【米国債券見通し:2024年11月】イールドカーブは正常化!10年債利回りは好調な経済指標を受けて更に上昇する可能性も?
ローレンス・ フラー- 本稿では、今後のイールドカーブの動向を含む米国債券の見通しと、金利動向が米国株式市場に与える影響を詳しく解説していきます。
- 米国株は長期金利の上昇が一時的に株価を抑える要因となり、S&P 500の上昇は6週で止まりましたが、強い経済成長が金利上昇の背景にあると考えています。
- 米国10年債利回りが4.25%まで上昇する一方で、テクノロジー株を中心に資金移動が進んでいますが、選挙後には再び小型株への資金移動が再び加速する可能性があると見ています。
- 今週は多くの決算発表と経済指標の発表が予定されており、特に雇用統計やPCE物価指数といった雇用とインフレ関連指標に市場の注目が集まっています。
2024年11月第1週の米国株見通し
S&P 500の週間上昇記録は6週で途切れました。
これは、長期金利の上昇が短期的に株価の上昇を抑える要因となったためです。
FRBが先月利下げを始めてから、短期・長期ともに米国債の利回りが急上昇し、インフレが再燃してFRBが計画通りに利下げを進められなくなるのではないか、という懸念も広がっています。
しかし、先週の経済データからは、その懸念が過剰だと考えられます。
(出所:Edward Jones)
米国10年債の利回りが先月の3.6%から4.25%まで上昇したのは、予想以上に経済成長が強いことが背景にあります。
S&Pグローバルによる10月中旬の製造業とサービス業の調査では、PMI速報値が9月の54.0から10月に54.3へと上昇しており、年率換算で約2.5%の経済成長を示しています。
さらに、商品やサービスの平均価格の上昇率も2020年5月以来最も低くなり、金利上昇の要因はインフレではなく、予想を上回る経済成長だと考えられます。
これにより、長期金利が短期金利を上回る形でイールドカーブも正常化しています。
利回りの上昇は、経済指標が予想を上回る改善と重なる
(出所:Edward Jones)
米国2年債の利回りはおそらく4.1%でピークに達していると思われますが、10年債利回りは経済指標の好調さによってさらに上昇する可能性があります。
成長による利回りの上昇であれば、4.75%までの上昇は長期的には株価に大きな影響を与えないと考えています。
2023年秋には5%の水準が一時的にS&P 500の10%の調整を引き起こしましたが、来年その水準に戻る可能性は低いでしょう。
また、現在6兆ドル以上のマネーマーケットファンドが投資の好機を待っている状況にあり、これが金利の一時的な上昇を抑える要因にもなっています。
唯一、選挙結果だけがこの状況を変える可能性を持っていますが、それについては結果が出るまで触れないでおこうと思います。
(出所:Stockcharts)
また、FRBの会合以降の金利上昇は、テクノロジー株から他のセクターや小型株への資金移動を一時的に停滞させました。
過去5週間で、ナスダック100指数(QQQ)(特に「マグニフィセント7」の牽引)が4.7%上昇したのに対し、イコールウェイト型のS&P 500(RSP)は1.3%の上昇、ラッセル2000指数(IWM)はほぼ横ばいとなっています。
多くの銘柄は金利上昇の影響を受けやすいですが、借入を必要としないテクノロジーの大手企業は影響を受けにくい状況です。
11月5日の選挙が終われば、この資金移動が再び加速するだろうと予想しています。
(出所:Stockcharts)
S&P 500の構成銘柄のうち、すでに37%が決算を発表していますが、前年同期比の収益成長率は当初の予測4.3%から3.6%に下がっています。
とはいえ、「マグニフィセント7」の多くはまだ決算を発表しておらず、2024年度第3四半期の成長の多くはこれらの企業が牽引すると見込まれています。
そして、市場は第4四半期以降に、さらに良好な成長率を期待しているようです。
S&P収益成長率(前年同期比):2024年第3四半期
(出所:FactSet)
セクター別に見ると、上記の図からも分かる通り、エネルギーセクター(Energy)は当初予測で前年比19.1%の減益とされていましたが、実際には27.3%もの減益となっています。
ただし、エネルギーは景気循環の影響を受けやすいセクターで、底値のタイミングで買うのが理にかなっています。
今後4四半期の予想収益の増加率に注目すると、正確な数値よりも増加トレンドが示されていることが重要であり、このため私はエネルギーセクターへの投資を増やしています。
S&Pエネルギーセクター収益成長率(前年同期比):2024年第4四半期 - 2025年第4四半期
(出所:FactSet)
選挙日までの市場は、やや強気ながらも慎重な姿勢を維持するでしょう。
新しい大統領のもとでの戦略については選挙後に考えるつもりですが、市場が好むのは分裂した政権であることも覚えておきたいです。
下記のSentimenTraderの分析によると、S&P 500が200日移動平均線を242日以上上回っている状態が続いており、これは1928年以降たった13回しかない稀な状況です。
過去のデータによれば、6か月後の上昇確率は85%で、10%以上の調整があったのは1回のみとなっており、、これは今後の市場にとっても好材料といえます。
200日移動平均線を長期間上回る状態
200日移動平均線を上回った連続取引日数
(出所:SentimenTrader)
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経済指標カレンダー
今週は多くの決算発表と経済指標の発表が控えています。
火曜日には求人労働移動調査(JOLTS)と10月の消費者信頼感指数が発表され、水曜日には第3四半期のGDP速報値、木曜日には新規失業保険申請件数とPCE物価指数、そして金曜日には10月の雇用統計が発表されます。
今週の主な米国経済指標の発表とFRB関係者の講演
(出所:MarketWatch)
アナリスト紹介:ローレンス・フラー
📍米国マクロ経済担当
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