10/30/2024

米国大統領選挙で株価はどうなる?ハリス氏とトランプ氏のどちらが勝利しても大幅な下落を予想する声は少ない?

red and blue building illustrationローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、来週11月5日に控える2024年の米国大統領選挙が株価へ与え得る影響に関して詳しく解説していきます。
  • 米国株式市場は、原油価格の急落とイスラエル・イラン間の緊張緩和の影響で反発し、ラッセル2000小型株指数が特に高い上昇を記録しました。 
  • 来週の米国大統領選挙では、トランプ氏とハリス氏のどちらが勝利しても市場の大幅な下落は予想されておらず、政策が経済成長や企業収益に与える影響が注目されています。 
  • トランプ氏の関税政策が再導入されればインフレや金利上昇に影響を与え、特にS&P 500指数の高バリュエーションに悪影響を及ぼす可能性があります。

米国大統領選挙の株価への影響とは?

先週の不調から一転、米国株式市場は反発しました。

これは、原油価格が1バレルあたり約4ドルも急落したことが大きな要因です。

この売りが発生した背景には、週末にイスラエルがイランに対し一段と積極的な攻撃に出るという投機的な取引の解消がありました。

実際の爆撃は核施設や石油関連施設を避けて行われたため、トレーダーの予想を裏切る形となりました。

原油安はガソリン価格の低下を意味し、結果的に米国の消費者にとって使えるお金が増えることになります。

これが、国内に焦点を当てたラッセル2000小型株指数(IWM)が主要な市場指数の中で最も高い上昇を記録した理由だと思われます。

また、債券利回りもわずかに上昇し、米国2年国債は4.15%、10年国債は4.3%となりました。

これは一昨日の債券入札での需要の弱さや、選挙が近づく影響も関係しているかもしれません。

私は、政治的な視点を持ち込まず、経済データの解釈や市場戦略を一貫して進めています。

どんな政権であっても同じ姿勢で対応し、偏りを排してリスク管理と利益を目指すことが重要です。

正直に言えば、私個人の意見よりも、マーケットを動かすのは市場のコンセンサスです。

11月5日の選挙結果はわかりませんが、政策の違いが投資に与える影響があるため、少しずつ注目しています。

ただし確かなのは、誰が勝ったとしても、選挙後の不透明感が解消されると株価が上昇しやすいということです。

株式市場の見通しは明るい

市場調査:今年これまでにS&P 500は月平均約2%上昇しているが、各候補が勝利した場合、この上昇はどうなるのか?

(出所:Bloomberg

最近のブルームバーグの調査によると、市場の投資家はトランプ氏が勝利すればハリス氏が勝った場合よりも株式市場が大きく上昇すると見ていますが、どちらのシナリオでも大幅な下落は予想していないようです。

私も同意見です。

市場のリターンは経済サイクルに依存しており、FRBが借入コストを引き下げ始めたことで、現在の拡大基調はしっかりとした基盤があると考えられます。

トランプ氏が再選した場合に市場が強含むと見られているのは、彼が法人税の引き下げや、特定の労働者や所得に対する税金の完全撤廃を提案しているためです。

これは財政刺激策の一種であり、経済成長や企業収益の加速が期待されます。

しかし、大統領には税金を単独で引き下げる権限はなく、上下両院で共和党が多数を占める必要がありますが、それは実現が難しいと見られます。

また、これにより財政赤字が拡大し、共和党内からも反発を招く可能性があります。

一方で、カマラ・ハリス氏も独自の減税案を持っていますが、法人税には含まれておらず、むしろ法人税や富裕層への増税を提案しています。

そのため、投資家からの市場への期待感がやや低いのです。

しかし、分裂した政府の下で増税が実現する可能性も低いため、ハリス政権下では現状維持が続くと考えられます。

いずれにせよ、私は年末まで強気を維持する予定です。

これまでの2年間と同様、新しい大統領と議会がどの政策を実行するかが明確になるまで様子を見守りたいと思います。

その際も、市場が政策の経済的影響をどのように織り込むかを重視して判断します。

ハリス氏の政権下では現状維持が見込みやすい一方、トランプ氏が再選すると多くの変数が絡んでくるでしょう。

その中でも特に重要なのは関税です。

これはトランプ氏が議会の承認なしで実行できる政策です。

関税の是非は政治家に委ね、私は経済や市場への影響にのみ関心を持っています。

トランプ氏は全ての輸入品に20%、中国からの輸入品には最大60%の関税を課す案を主張しています。

彼は、これにより米国の製造業を保護し、連邦政府の収入を増やせると考えていますが、一方で消費者への実質的な負担増につながるという反論もあります。

経済学者の試算によれば、関税により家庭ごとに年間4,000ドルもの負担が増える可能性があり、製造業者は関税分を価格に転嫁し、消費者の購買力を圧迫する恐れがあるからです。

(出所:Mishtalk.com

そのため、もしトランプ政権が再び発足し関税が大幅に引き上げられる場合、私はそれがインフレ調整後の消費支出、つまり経済のエンジンとなる消費にどう影響するかに注目します。

消費が大きく減速し始めれば、リスク資産への投資は一層慎重な姿勢が求められるでしょう。

もう一つの懸念は、トランプ氏の関税案がもたらすインフレと金利への影響です。

一般的な見解では、関税が導入されると、生産コストや消費者価格が上昇し、インフレを引き起こす可能性が高まります。

関税によって生産者価格が上昇し始めれば、それが消費者物価上昇の前兆となり、長期金利の上昇を通じて債券市場にも影響が出るでしょう。

2016年にトランプ氏が就任した時と異なり、現在米国10年債の利回りは既に高水準にあります。

インフレの上昇で長期金利が5%を超えるような事態になれば、特に現在のS&P 500指数の高いバリュエーションには大きな悪影響を与える可能性があります。

2016年のシナリオをそのまま参考にするのは注意が必要

10年債の利回りは、当時は現在よりも低く安定

(出所:Bloomberg

投資家が分裂政府を好むのは、政治家が市場の自由な動きを妨げることを防げるからです。

大きな政策変更は経済に影響を及ぼしますが、トランプ氏もハリス氏も歳出削減や財政赤字解消に具体的な計画を持っていません。

いずれこれは経済や市場に大きな影響を与えることになるでしょうが、それはまだ先の話だと見ています。

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📍米国マクロ経済担当

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