04/09/2025

トランプ関税は停止すべき?主要な経済関係者や政治家からも政策転換を求める声が高まる!

assorted bobblehead figurines inside the storeローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、「トランプ関税は停止すべきなのか?」という疑問に答えるべく、足元で展開されるトランプ大統領による関税政策、並びに、今後の米国株見通しに対する私の見解を詳しく解説していきます。
  • 株式市場では関税を巡る不透明感から極端な値動きが続いており、今後30日以内に貿易協定への転換がなされなければ、景気後退のリスクが高まると考えています。
  • 現在の貿易政策は富裕層の消費を冷やし、負の資産効果が経済全体に波及する恐れがあるため、主要な経済関係者や政治家からも政策転換を求める声が高まっています。
  • 一時的な株価の反発は見られるものの、関税が持続可能でないことを踏まえると、今後も高いボラティリティが続く可能性が高く、迅速な政策対応が求められていると見ています。

トランプ関税は停止すべきなのか?

一昨日の主要株価指数の終値だけを見ると、一見すると相場はようやく落ち着きを取り戻したように見えましたが、実際には記録に残るほどの激しい値動きがありました。S&P500指数は取引開始直後に5%近く下落したものの、30分以内にトランプ大統領が関税の実施を90日間延期して交渉の時間を設けるとの噂が流れると、一転して3.4%の上昇に転じました。ラッセル2000小型株指数の値動き幅は10%を超えました。これほど極端なボラティリティ(変動)は、私自身これまで見たことがありません。噂の出所や意図は不明ですが、これが示しているのは、もし関税から貿易協定への移行が実現すれば、市場は非常に大きな上昇余地を持っているということです。私は、私たちにはこれを実現するための猶予が30日しかないと考えています。さもなければ、関税がこの経済拡大の流れを終わらせてしまうリスクがあると見ています。

その理由は、今週提案されている関税が実際に実施され、そのまま維持された場合に起こるであろう景気後退を、株式市場がすでに急速に織り込んでしまっているからです。先週発表された雇用統計が示すように、経済の基礎的なデータは今も健全さを保っていますが、金融資産の価格が長期間低迷した場合に生じる「負の資産効果」は、経済にマイナスのフィードバックループを引き起こす可能性があります。今年の株価下落と、過去にリセッションを招いた下落との最大の違いは、今回の要因が「自ら招いたもの」である点です。貿易政策が変更されれば、たとえ緩やかな修正にとどまったとしても、リスク資産の価格は急速に回復する可能性があります。昨日見られた一時的な回復が、その可能性を示しています。

「関税に関する報道で株価が大きく乱高下」

(出所:Bloomberg

トランプ政権は、株式市場の急落に対する懸念を一蹴しており、それに伴って下落しているエネルギー価格や長期金利が、消費者にとってはプラスになると主張しています。それ自体は事実です。しかし問題は、それらの下落が、今年中に景気後退が訪れるのではないかという懸念と結びついている点です。もしそうなれば、株式を保有していない米国の下位50%の家庭にとっては、価格下落の恩恵が帳消しになってしまいます。株式市場の富の大半は上位10%の層が保有しており、この層が米国の個人消費の50%を占めています。もし今回の株価下落が4月を越えて長引き、かつ意味のある回復が見られなければ、この上位10%は確実に消費を抑えるようになり、それは私たちの経済成長にとって死活的な打撃となります。

所得階層別の累積過剰貯蓄

(出所:MishTalk

消費支出が1か月から2か月以上にわたって減少し始めると、それは雇用の喪失につながります。雇用が失われることで、さらに消費力が失われ、支出の減少がさらなる雇用喪失を招き、それがまた支出のさらなる減少を引き起こすという、負のフィードバックループが生まれてしまいます。同時に、関税が今後数か月のうちに引き起こすであろうインフレ――たとえ一時的な価格上昇にとどまったとしても――は、株式市場の富を持たない人々の実質賃金(インフレ調整後の賃金)上昇を帳消しにしてしまいます。これが、今後1か月以内に株式市場が回復することが、2025年の景気後退を回避する上で極めて重要である理由です。朗報なのは、それを実現するために必要なのは、懲罰的な関税から貿易協定への移行だけである、という点です。

そのため、今では政権を支持していた多くの人々までもが距離を置き始めています。共和党の議員たちを含め、ビル・アックマン氏、ケン・グリフィン氏、スティーブン・ドラッケンミラー氏といった金融界の大物、さらにはイーロン・マスク氏までもがその一人です。マスク氏は、米国とEUの間で「自由貿易圏」の創設を提案しています。彼らは、現在の貿易政策がこの先もたらすであろう悪影響を見通しており、そのリスクはすでに市場価格に反映され始めています。彼らは報復措置の強化ではなく、交渉による解決を促しています。これは、一昨日、大統領が中国からの輸入品に対する関税を100%以上に引き上げると脅した件にも通じています。

改めて申し上げますが、私は依然として、関税ではなく貿易協定が導入されるという発表がなされると考えています。それは、メインストリート(一般市民)、ウォール街(金融市場)、そして大統領自身の政党内からの圧力が日増しに高まっているからです。この変化は、負の資産効果が経済全体に及ぶ前に実現しなければなりません。私たちには、これを正すための時間があと30日しか残されていないと思います。

週末に、S&P500の強気相場において、4816までの50%リトレースメントが買い手が現れるであろう支持水準になる可能性が高いと申し上げました。一昨日の安値は4835でした。その時点で株価は反発し、その1時間後に取引フロアを駆け巡った噂によって、一気に勢いづきました。そして、昨日も寄り付き後はその流れが続いており、大統領が中国からの輸入品に対する関税をさらに50%引き上げると新たに警告したにもかかわらず、この展開はやや意外ではあります。

ただし、株価の上昇が大統領の対外強硬姿勢をより一層強める結果につながる可能性があるため、足元の上昇は長く続かないと見ています。それでも、4800付近、あるいはそれを少し下回る水準は、緊張が緩和に向かえば、持続的な下値支持となる可能性があります。

(出所:Stockcharts

相場の「底」は一つの出来事として訪れるものではなく、プロセスであるため、今後数週間にわたって大きなボラティリティが続くことを覚悟する必要があるでしょう。そして、この貿易摩擦が解決に近づくにつれて、そうした状況が顕著になると見ており、何より、現在の関税水準は、長期的に持続可能なものではないと考えています。

(出所:Bloomberg)


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