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11 - 05 - 2024

悲惨指数(ミザリーインデックス)とは?アメリカの悲惨指数は歴史的にも低水準で強気相場は継続?

ローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、歴史的にも低水準にある悲惨指数(ミザリーインデックス)の基本的な概念から、実際に同指数が示す今後の米国株式市場の見通しまで詳しく解説していきます。
  • 昨日の市場は次期大統領選挙への不安から株価が下落する一方、経済基盤は強く、インフレや失業率も歴史的低水準を維持しています。 
  • 消費者の支出は賃金増加に支えられ、実質賃金が上昇していることから、経済成長を後押ししている状況です。 
  • 政府債務と赤字の拡大が問題視されており、増税や歳出削減が必要ですが、政治的解決策が不足している中、市場は今後の動向を注視しています。

米国大統領選挙後の米国株の見通しとは?

昨日の米国株式市場では、まるで次の大統領がコイントスで決まるかのような不安感が広がり、投資家は様子見の姿勢を取っていました。

主要な株式指数は下落し、債券市場は上昇しましたが、ラッセル2000指数だけは0.5%の上昇を記録しました。

このような不透明な状況の中、ただ一つ確かなのは、次の大統領が非常に力強い経済を受け継ぐことになるという点です。

(出所:Finviz)

現在、金融市場と住宅資産は過去最高水準にあり、失業率も歴史的な低さを維持しています。

賃金は1990年代の好景気以来の勢いで伸びており、経済成長率も6四半期連続で2.5%以上を達成し、20年ぶりの強い成長基調を示しています。

インフレ率は過去2年間で9.1%から2.4%にまで下がり、FRBも金利引き下げに踏み切りました。

また、S&P 500の企業利益も今後4四半期にわたり増加が見込まれています。

2年前から何度も予測されてきた景気後退は結局訪れず、経済は穏やかな「ソフトランディング」を迎えようとしています。

過去2年間の20%以上の株価上昇に続き、3年目の強気相場を迎える中で、投資家にとってこれ以上の好条件はありません。

前年同期比で米国のGDPは6四半期連続で2.5%以上の成長を達成

このような成長が続いたのは2006年以来最長

(出所:Bloomberg

消費者物価指数(CPI)は2.4%まで低下しましたが、FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数も2.1%にまで下がっています。

コアインフレ率はやや高めですが、消費者にとっては、食料やエネルギーを含む全体の物価が重要であり、これがFRBの物価安定目標に達しています。

インフレ率はFRBの目標である2%付近を推移

中央銀行が好む指標は、前年同月比で9月に2.1%上昇

(出所:Bloomberg

とはいえ、特に食料品の価格に対する不満は根強く残っています。

物価上昇率は2年前から大幅に下がったものの、価格自体が下がったわけではありません。

デフレが起こって景気後退や失業を招かない限り、物価が下がることは通常ないからです。

しかし、家庭の支出に占める食費の割合は、パンデミック前の水準に戻っています。

通常の状態に戻る

アメリカ人の食費の割合が、パンデミック前と同じ水準に戻る

(出所:Bloomberg

これは、パンデミック前と比べて物価が約16%上昇している一方で、賃金はそれ以上の割合で増えているためです。

2023年の初めからは賃金の伸びがインフレを上回っており、実質賃金(インフレ調整後の賃金)が増加しています。

これが実質的な消費支出を支え、経済成長の原動力となっています。

意識調査によると、消費者は物価の上昇を気にする傾向がありますが、実際にはインフレ調整後でも年間約3%の成長で消費を続けています。

言っていることよりも、実際に何をしているかの方が重要です。

2023年初頭から、賃金の伸びがインフレ率を上回るペースで増加

(出所:Bloomberg

また、消費者の借金が「負担」になっているとされますが、実際には消費行動を大きく抑えているわけではありません。

重要なのは借金の総額ではなく、可処分所得に対する返済負担の割合です。

住宅ローンを除いた消費者債務について見ると、返済に必要な割合は5.6%で、長期平均を下回っています。

特に、実質賃金が増加している現状では、この水準は消費への大きな障害にはなりません。

住宅ローンを含めた場合でも、パンデミック時の借り換えブームの影響で返済負担は改善しています。

可処分所得に対する消費者の債務返済割合

(出所:FRED

次に、アメリカの消費者心理を表す「悲惨指数(ミザリーインデックス:Misery Index)」についてです。

悲惨指数は、経済の苦痛度合いを示すための指標です。

具体的には、失業率インフレ率を合計して算出され、経済の不調や生活の困難さを示すものとして使われます。

この指数が高いほど、失業と物価上昇の影響で生活が困難になっていることを意味します。

元々は1970年代にアメリカで考案され、経済状況をシンプルに評価する指標として利用されました。

失業率が高いと仕事が見つかりにくく、インフレが進むと物価が上昇して購買力が低下するため、両方が悪化すると生活が一層困難になるとされています。

しかしながら、下記のグラフからも分かる通り、この指数は、現在は歴史的にも低水準にあります。

そのため、経済成長は非常に堅固な基盤の上にあり、今後も強気相場が続く可能性が高いと考えられます。

米国の選挙年における「悲惨指数」

インフレ率と失業率を合計したこの指標(広く用いられる生活水準の指標)は、2016年を除く最近の選挙年と比べて低い水準にある

(出所:Bloomberg

一方で、見逃せない問題は、連邦政府の債務と赤字の拡大です。

このペースは持続不可能であり、解決には増税と歳出削減が必要ですが、現状ではどちらも実行する政治的な意志が見られません。

大統領候補のどちらも、この問題に具体的な対策を示しておらず、むしろそれぞれの政策が債務と赤字をさらに増やす恐れがあります。

したがって、市場がこの問題について判断を下すことになるでしょう。

私も投資の観点から、債務と赤字がどの時点で重要なテーマとなるかについて、市場の動きを注視していくつもりです。

ただし、それまでは、現状のペースで進むと考えています。

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アナリスト紹介:ローレンス・フラー

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