中立ショッピファイショッピファイ(SHOP)最新決算発表は業績好調で株価上昇!下落傾向を脱出も割高?今後の株価見通しと将来性に迫る!
- ショッピファイ(SHOP)は、中小企業が様々な販売チャネルで商品を販売するのを支援している大手テクノロジー企業です。
- 同社は、2024年8月7日に2024年度第2四半期決算を発表し、トップラインの売上高と利益の成長を報告しています。
- しかし、バリュエーションは同業他社や私のディスカウントキャッシュフロー(DCF)モデルによる予想と比較して高水準にあることから、私は同社の株価見通しを「強気」から「中立」に引き下げています。
ショッピファイ(SHOP)について
ショッピファイ(SHOP)は、企業がオンラインやオフラインの様々なチャネルを通じて製品を展示、販売、配送することを可能にする大手テクノロジー企業です。
同社は、2024年8月7日に2024年度第2四半期決算を発表し、売上高と利益のコンセンサス予想を上回る着地となっています。
同社は売上高を伸ばしており、利益率も高いが、株価のバリュエーションは同業他社や私のディスカウントキャッシュフロー(DCF)モデルによる予想と比べて非常に高い水準にあります。
そのため、私は同社のバリュエーションが高水準にあることから、私は同社の株価見通しを「強気」から「中立」に引き下げています。
ショッピファイ(SHOP)の概要と市場
ショッピファイ(SHOP)は、中小企業向けに設計されたクラウドベースのマルチチャネル・コマース・プラットフォームを提供しているテクノロジー企業です。
※マルチチャネル・コマース・プラットフォーム:企業が複数の販売チャネル(オンラインストア、実店舗、SNS、モバイルアプリなど)で商品やサービスを一元管理・販売できるプラットフォームのこと。これにより、さまざまな場所から顧客にリーチできるようになる。
同社のCEOはトビアス・リュトケ氏で、以前はオンライン・スノーボード・ストアを設立し、ソフトウェア開発者として働いていました。
また、同社は、デジタルマーケティングやインフルエンサー、代理店、テクノロジーベンダーとの提携を通じて新規顧客を獲得しています。
Mordor Intelligenceの調査レポートによると、デジタルコマースソフトウェア市場は2018年から2028年にかけて12.64%の年平均成長率(CAGR)で成長すると予想されています。
この成長が期待される主な理由は、統一されたショッピングや配送サービスに対する消費者の需要と、モノのインターネットの製品やサービスの利用の増加が挙げられます。
そして、同社の主な競合は、ビッグコマース・ホールディングス(BIGC)、WooCommerce、スクエアスペース(SQSP)、ウィックス・ドット・コム(WIX)、アマゾン(AMZN)、Magentoとなっています。
ショッピファイ(SHOP)の最近の財務動向
ショッピファイ(SHOP)の四半期別の総売上高(黄緑色の列:Total Revenues)は前年同期比で著しく増加しており、四半期別の営業利益(青色の線:Operating Income)は過去4四半期でプラスを維持し、前年同期比でも増加しています。
また、四半期別売上総利益(黄緑色の列:Gross Profit)は売上高の伸びと連動して上昇しており、四半期別販売費および一般管理費(青色の線:Selling General & Admin Expenses. Total)は、営業レバレッジの高まりを示すように横ばい傾向にあります。
さらに、希薄化後一株当たり利益(EPS)は、季節変動はあるものの、前年同期比で目覚しい伸びを示し、プラスを維持しています。
(上記グラフのデータはすべて百万ドル単位・GAAPベース)
そして、下記のチャートからも分かる通り、過去12ヶ月間、同社の株価は34.7%上昇したのに対し、ベンチマークであるiシェアーズ・エクスパンデッド・テクノロジー・ソフトウェアETF(IGV)の上昇率は26%となっています。
ショッピファイ(SHOP)のバリュエーション
以下は、ショッピファイ(SHOP)に関連するバリュエーションの表です。
バリュエーション指標 | 値 |
EV(企業価値)/ 売上高倍率(予想) | 10.7 |
EV/EBITDA倍率(予想) | 68.2 |
株価売上高倍率(直近過去12か月) | 12.4 |
売上高成長率(予想) | 23.0% |
純利益率 | 16.4% |
EBITDAマージン | 12.8% |
時価総額 | $96,200,000,000 |
企業価値 | $92,310,000,000 |
営業キャッシュフロー | $1,300,000,000 |
実績EPS(直近過去12か月ベース) | $0.98 |
予想EPS | $1.08 |
一株当たりフリー・キャッシュフロー(直近過去12か月ベース) | $1.00 |
また、40%ルールとは、ソフトウェア業界の経験則であり、売上高成長率と営業利益率の合計が40%以上であれば、その企業は、ソフトウェア企業として、許容できる成長と営業利益率の軌道に乗っていることを示すものです。
下表の通り、同社の直近の調整前40%ルールの計算値は、2024年第2四半期時点で36.8%であったため、2023年第4四半期の実績に対して悪化していることが分かります。
