【半導体】TSMC(TSM)アリゾナに新工場設立!米国での新規投資額は1000億ドル(約15兆円)と発表もその真相とは?

- 本稿では、注目の台湾半導体銘柄であるTSMC(TSM)が2025年3月3日に発表した「米国アリゾナ州での1000億ドル(約15兆円)の新規投資」に関して詳しく解説していきます。
- TSMCはアリゾナ州で1000億ドルの追加投資を発表し、米国での半導体製造へのコミットメントを強化しました。これにより、総投資額は1650億ドルに達する見込みです。
- 記者会見では、トランプ前大統領がTSMCの影響力を称賛し、同社が米国における先端半導体製造を拡大する重要性が強調されました。
- TSMCは新たに3つの製造工場や先端パッケージング施設を設立し、米国の半導体エコシステムの強化に貢献すると発表しましたが、具体的なタイムラインやプロセスノードについての詳細は明らかにされませんでした。
TSMC(TSM)がアリゾナ州での1000億ドルの投資計画を発表!
今週、TSMC(TSM)はアリゾナ州に1000億ドルを投資する計画を発表しました。プレスリリースはこちら、YouTubeでのリプレイはこちらからご覧いただけます。ここ数週間、TSMCがIntel Foundryの半導体プロセスにおけるリーダーシップ回復を支援する可能性についての憶測が飛び交っていたことを考えると、この発表は非常に興味深いものとなっています。
しかし、結果として、10分間の発表イベントの中でインテル(INTC)について触れられたのは一度だけでした。それも、基本的にはトランプ前大統領がインテルの影響で米国が先端半導体市場のシェアを失ったことを嘆いた場面にすぎませんでした。
おそらく、これによってTSMCとインテルの提携に関する以前の憶測には終止符が打たれることになるでしょう。
また、この可能性については以前から信憑性が低いと考えており、その理由については下記の分析レポートで詳しく述べています。
💡各レポートの詳細は、インベストリンゴのプラットフォーム上にてご覧いただけます。
インテルの本社であるサンタクララのロバート・ノイス・ビル内で何らかの動きが進行中であっても、不思議ではありません。同社は存続の危機に直面しており、正式なCEOも不在の状態です。しかし、現在ささやかれている噂の多くは現実的ではなく、少なくとも可能性は低いものばかりです。
では、今回の記者会見では具体的に何が語られ、TSMCにとってどのような意味を持つのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
🚀お気に入りのアナリストをフォローして最新レポートをリアルタイムでGET🚀
ウィリアム・キーティング氏は半導体&テクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、プロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。
さらに、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。
そのため、キーティング氏の半導体&テクノロジー銘柄に関する最新レポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います!
TSMC(TSM)のプレスリリースに関して
プレスリリースは、大統領執務室での記者会見の直後にTSMC(TSM)の公式ウェブサイトに掲載されました。冒頭では、重要な概要が示されています。
「台湾・新竹(中華民国)、2025年3月4日 – TSMC(TWSE: 2330、NYSE: TSM)は本日、米国における先端半導体製造への投資をさらに1000億ドル追加する意向を発表しました。」
「同社は現在、アリゾナ州フェニックスでの先端半導体製造拠点に650億ドルを投資していますが、今回の追加投資により、TSMCの米国における総投資額は1650億ドルに達する見込みです。」
「この拡張計画には、新たに3つの製造工場(ファブ)の建設、2つの先端パッケージング施設の設置、そして大規模な研究開発(R&D)センターの設立が含まれており、本プロジェクトは米国史上最大の単独海外直接投資となります。」
(出所:TSMCのプレスリリース)
2024年4月、TSMCは当時の米国政府によるCHIPs法の資金提供を受け、アリゾナ州に3つ目の製造工場(ファブ)を建設する計画をすでに発表していました。その詳細はこちらで確認できます。
(日本語訳)TSMCアリゾナと米商務省、最大66億ドルのCHIPS法による直接支援を発表 ー フェニックスに第3の最先端工場を計画
(日本語訳)新工場では米国内で最先端の半導体を生産予定、TSMCのアリゾナ投資総額は650億ドル超に
