エヌビディア(NVDA)の株価は10年後も堅調?最新の2025年第3四半期決算分析を通じて今後の株価見通しに迫る!
ダグラス・ オローリン- 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるエヌビディア(NVDA)の11月20日に発表された最新の2025年第3四半期(暦年:2024年度第3四半期)決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しを詳しく解説していきます。
- 最新の決算では、売上高が市場予想を約20億ドル上回ったものの、次世代GPU「Blackwell」移行期の影響でガイダンスは控えめとなり、市場の期待をやや下回る評価を受けています。
- 決算内容は、同社の成長と成熟を示すものであり、特に売上高90%以上の成長を維持しつつ、安定した業績が注目されている一方、粗利益率やネットワーキング部門の収益動向が課題として挙げられています。
- 次世代GPU「Blackwell」の需要が供給を上回る中、その成功がエヌビディアの将来の収益成長と株価に重要な影響を与えると考えられており、第4四半期以降の展開が注目されています。
エヌビディア(NVDA)の最新の2025年第3四半期決算発表に関して
エヌビディア(NVDA)は、11月20日に最新の2025年第3四半期(暦年:2024年第3四半期)決算を発表しましたが、市場の期待値をやや下回る内容でした。
2025年度第3四半期決算
・EPS(特別項目除く):0.81ドル(FactSet予想:0.75ドル)
・売上高:350.8億ドル(FactSet予想:331.7億ドル / 約20億ドル上回る)
2025年度第4四半期ガイダンス
・売上高:375億ドル ± 2%(FactSet予想:370.9億ドル / 約1%の上振れ)
・GAAP・Non-GAAPの粗利益率:それぞれ73.0%と73.5% ±50bps(やや控えめ)
今回のガイダンスは、これまでの大幅な上振れに比べて今年最も控えめな内容です。
売上高375億ドルという予想は、市場予測をわずか1%上回る水準にとどまり、「期待外れ」と見られるのも無理はありません。
しかし、これは次世代チップ「Blackwell」と「Hopper」への移行期に差し掛かっている状況を考えれば自然な流れといえます。
(出所:Bloomberg)
念のために、Hopperとは、エヌビディアが2022年に発表したデータセンター向けのAIアクセラレーター用マイクロアーキテクチャです。
このアーキテクチャは、AIトレーニングや推論、高性能計算(HPC)向けに設計されており、HBM3メモリをサポートし、最大80GBのメモリ容量と3TB/sのメモリ帯域幅を提供します。
一方で、Blackwellは、Hopperの後継となる次世代のGPU(コンピュータやデバイス内で画像処理や並列演算を効率的に実行するための専用プロセッサ)アーキテクチャで、2024年に発表されました。
このアーキテクチャは、2080億個のトランジスタを搭載し、TSMC(TSM)の4NPプロセスで製造されています。
Blackwellは、2つのダイを1つのパッケージに統合するマルチチップモジュール(MCM)設計を採用し、10TB/秒のチップ間相互接続を実現しています。
また、第2世代のTransformer Engineを搭載し、FP4精度のAI計算を可能にすることで、性能とモデルサイズを2倍に向上させています。
エヌビディア(NVDA)を取り巻く市場の変化と規模の影響
今回の小幅な上振れは、市場がついにエヌビディア(NVDA)の実力を織り込む段階に入ったことを示していると考えています。
世界最大規模の企業ともなれば、20%の売上高上振れが頻繁に起きることはもはや非現実的です。
企業が大きくなるほど、業績の変動幅が小さくなり、株価の上下動にもより多くの資金が必要になるため、20%以上の急激な変動は徐々に落ち着いていくものです。
この状況は、かつてアップル(AAPL)が「iPhone」を発売した際にも見られました。
当時は大幅な売上高上振れが記録されていましたが、驚きの規模は徐々に小さくなっていきました。
(出所:Bloomberg)
これは、企業規模の拡大に伴い、供給網の情報が市場に行き渡り、予測が精緻化されるためです。
エヌビディア(NVDA)の今回の決算の評価
今回の決算は派手さに欠けるかもしれませんが、それはむしろ好ましい兆候です。
前年比90%という驚異的な成長率を維持しつつ、安定した実行力を示しています。
