a close up of a clock with different colored numbers
10 - 20 - 2024

【2024年10月】S&P500の今後の見通し:バフェット氏の現金保有額が過去最高!バフェット氏はなぜ米国株を大量売却?

イアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、伝説のバリュー投資家であるウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが足元で大量に米国株を売却し、結果、現金保有額が過去最高に達した背景を分析していきます。
  • そして、2024年度第3四半期決算が本格化し、銀行セクターを中心に好調なスタートを切る中で、バフェット氏の分析を踏まえて、S&P500の今後の見通しに迫ります。
  • S&P500は2024年に23%の年初来上昇を記録し、株価バリュエーションに対する懸念が高まる中で市場の強気が続いています。 
  • バフェット指標やシラーPERは、米国株式市場が過大評価されている可能性を示している一方で、企業のガイダンスは市場アナリストの予想を上回る強気な見通しを示しています。 
  • 市場の投資家は利益成長を実現する企業の発掘や分散投資を重視し、過大評価リスクを警戒しつつも、適切な情報収集と柔軟な戦略で市場に対応することが求められるでしょう。

【2024年】S&P500の今後の見通し:相反するシグナルの中で急上昇

S&P500は2024年のスタートから好調で、慎重なアナリスト予測や過大評価の懸念をよそに、驚異的な23%の年初来上昇を記録しました。

これは1997年以来の最高の出だしで、史上最高値を更新しています。

強気の勢いは続いているものの、株価バリュエーションと伝統的な市場で注目される指標との乖離に対する懸念も一部で高まっています。

SPDR S&P500 ETFトラストSPY)の推移

(出所:TradingView)

米国株式市場の警告シグナル:バフェット指標とシラーPERに注目

バフェット指標」とは、株式市場の時価総額を国内総生産(GDP)と比較するシンプルで効果的な手法で、伝説のバリュー投資家であるウォーレン・バフェット氏が市場の評価を判断するために使用しています。

この指標が歴史的な平均を大きく上回ると、株式市場が過大評価されている可能性を示します。

2024年8月31日時点で、バフェット指標は209%に達しています。

これは米国株式市場の総時価総額である59.71兆ドルを年間のGDPである28.56兆ドルで割ることで算出したものです。

この209%という比率は、歴史的なトレンドラインを約67.57%上回っており、標準偏差で約2.2倍高い水準となります。

これは、株式市場がGDPに対して大幅に過大評価されていることを示し、市場が過熱している可能性があるため、調整が必要になる可能性を示唆しています。

バフェット指標:米国株式市場の時価総額とGDP比率

(出所:Current Market Valuation)

もう一つの重要な指標が「シラーPER」です。

これは、標準的なPERをインフレを考慮して調整し、過去10年間の平均利益を基に算出します。

この指標は、株式市場の過大評価や過小評価をより安定した形で示すものです。

現在のシラーPERは37倍で、歴史的な水準と比較して非常に高く、いつでも調整が起こり得る状態と言えます。

(出所:multpl)

市場のアナリスト予想と企業のガイダンスは対照的

Bloomberg Intelligenceのデータによると、市場のアナリストによる予測と企業のガイダンスには大きな隔たりがあります。

市場のアナリストは、S&P500の第3四半期の利益が前年同期比で4.2%増加すると見込んでおり、これは7月中旬の7%から下方修正されたものです。

一方で、企業側は16%の大幅な利益増加を予想しています。

Bloomberg Intelligenceのチーフエクイティストラテジスト、ジーナ・マーティン・アダムズ氏は、この異例の差異について次のように指摘しています。

(原文)The significantly stronger outlook suggests companies should easily beat expectations.

(日本語訳)企業の見通しが非常に強いことから、市場のアナリストの予想を大幅に上回る可能性が高いです。

また、EPS(1株当たり利益)の改善も、この強気なガイダンスを後押ししています。

Bloomberg Intelligenceのモデルでは、9月までの3カ月間で0.14のスコアを記録し、ポストコロナの平均0.03を大幅に上回っています。

2024年度第3四半期決算シーズン:企業は再び市場のアナリストの期待を超えるのか?

投資家は、2024年度第1四半期に、米国企業が低迷する市場のアナリストによる予測を大きく上回ったような状況が、再び繰り返されることを期待しています。

当時の利益成長予測はわずか3.8%でしたが、実際の成長率は7.9%でした。

市場の強さが続いていることから、今回の決算シーズンでも同様の結果が期待されているようです。

金融大手のJPモルガン(JPM)は、2024年度第3四半期の純金利収入が予想を上回り、主要な収益源の見通しを上方修正するなど、すでにポジティブなスタートを切っています。

同社の株価は決算発表後に約5%上昇し、ウェルズ・ファーゴ(WFC)も約6%上昇しました。

これにより、金利の低下が予想よりも深刻でなかったことが示されました。

モルガン・スタンレー(MS)のストラテジスト、マイケル・ウィルソン氏は次のように述べています。

(原文)Several large-cap bank stocks had de-risked in mid-September ahead of earnings season

(日本語訳)多くの大手銀行株は、第3四半期の決算を控えてリスク回避の動きを見せていました。

(原文)This fostered a lowered expectations bar into the quarter. Initial results indicate that banks are clearing that bar.

(日本語訳)結果として第3四半期への期待値が下がり、初期の決算結果を見る限り、銀行はその期待をクリアしています。

マグニフィセント7:減速か、それとも再び上昇するか?

