やや強気ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスユナイテッド・マイクロエレクトロニックス / UMC / 強気:2023年4Q決算分析と今後の株価見通し・将来性(後編)

- ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)のメリットには、研究開発への集中による財務的課題の克服、FinFETへの野心に対するインテルの支援、米国製造能力へのアクセスなどがある。
- インテルは、未稼働の生産能力から価値を引き出し、UMCの専門知識を特殊工程に活用し、多様化のために米国製造へのアクセスを獲得することで利益を得る。
- UMCとインテルの両社は、これらの提携から利益を得ることができ、米国の半導体製造施設を活用する勝者として位置づけられる可能性がある。
※「ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス / UMC / 強気:2023年4Q決算分析と今後の株価見通し・将来性(前編)」の続き
インテルとの提携がUMCにもたらすメリット
ユナイテッド・マイクロエレクトロニックス(UMC)の過去10年間における最大の課題は、新たな生産能力を確保するための資金を見つけることであった。
UMCはこの問題について何度も議論しており、研究開発(R&D)の方がはるかに低コストであることから、CapEx(設備投資)ではなく研究開発に注力することを強調している。
そして、この戦略はUMCにとって複雑な結果をもたらしている。
研究開発の観点からは、UMCは主に28nmおよびそれ以前のプロセス・ノードで、特殊なプロセス技術を開発することに成功した。
しかし、最先端ノードである14nmに焦点を当てた研究開発は、率直に言って惨憺たるものであった。
彼らは2015年から14nmについて話しており、2017年に立ち上げ、2018年にはわずかな成功を収め、2018年度第3四半期では14nmからの売上高が全体の売上高の5%を占めた。
そして、2018年度第4四半期以降、14nmの売上高がどの程度全体の売上高に貢献していたか想像していただきたい。
答えはゼロである。
先進ノードの研究開発努力はここまでである。
同社の14nmプロセスがいかに成功したかを語り続け、90%以上の歩留まりに達した事実を強調しているにもかかわらずである。
そして、過去数年間、このような主張が精査されることがなかったことに私は驚いている。
つまり、UMCにとって大きなプラスは、FinFETへの意欲を持つインテル(INTC)からの支援であることは明らかである。
さらに、この提携は、現在の不況下でより重要になっている。
平均販売価格はプレッシャー下にあり、遅れているノードでの中国との競争は急速に高まっている。
また、28nmではキャパシティの過剰が目前に迫っている。
そして、14nmクラスのプロセス・ノードがないことで、シェアを拡大するどころか、維持することもできないだろう。
先週、誰かが私に、なぜインテルとUMCは共同開発予定のこのプロセスを14nmと呼ぶのかと尋ねた。
理由は2つあると思う。
- UMCは過去に失敗した14nmの試みとの関連付けを望んでいないのであろう。
- インテルは、新たに共同開発するプロセスが失敗した場合に備えて、これまで開発した中で最高のものの1つであった14nmプロセスと関連付けたくないのだろう。
つまり、当プロジェクトを真新しい名前で始める方が両社にとって都合が良いということである。
UMCにとって2つ目の大きな利点は、これまで考えられなかったような量の製造能力を、おそらくバーゲン価格と思われる価格で即座に手に入れることができることであり、しかもその全能力を300mmで実現できることである。
UMCにとって3つ目の大きな利点は、その生産能力が米国にあるということである。
なぜなら、UMC単独では、米国に自社の生産能力を構築する余力はなかった可能性が高いからである。
半導体製造のリショアリング(企業が、海外に移管・委託した業務の拠点を国内に戻すこと)が世界的に推進されている現状を考えると、UMCの米国の顧客ベースは、チップの生産を米国で行うことを求め始めるだろう。