エヌビディア(NVDA)のの「サプライズの時代」は過ぎ去り、市場もそれを織り込むようになっています。
規模が拡大するにつれ、驚きやボラティリティが減少していくのは自然なことです。
このような「予想通り」の結果は、企業が成長し成熟していく過程で歓迎すべき変化といえるでしょう。
エヌビディア(NVDA)の粗利益率について
皮肉なことに、エヌビディア(NVDA)の前回の決算で心配していたことが、今回の決算で完全に現実になりました。
ガイダンスも少し控えめで、私が以前から懸念していたことがほぼ全て表面化した形です。
それでも、株価推移を見てみると市場は、この状況を受け入れているようです。
下記は最新の決算説明会での遣り取りの一部です。
(原文)As Blackwell ramps, we expect gross margins to moderate to the low 70s. When fully ramped, we expect Blackwell margins to be in the mid-70s.
(日本語訳)Blackwellの生産が拡大する過程で、粗利益率は70%前半に落ち着くと見込まれます。生産体制が完全に整えば、粗利益率は75%前後に達すると予想しています。
(原文)We will start growing into our gross margins but we do believe those will be in the low 70s in that first program. So you're correct, as you look at the quarters following after that, we will start increasing our gross margins, and we hope to get to the mid-70s quite quickly as part of that round.
(日本語訳)粗利益率は徐々に改善していくと見込んでいますが、最初のプログラムでは70%前半にとどまると考えています。その後の四半期では粗利益率がさらに上昇し、このプロセスの中で速やかに75%前後に到達することを目指しています。
(原文)So first, starting on your first question there, Stacy, regarding our gross margin and define low. Low, of course, is below the mids and let's say, we might be at 71%, maybe about 72%, 72.5%. We're going to be in that range. We could be higher than that as well. We're just going to have to see how it comes through
(日本語訳)まず最初のご質問についてお答えします、Stacy。「低い」とは具体的にどういう水準かという点ですが、これは中央値より下を指します。例えば、粗利益率は71%や72%、場合によっては72.5%あたりになると予想しています。この範囲に収まる可能性が高いですが、それ以上になる可能性もあります。実際の結果がどうなるかは見てみないとわかりませんね。
ただし、実際のところ、それが本当に重要なのか疑問です。
粗利益率が議論されるのがピークを過ぎた製品のものであれば、それは過去の話にすぎません。
一方、株価は常に未来を見据えて動きます。
本当に重要なのは「Blackwell」だけであり、エヌビディアの株価もBlackwellの進展を待っている状況です。
エヌビディア(NVDA)のBlackwellの進展
ただし、これがBlackwellにとって初めての四半期というわけではありません。
本格的な収益が反映されるのは次の四半期になるでしょう。
エヌビディア(NVDA)のは第4四半期のガイダンスを、これまでの数十億ドル規模の見通しから上方修正し、供給増加によりさらに大きな収益を見込んでいます。
(原文)While demand greatly exceed supply, we are on track to exceed our previous Blackwell revenue estimate of several billion dollars as our visibility into supply continues to increase.
