アメリカのリセッションはいつ来るのか?重要経済指標の詳細な分析を通じて、今後の米国株式市場の見通しに迫る!
ジェームズ・ フォード- 本稿では、「アメリカのリセッションはいつ来るのか」という疑問に答えるべく、重要経済指標の詳細な分析を通じて、今後の米国経済、並びに、米国株式市場の見通しを詳しく解説していきます。
- アメリカ市場では、S&P500が6000ポイントに迫るも、リセッションへの警戒が続いており、景気減速の兆候が見られます。
- 消費者の負担増加や住宅市場の低迷、また中小企業の資金調達コストの上昇が、経済の弱体化を示唆しています。
- FRBによる介入やリセッション対策が必要とされる一方で、リスク管理を重視した投資戦略が必要であると見ています。
アメリカのリセッションは避けられない?
市場は新たな高値を更新し続け、S&P500も6000ポイントに迫っています。
この水準は私が約2年前から目標としていたものです。
高インフレと高金利の中でも、私は一貫して強気の姿勢を維持してきました。
多くの市場のアナリストがリセッションを警戒していた中、今では市場全体がソフトランディングを予想し、悲観論者たちも強気に転じています。
これが市場のピークを示しているのでしょうか?
投資に絶対はありませんが、警戒すべき兆候のようにも感じます。
他にも以下のようなサインがあります:
・バリュエーションがドットコムバブル期の水準に近づいている
・米国以外の市場でも天井を打つ兆候が見られる
・ウォーレン・バフェットが過去最高の現金を保有している
・政治的な不安定さ、地政学的緊張、そしてボラティリティの増加
これはまだ始まりに過ぎません。
この10年、そして20年の間、市場は投資家にとって非常に好調でしたが、その間にも大きな暴落がありました。
例えば、2000年にはナスダックが85%も下落しました。
このような事態に備えていますか?
長期投資の重要性を信じながらも、差し迫った大きな変動の兆候が見えてきていることも無視できません。
戦争、国家破綻、あるいはグローバルな通貨リセットの可能性すら考慮すべきかもしれません。
本稿では、次のポイントについて掘り下げていきます:
・世界的なリセッションの兆候と指標
・未曾有のデフレーションに対する市場と政府の対応
・スタグフレーション再来の可能性
・市場がピークを迎えた、または迎えそうなサインの見分け方
・退出プラン
・リセッション期における効果的な投資方法
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アメリカのリセッションはいつ来るのか?
FRBが利下げを開始し、米国の失業率も低水準を維持、インフレも許容範囲内。
どうやらFRBのパウエル議長は絶妙なバランスを保っているようです。
米国債が1995年以来の急落、トレーダーはソフトランディングを予想
(日本語訳)FRB会合後、2年債利回りが34ベーシスポイント上昇
(日本語訳)堅調な経済により、選挙を控えた利下げ余地が限られる
(出所:Bloomberg)
実際、今の状況は1995年と非常によく似ていると言われます。
30年後に歴史が繰り返されているのかもしれませんが、1995年の後にはドットコムバブルの崩壊があったことを忘れてはいけません。
FRBが利下げを続け、政府が財政赤字で問題を先送りする中、市場はさらに高値を更新し、経済はゆっくりと弱まる可能性があります。
ここで、リセッションの兆候について考えてみましょう。
まずは消費者の状況です。
(出所:Reventure Consulting)
クレジットカードの延滞率が急上昇し、2008年の金融危機直前の水準に迫っています。
借金そのものは悪いことではありませんが、過剰な借金は問題です。
可処分所得に対する利息の支払い割合も高水準に達しています。
消費者の負担は増加しており、失業率が上がり始め、住宅市場が下落に転じれば、消費者はさらに厳しい状況に追い込まれるでしょう。
住宅市場は消費者心理や支出に大きな影響を与えます。
多くの人の資産が持ち家に結びついており、住宅市場が弱気相場に転じればリセッションを引き起こす可能性があります。
これまでのリセッションでも、既存住宅販売はピーク後に減少し、失業率は底を打って上昇しています。
2023年のピークから既存住宅販売はすでに41%減少し、失業率も上昇に転じています。
また、住宅市場指数(NAHB)と逆転させた失業率を見ると、通常、NAHBがピークを打ち、失業率が底を迎えるとリセッションが発生しています。
すでにこれらの条件がそろいつつあります。
消費者心理の悪化はやがて企業に波及し、悪循環がさらなる失業と需要減少を招きます。
例えば、工業生産は2022年にピークを迎え、そこから減少を続けています。
さらに、RSIには大きな乖離が見られ、これも注目すべき点です。
さらに深刻なのは、中小企業の状況です。
現在、彼らは非常に厳しい状況に直面しています。
景況感はリセッション期やその前後と同じような低水準にあり、資金調達コストが高騰していることを考えると、この結果も無理はありません。
(出所:Bravos Research)
最後に、経済の強さを測る複数の指標をまとめた一致経済活動指数を見てみましょう。
この指数も2022年以降下降傾向にあり、RSIのマイナス転換やMACDの弱気クロスオーバーなど、リセッションの明確なシグナルが点灯しています。
そして、これらのシグナルは過去30年、毎回リセッションに先行してきました。
そのため、今回も同様ではないでしょうか?