北米市場はUMCにとって非常に重要であり、実際に2022年の売上高の24%から2023年には27%に伸びている。
米国がより多くのチップの現地生産を望むと同時に、中国もそれを望んでいる。
つまり、いくつかのUMCの顧客は、SMICやHH Grace/Huahongのような中国のローカル・オプションに移行するということである。
そのため、UMCが製造の選択肢を多様化させる必要があることが分かる。
UMCとの提携がインテルにもたすメリット
タワー・セミコンダクター(TSEM)との取引と同様、インテルにとっての大きなメリットは、そうでなければほとんど利用価値のない製造能力から何らかの価値を引き出せるという事実である。
奇妙なことに、これはインテルにとっては短所でもあるのだが、それについては後述する。
先述の3つのオコティロ工場は、かつてはインテルにとって最新鋭の工場であり、フルに活用されていたはずであるが、今はそうではない。
これらのファブで直近に稼働していたプロセス・ノードが何であったか、私ははっきりとは知らないが、14nmか、それよりも古いものであることは確かである。
なぜインテルは、(半導体共同投資プログラム「SCIP」の下、ブルックフィールドと共に)アリゾナやオハイオに新しい工場を建設する代わりに、これらの工場をアップグレードしないのか不思議に思うかもしれない。
この選択肢の最大の問題はEUVである。
これらの古い工場は巨大だが、EUVツールの規模とサイズを念頭に置いて設計されたものではない。
単刀直入に言えば、EUVツールは、少なくともファブの上部構造全体を完全に作り直さなければ収まらない。
これらの古い工場をアップグレードできない理由は他にもあるかもしれないが、EUVはその中でも上位に位置すると思う。
そして、UMCとの契約により、インテルはUMCに生産能力を事実上貸し出すことができる。
インテルにとっての2つ目の利点は、UMCの専門知識を活用して特殊ファウンドリ・プロセスを開発できることである。
UMCはこの専門知識を十分に持っているが、インテルにはない。
このことが、この提携のこの側面が、不思議なことにインテルにとってのメリットでもある理由につながる。
つまり、インテルにとっては、自社で特殊プロセスを開発できた方が、UMCと利益を分け合う必要がないことから、財務的な観点からはるかに有利なのである。
ただし、インテルのファウンダリーの野望はともかく、インテルがやりたがらないこと、やれることがないと思われることは、まさにこの点である。
実際に、UMCの援助があったとしても、この特殊なプロセス技術を稼働させるには何年もかかるだろうと見ており、 具体的には量産開始は2027年頃になるだろう。
しかし、他に良い選択肢がない以上、これはインテルにとってプラスである。
2つ目のメリットの結果として、インテルにとって3つ目の利点がある。
彼らはついに特殊なプロセスを手に入れ、関連製品を製造するための米国ベースの製造能力を手に入れた。
これらの製品の多くは、オートモーティブ、IoT、インダストリアル・セグメントに属するもので、その多くは米国内で生産する必要がある。
これによりインテルは、あと3~4年は実現しないものの、この市場を開拓することができる。
結論
私は、インテルが2030年の世界第2位の目標を達成するために展開している一連の戦術を通じて、ファウンドリー事業にさらなる複雑さを加えることの意味を懸念している。
この点に関しては別の機会に譲るが、これほど多くの異なるモデルを展開することで、複雑なロジスティクス上の課題が山積していることはすでに目に見えている。
ファクトリー・オートメーション・システム、MRP、ERPなど、異なるアプローチごとに異なるサイロを展開する必要性がすぐに思い浮かぶ。
とはいえ、工場が遊休状態にあるか、工場から何らかの価値を引き出すかの選択であれば、こうした取引・提携は理にかなっている。
私は、タワー・セミコンダクター、そして今回のケースではUMCが、ここでの真の勝者であると見ている。
米国内の半導体製造施設に対するバーゲン価格(と思われる)でのアクセス権を提供する企業は、そうそうあるものではない。
その意味で、私はタワー・セミコンダクターとUMCに対して「強気」で見ている。