08/14/2024

やや強気
AT&T
やや強気
AT&Tは、過去数年間に経営陣が示した計画通りに事業を遂行しています。安定した収益と予測可能なキャッシュフローを持ち、予想PERが8.3倍と割安であることから、AT&Tの現在の株価水準は魅力的であるように見えます。
AT&T(T)の将来性:配当金は0.2775ドルで予想配当利回り5.8%も割安?最新決算と今後の株価見通しに迫る!

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  • 本稿では、AT&T(T:予想配当利回り5.8%・配当性向51%・1株当たり配当金0.2775ドル)の最新の2024年度第2四半期決算と配当推移、さらに、財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。 
  • そして、それらの分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
  • AT&Tは、設備投資の削減とキャッシュフローの増加により、財務状況を改善し、今後の配当増加が期待されています。
  • 現在の予想ベースの株価収益率(PER)が割安であり、予想配当利回りも高いため、配当収入を重視するAT&Tは米国インカム投資家にとって魅力的な投資対象であるように見えます。

※「増配年数17年のベライゾン(VZ)の配当はなぜ高い?最新決算発表後も株価はなぜ停滞?今後の配当・株価見通しと将来性に迫る!」の続き

AT&T(T)の最新の2024年度第2四半期決算発表に関して

AT&T(T:予想配当利回り5.8%・配当性向51%・1株当たり配当金0.2775ドルは2024年7月24日に2024年度第2四半期決算を発表し、高価格プランへの強い需要を背景に、加入者の増加で、ウォール街のアナリストの予測を上回る着地となりました。

米国における機器のアップグレード数の減少は、競合のベライゾン・コミュニケーションズVZ)と同様にAT&Tの売上高に影響を与えました。しかし、これは利益率が低いビジネスであり、デバイスは顧客維持のために原価に近い価格で販売されることが多いというのが現状であることを、ここで改めて強調したいと思います。

一方で、無線サービスと光ファイバー経由の売上高は、同社の中核収益であり、利益率の高い主要なサービスとなっています。

モビリティ部門(Mobility)では、2024年度第2四半期に419,000件の後払い(ポストペイド)携帯電話契約を純増させ、2024年上半期では合計768,000件となりました。そして、この事業セグメントのEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は前年同期比で5%成長しました。

また、消費者向け有線通信部門(Consumer Wireline Segment)では、2024年度第2四半期に前年同期比7%のEBITDA成長を達成し、特に光ファイバー経由の売上高が前年同期比18%と堅調に成長しました。具体的には、第2四半期に239,000件の光ファイバー加入者を増加させました。また、AT&Tは市場でバンドル販売をリードしており、光ファイバーを導入している世帯のうち4割が無線サービスの顧客でもあります。

加えて、AT&Tインターネットエア(AT&T Internet Air)は137の市場で提供されており、現在350,000件の消費者加入者を抱えています。2024年度第2四半期には139,000件の新たな加入者を獲得し、ブロードバンド経由の売上高は前年同期比で7%増加しました。ブロードバンドおよび光ファイバー部門のARPU(ユーザーあたりの平均収益)は、前年同期比でそれぞれ6.3%および3.4%増加しました。

バンドル販売:複数の商品やサービスをセットにして販売する手法を指す。これにより、顧客は個別に購入するよりも割安な価格でこれらを購入できることが多く、企業側は複数の製品やサービスを一度に提供することで、売上や顧客満足度を向上させることができる。

AT&Tインターネットエア(AT&T Internet Air):AT&Tが提供する固定無線インターネットサービス。このサービスは、従来の有線インターネット接続とは異なり、無線通信を利用してインターネット接続を提供。特に、光ファイバーやケーブルの敷設が難しい地域や、既存のインターネットインフラが限られている地域での高速インターネット接続を実現するために設計されている。

そして、AT&Tの光ファイバーインフラは現在、2,800万件の消費者およびビジネス拠点をカバーしており、2025年末までに3,000万件以上の光ファイバー拠点への拡大を計画しています。

また、2024年度第2四半期には、同社の調整後EBITDAは113億ドル(2023年第2四半期の111億ドルから増加)に達しました。今回の報告で特に注目すべき点は、設備投資の削減とEBITDAからフリー・キャッシュフロー(FCF)への転換効率の向上により、前年同期比で約4億ドル増加し、46億ドルの四半期フリー・キャッシュフローを生み出したことです。同社は、年間ベースで、調整後EBITDAの成長率を3%、設備投資額を210~220億ドル、フリー・キャッシュフローを170~180億ドルと予測しています。

