05/15/2025

米国債の金利上昇による米国株への影響には要警戒?

Caution text overlayローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 米国株式市場は、わずか6週間で極端な売られすぎ状態から買われすぎ水準へと急反発しており、夏には一時的な調整を予想しています。
  • 株価の割高感が強まる中、インフレや経済成長の鈍化、トランプ政権の通商政策などが今後の逆風となる可能性があります。
  • 財政赤字削減の不透明感や米国債の金利上昇を受けた債券市場の動きが、米国株式市場の売り材料となるリスクが高まっていると見ています。

米国株は記録的な速さで「売られすぎ」から「買われすぎ」へ

株式市場は、6週間前には極端に売られすぎの状態にあったにもかかわらず、今では買われすぎとも言える水準まで急反発しています。それに伴い、市場関係者やウォール街のストラテジストたちの見通しも同様に感情的に揺れ動いており、リセッションや弱気相場への警告から、S&P500が過去最高値を更新するという強気な予測まで飛び交っています。こうしたセンセーショナルな意見は注目を集めやすく、極端な見方を助長する傾向がありますが、現実はその中間であることがほとんどです。

S&P500指数は4月の一時的な安値から22%も上昇しましたが、市場はすでに疲れを見せており、今夏には最大で10%の調整が入り、5,300程度まで下落してもおかしくないと考えています。これはリセッションや弱気相場を意味するものではなく、秋に向けた一時的な調整だと見ています。

(出所:Finviz)

昨日は、インフレ、個人消費、経済成長、雇用といった高頻度の経済指標で、今後ネガティブな変化率が見られると予想していることについてお話ししました。これらの変化は、トランプ政権の貿易政策によって引き起こされる見込みです。年後半には、規制緩和とFRBによる金融緩和の継続といった経済の追い風が、こうした逆風に対抗する形になるでしょう。しかし、先にやってくるのは逆風のほうであり、それゆえ、足元の株価上昇を追いかけている投資家にとって、今後数ヶ月は目を覚まさせられる期間になるかもしれません。

(出所:Bloomberg

米国株のバリュエーションはタイミングを測る道具としては不適切

私がバリュエーション(株価の割高・割安の評価)をタイミング判断のツールとして好まないのは、株価は割高でも上昇を続け、さらに割高になることがあるからです。重要なのは、変化率が好転しているかどうかです。しかし、変化率が悪化し始めたときには、バリュエーションが下落余地を決定づける要因となります。現在の水準は明らかに行き過ぎており、警戒すべきだと考えています。

S&P500は現在5,892で引けており、予想1株利益265ドルに対して、株価収益倍率(PER)は22倍で取引されています。仮に利益予想が上昇し、変化率も改善していればこの評価も納得できますが、現実はそうなっていません。

(出所:FactSet

さらに、この265ドルという予想利益は、今後3四半期にわたって利益と売上高の成長率が加速することを前提としています。しかし、現在から年末までの期間において、関税が経済成長率に与える逆風を考えると、それは現実的ではないと思われます。したがって、業績予想の下方修正が避けられない状況であり、これもまたネガティブな変化率のひとつです。こうした悪化要因が積み重なりつつあります。

(出所:FactSet

米国株の売りの引き金は債券市場か?

買われすぎた状況から何が売りを引き起こすのかは事前には分かりませんが、私の見立てでは、それは債券市場だと考えています。債券市場では、トランプ政権が財政赤字の縮小にどれだけ本気なのかに対する懸念が高まりつつあります。

この赤字削減は主要な選挙公約のひとつであり、「DOGE(ドッジ)」がイーロン・マスク氏とともに2兆ドルの歳出削減を掲げて取り組むはずでした。しかし、実際の削減額は1億ドル未満にとどまっています。

そして今度は減税政策に移行しようとしていますが、これはDOGEによって得られたわずかな節約効果をはるかに上回る歳入の減少を招き、逆に債務を増加させる結果になります。過去2年間に6%を超える財政赤字が続いている状況を改善するには程遠い内容です。

このような状況は債券投資家にとって懸念材料となり、10年物米国債の利回りは4.5%を超え、30年物は5%に迫っています。こうした利回りが政府支出削減の公約破棄を受けてさらに上昇するようであれば、それが株式市場で利益確定売りを誘発し、買われすぎた状況を正常化させる引き金になる可能性があります。

(出所:Stockcharts


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