バンク・オブ・アメリカのグローバル機関投資家(ファンドマネージャー)調査で現金比率が4.2%から3.9%に減少!米国株に売りシグナル?

- 本稿では、足元発表されたバンク・オブ・アメリカのグローバル機関投資家(ファンドマネージャー)調査で現金比率が4.2%から3.9%に減少し、米国株に売りシグナルが点灯したことを踏まえ、今後の米国株の見通しを解説していきます。
- 直近では、エヌビディア(NVDA)の株価が最高値を更新した直後、米国政府が特定国へのAIチップ販売制限を検討し、これが他のチップメーカーにも影響を与えています。
- さらに、欧州のASMLホールディング(ASML)が業績予想を下方修正し、これがテクノロジー株の利益確定売りを引き起こし、マーケット全体に重くのしかかっています。
- 一方で、バリュエーションに対する懸念が続く中、投資家は小型株に注目し、ラッセル2000指数がナスダック100を上回るパフォーマンスを見せています。
マーケットで注目を集めるエヌビディア(NVDA)が過去最高値を更新した翌日、米国政府が特定の国に対してAIチップの販売を制限することを検討しているとの報道がありました。
そして、これは他のチップメーカーにも影響する可能性があります。
同時に、欧州最大のテクノロジー企業であるASMLホールディング(ASML)が2025年の業績予想を引き下げたこともあり、これらがテクノロジー株の利益確定売りのきっかけとなりました。
その結果、テクノロジーセクターが市場全体に重くのしかかりましたが、国内に焦点を当てた小型株指数のラッセル2000指数は、一時1%の上昇を見せ、最終的には小幅なプラスで取引を終えました。
このようなセクターローテーションは今後も続くと考えています。
昨日のような日は、市場が過大評価されているという懸念を強めますが、テクノロジー以外の分野に目を向ければ、まだ十分な価値を見出すことができると考えています。
(出所:Finviz)
今年初め、S&P 500が過去20年で92パーセンタイル(データ全体の中で上位8%に位置すること)にあたるPER(株価収益率)22倍で取引されていた際、弱気派は市場が過大評価されていると警告していました。
しかし、過去のデータを見ると、PERと将来のリターンにはほとんど相関がなく、今年S&P 500が20%以上も上昇していることがその証拠です。
バリュエーションは将来のパフォーマンスを予測する指標としては不十分です。
特に、成長志向のセクターがインデックスの約3分の1を占め、それが全体のPERを押し上げている状況では、なおさらです。
半導体メーカーが大打撃を受ける
半導体株が1カ月以上ぶりの大幅下落
(出所:Bloomberg)
バリュエーションに対する懸念をさらに煽る要因として、今月のバンク・オブ・アメリカ(BAC)の通称FMS(Fund Manager Survey)と呼ばれるグローバル機関投資家(ファンドマネージャー)調査で、世界のポートフォリオにおける現金比率が3.9%にまで低下し、珍しく「売りシグナル」が出されました。
グローバル機関投資家(ファンドマネージャー)調査とは、世界中の機関投資家やファンドマネージャーを対象に行われる調査で、彼らの投資戦略、リスク認識、マーケットに対する見通し、そして資産配分の動向などを把握することを目的としています。
機関投資家とは、年金基金、保険会社、ヘッジファンド、投資信託など、大規模な資産を運用する組織であり、金融市場において大きな影響力を持っています。
この調査では、以下のようなトピックがよく扱われます:
1. 市場見通し:どの地域やセクターが今後の成長が期待されているか、またはリスクが高いと見なされているか。
2. 資産配分:株式、債券、コモディティ、現金など、どの資産クラスに重点を置いているか。
3. リスク認識:インフレーション、地政学的リスク、政策リスク、テクノロジーの変化など、どのようなリスク要因が市場に影響を与えると予想されているか。
4. 投資テーマ:ESG(環境・社会・ガバナンス)投資、テクノロジー革新、グリーンエネルギーなど、長期的に注目される投資テーマ。
こうした調査結果は、金融市場全体の動向や投資家の信頼感を測る重要な指標となり、他の投資家やマーケット参加者にとっても参考になります。
2011年以降、同様のシグナルが11回あり、これだけを見ると重要な動きに感じられますが、過去のデータではこのシグナル後に世界株式は1か月後に平均2.5%、3か月後にはさらにわずか0.8%の下落にとどまっています。
そのため、これでは一時的な調整とも言えず、私にはむしろ買い時に見えます。
グローバル機関投資家(ファンドマネージャー)調査の現金比率が4.2%から3.9%に減少…売りシグナルを発動
バンク・オブ・アメリカのグローバル機関投資家(ファンドマネージャー)調査における現金比率(運用資産に対する割合)
(出所:Bloomberg)
今年5月に、以下のチャートを用いて、私はテクノロジーセクターよりも小型株に注目しているとお伝えしました。
これはあまり支持されなかった意見で、というのも「マグニフィセント7」が2022年10月以来、強気相場を牽引していたからです。
しかし、私は当時、バリュエーションの高まりがセクターローテーションを引き起こすと信じていました。
テクノロジーセクターがバブルに陥っていると感じていたわけではなく、むしろ高いPER(株価収益率)に見合う利益の成長が必要だと考えていました。
そのプロセスはまだ進行中ですが、小型株は強気相場が始まって2年経っても通常の半分のリターンしか得られていない中で、ようやく光を浴び始めています。
S&P500の上昇は、ビッグテックが引き続き牽引
S&P500の上昇は、いわゆる「マグニフィセント7」に大きく依存
(出所:Bloomberg)
投資家が戦略的に動くなら、リスク調整後の魅力的なリターンを狙うために、レシーバーの少し前にパスを投げる感覚を身につけることが重要でしょう。
つまり、今の最高リターンに飛びつくのではなく、将来どこでリターンが得られるかを見据えるべきです。
ラッセル2000指数は過去6か月間でナスダック100を上回るパフォーマンスを見せており、この流れは今後も続くと思います。
すでに成功したパスのようなもので、2025年には小型株が「タッチダウン(アメリカンフットボールで得点方法の一つ)」を決めると考えています。
(出所:Stockcharts)
この小型株へのローテーションは、経済拡大や強気相場の持続力を強く示しています。
小型株が強気相場の頂点で好パフォーマンスを見せることはなく、また、経済の低迷が近い時にも良い結果を残しません。
むしろ逆に、今の動きはその逆を物語っています。
金融メディアの悲観的なニュースに振り回されるのではなく、市場のシグナルに耳を傾けるべきです。
もちろん、バリュエーションは投資において重要な要素ですが、市場全体の下落を予測する際には他の多くの要因も考慮すべきだと考えます。
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📍米国マクロ経済担当
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