中立パランティア・テクノロジーズパランティア・テクノロジーズ(PLTR)株価の今後の見通しとは?最新決算は好調も目標株価は27ドルで割高?

- 本稿では、2024年8月5日に発表された、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の最新の2024年度第2四半期決算と競合他社比較、さらに、テクノロジー面での同社の強み(競争優位性)を詳しく分析していきます。
- そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性に関する詳細な分析を解説していきます。
- 同社は、AIPブートキャンプにより成長率が回復し、企業向けにカスタマイズされたオントロジーを提供できる唯一の企業として市場では評価されています。
- 同社の2024年第2四半期決算では、売上高や純利益が予想を上回り、特に米国政府向け事業が再び活気を取り戻している点が注目されます。
- 同社のバリュエーションは、AIP導入後に投資家から高く評価されましたが、現在の株価水準を考慮し、同社へのレーティングを「中立」としています。
※「【コンヴェクィティ:2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!」の続き
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)に関して
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のAIPブートキャンプは、依然として同社の成長を加速させる主な要因となっています。1年前の2023年第2四半期には、同社の成長率は12.8%に減少していましたが、AIPの導入とブートキャンプの勢いが2023年中頃から増してからは、成長率は次のように回復しました。
2023年度第3四半期:+16.8%
2023年度第4四半期:+19.6%
2024年度第1四半期:+20.8%
2024年度第2四半期:+27.2%
私たちが長年主張してきたパランティア・テクノロジーズの強みは、企業向けにカスタマイズされたオントロジーを提供できる唯一の企業であるという点です。オントロジーは、データ資産の効果を最大化し、より良いビジネス判断を下すために不可欠です。AIPが導入されて以降、同社は、セキュリティ、データガバナンス、アクセス制御、プライバシーに最大限配慮しながら、企業の知識をフルに活用できるLLM(大規模言語モデル)を実装できる唯一のベンダーであると認識されるようになりました。これは、同社のオントロジーの優位性に裏打ちされています。
関連用語
AIP (Artificial Intelligence Platform):パランティア・テクノロジーズが提供するプラットフォームで、企業や政府機関がデータを活用してAIを通じた意思決定を行うためのツール。特にセキュリティとデータガバナンスに重点を置いている。
ブートキャンプ:AIPの導入や活用を支援するため、パランティア・テクノロジーズが提供する集中的なトレーニングプログラム。これにより、顧客はAIPの効果を最大限に引き出すことができる。
オントロジー:データの意味や関係性を整理・構造化するフレームワークで、パランティア・テクノロジーズはこれを通じて企業のデータを効率的に管理し、分析することで、より高度な意思決定を支援する。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の最新の2024年第2四半期決算における業績に関して
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、2024年8月5日に最新の2024年第2四半期決算を発表しており、その決算において、幾つかのポジティブ・サプライズを提供しました。
・売上高は6億7800万ドルで、ガイダンスの6億5100万ドルを4%上回りました。
・調整後純利益は2億5400万ドルで、ガイダンスの2億1100万ドルを4300万ドル上回りました。
・2024年会計年度の売上高ガイダンスも、当初の26億8300万ドルから2.3%上方修正され、27億4600万ドルとなりました。
長期投資家にとって特に注目すべきは、同社の米国政府向け事業が再び活気を取り戻している点です。これまで同社は戦争の勃発や地政学的緊張の高まりに対応する堅実な投資先と見られてきましたが、その見解がついに具体的な業績として現れ始めています。2024年第2四半期の米国政府向け売上高は、前年同期比で24%増、前四半期比でも8%増の2億7800万ドルに達しました。
パランティア・テクノロジーズは、唯一のソフトウェア主要請負業者としての地位をさらに強化しており、特に軍事AIの基盤としての役割がますます重要になっています。新しいOpen DAGIRイニシアチブによって、同社はMaven Smart System上で、さまざまな防衛技術企業やソフトウェア開発者がアプリケーションを構築できる「アプリストア」モデルを運営することができる立場になっています。
そして、この動きは、米国国防総省が同社を中心に競争力のあるイノベーションのエコシステムを構築しようとしていることを示しており、この戦略は双方にとってメリットがあるように見えます。
・国防総省はパランティア・テクノロジーズへの完全な依存を避けることができる
・パランティア・テクノロジーズは防衛エコシステム内での存在感をさらに強化することができる
