④ Part 3:クラウドフレア / NET:エッジ・コンピート分野のアカマイ・テクノロジーズ(AKAM)との競合&強み(優位性)分析

- アカマイ・テクノロジーズ(AKAM)はクラウドフレア(NET)やファストリー(FSLY)に対して、エッジ・コンピューティングの適応が遅れているが、エッジとクラウドの両方でサービスを提供している。
- クラウドフレアのWorkers AIサービスは、開発者にオープンソースの生成AIモデルへのアクセスを提供しているが、アカマイ・テクノロジーズはまだ同等のサービスを提供していない。
- アカマイ・テクノロジーズは、Linodeの買収により、クラウドとエッジの統合プラットフォームを提供し、伝統的な開発環境での強みを持つが、開発者エクスペリエンスではクラウドフレアに劣っている。
※「③ Part 3:クラウドフレア / NET:エッジ・コンピート分野のファストリー(FSLY)との競合&強み(優位性)分析」の続き
クラウドフレア(NET)とアカマイ・テクノロジーズ(AKAM)の比較
アカマイ・テクノロジーズ(AKAM)は 2000 年代におけるCDN(Contents Delivery Network:コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)のパイオニアだが、エッジ・コンピュートへの適応は遅れており、クラウドフレア(NET)とファストリー(FSLY)に数年遅れをとっている。
アカマイ・テクノロジーズはV8アイソレート路線を選択し、クラウドフレアのスピードとコスト効率の高いランタイムを提供する道を模倣している。
同社はEdgeWorkersプラットフォームでエッジでのサーバーレス・コンピューティングを提供し、集中型クラウド環境でもサーバーレス・コンピューティングを提供している。
これは、サーバーレス・コンピュート分野でクラウドフレアやファストリーのような他のCDNと競合するCDNプレーヤーとして、素晴らしい差別化の可能性であると言える。
同社はインフラの一部をより大規模なクラウドのようなPoP(Point of Presence:ポイント・オブ・プレゼンス)に変換しているため、Kubernetesオーケストレーションでコンテナ化されたワークロードを提供しており、全体的なサーバーレス・コンピュート(サーバーレス・エッジとサーバーレス・クラウド)の観点からクラウドフレアやファストリーよりも開発者にはるかに親しみやすくなっており、AWS(AWS + Lambda)と同列に競合している。
同社のPoPをクラウドのような環境に変えることを可能にした重要な進展は、2022年初頭にLinodeを買収したことである。
Linodeは、パブリッククラウドの前身であるVPS(仮想専用サーバー)ベンダーとして誕生した。
Linodeを買収したことで、同社は中央集権型のクラウド機能を備え、エッジでクラウドフレアをエミュレートすることで、分散型のエッジ機能も手にいれ、開発者にサービスを提供するための優れた総合プラットフォームとなっている。
同社が提供するクラウドでは、専用または共有のCPU、GPUへのアクセス(クラウドフレアとは異なるエヌビディアのGPUだが、RAM、クロック速度、CUDA/Tensorコアは同一で、メモリ帯域幅も同様)、より高いメモリ・インスタンスも提供している。
前述の通り、クラウドフレアはWorkers AIサービスでエッジでのGPUアクセスを提供しており、テキスト生成用のLLama2-7bや自動音声認識用のOpenAI Whisperなど、パラメータ数は少ないものの、人気の高いオープンソースの生成AIモデルに開発者が簡単にアクセスできるようになっている。
しかしながら、アカマイ・テクノロジーズは、開発者がオープンソースの生成AIモデルを簡単に統合できるWorkers AIに相当するものをまだ提供していない。
加えて、ファストリーもAIの推論やその他のためにGPUコンピューティングをまだ提供していないことからも、生成AIは、ファストリーにとっても後れを取っている分野である。
さらに、アカマイ・テクノロジーズのクラウドサービスに焦点を当てるのは、少し脱線かもしれないが、クラウド上にアプリケーション・スタックを持ちながら、アプリケーションの特定の側面でエッジ・コンピューティングを活用したいと考えている企業開発者にとっては、魅力的なサービスである。
また、EdgeWorkersプラットフォームではストレージを提供していないが、クラウドでは提供しており、最も近いクラウドのようなPoPがエッジPoPから遠すぎることはないことから、我々はアプリケーションとデータベース間の書き込み/読み込みはほとんどレイテンシーを生じさせないだろうと見ている。
ただし、アカマイ・テクノロジーズが他のベンダーに比べ、開発者エクスペリエンスにおいて劣っていることは驚くことではない。
同社はSDN(Software-defined networking:ソフトウェア定義ネットワーク)時代より前の2000年代に急速に成長し、そのためより負荷の高いソフトウェア/ハードウェアの設定を必要とする何千ものPoPを蓄積した。
この技術的負債は必然的に、レガシーソフトウェアの他のユーザ体験と同じように、より劣ったエンドユーザエクスペリエンスになり、最終的にこれが同社がエンドツーエンドの開発者エクスペリエンスで高得点を得られない理由であると見ている。
クラウドフレアに対するアカマイ・テクノロジーズの強み
・コンテナやKubernetes等、より伝統的な開発環境を開発者に提供することで、より親和性が高い。
・1つのベンダーでクラウドとエッジの組み合わせ(Linodeスタックのため同じ環境になる可能性は低いが)は、例えばクラウドではAWS、エッジではWorkersよりも利点がある。
・GPUアクセスに関しては、クラウドフレアに匹敵するように見える。
・V8アイソレートで関数を実行するランタイム部門では、クラウドフレアに匹敵する。
クラウドフレアに対するアカマイ・テクノロジーズの弱み
・開発者のエクスペリエンスが低い。
・ネイティブなフロントエンド開発ができない。
・オープンソースの生成AIモデルへのシームレスなアクセスがまだ提供されていない。
次のレポートでは、クラウドフレア(NET)とバーセル(Vercel)との比較について深堀していきたい。
※続きは「⑤ Part 3:クラウドフレア / NET:エッジ・コンピート分野のバーセル(Vercel)との競合&強み(優位性)分析」をご覧ください。