06/08/2024

中立
AT&T
中立
AT&T(T)の現在の株価は18と、弊社算出の一株当たり本質的価値である16.75ドルより高い水準にあることからも割高である可能性を示唆している。
AT&T(T)株価の今後の見通しとは?6%の予想配当利回りと47%の配当性向は魅力的?

graphical user interfaceイアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、AT&T(T:予想配当利回り6.15%・配当性向47%・1株当たり配当金0.2775ドル)の2024年4月24日に発表された最新の2024年度第1四半期決算と配当推移、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。 
  • そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 同社は米国第3位のワイヤレスキャリアであり、収益の約3分の2をワイヤレス事業から得ていますが、過去10年間の売上高成長率は低迷しており、今後の成長にはEPSと売上高の改善が求められます。
  • 過去5年間の配当成長率はマイナス傾向にあるものの、6.15%の予想配当利回りを維持し、安定した配当支払いを行っており、インカム投資家にとって魅力的な選択肢となっています。
  • 株価は本質的価値をやや上回るものの、PERやEV/EBITDA倍率では割安な水準にあり、流動性も高いため、投資対象として一定の魅力を備えています。

AT&T(T)の概要

セクター:テレコム・情報通信

現在の株価:18ドル

時価総額:1297.8億ドル

弊社算出の一株当たり本質的価値:16.75ドル

安全マージン:-8.05%

過去5年間の配当成長率:-12.80%

直近配当落ち日:2024年4月9日

直近配当支払い日:2024年5月1日

予想配当利回り:6.15%

過去5年間の売上高成長率:-9.80%

過去10年間の売上高成長率:-4.40%

AT&T(T:予想配当利回り6.15% / 配当性向47%)は米国第3位のワイヤレス・キャリアであり、7200万人のポストペイドと1700万人のプリペイドの顧客を持っており、ワイヤレス事業は同社の売上高の約3分の2を占めている。

固定回線企業向けサービスは売上高の約16%を占め、インターネット・アクセス、プライベート・ネットワーク、セキュリティ、音声、卸売ネットワーク容量が含まれている。

売上高の約11%を占める住宅向け固定回線サービスは、主にブロードバンド・インターネット・アクセスで構成され、1,400万人の顧客にサービスを提供している。

同社はメキシコでも2,200万人の顧客を抱え、大きな存在感を示しているが、この事業は同社売上高の3%を占めるに過ぎないというのが現状である。

さらに、同社は現在も衛星テレビ事業者ディレクTVの株式を70%保有しているが、財務諸表上ではこの事業を連結としていない。

そして、同社は2024年4月24日に2024年度第1四半期決算を発表している。

AT&T(T)の収益と成長に関して

AT&T(T)の2024年度第1四半期の非経常損益項目を除くベースでのEPSは0.55ドルで、前四半期の0.54ドルを小幅に上回る着地となっており、また、希薄化後のEPSも前四半期の0.30ドルから0.47ドルに増加している。

一方で、1株当たり売上高は前四半期の4.452ドルから4.175ドルへとわずかに減少する着地となっている。

また、長期的なパフォーマンスを見ると、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は-1.00%で、過去10年間の年平均成長率は-2.20%となっていることからも、同社は長年にわたりボトムラインの成長に苦しんでいることが分かる。

ただし、今後10年間のテレコム業界の成長予測を見ると、着実な成長で緩やかなものになると予想されている。

さらに、同社の過去の財務レバレッジの度合いを考えると、同社には成長の余地があるが、レバレッジ・レベルを慎重に管理する必要があると言える。

以上より、足元の業績と業界の見通しから、AT&Tは今後数年間安定的に成長する可能性があるが、持続的な成長を確保するためには、希薄化後1株当たりEPSと売上高の改善に注力すべきである。

AT&T(T)の配当に関して

AT&T(T)の過去数年間の配当成長率はマイナス傾向にあり、過去5年間の配当成長率は-12.80%で、過去3年間の配当成長率は-18.90%となっており、長期的に株主への配当が減少していることを示している。

しかし、同社は依然として6.15%という競争力のある予想配当利回りを提供しており、これはセクター平均よりも高い水準にあると言える。

そして、これは、配当成長率が低下しているにもかかわらず、同社が投資家に魅力的な配当水準を提供し続けていることを示唆している。

一方で、同社のEBITDA純有利子負債倍率は3.35倍で財務面でのリスクがやや高いことを示しており、今後の同社の経営、並びに、継続した配当の支払いに影響を与える可能性がある点には注意が必要である。

