中立ゼットスケーラーゼットスケーラー / ZS / 中立:2024年2Q決算・強み分析と今後の株価見通し・将来性(Zscaler / Zスケーラー)
ドノヴァン・ ジョーンズ- ゼットスケーラー(ZS)は、世界中の企業にクラウドセキュリティソリューションを提供する急成長企業である。
- 同社は2024年2月29日に2024年度第2四半期決算を発表しており、力強い収益成長を続けているが、営業損益分岐点への前進は停滞している。
- 従って、経営陣が営業損失を削減するための実質的な動きを見せるまで、私の同社株式への見通しは「中立」としている。
ゼットスケーラー(ZS)について
ゼットスケーラー(ZS)は2024年2月29日に2024年度第2四半期決算を発表し、売上高と利益のコンセンサス予想を上回った。
同社はクラウドセキュリティソフトウェアを世界中の企業に提供しているテクノロジー企業である。
同社は目覚ましい成長を続けているが、大幅な営業損失削減の進捗は遅れている。
その為、経営陣が営業損益分岐点に向けて有意義な動きを見せるまで、私の同社株式に対する見通しは「中立」としている。
ゼットスケーラーの概要と市場
2007年に設立されたゼットスケーラー(ZS)は、世界中の組織のデジタル体験とクラウドセキュリティ態勢を改善するソフトウェアサービスを提供している。
5,962人のフルタイム従業員を擁し、本社はカリフォルニア州サンノゼにある。
創業者兼CEOのジェイ・チャウドリーは、AirDefence、CoreHarbor、SecureIT、CipherTrustなどの会社を設立した経歴を持つ。
そして、同社のサービスには以下が含まれている。
ゼットスケーラー・インターネット・アクセス
プライベート・アクセス・ソリューション
デジタル・エクスペリエンス
ポスチャー・コントロール
リスク360
ゼロ・トラスト・ブランチ・コネクティビティ
また、同社は、金融サービスからヘルスケアまで、さまざまな業界にサービスを提供している。
ゼットスケーラー(ZS)を取り巻く市場規模
Allied Market Researchのレポートによると、2022年の世界のクラウドセキュリティ市場規模は358億ドルとなっている。
そして、2023年から2028年までの年平均成長率は9.1%で、2028年には629億ドルに達すると予測されている。
クラウドセキュリティ市場は、サイバーセキュリティ業界で最も急成長しているセグメントの1つである。この成長の原動力となっているのは、クラウド・コンピューティングの導入が進んでいることで、データやアプリケーションをクラウドに移行する企業が増えていることである。
ガートナー社によると、2025年までに新規ワークロードの95%がクラウドネイティブ・プラットフォーム上に展開されるという。
ゼットスケーラー(ZS)を取り巻く主な進展
クラウドセキュリティ市場の主な動きには、以下のようなものが挙げられる。
クラウドベースのセキュリティ製品とサービスの台頭
マネージド・セキュリティ・サービスの採用拡大
データ・セキュリティとプライバシーへの関心の高まり
クラウド・ネイティブ・アプリケーション向けの新しいセキュリティ・ソリューションの開発
ゼットスケーラー(ZS)を取り巻く世界各地域別の展望
北米のクラウドセキュリティ市場が世界最大の市場であり、アジア太平洋地域と欧州市場がこれに続く形となっている。
北米市場は2023年から2028年にかけて年平均成長率8.5%で成長し、アジア太平洋市場と欧州市場はそれぞれ年平均成長率10.2%と9.3%で成長すると予測される。
ゼットスケーラー(ZS)の競合
クラウドセキュリティ市場の主要プレイヤーには、以下のような企業が挙げられる。
マイクロソフト(MSFT)
アマゾン・ウェブ・サービス(AMZN)
IBM(IBM)
シスコ(CSCO)
マカフィー
フォーティネット(FTNT)
シマンテック
トレンドマイクロ
パロアルトネットワークス(PANW)
デル・テクノロジーズ(DELL)
ゼットスケーラー(ZS)の最近の財務動向
ゼットスケーラー(ZS)の四半期毎の売上高(青色の列:Total Revenues)は、力強い成長軌道を維持している一方で、四半期毎の営業利益(青色の線:Operating Income)は、スケールメリットを得るために経費を費やしているため、大幅なマイナスが続いている。
四半期別売上総利益(青色の列:Gross Profit)は、売上総利益と同様に増加している。また、四半期別販売費および一般管理費 (青色の線:Selling General & Admin Expenses, Total)も、営業損失を計上する中、増加し続けている。
