やや強気ベライゾン・コミュニケーションズベライゾン(VZ)の配当はなぜ高い?増配年数17年の米国高配当銘柄の今後の株価見通しに迫る!

- 本稿では、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ:予想配当利回り6.8%・配当性向65%・1株当たり配当金0.665ドル)の最新の2024年第2四半期決算発表と今後の株価見通しおよび将来性に関する詳細な分析を解説していきます。
- 同社はポストペイド携帯電話や固定無線アクセスの契約者数を増加させ、収益の成長を続けており、特に消費者セグメントでの成果が顕著です。
- フリー・キャッシュフローの増加と設備投資の削減により、今後の配当増加が期待される中、現在の株価バリュエーションは魅力的な投資機会を提供しているように見えます。
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の最新の2024年度第2四半期決算発表に関して
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)は2024年7月22日に2024年度第2四半期決算を発表ましたが、その後、株価は軟調に推移しています。本稿では、最新の決算における同社の進展と財務状況を詳しく分析し、足元の株価水準が成長する配当収入を求めるインカム投資家にとって魅力的である理由を解説していきます。
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の新しいブランドイメージ
もし読者の皆様が見逃していた場合のために共有させていただきますが、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)は先月、新しいブランドとロゴを発表しました。従来の黒と赤のカラーと象徴的な赤いチェックマークのロゴから、黄色い光を帯びた赤い「V」に移行しています。
(出典:Variety)
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)のネットワークの拡大と加入者の増加
消費者セグメントにおいて、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)は180万件のポストペイド携帯電話の新規契約を報告し、前年同期比で12%の増加となりました。これで6四半期連続の前年比成長となります。ブロードバンドにおいては、第2四半期に39万1,000件の純増を記録し、375,000件以上の純増を8四半期連続で達成しました。固定無線アクセス(FWA:Fixed Wireless Access)では、37万8,000件の純増を達成し、契約者数は380万件を超え、前年同期比で69%の成長を示しました。
※ポストペイド携帯電話:利用者が毎月の使用料金を後払いで支払う携帯電話サービスのこと。ポストペイド(postpaid)とは、「後払い」という意味。
※ブロードバンド:高速かつ広帯域のインターネット接続を提供する通信技術のこと。具体的には、従来のダイヤルアップ接続に比べて、データをより高速で転送できるインターネット接続方式を指す。
ビジネスセグメントでは、同社は16万件の固定無線アクセスの純増という四半期記録を打ち立て、第2四半期終了時点でブロードバンド契約者数は1,150万件を超え、前年同期比で17%の増加を示しました。
同社は、郊外や地方におけるCバンドスペクトラムの拡大を続けており、ネットワークトラフィックのほぼ半数が超広帯域(前年の36%から増加)で動作していると報告しています。
※Cバンド:無線通信で使用される周波数帯域の一つで、通常は4GHzから8GHzの範囲を指す。特に5G通信において重要な役割を果たしており、高速かつ広範囲な通信を可能にするため、都市部や郊外など多くの地域で利用されている。Cバンドの利用により、通信事業者は大容量のデータ通信を安定的に提供することができる。
※超広帯域(Ultra-Wideband, UWB):非常に広い周波数帯域を使用してデータを伝送する技術。主に、短距離で高精度な位置測定やデータ通信を行うために利用される。UWBは、低電力での運用が可能であり、近年ではIoTデバイスやスマートフォンの近接通信にも応用されている。また、干渉が少なく、高速なデータ転送が可能であるため、次世代の通信技術として注目されている。
また、同四半期には、衛星を介して修正なしのスマートフォンにブロードバンドサービスを提供する「Direct-to-Device(デバイス直接接続)」技術を推進する会社であるASTスペースモバイル(ASTS)とのパートナーシップを発表しました。
(原文)Our agreements with AT&T and Verizon are essentially eliminating dead zones and empowering remote areas of the country with space-based connectivity.