直近の四半期を見ると、同社は1株当たり0.2775ドルの配当を支払っており、また、同社には定期的な配当支払いのスケジュールが確立されており、投資家に信頼できる配当による収入源を提供している。

まとめると、同社は配当成長率の低下を経験しているものの、依然として競争力のある予想配当利回り水準を提供し、安定した配当支払いを維持していることから、現在の市場環境において配当収入を求めるインカム投資家にとって魅力的な選択肢となっている。

予想配当利回り:6.15%

配当性向:47%

配当カバレッジ・レシオ:1.67

過去5年間の配当成長率:-12.80%

EBITDA純有利子負債倍率:3.35倍

AT&T(T)のバリュエーションに関して

AT&T(T)の現在の株価は18と、弊社算出の一株当たり本質的価値である16.75ドルより高い水準にあることからも割高である可能性を示唆している。

一方で、実績PERは9.73倍となっており、株価が収益に比べて割安であることを示している。

また、株価売上高倍率は1.06倍となっており、株価が売上高に対して妥当な水準で取引されていることを示唆している。

さらに、EV/EBITDA倍率は6.19倍で、EBITDAに基づくと、株価が魅力的に評価されていることを示している。

加えて、5年平均、10年平均と比較すると、同社は株価売上高倍率とEV/EBITDA倍率では現在割安なバリュエーションとなっているように見える。

そして、これらの比率の業界平均は、比較のためのベンチマークとなる可能性があるが、同社の評価においては、さらに業界固有の要因を考慮する必要がある。

全体として、株価売上高倍率とEV/EBITDA倍率に基づくと、AT&Tは過去の平均値や同業他社と比較して魅力的なバリュエーションを付与されているように見える。

AT&T(T)のリスクとリターンに関して

AT&T(Tのリスク評価分析では、主に投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたい

まずマイナス面では、1株当たり売上高は過去5年間減少している一方で、株価は1年ぶりの高値水準に近く、予想配当利回りは10年ぶりの低水準に近くなっている。

一方でプラス面では、ピオトロスキーのFスコアは8となっており、非常に健全な財務状況を反映していると言える

さらに、ベニッシュのMスコアは-2.84となっており、同社が利益操作を行っている可能性が低いことを示唆している。

加えて、同社の営業利益率は拡大しており、これは一般的にポジティブな兆候である。

全体として、売上高の減少や予想配当利回りの低下など、AT&Tにはいくつか警戒すべき兆候があるものの、強力なFスコアと営業利益率の拡大は一定の安心感を与える内容である。

AT&T(T)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

インサイダー取引データによると、AT&T(T)の過去12ヶ月間のインサイダーによる同社株式の売買は一切確認されていない。

これは、インサイダーが積極的に同社株式を売買していないことを示しており、ポジションの安定性を示唆している可能性がある。

ただし、インサイダーによる同社株式の保有比率はわずか0.16%である点にはご留意いただきたい。

一方、機関投資家の保有比率は33.43%となっており、同社株式のかなりの部分が機関投資家によって保有されていることを示唆している。

この機関投資家保有比率の高さは、株価の売買動向や市場全体のセンチメントに影響を与える可能性がある。

全体として、最近のインサイダー取引の欠如と比較的低いインサイダー保有比率から、同社インサイダーによる同社株式への影響が限定的であることを示唆している。

一方で、機関投資家による保有比率は3割以上となっていることからも、機関投資家の保有動向をモニタリングすることで、今後のAT&Tに対する市場センチメントについて貴重な洞察が得られる可能性があるだろう。

AT&T(T)の流動性に関して

AT&T(T)の流動性は高く、直近営業日の1日当たり出来高は36,431,601株で、過去2ヶ月間の1日平均出来高は34,449,013株となっていることからも、株価に大きな影響を与えることなく、投資家が同社株式を自由に売買することが可能であることを示している。

また、同社株式のダークプール指数(DPI)は44.98%で、取引活動のかなりの部分がダークプールで行われていることを示している。

※ダーク・プール指数は、ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。

この高水準のDPIは、同社株式の価格発見への透明性と市場全体の効率性に影響を与える可能性がある。

そして、この水準は、機関投資家がこの銘柄を積極的に取引していることを示唆している可能性がある。

また、ダーク・プールにおける流動性は同社株価の安定に寄与し、株価のボラティリティを低下させるとも言える。

全体として、AT&Tの流動性は健全で、取引量は多く、DPIの比率は高水準にあることからも、同社株式は流動性の高い有望な投資対象であるように見える。

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