米国株の売り時とは?2024年末に向けてラリーが加速する場合には一部の利益確定を検討!
ローレンス・ フラー- 本稿では、「米国株の売り時とは?」という疑問に答えるべく、足元の経済指標や新トランプ政権の政策が米国株の見通しに与え得る影響を詳しく解説していきます。
- 米国株式市場は、大統領選挙後の政策期待から堅調に推移しており、特にラッセル2000指数やサービス業の成長が市場を牽引しています。一方で、割高感が指摘される中、選別投資の重要性が増しています。
- 経済指標やFRBの12月の利下げが市場の焦点となっており、マクロ経済の堅調さが市場のソフトランディング期待を支えています。ただし、トランプ新政権の矛盾した政策が不透明感を高めるリスクもあります。
- 2024年末に向けてラリーが加速する場合には、今後の市場調整に備え、ポートフォリオの一部現金化やディフェンシブ銘柄への投資を検討しており、特にファイザー株等の低リスク銘柄に注目しています。
米国株の売却のタイミングとは?
1週間前、私は米国の株価の調整局面について、それが選挙後の上昇をしっかりと固め、年末に向けたさらなる上昇の準備を整える健全な動きだと述べました。
ただし、それを実現するには、12月にFRBが利下げを行い、債券市場が「良い動き」を見せて長期金利が最近の高値付近で安定する必要があると考えています。
実際に、大統領選挙以来、ここまで順調に進んでおり、特に先週は投資家は米国株から素晴らしいリターンが得られています。
(出所:Edward Jones)
特にラッセル2000指数が4.5%上昇し、以下のチャートで示したサポートラインから力強く反発しています。
iシェアーズ ラッセル 2000 ETF(IWM)の株価推移
(出所:Stockcharts)
そして、この勢いは12月初旬まで続く可能性があると思います。
金曜日に発表された、マクロヘッジファンド「Key Square Group」を率いるスコット・ベセント氏が財務長官に指名されたというニュースも、ウォール街に歓迎されるでしょう。
その理由としては、彼は市場に非常に精通しているためです。
米国大統領選挙以降、トランプ氏の政策公約による経済的追い風への期待から、株式や他のリスク資産が大きく上昇しています。
また、市場は強固な経済基盤を織り込み続けており、主要な市場指数が再び史上最高値を更新する可能性も十分にあります。
ただし、新年が始まる頃には、投資家がまだ直面していない課題が出てくるかもしれません。
そのため、戦術的には、年末が近づき、投資家の楽観的なムードが過熱する場合には、ポートフォリオの一部を現金化するのが賢明だと考えています。
幸い、経済は堅調に推移しており、12月を通じて株式市場の上昇トレンドを支えるでしょう。
金曜日にS&Pグローバルが発表した11月中旬のビジネス活動調査「速報PMI総合指数(Flash PMI Composite Output Index)」によると、指数は55.3と31か月ぶりの高水準を記録しました。
50.0を超える数値は経済の拡大を示しており、今回の好調な結果は主にサービス業が牽引しています。
サービスPMIは2022年3月以来の最大の拡大を示し、過去2年間の傾向が続いている形です。
さらに注目すべき点として、サービス業での財やサービスの平均価格上昇率が2020年6月以来の最低水準にまで低下しました。
このことから、第4四半期の経済成長が加速する一方で、インフレ率は着実に緩和していることがうかがえます。
これにより、FRBが12月に0.25%の利下げを実施することへの自信が深まり、経済が「ソフトランディング」したという見方が強まる可能性があります。
(出所:TradingEconomics)
こうした動きは、現在の四半期で前年比12%の利益成長率が予測されることを裏付けています。
この成長率は2021年第4四半期以来の高水準となる見込みです。
そして、株価は将来の動きを先取りして反応するため、2022年第4四半期に利益成長率が最低だったタイミングで底を打ち、それ以降は上昇基調を続けています。
S&P500の利益成長率:2022年第1四半期~2024年第4四半期
(出所:FactSet)
では、なぜ現金を増やすべきなのでしょうか?
私の考えでは、トランプラリーが現実に直面するタイミングが訪れると見ています。
それは、次期大統領が掲げる経済政策のいくつかが互いに矛盾しており、それが目標達成を非常に困難にすることが投資家に認識される時です。
たとえば、彼はインフレを抑えることを公約していますが、一方で輸入品に幅広く関税を課すとしています。
これは消費者価格を押し上げる要因になるのは明らかです。
また、財政赤字の削減を掲げながら大規模な減税を計画しており、経済学者によれば、この減税策は今後10年で赤字を約6兆ドル増加させると見込まれています。
このような矛盾する政策は、新政権が発足した後、不確実性を高め、市場の変動を引き起こす可能性が高いでしょう。
全資産を投資している状態では、このような変動を活用する余地が限られてしまいます。
予想PER:バリュエーションは全体的に割高だが、一部ではそうではない銘柄もある
(出所:Edward Jones)
また、S&P500やナスダック総合指数といった指標が既に割高な水準にあることも懸念材料です。
これにより、大幅な調整が起こるリスクが高まっていますが、その要因は主にテクノロジーセクターの好調さにあります。ただし、S&P500を等加重指数で見ると、過去10年の予想PERと比較して控えめな割安水準で取引されています。
さらに、S&Pスモールキャップ600も割安な水準にあります。
したがって、年明けに市場が調整局面を迎える場合、特定のセクターや個別銘柄に多くの投資チャンスが生まれると考えています。
それが私が想定しているシナリオです。
また、トランプ政権の今後の政策が米国経済に与え得る影響に関して関心がございましたら、私が直近執筆した下記のレポートをインベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。
加えて、インベストリンゴのアナリストであるジェームズ・ フォード氏も、トランプ新政権の政策が米国経済に与え得る影響に関する下記のレポートをリリースしています。
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今週の米国経済カレンダー
火曜日の午後には11月のFOMC議事録が発表されます。
12月の政策についてヒントを得るために注目されるものの、大きなサプライズはないと考えています。
一方、水曜日には個人消費支出(PCE)価格指数が発表され、これが12月の利下げが確実視されるかどうかを判断する重要な指標となるでしょう。
(出所:MarketWatch)
今週の注目の米国株:ファイザー(PFE)
年明けに市場が調整局面を迎えると見ていることから、今週はディフェンシブな選択としてファイザー(PFE)を挙げたいと思います。
現在インフルエンザの流行シーズンに入っているほか、新型コロナウイルスについても話題になる可能性があり、これが低迷しているファイザー株の回復を後押しするかもしれません。
ちなみに、RFK Jr.のワクチンに対する意見には全く興味はありません。
CDC(疾病予防管理センター)はホリデーシーズンに向けて、新型コロナとインフルエンザの症例が急増する可能性を警告しています。
現在の株価はPERが9倍未満、配当利回りが6%以上と、投資家にとって非常に安心感のある水準です。
さらに、最近では業績予想が大幅に上方修正されています。
(出所:SeekingAlpha)
株価は売られ過ぎの状況から反発しつつあり、相対力指数(RSI)が30を下回った後、25ドル付近で何度もサポートラインを確認しています。
投資比率が低い方やリスクの少ない投資先を探している方にとって、今が新規投資の好機と言えるかもしれません。
(出所:Stockcharts)
アナリスト紹介:ローレンス・フラー
📍米国マクロ経済担当
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