今年初めの市場ラリーの主な要因となったのは、テクノロジー大手「マグニフィセント7」でした。

しかし、現在の予測では、彼らの利益成長は前年同期比で約18%増とされていますが、第2四半期の36%からは鈍化しています。

ウィルソン氏は、EPS成長の減速が彼らの最近のパフォーマンスの低迷を説明すると考えています。

(原文)If earnings revisions show relative strength for the Mag 7, these stocks will likely outperform once again, and market leadership may narrow—like it did during the second quarter and all of 2023.

(日本語訳)もし「マグニフィセント7」の利益予想が相対的に強さを示すようであれば、これらの銘柄は再び市場を上回るパフォーマンスを見せる可能性が高く、2024年度第2四半期や2023年全体のように、市場の主導権が再び集中するかもしれません。

米国株式市場は過大評価されているのか?専門家の見解は分かれる!

米国株式市場が強気の雰囲気を醸し出す中で、過大評価に対する懸念も出てきています。

Piper Sandlerのチーフ投資ストラテジスト、マイケル・カントロウィッツ氏は、S&P500が約8%過大評価されていると見ていますが、これを弱気になる理由とはしていません。

(原文)An 8% overvaluation is no reason to get bearish. Stocks can remain at rich valuations as long as a ‘fear’ catalyst doesn’t arise from the usual suspects: interest rates, employment, or inflation.

(日本語訳)8%の過大評価は、弱気になる理由にはなりません。金利や雇用、インフレといった「恐怖要因」が出てこない限り、株価は高い水準を維持し続けることができます。

カントロウィッツ氏は、これらの要因が急上昇しない限り、上昇傾向が続くとし、強い利益成長を持つ銘柄に焦点を当てるべきだとアドバイスしています。

これらの銘柄は、バリュエーションを維持し、引き続き市場をアウトパフォームする可能性が高いとしています。

ウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の大規模な米国株売却:その真意は?

伝説のバリュー投資家であるウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)が最近、大規模な米国株式の売却を進めていることが注目されています。

2024年度第2四半期に同社は約750億ドル相当の米国株式を売却し、現金保有額は約2,770億ドルに増加し、過去最高となりました。

アップル(AAPL)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)の持ち株を減らしたことも話題になっています。

ウォーレン・バフェット氏のこの動きを説明するいくつかの考え方があります。

1. バリュエーションの高さ: アップルのような大型株は高いバリュエーションで取引されています。バフェット氏はこうした過大評価を利用して利益を確定させている可能性があります。例えば、アップルは現在、収益の35倍で取引されていますが、バークシャーが最初に投資したときは11倍程度でした。

2. 景気後退に備える: 同社は景気後退を予測し、2008年の金融危機のようなチャンスを捉えるため、現金を蓄えている可能性があります。

3. 大規模な買収計画: 多くの人は、バフェット氏が大規模な買収、特に保険会社を狙っていると考えています。

不確実な米国株式市場における投資戦略

複雑な市場環境下で、投資家はどのような点に注目すべきでしょうか?

・利益の成長に注目: 強力で改善している利益を示す企業に焦点を当てることが重要です。こうした企業は、高いバリュエーションを正当化でき、より高いリターンを期待できる可能性があります。

・ポートフォリオの分散: 特定のセクターに偏りすぎることを避け、市場リーダーが変わる可能性に備えましょう。

・経済指標の監視: 金利、インフレ、雇用データを注視しましょう。これらの変動が市場に大きな影響を与える可能性があります。

・バリュエーションの慎重な判断: 過大評価だけが売却の理由ではありませんが、新たにポジションを取る際は慎重に検討することが重要です。

・企業の動向に目を光らせる: 企業の業績発表やガイダンス、戦略的な動きは、貴重な投資のヒントとなることがあります。

結論:楽観と慎重のバランスを取ることが重要

S&P500の2024年における驚異的なパフォーマンスは、市場に楽観と矛盾が共存していることを示しています。

企業は強気の業績見通しを示す一方で、市場のアナリストは慎重な見方を崩さず、一部の経済指標には警戒すべきサインが点滅しています。

投資家はこのような不確実な状況にどう対応すべきなのでしょうか?

一方では、すぐにネガティブな要因が見当たらないため、市場の上昇が続く可能性もあります。

しかし、ウォーレン・バフェット氏のような大手投資家が市場の過大評価を示唆する動きを見せていることから、将来的な調整も視野に入れるべきでしょう。

こうした状況下で重要なのは、警戒心を持ちながらもチャンスを見逃さない戦略です。

健全な企業基盤に注目し、分散投資を心がけ、市場の最新動向を常に把握することで、リスクを抑えながらチャンスを生かすことが可能です。

今後の米国株見通し:柔軟性と情報収集がカギ

市場は常に変動するため、適応力が非常に重要です。

米国株式市場の決算シーズンが本格化し、企業のパフォーマンスや見通しが明らかになる中、最新情報を把握しておくことが必要です。

市場が強気を維持するか、転換するかは不明ですが、戦略の見直しに備えることは、引き続き投資家にとって有効な手段です。

長期的な視点と冷静な判断、そして綿密なリサーチを行うことで、今後の不確実な市場でもしっかりと乗り切ることができるでしょう。

結局のところ、金融市場という迷路では、知識と慎重さが投資家にとって最大の味方となるのです。

インベストリンゴのプラットフォームを上手に活用して、この変動する米国株式市場を乗り切りましょう!


アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏

イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。

以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。

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