05/14/2025

4月の米国消費者物価指数(CPI)は予想以上に低下も今後の米国株見通しへの影響とは?

a pile of money sitting on top of a wooden floorローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、最新の2025年4月の米国消費者物価指数(CPI)の詳細と今後の米国株見通しへの影響を詳しく解説していきます。
  • これまでインフレ低下を背景に強気スタンスを維持してきましたが、現在はいくつかのマイナスの変化率が迫っていると感じており、特に投資家の過熱感に警戒しています。
  • インフレ率は底打ちし、年末にかけて関税の影響で再上昇する可能性が高く、これによりFRBの利下げ時期が遅れるリスクがあると考えています。
  • 短期的には経済成長率の鈍化や失業率の上昇が懸念され、慎重な見通しにシフトしつつも、S&P500は4月の安値を再び試さないとの見解から、基本的な強気スタンスは維持しています。

マイナスの変化率は無視できない

変化率に注目することが、3年前に景気後退を回避し、最終的に経済のソフトランディングが実現すると結論づけた理由でした。インフレ率はピークを迎え、ディスインフレのトレンドに入ろうとしていました。私は、圧倒的多数のコンセンサスが経済の減速を確信していた数々の困難な局面においても、その予測を貫きました。この経済見通しが、当時の複数回にわたる市場の調整局面や急落局面、そして今年の3月から4月にかけての下落局面においても、私を強気スタンスに保たせた要因です。 しかし今、私はいくつかのマイナスの変化率が目前に迫っていると感じています。それは、投資家たちが非合理的な熱狂に陥っているように見えるタイミングでもあります。

(出所:Finviz

S&P500は、「解放の日」以降の損失をすべて回復しただけでなく、年初来でプラス圏にまで上昇しています。しかし、現在の経済状況は、S&P500が4月2日に5,670で引けた時点ほど強いとは感じていません。当時、トランプ大統領の「相互主義」関税プログラムの導入により、実効関税率は約2.3%から23%に急上昇し、わずか4日後にはS&P500が終値ベースで4,982まで急落しました。私の予想通り、その後トランプ大統領は関税の導入を延期し、一部の関税を撤回したことで、市場は回復しました。しかし現在でも実効関税率は約15%に達しており、2.3%を大幅に上回っています。それにもかかわらず、S&P500は5,886に上昇しています。つまり、過去6週間で米国の全輸入品に対する実効関税率は2.3%から15%に上昇しているにもかかわらず、S&P500は3.8%上昇しているのです。何かがおかしいと感じます。

(出所:Bloomberg)

懸念する最初のマイナス変化率は米国のインフレ率

私が最初に懸念しているマイナスの変化率はインフレです。昨日発表された4月の消費者物価指数(CPI)は、予想以上に低下し、前年比2.3%と、2021年2月以来の低水準となりました。エネルギー価格はガソリンと燃料油の下落により3.7%下落しました。住居費は4%上昇し、全体のインフレ率の半分を占めましたが、その上昇率は緩やかになり続けています。コアインフレ率は2.8%で横ばいでした。私の懸念は、インフレ率が底打ちし、年末に向けて再び上昇に転じると考えている点にあります。

現時点では、輸入業者が関税導入前に仕入れた在庫を消化しているため、関税による価格上昇はまだ表面化していません。しかし、米国税関は先月、関税収入として170億ドルを徴収しました。この額は今後さらに倍増すると予想されており、それに伴い多くの商品価格に上昇圧力がかかり、輸入業者が消費者へとコストをさまざまな形で転嫁することになるでしょう。

(出所:TradingEconomics

住居費の低下がCPIや個人消費支出(PCE)に対する上昇圧力を一部和らげる可能性はありますが、今後6か月間の月次比較が非常に厳しくなることが問題です。最も簡単に上回れる数字は月次0.17%の上昇ですが、今後この数値を上回る月次上昇率が出れば、年率換算のインフレ率は上昇します。さらに悪いことに、これらの数値は季節調整後のものですが、年率換算には季節調整なしのデータが用いられます。今年末まで、季節調整なしの月次上昇率は0.17%未満です。したがって、関税が本格的に影響を及ぼし始めると、インフレ率はほぼ確実に徐々に上昇していくでしょう。これがFRBが慎重な姿勢をとっている理由です。

(出所:TradingEconomics

米国にはインフレ以外にも懸念するマイナス変化率が存在

私が懸念しているマイナスの変化率はインフレだけではありません。イェール大学のThe Budget Labによる詳細な分析によれば、中国との合意を織り込んだうえで、米国全輸入品に対する新たな実効関税率は現在15.4%に達しています。この非党派の政策研究機関は、関税率によって貿易がどのように変化するかについて仮定を置き、代替調整後の関税率を14%と推定しました。その結果、2025年には、インフレ率が1.4%上昇し、経済成長率が0.7%減速し、失業率が0.35%上昇すると予測されています。これらはいずれもマイナスの変化率です。

(出所:The Budget Lab)

もしインフレ率が1.4%上昇すれば、年末時点でCPIおよびPCEの年率換算値は3.7%となる見込みです。月次比較を考慮すると、これは十分に現実的な数字に思えます。この1.4%の上昇は、関税率に基づき、インデックス内の各コンポーネントの価格水準の変化率を分析したうえで計算されたものであり、ウォール街のストラテジストによる単なる思いつきの予想ではありません。

(出所:The Budget Lab)

FRBによる利下げの遅れと今後の米国株の見通し

これらマイナスの変化率が継続すれば、FRBによる短期金利のさらなる引き下げは遅れるでしょう。これまで私を強気スタンスに導いてきたのは、FRBの金融緩和というプラスの変化率でもありました。FRBは将来的に再び利下げを行うでしょうが、それは経済成長率の鈍化と失業率の上昇が、インフレ率の一時的上昇への懸念を上回ったときになります。このインフレ率上昇は6〜12か月程度続く可能性がありますが、いずれ関税によるインフレ圧力が需要を抑制し、デフレ的な要因に転じることで、FRBは短期金利を迅速に引き下げることができるようになるでしょう。

新たな通商政策による投資の増加が経済成長の減速や失業率の上昇を相殺する可能性はありますが、その恩恵が実際に表れるまでには時間がかかるため、短期的には逆風となります。また、2017年の減税措置の延長や規制緩和による追加刺激策も相殺要因となるでしょう。移民政策によって労働力人口が縮小すれば、失業率の上昇も抑えられる可能性があります。

いずれにせよ、今後6か月間の市場と経済に対する見通しは、以前より慎重になっています。私は、S&P500が4月の安値を再び試すことはないと考えているため、依然として強気のスタンスを維持していますが、市場がすでにかなり回復している現状を踏まえると、楽観的な見方には一定の制約をかけざるを得ません。さらに悪いことに、現在の投資家たちは、これら「解放の日」以降に直面する逆風を追い風として捉えているかのように見えます。


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