そして、足元の財務パフォーマンスは、年初から同社の経営陣が示していたガイダンスと完全に一致しています。

AT&Tの四半期毎のフリーキャッシュフローの推移(単位:10億ドル)

(出典:筆者の計算)

Quarterly FCF (billions USD):四半期毎のフリー・キャッシュフロー(単位:10億ドル)

Dividend Expense (billions USD):配当支出(単位:10億ドル)

AT&Tが予測している2024年度のフリー・キャッシュフロー(FCF)と調整後EPS($2.15から$2.25)の水準を基準とすると、それぞれ年間配当の配当性向は46%および51%に相当します。

一方で、同社は債務削減を優先しているため、私は配当は前年と同水準に据え置かれると予想しています。

AT&T(T)調整後四半期EPS

(出典:筆者の計算)

AT&T Adj. Dilusted EPS:AT&T調整後希薄化後EPS(1株当たり利益)

AT&T new quarterly dividend:AT&T新規四半期配当

Pre-WBD Spin-off:AT&TがWarnerMedia部門を分割する前の状況や条件を指す。具体的には、AT&TがWarnerMediaをDiscovery, Inc.と合併させ、新たにワーナー・ブラザース・ディスカバリーWBD)という会社を設立するというスピンオフ(分社化)を行う前のこと。

また、AT&Tは、フィッチ・レーティングスからBBB+の格付けを受けており、投資適格の財務状況を維持しています。そして、今年に入ってから、同社は純負債を20億ドル削減し、調整後EBITDA純有利子負債倍率を2.9倍以下に抑えています。経営陣は、2025年上半期までにこの比率を2.5倍にする目標を達成する見込みが高いことを強調していることからも、来年には配当の増加が期待されます。第2四半期終了時点で、AT&Tは95%以上の負債を固定金利で保持しており、加重平均金利は4.2%となっています。


フィッチ・レーティングス世界的に有名な信用格付け会社の一つで、企業や政府などの発行する債券の信用リスクを評価し、格付けを行う機関。同社は、スタンダード&プアーズ(S&P)やムーディーズ(Moody's)と並ぶ、世界三大信用格付け機関の一つとして知られている。

信用格付けは、債券の発行体が債務を返済する能力や、債券が持つリスクの度合いを示す指標で、投資家がその債券を購入する際の参考となる。格付けは、通常「AAA」から「D」までの段階で表示され、以下のような意味を持ちます:

  • AAA:非常に高い信用力を持ち、債務不履行(デフォルト)のリスクが極めて低い。
  • A:信用力が高く、債務不履行のリスクは低い。
  • BBB:投資に適した水準の信用力を持つ(投資適格)。
  • BB以下:投機的であり、リスクが高い(ハイリスク・ハイリターンの投資対象)。

フィッチの格付けは、金融市場において重要な役割を果たしており、企業や政府が資金を調達する際に、その信用力を示す重要な指標として広く利用されている。


さらに、AT&Tは、2021年度末時点で総負債が1,773億ドルありましたが、2024年度第2四半期末にはこの金額を1,306億ドルまで減少させました。これは、およそ470億ドルの大幅な負債削減となります。

以上より、AT&Tは、過去数年間に経営陣が示した計画通りにビジネスを運営していることが分かります。同社の売上高は非常に安定しており、キャッシュフローも予測可能となっております。現在のAT&Tは、予想ベースの株価収益率(PER)が8.3倍と割安で評価されている点に加えて、5.8%の高水準の予想配当利回りを提供しており、さらに、今後の配当増加余地もあることから、配当収入を重視する米国インカム投資家にとって魅力的な投資先であるように見えます。




アナリスト紹介:ヴェンカット・ ラガーヴァン

テクノロジー・アドバイザーのヴェンカット・ ラガーヴァン氏は、高配当銘柄を中心に、日々、投資アイデアを執筆しております。

執筆活動以前は、米国とカナダにて、経営コンサルタントとして、主にフォーチュン500社に含まれる大手テクノロジー企業を中心に、コンサルティング業務に従事しておりました。

ラガーヴァン氏は、強固なファンダメンタルズと競争優位性を持ち、さらに、巨大なキャッシュフローを生み出す可能性のある魅力的なビジネスモデルを特定・評価するプロフェッショナルです。その為、インカム・ゲイン(配当収入)と長期キャピタルゲインを同時に狙える割安な高配当成長銘柄を主な投資対象としています。

ラガーヴァン氏のその他の配当関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ラガーヴァン氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。

さらに、その他のAT&T(Tに関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、AT&Tのページにアクセスしていただければと思います。


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