40%ルール・パフォーマンス(調整前) | 2023年第4四半期 | 2024年第2四半期 |
売上高成長率 | 22.2% | 23.0% |
営業利益率 | 22.5% | 13.8% |
合計 | 44.7% | 36.8% |
ショッピファイ(SHOP)の見通し
直近の市場のアナリスト向け決算説明会議では、ショッピファイ(SHOP)の経営陣の準備発言として下記のポイントが強調されています。
売上高
2024年度第2四半期に物流を除いて25%の売上成長を達成しました。粗利益は売上を上回るペースで増加しています。
コストや経費の変動
営業費用は前四半期比で減少し、フリー・キャッシュフローマージンは昨年の6%から16%に倍増しました。
また、営業費用は8億400万ドルで、その中には訴訟引当金の戻りによる5500万ドルの利益が含まれています。
キャッシュフロー
2024年度第2四半期のフリー・キャッシュフローマージンは、前年の6%から16%へと大幅に増加しました。
フリー・キャッシュフローは3億3300万ドルとなっています。
海外市場
海外のGMV(取扱総額)の成長率は北米を上回り、前年同期比で27%の増加を記録しました。
特にヨーロッパではGMVが32%成長し、海外におけるマーチャントの数も前年同期比で30%増加しました。
※マーチャント:一般的に商品やサービスを販売する企業や個人事業主を指す。
貸借対照表
2024年度第2四半期の粗利益は前年同期比25%増の10億ドルに達しました。
粗利益率も昨年の49.3%から51.1%に改善しており、サブスクリプションソリューションの粗利益率は82.8%、マーチャントソリューションは39.1%でした。
また、その他の注目点としては、同社は、すべての地域や規模で新規マーチャントの獲得が堅調で、これはマーケティング費用と有料トライアル期間の短縮が貢献しています。
一方で、決済サービスの浸透拡大、新製品の採用、価格調整により、テイクレートの改善が期待されていますが、ヨーロッパ市場や大企業での拡大がこの成長を鈍化させる可能性があります。
※テイクレート:取引プラットフォームやサービスプロバイダーが、取引の総額から手数料として受け取る割合を指します。例えば、オンラインマーケットプレイスが売上の一定割合を手数料として受け取る場合、その割合がテイクレートです
ただし、大手ブランドとの契約が増加しており、同社はその優れた価値提案、スピード、柔軟性が評価されています。
同社のマーケティング戦略は、データに基づいたアプローチを採用しており、18ヶ月以内に費用を回収できるように設定されているため、効率的にマーケティング活動を拡大できます。
Shopアプリは引き続き重要なGMVの推進力となっており、多くのマーチャントが参加し、Shop Weekの成功も顕著で、ファーストパーティチャネルとしての重要性が増しています。
※Shopアプリ:ショッピファイが提供する買い物アプリで、ユーザーが商品を検索・購入したり、注文状況を追跡できるツール。
※Shop Week:ショッピファイが開催するイベントで、Shopアプリ内で特別なキャンペーンやプロモーションが行われ、マーチャントや消費者に特典が提供される。
※ファーストパーティチャネル:企業が自社で直接運営する販売チャネルのことで、他社のプラットフォームを介さずに自社の製品やサービスを顧客に提供する。ショッピファイの場合、Shopアプリがその一例です。
しかし、同社は、消費者支出の動向が不安定なマクロ経済環境に直面しており、さらに、同社は非現金収益の減少や、マージンの低い決済ビジネスの成長という逆風にも対処しています。
それにもかかわらず、同社は市場シェアを拡大し、さまざまな業界や地域で強さを発揮しています。
2024年度第3四半期の売上成長は前年同期比で20%台前半から中盤が見込まれており、同社は、年内も引き続き2桁のフリー・キャッシュフローマージンを維持すると予想しています。
ただし、さまざまなバリュエーション指標から見ると、同社の株価は業界平均の2倍以上、場合によっては4倍近くに達しており、割高感があります。
そして、下記の通り、楽観的な前提を用いたディスカウントキャッシュフローモデルによる計算でも、同社の現在の株価がフェアバリューに対して27.59%も割高である可能性が示されています。
※フェアバリュー:資産や負債が市場で公正に取引されるべき価格のことを指し、市場の状況や将来の収益を考慮して算出され、適正な価値を示す価格。
(出典:Gurufocus)
ショッピファイ(SHOP)は売上高を伸ばし、利益やフリー・キャッシュフローを生み出しており、業績は好調ですが、バリュエーションに懸念があることから、同社に対しては「中立」的な立場を取っています。
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さらに、その他のショッピファイ(SHOP)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ショッピファイのページにアクセスしていただければと思います。
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