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11 - 14 - 2024

【半導体】クアルコム(QCOM)の将来性は不透明?最新の2024年第4四半期決算は予想を上回る着地も株価は大幅下落!

ダグラス・ オローリンダグラス・ オローリン
  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるクアルコム(QCOM)の11月6日に発表された最新の2024年第4四半期決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • クアルコムは2024年度第4四半期決算で市場予想を上回る業績とガイダンスを報告したものの、アップルやサムスンの影響、インテル買収懸念などから株価が下落しています。 
  • 同社はADASやインフォテインメント分野で成長を続け、特に自動車関連売上が拡大し、IoTセグメントを超える可能性があります。
  •  中国市場での収益増に関する不安もある中、顧客の製品発売スケジュールに依存する需要で今後の成長が不確実とされていますが、ARMライセンスの更新中止やアップルの影響に関する詳細を市場が待っているように見えます。

クアルコム(QCOM)の最新の2024年度第4四半期決算発表に関して

クアルコム(QCOM11月6日に最新の2024年度第4四半期決算(暦年:2024年第3四半期)を発表しており、初期の結果は私の予想通りに見えましたが、実際にはもう少し複雑な状況でした。

助成金の変動やデザイン・ウィンに特に期待していた理由を、改めて実感させられる結果となりました。

同社に関しては、決算前に下記のレポートを執筆しておりますので、もし関心がございましたら、インベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。

「デザイン・ウィン」(design win)とは、特定の製品や技術が顧客の設計や製品開発に採用されることを指します。

たとえば、半導体メーカーが自社のチップをスマートフォンや家電などの製品に組み込むことが決まった場合、それが「デザイン・ウィン」となります。

そして、今回の決算報告を見てみると、基本的な成果は確かに達成されています。

2024年度第4四半期決算

EPS(特別項目除く):2.69ドル(FactSet予想:2.56ドル)

売上高:102.4億ドル(FactSet予想:99億ドル)

2025年度第1四半期ガイダンス

EPS(特別項目除く):2.85ドル〜3.05ドル(FactSet予想:2.86ドル)

売上高:105億〜113億ドル(FactSet予想:106億ドル)

上記の通り、同社は市場予想を上回る業績とガイダンスを報告しましたが、それでも決算後に株価は大幅に下落しました。

なぜでしょうか?

その理由としては、アップル(AAPL)の影響がクアルコムにじわじわと重くのしかかってきているように見えます。

アップルのイベントやアーム・ホールディングス(ARM)関連のイベントが近づいており、これが利益率に悪影響を及ぼす可能性が出てきました。

また、サムスン電子(005930.KS)の不振でハンドセット部門は期待ほどの成果を出せず、RFFE(無線フロントエンド)の伸びも目立ちません(仮に成長があったとしても)。

このため、コルボQRVO)はスカイワークス・ソリューションズ(SWKS)やブロードコム(AVGO)に負けている可能性が高く、クアルコムが優位とは言えない状況です。

さらに、インテル(INTC)の買収に関する懸念も浮上しています。

要するに、今のクアルコムは非常に不確実な状況にあり、良い結果を出したとしても株価の上昇には限りがあるように見えます。

市場は不確実性を嫌うもので、確実性が高まるほど株価の評価も上がります。

ですが、今のクアルコムには不安要素が多い状況です。

さて、本題に戻ります。

今回特に注目すべきは、クアルコムがADAS(先進運転支援システム)やインフォテインメント分野で大きな成功を収めている点です。

市場全体が横ばいか縮小する中、同社はこの分野で55%も成長しています。

今後、さらに多くの車種に搭載されることでシェアも拡大していくでしょう。

(出所:クアルコムの2024年第4四半期決算資料

あと1〜2年もすれば、自動車関連の売上がIoTセグメントを超える規模になる可能性も十分にあります。

下記は最新の決算説明会での遣り取りの一部です。

(原文)As we said before, I think you should look at our revenue in auto, less sensitive to what happens in the market much more related to new models that are being launching with Qualcomm technology, and it's reflecting a shift in share. So as we gain share and new models get launched, you started to see that show up in our financials. So that's the reason we continue to have growth both sequentially and year-over-year.