米国株式 vs その他の株式
もう一つ懸念材料として挙げられるのは、米国外の多くの市場が高値を更新できずにいることです。
(出所:TradingView)
上記の通り、NIFTY、日経、STOXX50の動きを見ると、いずれも過去の高値を超えられていません。
特にNIFTYは、最近急騰した後、先月には大きく売られました。
2008年も同じような状況が見られました。
米国外の株式市場が下落し始め、米国も例外ではなく、最後に崩れています。
今後の米国株市場の見通しは?
もし大規模なリセッションが米国に襲来したら、どうなるでしょうか?
・VIX(恐怖指数)の急騰
・失業率の上昇
・株式市場の大幅下落
その後、FRBによる大規模な介入が行われるでしょう。
もしデフレ型のリセッションになると予想されるなら、FRBの対応は明確です。
かつてない規模の刺激策が再び市場に投入されるはずです。
ある程度の規模の介入であれば、短期的に市場が持ち直すかもしれませんが、今回はその代償が非常に大きくなるかもしれません。
過去にFRBは「お金を刷る」ことで凌いできましたが、今回は状況が違います。
・外国が米国債を保有し続けてきた
・インフレがそれほど懸念されていなかった
・財政赤字が今ほど大きくなかった
・米国経済がマネーサプライの増加に対応できていた
しかし、今回はこれらの条件がすべて異なっています。
地政学的緊張の高まりにより、他国は米国債の保有に慎重になり、実際に保有を減らす国も出ています。
また、最近のインフレが記憶に新しく、今後のインフレ期待がリスクとして意識されています。
さらに、米国経済も以前ほど成長しておらず、長年の金融緩和政策が中小企業や生産基盤に打撃を与えています。
最後に、石油ショックや通貨のリセットなど、外的な要因が加わる可能性も考えられます。
何か兆候は見られるでしょうか?
(出所:MacroMicro)
高水準の財政赤字、低金利、石油禁輸措置、管理通貨体制の崩壊は、1970年代にスタグフレーションを引き起こしました。
1970年代の例からも、こうした条件がそろうとスタグフレーションが発生しやすいことがわかります。
つまり、舞台は整いつつあります。
(出所:TrendSpider)
私の見立てでは、2009年の安値から始まったこの上昇の勢いは、間もなく完結する可能性があり、その後、長期的で深い調整局面に入るかもしれません。
最初の段階としては強いデフレ圧力がかかり、その後、FRBの大規模な介入で一時的に市場が回復するでしょうが、最終的にはスタグフレーションが経済に深刻な影響を及ぼすでしょう。
スタグフレーションは「お金を刷る」だけでは解決できず、市場は安価な信用に依存しています。
70年代のように金利が20%に達することを想像してみてください。
では、次のセクションでは以下について解説していきます:
・市場がピークに達した、または近づいたと判断する指標と目標
・リセッション時の投資戦略
・マクロ・マトリックスと退出計画
「マクロ・マトリックス」は市場の転換を予測するために設計されており、大きな下落が始まる前に市場から撤退するための独自のアルゴリズムも開発しました。
米国株式市場のピークはいつ来るのか?