(出所:TSMCのプレスリリース)
今回の発表は、TSMCが米国での製造に対してさらに強いコミットメントを示す大きな一歩となります。特に、先端パッケージング施設の設立は、同社にとって米国での初の試みとなります。これまでTSMCは、パッケージングに関してはアムコー・テクノロジー(AMKR)との合弁事業に依存していましたが、その詳細はこちらをご覧ください。今後、アリゾナ州に自社のパッケージング施設を持つことで、アムコー・テクノロジーとの提携を継続するかは不明ですが、おそらく継続しないと考えられます。
プレスリリースでは、まず「アリゾナ州に4万件の高収入雇用を創出する」といったマーケティング的な表現が続いた後、本題に入り、2020年当時のトランプ前大統領の「ビジョンと支援」に対する感謝の意を表しています。
「2020年当時、トランプ前大統領のビジョンと支援のおかげで、私たちは米国における先端半導体製造の構築に向けた取り組みを開始しました。そして、そのビジョンは今や現実のものとなりました」と、TSMCの会長兼CEOであるC.C.ウェイ博士は述べています。
「AIは私たちの日常生活を変革しており、半導体技術は新たな機能やアプリケーションの基盤となっています。アリゾナ州における最初のファブの成功、政府からの必要な支援、そして強固な顧客パートナーシップを踏まえ、私たちは米国における半導体製造への投資をさらに1000億ドル拡大し、総投資額を1650億ドルに引き上げる計画です。」
プレスリリースの締めくくりでは、TSMCが米国の半導体エコシステムをどのように強化していくかについて強調しています。
「TSMCのアリゾナ工場は現在、アリゾナ州の1100エーカーの敷地において、3000人以上の従業員を雇用しています。この工場は2024年末から本格的な生産を開始しています。」
「今回の拡張計画は、米国における先端半導体技術の生産を増強することで、米国の半導体エコシステムの強化において重要な役割を果たします。また、TSMCが米国で初めて先端パッケージング分野に投資することで、国内のAIサプライチェーンを完成させることにもつながります。」
興味深いことに、今回のプレスリリースでは、この1000億ドルの投資に関する具体的なタイムラインについて一切触れられていません。なぜ明記しなかったのでしょうか?
同様に注目すべき点として、TSMCが米国にどのプロセスノードを導入するのか、またその時期についても一切言及がありませんでした。おそらく、TSMCはこれまでと同様に、最先端のノードをまず台湾で立ち上げ、成熟した歩留まりに達した1~2年後に米国へ移管する方針を続けるのではないかと考えられます。
TSMC(TSM)のホワイトハウスでの記者会見に関して
トランプ前大統領は、ウェイCEOを「伝説的な人物」と称え、彼とともにいることを光栄に思うと述べながら会見を始めました。
「もし皆さんが半導体の世界に詳しければ、『彼は伝説だ』と言うでしょう。実際に彼は伝説的な存在です。そして、あなたとご一緒できることを大変光栄に思います。本当にありがとうございます、ウェイさん。」
ウェイ氏は、先週ゼレンスキー大統領に起こった出来事を考えると、今回の記者会見に多少の不安を抱えて臨んだのではないかと思います。その点で、トランプ前大統領の冒頭の発言を聞いて、彼は大いに安堵したことでしょう。
いつもの調子で、トランプ前大統領はTSMCについて「規模としては最大であり、正直なところ計算すらできないレベルだ」と称賛した後、商務長官のハワード・ラトニック氏と「ホワイトハウスの暗号資産担当特使」であるデビッド・サックス氏を紹介しました。本来、サックス氏の正式な肩書きは「AI & 暗号資産担当特使」ですが、今のところAIよりも暗号資産の方が優先されているようですね :-)
幸いなことに、トランプ前大統領はその後のスピーチの中で、AIについても触れることを忘れませんでした。
「世界で最も高性能なAIチップは、ここアメリカで製造されることになります。そして、それは彼の会社が生産するチップの大きな割合を占めることになるでしょう。」
大統領がTSMCを「独占企業」と呼び、「世界で最も影響力のある企業」と発言し始めた際、やや気まずい雰囲気が漂いました。しかし、幸運なことに、ウェイ氏にとって都合の良いことに、大統領はそこで話をやめ、彼に演壇を譲りました。そして冗談めかしながら、「彼がルトニック氏やサックス氏より先に話すべきだ。なぜなら、今この場で最も重要な人物は彼だからね」と述べました。
「ご存じのとおり、台湾はこの市場をほぼ独占しています。いや、『ほぼ』という言葉すら適切ではないかもしれません。実際に独占しているのです。そして、これは世界で最も影響力のある企業による非常に大きな一歩です。これは経済安全保障の問題であり、私たちにとっては国家安全保障の問題でもあります…。」