Open DAGIRイニシアチブは、パランティア・テクノロジーズの軍事AI分野での役割を強化するだけでなく、政府部門での長期的な成長の可能性も広げます。地政学的な緊張が高まる中、同社が防衛技術分野での立場を強化することは、持続的な成長を促進し、市場での地位を一層確固たるものにするでしょう。
また、米国政府との関係が深まる中で、同社の強力な財務パフォーマンスは、将来的な成長と市場拡大に対してポジティブな見通しを示しています。そして、最近、防衛技術の受け入れが広がっていることも同社にとって追い風となっています。かつてはタブーとされていた防衛技術への投資に、シリコンバレーのベンチャーキャピタルが関心を持ち始めています。また、政治が右寄りにシフトしていることも含め、これらすべてが同社の活動を支えるエコシステムを形成する可能性を秘めていると見ています。
関連用語
Open DAGIRイニシアチブ:データのアクセシビリティや国際的なデータ共有を促進するための取り組み。研究機関や企業、政府機関がデータを共有・利用しやすくするための基準やガイドラインを提供することを目的としている。
Project Maven:ペンタゴン(米国国防総省)が推進する人工知能(AI)プロジェクトで、主にドローンや監視カメラの映像データを解析し、敵の活動を自動的に識別することを目的としている。このプロジェクトは、戦場での迅速な意思決定を支援するために、AI技術を活用して膨大な量のデータを効率的に処理し、分析結果を提供する。
Maven Smart System:ペンタゴンのProject Mavenの一環で、AIを活用して戦場データの解析や意思決定を支援するシステム。
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)のバリュエーションに関して
(出典:筆者作成)
2021年1月に初めて私達がパランティア・テクノロジーズ(PLTR)について注目した際には、多くの投資家は同社を単なるコンサルティング会社だと考えており、革新的で優れたソフトウェア企業だとは認識していませんでした。この誤解は長い間市場に浸透しており、そのため同社の株価は、クラウドフレア(NET)やスノーフレーク(SNOW)、クラウドストライク(CRWD)といった他の優良企業と肩を並べることができませんでした。しかし、2023年半ばに開始されたAIPとそのブートキャンプが転機となり、新規顧客を急速に獲得し、既存顧客との取引規模も拡大しました。
その結果、投資家たちはパランティア・テクノロジーズのバリュエーションを大幅に引き上げました。上記の図の通り、同社は成長と利益率のバランスが取れた優れた「Rule of X」を持っていますが、私たちのDCFモデルに基づくと、同社の1株当たりの本質的価値は27.29ドルとなっており、現在の株価は32ドル程度となっていることから、私達は現時点では同社へのレーティングを「中立」とし、大きな株価下落局面で買い増しをすることを検討するのが賢明だと考えています。
弊社のDCFモデルに基づくバリュエーションの詳細と株価予想は、下記リンク内のパランティア・テクノロジーズ(PLTR)のシートにおける「Intrinsic value per share(1株当たりの本質的価値)」をご覧ください。
また、パランティア・テクノロジーズに関するさらに詳しい分析は、下記のレポートをご覧ください。
上記テーブルにおける関連用語
※各用語の詳細な解説は、「【コンヴェクィティ:2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!」をご覧ください。
Rule of X (inc. NTM growth & LTM SBC):Rule of X(今後12カ月間の成長率と直近過去12カ月間のSBC含む)
LTM EV/ (FCF-SBC) :企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
Financials / Valuation / Price Chg / Vol Chg:財務 / バリュエーション / 株価変動 / ボラティリティ変動
Rule of X (inc SBC):Rule of X(SBC含む)
EV/(FCF-SBC):企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
EV/GP:企業価値 ÷ 直近過去12カ月間の粗利益
DCF Val. Discount:DCF法により算出されたバリュエーション対比でのディスカウント水準
Price Change:株価変動
Implied Vol:インプライド・ボラティリティ
Hist Vol:ヒストリカル・ボラティリティ
Implied Vol vs Hist Vol:インプライド・ボラティリティとヒストリカル・ボラティリティの差
・パランティア(PLTR)強気:LLM(大規模言語モデル)を含むテクノロジー上の競争優位性と今後の株価見通し・将来性(前編)
・パランティア・テクノロジーズ(PLTR)最新のAIPConの詳細と競争優位性(AIP・オントロジー・OSDK)を徹底分析
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さらに、その他のパランティア・テクノロジーズ(PLTR)はに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、パランティア・テクノロジーズのページにアクセスしていただければと思います。
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