(日本語訳)以前もお話ししましたが、当社の自動車部門の売上は市場の変動に左右されにくく、むしろクアルコムの技術を搭載した新モデルの投入に大きく関係しています。シェアを拡大し、新モデルが市場に出るにつれ、その成果が当社の業績にも反映されてきています。こうした理由から、四半期ごとの成長や前年同期比での成長が続いているのです。

また、新しいSoC(System on Chipの略で、プロセッサ、メモリ、グラフィックス、入出力機能など、コンピュータの主要なコンポーネントを一つのチップに統合したもの)によるコンテンツ拡充の話もありました。

最新のX Elite(クアルコムが開発した高性能なSoCのシリーズ名)でハイエンド市場でのシェアを引き続き拡大しています。

(原文)But the big story for us has been content increase. We've kind of seen the chipsets becoming a lot more capable, and you saw the X Elite -- 8 Elite announcement that we did last month, a lot more content is going into the chip. And as those get -- solutions get adopted, we get to see the benefit on the ASP side.

(日本語訳)私たちにとって大きな話題は、コンテンツ量の増加です。チップセットの性能が大幅に向上しており、先月発表したX Eliteや8 Eliteにも多くのコンテンツが組み込まれています。これらのソリューションが採用されることで、平均販売価格(ASP)にも良い影響が現れると期待しています。

(原文)We're seeing the mix across tiers continue to improve in the handset market as well. So if you kind of look back over the last 3 or 4 years, devices greater than $400 has gone up from being 21% of the market to 30% of the market, and that is definitely beneficial to us.

(日本語訳)携帯市場でも価格帯ごとの構成が着実に改善しています。過去3〜4年を振り返ると、400ドル以上のデバイスが市場全体の21%から30%に増加しており、これは当社にとって大きなプラスです。

しかし、この恩恵を受けた一方で懸念も生まれました。

中国の四半期の好調な結果により、在庫の積み増しがあるのではという疑念が出てきたのです。

流通チャネルの在庫は少なく、中国は景気刺激策を始めていますが、多くの投資家はこれを「利益の先食い」や在庫積み増しと見ています。

しかし、私は、単純にシェア拡大が主な理由だと考えています。

(原文)Look, thanks for the question. I can't really speak of other companies. The only thing I can say is I'm actually very happy with our results. But I'll give you a couple of data points, maybe help you triangulate that. When we look sequentially, we have now quarter-over-quarter greater than 40% handset revenue growth with Chinese OEMs in -- as we look in the 1Q fiscal '25, if you look at the guide. In fiscal '24, our Android revenues, we get 20% year-over-year growth, including the loss of Huawei revenues.

(日本語訳)ご質問ありがとうございます。他社についてはお答えできませんが、当社の結果には非常に満足しています。参考までにいくつかのデータをお伝えします。四半期ベースで見ると、中国のOEM向けの携帯電話収益は四半期ごとに40%以上の成長を続けており、2025年度第1四半期の見通しでもこの傾向が見られます。また、2024年度のAndroid収益は、Huaweiの減収を含んでも前年比20%の成長を達成しています。

さらに、彼らは「これは新製品の投入が主な要因」と答えましたが、私にはこの答えが懸念を反映しているように感じられます。

これは持続的な成長が見込めるのか、それとも一時的な上振れに過ぎないのか?

市場は後者だと見ているようです。

(原文)This is not about tariffs or pull-forward because of those reasons. From a customer perspective on the quarterly trend, the way we think about it is what we're guiding is based on customer launch cadences and their demands. You should not think of this as a statement on sell-through. It's really kind of chipset purchases that are happening from us. So I think that's -- those 2 may be disconnected in some cases. But you already know what our share position is across OEMs. And so it's not a share question. It's just the timing of purchases from us.

(日本語訳)これは関税や前倒し需要の話ではありません。四半期ごとの動向について、当社の見通しは顧客の製品発売スケジュールやその需要に基づいています。販売実績を示しているわけではなく、当社からのチップセット購入のタイミングに関するものです。そのため、これらが必ずしも一致しない場合もあります。ただ、当社が各OEMでのシェアを確保していることはご存じのとおりで、これはシェアの問題ではなく、単に購入のタイミングの問題です。

以上より、、クアルコムは半導体業界でもっとも不透明な企業の一つかもしれません。

ただし、皮肉なことに、ARMライセンスの更新中止やアップルの影響について市場が詳しい情報を得ることで、株価が上昇する可能性もあります。

通常、物事は、案外心配するほど悪くないものです。

引き続き、クアルコムの動向には注視していきたいと思います。

また、インベストリンゴのアナリストであるイアニス・ゾルンパノス氏が、クアルコムの最新決算後に財務分析に焦点を当てた下記のレポートを執筆しておりますので、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、ご覧いただければと思います。

その他のクアルコムQCOM)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、クアルコムのページにアクセスしていただければと思います。

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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA

📍半導体&テクノロジー担当

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