ウェイ氏が演壇の中央に立ち、スピーチ用のメモを広げながら「少し緊張しています」と口にしたとき、私は彼のために祈るような気持ちでした。特に、彼の特徴的な台湾なまりが、数週間前にインド人記者に対して大統領が示したような反応を引き起こさないことを願っていました。幸いなことに、そのような事態にはなりませんでした。
ウェイ氏は、何度も大統領への感謝を述べ、そのたびに意識的に彼の方を向いて話すなど、細かい気配りを見せました。さらに、アリゾナ州において「米国で最も先進的な半導体を製造している」と発表しました。ここで重要なのは、その表現の微妙なニュアンスです。TSMCは「世界で最も先進的な半導体」を米国で製造しているわけではなく、それは台湾で行われているという点です。
続いて登壇したのはルトニック氏でした。彼はまず、半導体製造を米国に呼び戻した大統領のビジョンを称賛し、TSMCにも賛辞を送りました。しかし、その後で「Tワード」、すなわち「関税」に言及し、TSMCが米国への巨額投資を行っている理由は、関税の支払いを回避するためであると述べました。
ウェイ氏はこの発言にも動じることなく、わずかに微笑みを浮かべたまま、ポーカーフェイスを貫きました。そして、話はサックス氏へと移りました。彼の発言の内容は、概ね次のようなものでした。
「ええと…TSMCが製造する製品は、文字通り世界で最も重要な製品です。先端半導体は、AIを動かし、スマートフォンを動かし、車を動かします。これらがなければ、現代の経済は完全に停止してしまうでしょう。しかし、これまでそれらは米国では製造されていませんでした。ですから、TSMCがここに進出するというのは、本当に大きな出来事なのです。これは、経済におけるトランプ前大統領のリーダーシップ、そしてルトニック長官の尽力によるものです。そして、CC(ウェイ氏)、ここに来てくれてありがとう。」
もしサックス氏が話し始めたタイミングで記者会見を見始めたのであれば、TSMCが台湾から米国へ移転することを発表したのだと勘違いしてしまっても無理はないでしょう。
まとめ
このプロジェクトを成功させたTSMC(TSM)とウェイ会長に敬意を表します。正直なところ、これ以上うまくいく記者会見はなかったのではないかと思います。彼は本来の評価にふさわしい敬意を得て、数々の困難を乗り越え、今やTSMCを米国の半導体技術リーダーとして確固たる地位に築き上げました。
では、この先何が問題になり得るでしょうか?続報を見守るとともに、皆様には日々のレポートの執筆を通じて、TSMCに関する最新の情報をお届けしていきますのでお見逃しなく!
🚀お気に入りのアナリストをフォローして最新レポートをリアルタイムでGET🚀
ウィリアム・キーティング氏は半導体&テクノロジー銘柄に関するレポートを毎週複数執筆しており、プロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。
さらに、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。
そのため、キーティング氏の半導体&テクノロジー銘柄に関する最新レポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います!
📢 知識は共有することでさらに価値を増します
✨ この情報が役立つと感じたら、ぜひ周囲の方とシェアをお願いいたします✨
加えて、直近、インテル(INTC)やエヌビディア(NVDA)といった他の半導体銘柄に関しても詳細な分析レポートを執筆しておりますので、半導体株投資家の方は是非併せてご覧ください。
インテル(INTC)
アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング
📍半導体&テクノロジー担当
キーティング氏のその他の半導体&テクノロジー銘柄のレポートに関心がございましたら、こちらのリンクより、キーティング氏のプロフィールページにてご覧いただければと思います。
インベストリンゴでは、弊社のアナリストが「高配当銘柄」から「AIや半導体関連のテクノロジー銘柄」まで、米国株個別企業に関する分析を日々日本語でアップデートしております。さらに、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は「250銘柄以上」(対象銘柄リストはこちら)となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームより詳細な分析レポートをご覧いただければと思います。