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11 - 11 - 2024

【半導体】サムスン電子の今後の株価見通しは堅調?最新の2024年第3四半期決算分析を通じて将来性に迫る!

ウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、注目の韓国半導体企業であるサムスン電子(005930.KS)の2024年10月31日に発表された最新の2024年第3四半期決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • サムスン電子は、半導体市場での苦戦にもかかわらず、2024年第3四半期にHBMの売上を70%以上増加させ、第4四半期にはHBM3Eが全体の50%を占める見通しです。 
  • サムスン電子とSKハイニックスは、2025年に向けて半導体メモリー市場の成長を見込み、特にPCリフレッシュサイクルやAI機能の普及によるスマートフォン分野での成長を期待しています。 
  • サーバー市場では、AI関連メモリの需要が増加し、特にHBMの需要拡大が見込まれるため、両社は生産能力の増強よりもハイエンド製品に注力する方針を掲げています。 

※「半導体メモリメーカー​の2024年第3四半期の売上高推移分析:DRAMとNANDは四半期ベースで過去最高収益目前!」の続き

サムスン電子のHBMについて

ここ数ヶ月、サムスン電子(005930.KS)の半導体事業に関する話題はネガティブなものが多く、実際に10月初旬の2024年第3四半期の業績予想発表では、経営陣が期待に応えられなかったことへの謝罪を述べていました。

しかし、最新の決算説明会では、HBM(高帯域幅メモリ:特にグラフィックスカードやAI計算に使われるメモリ技術の進展や今後の計画について非常に前向きな姿勢が見られました。

今回の第3四半期決算説明会ではHBMに関する言及が33回あり、第2四半期の38回からは減ったものの、引き続き注目されています。

3四半期におけるHBMの進展に関する最初の重要なポイントは次のとおりです。

(原文)In the third quarter, total HBM sales grew by more than 70% Q-on-Q with both HBM3E 8 and 12 stack layer products in mass production and generating sales. The share of HBM3E increased to low to mid-10% of total HBM sales. But, of course, there were some commercialization delays and so the figure will likely be below guidance that we provided in Q2. But still, we expect HBM3E to account for about 50% of HBM sales in the fourth quarter.

(日本語訳)3四半期のHBM売上は前期比で70%以上増加し、HBM3E8層および12層スタック製品が量産され、売上に寄与しました。HBM3Eの売上比率は全HBM売上の10%台前半から中盤に達しています。ただし、一部の商業化の遅れもあったため、この数字は第2四半期に示した予想を下回る可能性があります。それでも、第4四半期にはHBM3EHBM全体の売上の約50%を占めると予想しています。

前期比70%の成長は一見印象的ですが、基準値が低かった可能性がある点には注意が必要でしょう。

では、前述で「予想を下回る」とされていたのは具体的にどの数値を指しているのでしょうか?

2024年第2四半期の決算説明会では、第4四半期にHBM3Eの構成比が60%に達する見通しが示されていました。

(原文)HBM3E, as a percentage of HBM sales, is expected to expand to above 10% -- mid- 10% in the third quarter, and further up to as high as 60% by the fourth quarter.

(日本語訳)HBM3Eの売上構成比は、第3四半期には10%台半ばに達し、第4四半期には最大で60%に拡大する見通しです。

つまり、HBM3Eの構成比は第4四半期には約50%となり、以前の予測である60%から少し下回る程度です。

そのため、大きなズレではありません。

そして、サムスン電子のHBM製品が直面している課題について、さらに詳しい情報が明らかになりました。

(原文)As explained together with our preliminary results, while we did experience some delays in the supply of HBM3E for major account, we have nonetheless made a meaningful advance as we have now completed an important phase in the qualification process. We expect to start expanding sales in the fourth quarter.

