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11 - 22 - 2024

エヌビディア(NVDA)の将来性は有望?最新の2025年第3四半期決算分析を通じて今後の株価見通しに迫る!

ダグラス・ オローリンダグラス・ オローリン
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるエヌビディア(NVDA)の11月20日に発表された最新の2025年第3四半期(暦年:2024年度第3四半期)決算分析を通じて、同社の将来性と今後の株価見通しを詳しく解説していきます。
  • エヌビディアのネットワーク収益が低下している主な原因は、中国向け出荷製品にネットワーク機器が含まれないことや、データセンターと電力供給のボトルネックによるものです。 
  • 現状は短期的な問題であり、データセンターや電力インフラの整備が進むことで供給と需要のバランスが改善し、収益は回復する見込みです。 
  • ファブリネットやコヒレントなどの関連企業の成長停滞も、データセンターのボトルネックが原因であり、業界全体の進展に影響を与えています。

※「エヌビディア(NVDA)の株価は10年後も堅調?最新の2025年第3四半期決算分析を通じて今後の株価見通しに迫る!」の続き

エヌビディア(NVDA)の中国におけるビジネスとネットワーク接続率の低下

今四半期、エヌビディア(NVDA)の中国とシンガポールにおける収益が米国に匹敵する収益規模となりました。

これがネットワーク接続率の低下の一因と考えられます。

理由として、中国に出荷されるH20やH100は、エヌビディア製のネットワーク機器を伴わないことが多い点が挙げられます。

(出所:筆者作成)

この影響は短期的には逆風となる可能性がありますが、問題はこれだけではありません。

本質的な課題は、電力供給の制約がエヌビディアの業績に影響を及ぼし始めている点にあります。

詳しく見ていきましょう。

エヌビディア(NVDA)を取り巻く電力とデータセンターのボトルネック

エヌビディア(NVDA)自身が述べているように、これは市場シェアの喪失ではなく、タイミングの問題と考えられます。

Ethernet(コンピュータネットワークの通信規格の一つ)へのシェア流出の可能性もありますが、これほど急激な変化は通常見られません。

また、エヌビディアが決算説明会で強調したSpectrum-X(エヌビディアが開発したAI向けの高速イーサネットネットワーキングプラットフォーム)も注目すべきポイントです。

仮に市場シェアの大幅な変動があったとしても、他分野で「急成長」が見られるはずですが、それも確認されていません。

実際のところ、問題はもっと単純です。

ネットワーキング機器は、クラスター購入プロセスの中で最後に手配されることが一般的です。

そして現在、データセンターがGPUの出荷を制限している状況です。

マイクロソフト(MSFT)も決算発表で供給の遅れについて触れており、この状況はエヌビディアの結果とも一致しています。

そのため、ネットワーキング収益は時間の経過とともに回復していくと考えられます。

Ethernetや非InfiniBand製品が脅威であることは事実ですが、「ネットワーキング収益が11%にとどまる」という現状が続くとは思えません。

そのため、これはデータセンターや電力供給のボトルネック(システム全体の性能や効率を制限する要因や部分)が反映された一時的な現象と見ています。

因みに、InfiniBandとは、高速かつ低遅延な通信を実現するために設計されたネットワークプロトコルおよびインターフェースの規格です。

主に高性能コンピューティング(HPC)やデータセンター、AIトレーニングクラスタ、ストレージネットワークなど、非常に高速なデータ転送を必要とする用途で使用されます。

一方で、Ethernetは、オフィスや家庭のLAN(ローカルエリアネットワーク)で一般的に使用される通信規格です。

広範囲に利用されており、汎用性が高いですが、InfiniBandに比べると遅延が高く、データ転送速度も劣る場合があります。

マイクロソフト(MSFT)が示した供給遅延

マイクロソフト(MSFT)は決算でAI関連の供給に遅れが生じていることを明らかにしました。

これを踏まえると、エヌビディア(NVDA)の決算結果もより明確に理解できます。

ネットワーキングの課題は、一時的な問題であり、最終的には解消されると考えています。

(原文)And so therefore, we ran into a set of constraints, which are everything because DCs don't get built overnight. So there is DCs. There is power. And so that's sort of been the short-term constraint. Even in Q2, for example, some of the demand issues we have -- or our ability to fulfill demand is because of, in fact, external third-party stuff that we leased moving out.