誰もが知りたいこの問いに、私は2つのアプローチで答えてきました。
・テクニカル指標
・マクロ指標
まずは週足チャートをシンプルに見てみましょう。
(出所:TrendSpider)
・RSIに明確な弱気のダイバージェンスが見られ、過去6ヶ月間で高値を更新できていません。
・弱気相場の安値から2倍の水準である6168ポイントに迫っています。
COVIDによる急落を基準に見ると、市場は2022年にこの2倍の水準付近でピークを打っていました。
もし過去が再現されるなら、6100〜6300ポイントが次の目標値になる可能性があります。
マクロ・マトリックスに基づく米国株式市場の見通し
さらに指標を確認してみましょう。
冒頭で多くの弱気チャートを紹介しましたが、今回は私のマクロ・マトリックスの構成要素に注目します。
こちらのExcelシートは、こちらのリンクからご覧いただけます。
また、私が米国マクロ経済の見通しを考える際に使用するマクロ・マトリックスに関しては、下記のレポートで解説しております。
もし、詳細に関心がございましたら、インベストリンゴのプラットフォーム上より、ご覧いただければと思います。
リセッション(景気後退)とは?米国経済のリセッションは近い?リセッションを予測する上で注目すべき10の指標を徹底解説!
まず、市場の流動性は依然として十分であり、これは市場がさらに上昇する可能性がある主な理由と考えています。
目標値を超える可能性も見込めるかもしれません。
流動性
(出所:MacroMicro)
中国もここで大きな影響を与えています。
(出所:Crossborder Capital Limited)
流動性に関しては、CrossBorder CapitalのMichael Howellが信頼できる情報源です。
CLI拡散指数
(出所:MacroMicro)
一致指数がリセッションの兆候を示している中、先行指数も停滞しており、今後下降に転じる可能性が高まってきました。
製造業指数
(出所:MacroMicro)
製造業指数もリセッションの明確なシグナルです。
この指数はすでにピークを打っており、歴史的な流れから市場も転換期に差し掛かるのは時間の問題かもしれません。
サームルール
(出所:MacroMicro)
雇用も悪化の兆しを見せ始めています。
サームルールは0.5を超えているものの、通常とは異なる要因が影響しています。
ただし、これが0.7を超えると大きな懸念材料となるでしょう。
台湾の輸出
(出所:MacroMicro)
台湾の輸出も停滞し始めており、これは世界需要に対する警告サインとなる可能性があります。
このため、リスクスコアを6に引き上げました。
米国株式市場からの出口戦略
全体的に見ると、流動性の増加とS&P 500(SPY)が通常最後に崩れることを考慮し、米国株に対してまだ強気です。
最近、ビットコイン(BTCUSD)が上昇している点にも注目です。
これは流動性が増加していることを示していると同時に、強気相場の終盤が近い可能性を示唆していると見ています。
そして、米国株以外の株式を保有している場合は、早めの売却を検討するのも良いではないかと見ています。
ここではS&P 500に注目します。
(出所:TrendSpider)
売りのタイミングとしては、次の3つの基準に注目しています:
1. S&P 500が6100〜6300に達したとき
2. アルゴリズムが売りシグナルを示したとき。このシグナルは、20日と50日のEMAのクロスオーバーや、MACDが弱気のクロスを示し、それが3日間続いた場合に点灯します。
3. CLI(景気一致指数)が明確な下降トレンドに入ったとき
時期としては、今後3〜9ヶ月の間での展開が考えられます。
以前から選挙に向けてラリーが続き、その後に売りが出る可能性があると述べてきました。
このラリーが最終的な高値になる可能性があります。
個人的には、S&P 500が6100に達した時点でリスクを大幅に減らし、保有資産の約33%を売却する予定です。
そして6300に達した場合、さらに33%を売却します。
もしその後も上昇が続き、マクロ指標が引き続き弱い場合は、最終手段としてショートポジションを検討しますが、これはあくまで最後のオプションです。
・債券は、金利がもう少し上がった後に良い買い場が来ると見ています。
・ゴールドも購入の好機が訪れると考えています。
・原油は今後も下落傾向が続くかもしれません。
・ビットコインや暗号資産は今のところ堅調ですが、リセッションが始まると注意が必要です。
本日のレポートは以上です。
今回のレポートが皆さんのお役に立てれば幸いです。
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