Abel Avellan, CEO, AST SpaceMobile
(日本語訳)私たちのAT&T(T)およびベライゾン・コミュニケーションズとの契約は、デッドゾーンを事実上なくし、国内の遠隔地に宇宙ベースの接続性を提供するものです。
ASTスペースモバイル CEO:アベル・アヴェラン
※Direct-to-Device(デバイス直接接続):衛星や基地局から直接、修正や追加のハードウェアを必要とせずに、通常のスマートフォンやデバイスに通信サービスを提供する技術。これにより、従来の基地局のインフラがない遠隔地や災害時などでも、既存のスマートフォンを使って通信が可能になる。例えば、ASTスペースモバイルが推進する技術は、衛星を使用して地上のスマートフォンに直接ブロードバンド通信を提供するもの。
※デッドゾーン:携帯電話や無線通信の電波が届かない、または非常に弱くて通信ができない地域のこと。
ベライゾン・コミュニケーションズは、このパートナーシップにより、850MHzスペクトラムを使用して衛星とデバイス間の接続を提供し、サービスが行き届いていない地域に5Gネットワークをもたらし、全国津々浦々に100%のカバレッジを実現する目標に近づけるとしています。これにより、新しい機器を必要とせずに、イーロンマスク氏のSpaceXのStarlinkが提供する機能に匹敵するポジションを獲得します。
※850MHzスペクトラム:携帯電話や無線通信で使用される周波数帯域の一つで、850メガヘルツ(MHz)の周波数を指す。この帯域は、主に携帯電話の通信やデータサービスに利用されており、特に広範囲のエリアをカバーする能力に優れている。
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の最新の業績では、急増するフリー・キャッシュフローを確認
ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)の2024年度第2四半期の無線サービス売上高は198億ドルに達し、前年同期比で3.5%の成長を示しました。この成長は主に消費者セグメントによるものでした。そして、消費者のポストペイド1アカウントあたりの平均収益(ARPA)は前年比で5%増加しました。第2四半期の同社の調整後EBITDAは123億ドル(前年同期比2.8%増)で、調整後EPSは1株あたり1.15ドルを記録しました。
予想通り、同社は第2四半期の設備投資(Capex)を81億ドル(2023年第2四半期の101億ドルから減少)と報告しており、計画されたサイトの約60%にCバンドを展開したとしています。
設備投資の減少により、同社は2024年上半期に85億ドルのFCF(フリー・キャッシュフロー)を達成し、前年同期比で5億5,000万ドルの増加を示しました。これは、税金や利息の支出が増加したにもかかわらずの結果です。この2024年上半期におけるFCFにより、同社の配当性向は65%と適正な水準となっております。
ベライゾンのフリー・キャッシュフローと配当支出(百万ドル単位)
(出典:筆者の計算)
※Free Cash Flow(FCF:フリー・キャッシュフロー):企業が本業から得たキャッシュフローから、事業を維持・拡大するための資本的支出(例えば、新しい設備の購入や工場の建設など)を差し引いた後に残る現金のこと。言い換えれば、企業が稼いだ現金のうち、自由に使える資金のこと。
※Dividend Spend(配当支出):企業が株主に対して支払う配当金の総額
ベライゾン・コミュニケーションズは過去17年間にわたって平均約2%の配当増加を維持しており、私は今年9月にもさらに増配すると予想しています。同社は34億ドルの総債務を削減し、第2四半期末のレバレッジ比率は2.5倍(第1四半期末の2.6倍から改善)となりました。同社の無担保債務は、フィッチ・レーティングスから「A-」の格付けを受けています。
※フィッチ・レーティングス:世界的に有名な信用格付け会社の一つで、企業や政府などの発行する債券の信用リスクを評価し、格付けを行う機関。同社は、スタンダード&プアーズ(S&P)やムーディーズ(Moody's)と並ぶ、世界三大信用格付け機関の一つとして知られている。
信用格付けは、債券の発行体が債務を返済する能力や、債券が持つリスクの度合いを示す指標で、投資家がその債券を購入する際の参考となる。格付けは、通常「AAA」から「D」までの段階で表示され、以下のような意味を持ちます:
- AAA:非常に高い信用力を持ち、債務不履行(デフォルト)のリスクが極めて低い。
- A:信用力が高く、債務不履行のリスクは低い。
- BBB:投資に適した水準の信用力を持つ(投資適格)。
- BB以下:投機的であり、リスクが高い(ハイリスク・ハイリターンの投資対象)。
フィッチの格付けは、金融市場において重要な役割を果たしており、企業や政府が資金を調達する際に、その信用力を示す重要な指標として広く利用されている。
また、同社は2024年度のガイダンス(業績見通し)を再確認し、前年比1~3%の調整後EBITDA成長率を見込み、調整後EPSとしては4.50ドルから4.70ドルの範囲に収まると見ています。
※ガイダンス:企業が投資家や市場のアナリストに対して提供する将来の業績見通しや目標のこと。通常、企業は四半期ごとや年度ごとに売上高、利益、EPSなどの主要な財務指標について、将来の予測や目標を提示する。
(出典:筆者の計算)
※FY 2023 Reports:2023年度業績
※FY 2024 Guidance:2024年度ガイダンス
※Revenue:売上高
※Adj. EBITDA:調整後EBITDA
※Adjusted EPS:調整後EPS
※YoY(Year over Year):前年同期比
9月に2%の増配が行われると仮定した場合、ベライゾン・コミュニケーションズの調整後EPSガイダンスの中間点で配当性向は約59%となります。
同社は、年初に掲げた計画を着実に実行している企業だと感じており、債務の削減、設備投資の減少、フリー・キャッシュフローの増加、そして配当の増加が見られます。
足元の株価推移が軟調な理由としては、同社が市場のアナリストの予想である2億4900万ドル下回ったためですが、これは32.8億ドルの四半期売上高に対する端数誤差のようなものであると見ています。そのため、足元の株価バリュエーションは、約6.8%の高い予想配当利回りを手に入れるための魅力的な機会を提供しているように見えます。
売上が予想を下回った主な原因は、デバイスのアップグレードが前年比で13%減少したことで、ワイヤレス機器の売上が減少したためです。機器の販売やアップグレードは、同社にとって利益率が低い事業であり、小売顧客を引きつけるためにほぼ原価で販売されることが多いというのが現状です。一方で、上述の通り、私たちは、同社の主要な利益源であるコア事業セグメントが力強く成長していることを心強く感じており、継続して同社に対して「強気」で見ています。
※続きは「AT&T(T)配当金0.2775ドルで予想配当利回り5.8%も割安?最新の決算発表分析と今後の株価見通し・将来性に迫る!」をご覧ください。
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