(日本語訳)先行発表でもお伝えした通り、主要顧客向けのHBM3E供給に多少の遅れがあったものの、認証プロセスの重要な段階を完了し、大きく前進しました。第4四半期からは販売拡大を開始する予定です。

(原文)Additionally, we are preparing an improved HBM3E offering for several of our key customers optimized for their next-gen GPU projects

(日本語訳)また、次世代GPUプロジェクトに合わせて最適化した改良版HBM3Eを、主要顧客向けに準備しています。

(原文)Mass production of these enhanced products is planned for some time in the first half of next year. We're currently in talks with our clients on scheduling. So we're looking to expand supply of existing HBM3E products to ongoing projects while driving additional sales of enhanced HBM3E products to supply for new projects to expand the addressable demand pool.

(日本語訳)この改良版製品の量産は来年上半期を予定しており、現在、顧客と納期の調整を進めています。既存のHBM3E製品は進行中のプロジェクトに向けて供給を拡大し、さらに改良版HBM3E製品を新規プロジェクトに提供することで、対応可能な需要を一層広げていく計画です。

このように、サムスン電子はHBM3Eの「改良版」を提供するために、設計を再検討する必要があったようです。

また、SKハイニックス(000660.KS)やマイクロン・テクノロジー(MU)と同様に、サムスン電子も次世代のHBM4の開発に取り組んでいます。

(原文)For HBM4, development is underway according to plan as we target starting mass production in the second half of 2025. We're working on custom HBM business development for multiple clients and for custom because meeting customer requirements is key when choosing a foundry partner for production of the base die, customer requirements will be the priority and will be flexible in our approach regardless of whether it involves an internal or external partner.

(日本語訳)HBM4の開発は計画通りに進んでおり、2025年後半の量産開始を目指しています。また、複数の顧客向けにカスタムHBMの事業開発も進めています。ベースダイの生産においては、顧客の要望が最も重要であるため、社内外のパートナーを問わず、柔軟に対応できる体制を整えています。

この点で、サムスン電子はベースダイ(半導体パッケージングにおいて、他のダイ「チップ」を積層または接続する際の基盤となるダイのこと)に関して競争優位を持っていると言えます。

このベースダイは、上に配置されるHBMスタックを制御するためのロジックダイであり、顧客ごとに仕様に合わせたカスタマイズが求められます。

SKハイニックスやマイクロン・テクノロジーはTSMC(TSMと提携してこのベースダイの設計・製造を行っていますが、サムスン電子はすべてを自社内で完結できるのです。

現状、市場はサムスンのHBMにおける成長を期待していないように見えます。

マイクロン・テクノロジーやSKハイニックスの株価が上昇・調整を経て再び上向きの傾向にあるのに対し、サムスン電子の株価は低迷しており、20179月の水準と同じ価格で取引されています。

少し厳しい評価とも言えます。サムスン電子がHBMの課題(そしておそらくファウンドリーに関するより広範な問題も)を解決できると考えるのであれば、ここには投資のチャンスがあるかもしれません。

(出所:Smartkarma)

今後の半導体メモリー市場の見通し

サムスン電子(005930.KS)とSKハイニックス(000660.KS)は共に2025年に向けて楽観的な見通しを示しており、具体的な四半期ごとの成長には触れていませんが、SKハイニックスはWindows 10サポート終了に伴う企業のPCリフレッシュサイクルにより、PC分野での緩やかな成長を予想しています。

(出所:SKハイニックスの2024年第3四半期決算資料

スマートフォン分野では、フラッグシップモデル(旗艦製品)でのAI機能の採用が進み、これらの機能が徐々にハイエンド(製品やサービスの中で特に高性能、高品質、高価格帯のもの)機種に広がることで、同様の成長が期待されています。

サーバー市場については、SKハイニックスは全体で中〜高い一桁台の成長を見込んでおり、特にAIサーバー分野で最も高い成長が期待されています。

これらはサムスン電子の見解とも一致していますが、サムスン電子の見通しはやや慎重で、「回復が見られる可能性がある」といった控えめな表現が使われています。

(原文)For server applications, solid demand is expected to continue for AI related HBM, server DRAM and server SSD. We expect enterprise demand to also see some growth momentum as Windows 10 services are discontinued for PCs, and PCs sold during the pandemic reach their replacement cycle. On the other hand, for mobile applications due to inventory adjustments from some clients, we expect limited demand conditions to continue for the time being. But potentially, we may see some recovery in purchasing demand in the first half of next year once the inventory adjustments wind down, and as on device AI deployed on flagship models around that time as well.