(日本語訳)その結果、さまざまな制約に直面することになりました。データセンター(DC)は一朝一夕で建設できるものではありません。データセンターそのものや電力供給が短期的なボトルネックとなっています。例えば、第2四半期には、需要に応えきれなかった理由の一つとして、外部の第三者からリースしていた設備が移転したことが挙げられます。

(原文)So that's the constraints we have. But in the long run, we do need effectively power, and we need DCs. And some of these things are more long lead. But I feel pretty good that going into the second half of even this fiscal year, that some of that supply/demand will match up.

(日本語訳)これが現在抱えている課題です。ただ、長期的には電力の確保やデータセンターの整備が不可欠です。これらの対応には時間を要するものもありますが、今年度後半には供給と需要のバランスが徐々に整ってくると期待しています

クラスター構築の計画におけるボトルネックが、データセンターにシフトしているように感じます。

通常、最初にデータセンター用のGPUを発注し、次にデータセンターの電力や容量を確保し、その後にデータセンター同士を接続するためのネットワーク機器を購入する流れになります。

この供給の歪みがエヌビディアの業績にも現れているようです。

以下のマイクロソフトの発言をぜひ注意深くご覧ください。

(原文)Maybe to answer both those questions, Mark, very directly, I wouldn't think about it component logic in my Q2 answer. The supply pushout, as Satya said, was third parties that are delivering later than we had expected, that get pushed mainly into the second half of the year and in general, Q3. So that's third parties where we have tended to buy supply inclusive of kits, so it's complete end-to-end third-party delivery.

(日本語訳)マークさん、ご質問に直接お答えしますと、第2四半期については、部品単位で考える必要はありません。サティアが述べたように、供給の遅れは主にサードパーティの納品が予定より遅れたことによるものです。この影響は主に今年後半、特に第3四半期に現れると考えています。私たちがサードパーティから調達しているのは、キットを含む包括的な供給であり、その納品プロセス全体がサードパーティに依存している状況です

ネットワーキングの進展を考えると、この状況は非常に理にかなっています。

正直なところ、半導体関連企業であるファブリネットFN)やコヒレントCOHR)、その他トランシーバー関連企業の業績が、AIの進展を考えると驚くほど低調に思えました。

特に、ファブリネットでの800G(ネットワークのデータ通信速度を指し、1秒間に800ギガビットのデータを転送できる通信能力)が四半期を通して横ばいだったことは、現場の実情と乖離しているように感じました。

しかし、データセンターの電力問題によるネットワークの遅れという文脈で考えると、この状況には納得がいきます。

実際、データセンターのインフラがネットワーキングの進展を妨げる主要なボトルネックとなっており、それがファブリネットでの800Gの成長が停滞した理由です。

(出所:ファブリネットの2025年度第1四半期決算資料

ファブリネットとコヒレントの最新の決算分析に関心がございましたら、インベストリンゴのプラットフォーム上より、下記のレポートをご覧いただければと思います。

ファブリネットFN

コヒレントCOHR

データセンターを半導体工場に例えるなら、GPUはリソグラフィ装置(半導体の製造工程で使用される装置で、シリコンウェハー上に微細な回路パターンを描画するための装置)に相当します。

まず最初にGPUを購入し、それを設置するスペースや必要な処理能力を決めます。

GPUは全体の支出の中で最も重要かつ大きな部分を占め、リードタイムも最長です。

現在、GPUを設置するスペースや、それを支えるネットワークがまだ整っていない段階にあると言えます。

この状況は今後の四半期で解消されていくはずですが、私としてはこの流れには筋が通っていると感じます。

確かにInfinibandは脅威を受けていますが、これほど急速な変化が起きているわけではありません。

また、エヌビディアが減速する一方で、他のネットワーク分野が急激に成長しているわけでもありません。

実際のところ、今回の業績を通じて、電力供給がボトルネックとして浮き彫りになったのだと思います。

今回のレポートは以上となります。

もし、私が以前執筆したエヌビディアのBlackwellやGB200といった製品の詳細、並びに、テクノロジー上の強みに関する分析レポートに関心がございましたら、インベストリンゴのプラットフォーム上にて、是非、下記のレポートをご覧いただければと思います。

その他のエヌビディア(NVDA)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、エヌビディアのページにアクセスしていただければと思います。

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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA

📍半導体&テクノロジー担当

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