(日本語訳)需要が供給を大幅に上回る中、供給の見通しが改善したことで、Blackwellの収益は従来の「数十億ドル規模」という予測を上回る見込みです。
これは、The Informationが再び取り上げている新型チップの過熱問題に関する噂と真っ向から矛盾しています。
この噂は数か月前に取り沙汰されたB200(最新アーキテクチャであるBlackwellを採用したGPU)のキャンセル問題を蒸し返したものですが、エヌビディアの供給増加という事実を見る限り、この噂は完全に的外れです。
次々と飛び交う噂に振り回されるのは難しいですが、多くは誤った情報であることが明らかです。
私たちは引き続きBlackwellの登場を待っています。
今回の移行はこれまで以上に重要であり、H100(Hopperアーキテクチャを採用したGPU)のセカンダリーマーケットでの価格が下落し始めていることも報じられています。
また、Hopperの収益は前四半期よりも弱含みで、多くが期待していた第3四半期から第4四半期への成長は見られず、収益は横ばいにとどまる見通しです。
(原文)Q4. But yes, is it possible for Hopper to grow between Q3 and Q4? It's possible but we'll just have to see.
(日本語訳)第4四半期についてですが、Hopperの収益が第3四半期から第4四半期に増加する可能性は確かにあります。ただし、それがどうなるかはこれからの結果次第です。
エヌビディア(NVDA)のHopperの影響は限定的か?
Hopperの弱さは粗利益率に多少影響するかもしれませんが、将来を見据えるなら注目すべきはやはりBlackwellです。
エヌビディア(NVDA)は直近で90%以上の売上成長を達成しており、株価は割安感があります(2025年予想利益ベースで約34倍程度)。
Blackwellの成功こそが、将来のEPS(1株当たり純利益)を実現可能なものにする鍵となります。
今回の決算内容はやや期待外れではあるものの、驚きのあるものではありませんでした。
(出所:Bloomberg)
Blackwellと比べれば、他の議論は重要性が薄れると考えています。
株価は依然として割安で、Blackwellの需要は供給を上回り、現在はその本格展開を待つ段階です。
供給体制が整うまで、収益予測が大きく変動することはないでしょう。
そうした意味では、今回の決算は平凡な結果といえるかもしれません。
エヌビディア(NVDA)のネットワーキングに関する疑問
今回の決算内容は概ね問題ないと思いますが、実際の注目点はネットワーキングに関する部分です。
特に、ネットワークのアタッチメント率がどうなっているのかが疑問です。
そして、データセンター収益におけるネットワーキング関連の割合が急激に低下している点です。
なぜネットワーキングが全体収益の約30%から15%へと急激に低下したのでしょうか?
ネットワーキング部門の収益は四半期ごとに減少している一方で、他の事業は成長を続けています。
このギャップの背景には何があるのでしょうか?
(出所:SemiAnalysis)
ネットワーキング部門の収益減少が他部門の成長と対照的であり、この変化が将来的にどのような影響を及ぼすのか、注意深く見守る必要があります。
(原文)Networking revenue increased 20% year-on-year. Areas of sequential revenue growth include InfiniBand and Ethernet switches, SmartNICs and BlueField DPUs. Though networking revenue was sequentially down, networking demand is strong and growing, and we anticipate sequential growth in Q4
(日本語訳)ネットワーキング収益は前年比で20%増加しました。四半期毎の成長が見られた分野としては、InfiniBand、Ethernetスイッチ、SmartNIC、BlueField DPUなどがあります。一方で、ネットワーキング収益は前四半期比では減少しましたが、需要は依然として堅調で拡大を続けています。そのため、第4四半期には収益の増加を見込んでいます。
以上の内容も踏まえつつ、今四半期、エヌビディアのネットワーキングの課題について私は多くの考えを巡らせました。
そして、ポイントは2つあり、特に2つ目が重要だと考えています。
次章では、エヌビディアの将来性を占う上で重要なその2つのポイントについて詳しく解説していきます。
※続きは「エヌビディア(NVDA)株価の今後の予想とは?最新の2025年第3四半期決算分析を通じて将来性に迫る!」をご覧いただければと思います。
加えて、もし、私が以前執筆したエヌビディアのテクノロジー上の強みに関する分析レポートに関心がございましたら、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、是非、下記のレポートをご覧いただければと思います。
その他のエヌビディア(NVDA)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、エヌビディアのページにアクセスしていただければと思います。
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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
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