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10 - 11 - 2024

9月米国コアCPIは0.3%増でCPIは前年同月比2.4%も、FRBによる利下げ予想は変わらず、ソフトランディング目前!

ローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、昨日、10月10日に発表された9月の米国消費者物価指数(CPI)の詳細、並びに、その結果を踏まえた今後のFRBの利下げ予想を詳しく解説していきます。
  • 昨日の米国株式市場は、インフレ指標の上昇と失業保険申請の増加により、FRBの利下げが遅れるのではないかとの懸念が広がり、弱い展開となりました。 
  • コアCPIは予想を上回る増加を見せたものの、FRBの目標に向けた小さな障害に過ぎず、コアPCEは依然として改善の余地があると見ています。 
  • 週次の失業保険申請増加はハリケーンの影響であり、しばらくは労働市場の実態を正確に反映しない可能性があります。

昨日の米国株式市場は、インフレ指標の一つが上昇したことで、FRBの利下げが遅れるのではないかという懸念が広がり、振るわない展開となりました。

加えて、週次の失業保険申請件数が急増し、労働市場の軟化が進んでいることが示されたため、FRBが目指す「ソフトランディング」にとって厳しい状況となりました。

さらに、イランの最新のミサイル攻撃に対するイスラエルの反応を見守る中、原油価格が反発したことも不安材料となりました。

しかし、これらの懸念がリスク資産に与えた影響は軽微で、終わってみれば、強気相場を支える好調な流れが大きく損なわれることはありませんでした。

つまり、S&P500指数が新たな最高値を更新した後の、単なる利益確定の動きに過ぎなかったと言えるでしょう。

(出所:Finviz

9月の消費者物価指数(CPI)は、予想の0.1%増を上回る0.2%の上昇となり、前年比では予想の2.3%ではなく2.4%に低下しました。

それでも、前年比は6カ月連続で低下し、2021年2月以来の最低水準となっています。

コアCPIは予想の0.2%増ではなく0.3%増となり、前年比では前月の3.2%から3.3%に上昇しました。

この結果は、一時的に弱気派の見解を裏付けるものとなりましたが、FRBの2%目標に向けた道のりでの小さなハードルに過ぎません。

米国のコアインフレ率が予想を上回る上昇

2023年5月以降で最大の伸びを示した商品価格、コアサービスの価格も上昇

(出所:Bloomberg

食品とエネルギーを除くコアインフレ率は0.3%の上昇を見せましたが、これは主に住宅費を除いたサービス価格の上昇が原因です。

具体的には、航空運賃、自動車保険、スポーツイベントのチケット(ちょうどNFLシーズンが始まったところです)などが含まれます。

一方、サービスの中で最も大きな割合を占める住宅費の上昇率は0.2%に抑えられ、長らく期待されていた減速がようやく見られました。

全体の財やサービスの価格動向はすべて一様に動くわけではなく、あるものは上がり、あるものは下がります。

しかし、総合的に見ると、この2年間で一貫して低下してきたことが重要です。

12カ月間のチャートでは、この上昇がトレンドの反転に見えるかもしれませんが、それはあくまで一時的な変動にすぎないと見ています。

(出所:TradingEconomics

次に、これを3年間のスパンで見るとどうでしょうか。

やはり、これはごく小さな障害に過ぎません。

加えて、FRBは金融政策を決定する際にコアCPIを基準にしているわけではなく、コア個人消費支出(PCE)価格指数を使用しています。

このPCEは8月時点で2.7%に低下しており、9月のデータが月末に更新されれば、さらなる改善が期待されます。

PCEはCPIとは異なるウェイトで財やサービスを計算しており、9月のCPIで見られた一部の価格上昇の影響をあまり受けない仕組みになっています。

(出所:TradingEconomics

週次の失業保険申請件数が急増したのは、ハリケーン・ヘレーネの影響によるものです。

今後もヘレーネやミルトンの影響で申請者数が増える可能性があり、数週間はこのデータが労働市場の実態を正確に反映しないでしょう。

そのため、私はこの指標にはしばらく注目しないことにしています。

(出所:TradingEconomics

最近、FRBの高官たちは、高頻度で発表される経済データが短期金利の決定にどう影響するかを話し合っていますが、私はその議論に耳を傾ける価値はあまりないと思っています。

利下げのサイクルはすでに始まっており、FRBのパウエル議長は今後12カ月間で3〜3.5%の中立金利を目指して、緩やかで着実な利下げを進めていく可能性が高いです。

そのため、11月と12月の会合では、それぞれ25ベーシスポイントの利下げが実施されると見ています。

インフレ率は過去1年間の価格動向を示す遅行指標であり、金利の変動、つまり借入コストの変化が供給と需要に影響を与え、それが価格の上昇に反映されるまでには数カ月かかります。

つまり、FRBがインフレ抑制のために過去に行った利上げの影響は、まだ続いているということです。

また、すでに始まった利下げも、経済に実質的な影響を与えるまでにはまだ時間がかかります。

そのため、FRBはインフレ目標に到達する前に、金融政策を段階的に緩和していく必要があります。

これは単なる科学的な計算ではなく、バランスを見極める技術が求められるものですが、パウエル議長はそのタイミングを非常に上手く捉えていると思います。

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アナリスト紹介:ローレンス・フラー

ローレンス・フラー氏は、1993年にメリルリンチ証券でファイナンシャル・コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。その後、ファースト・ユニオン・ブローカレッジ、モルガン・スタンレー証券、INGグループで同職を務め、30年以上にわたり個人投資家顧客の投資ポートフォリオを管理してきました。

その後、2005年には長期的な目標であったFuller Asset Management LLCを設立し、独立を果たしました。さらに、2013年より米国金融ニュースサイトSeeking Alphaにて、米国投資家に対してマクロ経済・投資リサーチの提供を開始しており、現在では14,000人以上のフォロワーを獲得しております。

フラー氏は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校を卒業し、政治学の学士号を取得しております。

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