希薄化後1株当たり利益(EPS)はマイナスのままだが、損益分岐点に向けて若干前進していることが確認されている。
(上記グラフのデータはすべて百万USD単位・GAAPベース)
また、過去12ヶ月で、同社の株価は89.5%上昇したのに対し、iShares Expanded Technology - Software ETF(IGV)の上昇率は38%に留まっている。
ゼットスケーラー(ZS)のバリュエーションとその他の指標
以下は、ゼットスケーラー(ZS)に関連するバリュエーションの表である。
指標 | 値 |
企業価値 / 売上高(予想) | 11.5 |
企業価値 / EBITDA(予想) | 52.9 |
株価売上高倍率(直近過去12か月) | 13.7 |
売上高成長率(予想) | 34.6% |
純利益率 | -7.3% |
EBITDAマージン | -8.1% |
時価総額 | $25,620,000,000 |
企業価値 | $24,400,000,000 |
営業キャッシュフロー | $647,280,000 |
実績EPS(直近過去12か月) | -$0.94 |
予想EPS | $2.76 |
一株当たりフリー・キャッシュフロー(直近過去12か月) | $3.40 |
また、40%ルールとは、ソフトウェア業界の経験則であり、売上高成長率と営業利益率の合計が40%以上であれば、その企業は、ソフトウェア企業として、許容できる成長と営業利益率の軌道に乗っていることを示すものである。
下表のように、同社の直近の調整前40%ルールの計算値は、2024年第2四半期決算時点で23.5%であることから、この点では同社は改善が必要であると言える。
40%ルール・パフォーマンス(調整前) | 2024年第2四半期 |
売上高成長率 | 34.6% |
営業利益率 | -11.1% |
合計 | 23.5% |
ゼットスケーラー(ZS)の今後の見通し
直近の市場のアナリスト向け決算電話会議では、経営陣の準備発言として以下の点が強調されている。
売上高の伸び
・売上は前年比35%増、請求額は27%増。
・100万ドル以上の顧客数は30%以上増加。
受注残
・残存履行義務(RPO)は前年比29%増の36億1300万ドルで、今後12カ月間に売上高として認識する残存履行義務(Current RPO)はRPO全体の約51%にあたる。
費用または経費の変動
・営業費用総額は前年比22%増の3億2,100万ドルとなったが、これは規模の拡大にもかかわらずコスト管理が抑制されていることを反映している。
・売上総利益率は、クラウドインフラの耐用年数の長期化に伴う会計処理の変更により、前年同期比で若干改善し、80.8%となった。
キャッシュフロー
・フリー・キャッシュフロー・マージンは2024年第2四半期に過去最高を記録。
・報告されたフリー・キャッシュフロー・マージンは、売上高の約6%であったデータセンターの設備投資を含めて19%であった。
貸借対照表項目
・現金、現金同等物、短期投資は24億ドルを超えた。
海外事業
・2024年第2四半期の売上構成比は、米州が54%、EMEAが31%、APJが15%であった。
経営陣は、厳しいマクロ環境にもかかわらず、案件の規模や成約率に大きな変化はないと述べた。
ゼロ・トラスト・ソリューションに対するニーズにより、サイバーセキュリティ製品に対する需要は旺盛であり、同社はこのトレンドから利益を得ている。
同社は、コスト削減だけではない価値とセキュリティを提供するための強固なプラットフォームと市場でのポジショニングを頼りに、競合他社による製品バンドルなどの戦略に効果的に対抗し続けている。
さらに、米国連邦政府の売上は引き続き好調で、減速の兆候を見せることなく業績全体に大きく貢献している。これは、Customer Fatigue(顧客がマーケティングメッセージや広告、プロモーション活動に過剰にさらされることによって感じる疲労感や興味喪失)や競争圧力が報告されている一部の同業他社とは対照的である。
売上高ガイダンスとトレンド
・2024年度の売上高ガイダンスを更新し、前年比約31%増の21億1,800万ドルから21億2,200万ドルの範囲を予想。
・ゼロ・トラスト・アーキテクチャーに対する旺盛な需要に基づき、2024年度の売上高およびビリング額の見通しを増額。
以上より、ゼットスケーラー(ZS)は目覚ましい売上高成長を生み出しているが、営業損失の削減は進んでいないことが分かっている。
従って、資本コスト上昇の環境下、同社に対する私の見通しは「中立」としている。