM市場は、レガシー製品とHBMによって牽引される最先端製品という2つのセグメントに分かれつつある一方で、NANDは依然として1つのセグメントで構成されており、コモディティ化の性質を持ちながら、中国からの競争が急速に拡大している状況です。今後数四半期でマイクロンのNAND売上がどこまで落ち込むのかは誰にも分かりません。直近の下落局面では8億8,800万ドルまで落ち込んだ実績があるため、この数字は1つの目安として覚えておく価値があるかもしれません。
マイクロン・テクノロジー(MU)の最新決算におけるその他の重要なポイント
設備投資(CapEx)
「2024年度第3四半期には、設備投資額が30億ドル超になると予測しています。また、2025年度の設備投資見通しはおよそ140億ドルのままとなっています。この2025年度の設備投資の大部分は、HBMの対応に加え、施設整備、建設、後工程製造、研究開発への投資を支えるためのものです。」
参考までに申し上げると、マイクロンは2024年度には設備投資としてわずか81億ドルしか投じておらず、2025年度の投資額は大幅な増加となる見込みです。
パソコン(PC)
「2025年暦年のPC市場については、出荷台数ベースで前年比1ケタ台半ばの成長を見込んでおり、成長の多くは2025年後半に集中すると予想しています。」
スマートフォン
「モバイル分野については、2025年暦年のスマートフォン出荷台数の成長率は、前年比1ケタ台前半の水準にとどまると見込んでいます。」
自動車分野
「当社の組込み事業部門(EBU)の売上の中で最大の割合を占める自動車分野においては、AIを活用した車載インフォテインメントシステムの高度化や運転支援機能の進化に伴い、1台あたりのメモリおよびストレージの搭載量が引き続き増加しています。最新のロボタクシー・プラットフォームには、200GBを超えるDRAMが搭載されており、これは一般的な自動車に搭載されるDRAMの20〜30倍に相当します。」
市場見通し
「2025年暦年のビットベースでの需要成長率については、DRAMが10%台半ばから後半、NANDが10%台前半になると予測しています。」
マイクロン・テクノロジー(MU)に対する結論
マイクロン・テクノロジー(MU)自身の言葉を借りれば、同社は現在、AIによってもたらされる「変革的な成長(transformative growth)」の真っただ中にあります。
「マイクロン・テクノロジーは、データセンターからエッジデバイスに至るまで、AIによってもたらされる変革的な成長を活かすうえで、他社にはない独自の立ち位置にあります。そして現在、2025年度に過去最高の売上と大幅な収益性の改善を達成する見通しで順調に進んでいます。」
短期から中期にかけて、同社にとって再び逆風となっているのが、NANDの市況悪化です。直近の四半期では、この影響により同社全体の売上高が前四半期比で減少しました。ただし、現在の四半期ではHBM事業が非常に好調であり、この成長がNANDの売上減少を打ち消す形となっています。そして、この相殺効果は2025年を通じてさらに強まっていく見通しです。
長期的に見れば、同社の事業におけるNANDの役割は今後ますます小さくなっていくのは明らかです。実際のところ、それは良い方向だと言えるでしょう。大きな変化がない限り、NANDは基本的にコモディティとしての位置づけにとどまるからです。一方、DRAM、とりわけ最先端のDRAMやHBMについては、今後はよりカスタム性の高い事業領域へと移行していくと見られます。これにより、顧客との連携はより緊密になり、価格を含む長期契約へとつながっていくでしょう。
最後にひとつ付け加えると、将来をさらに見据えた場合、たとえば2027年頃には、特にサムスン電子(005930.KS)がHBM事業を本格化させた場合、HBM市場にも調整局面が訪れる可能性が出てくるかもしれません。現時点ではそう断言するには時期尚早ですが、そうした可能性があるということを認識しておくのに早すぎるということはありません。引き続き、マイクロン・テクノロジーの今後の動向に注目していきましょう!
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アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング
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