(日本語訳)サーバー用途では、AI関連のHBM、サーバーDRAM、サーバーSSDに対する堅調な需要が続くと予想されています。また、Windows 10のサポート終了や、パンデミック中に購入されたPCがリプレースサイクルに入ることから、企業向けの需要も成長の兆しが見込まれています。一方で、モバイル用途では一部顧客による在庫調整の影響で、しばらくは需要が限定的な状況が続くと予想されますが、在庫調整が落ち着くことで来年上半期には購買需要が回復する可能性もあります。そのタイミングでフラッグシップモデルにオンデバイスAIが搭載されることも期待されます。

半導体メモリー市場の戦略

サムスン電子(005930.KS)とSKハイニックス(000660.KS)は、利益率の高いハイエンド製品に注力する戦略を採用しており、その分、旧世代製品の市場は縮小しています。

サムスン電子の場合、2025年の設備投資を2024年と同程度に抑える予定で、これは製造装置の供給業者にとってはあまり歓迎されないニュースです。

(原文)Based on this outlook, we are setting CAPEX at levels similar to this year. Our priorities will include building next-gen semiconductor R&D complex, investing into HBM packaging, making advanced investments to secure clean rooms for the mid to longer term, as we focus on strengthening our future competence. For facility investments, our focus will be on investing in conversion to advanced process nodes rather than capacity expansions

(日本語訳)この見通しを踏まえ、設備投資額は今年と同水準に設定しています。優先事項として、次世代半導体の研究開発拠点の建設やHBMパッケージングへの投資、中長期的なクリーンルームの確保に向けた先行投資を計画しており、将来の競争力強化に注力します。施設投資においては、生産能力の拡張ではなく、先進的なプロセスノードへの転換に重点を置いています。

サムスン電子はさらに一歩踏み込み、通常であれば全体のビット市場シェアを重視するところを、今回はそれを追求せず、ハイエンド製品を優先する方針を表明しています。

(原文)For DRAM and NAND rather than simply targeting bit share, we'll focus on tapping the high margin market, strengthening the competitiveness of the market demand.

(日本語訳)DRAMNANDでは、単にビットシェアを追求するのではなく、高い利益率が見込める市場を開拓し、需要に応じた競争力を強化していきます。

そして、SKハイニックスも同じ方針を掲げています。

2024年には稼働率を上げて生産量を増やすことも可能でしたが、その選択肢もそろそろ尽きつつあります。

それにもかかわらず、キャパシティの増強は計画しておらず、旧世代技術からの転換を進め、HBMの需要に注力する方針です。

(原文)We are making necessary investments to meet next year's volume requirements, but our production capacity is reaching its limits. We plan to transition legacy technologies to advanced processes to increase HBM production.

(日本語訳)来年の生産量を確保するために必要な投資を行っていますが、生産能力は限界に近づいています。そこで、旧世代技術を先進的なプロセスに移行し、HBMの生産拡大を図る予定です。

(原文)Our investment for this year is expected to be in the mid to high KRW10 trillion range, slightly higher than planned, reflecting faster growth in HBM demand. For next year, investments are expected to be slightly higher due to stable supply needs for HBM and ongoing infrastructure projects. We will maintain a conservative investment posture until industry inventories normalize.

(日本語訳)今年の投資額は、当初の計画をやや上回る10兆ウォン台半ばから後半の見込みで、これはHBM需要の急速な拡大を反映したものです。来年もHBMの安定供給とインフラプロジェクトの継続により、やや増加する予定です。業界全体の在庫が正常化するまで、引き続き慎重な投資姿勢を保つ方針です。

半導体メモリー市場に対する結論

HBM3大メモリメーカーにとって大きな支えとなっています。

その需要の強さが、PCやスマートフォン分野の低迷を補って余りある状況です。

一方で、この低迷と中国からの競争の激化により、台湾の半導体企業であるNanya Technology(2408.TW)は8四半期連続で赤字を計上しています。

売上高・純利益・純利益率

(出所:筆者作成)

主要なメモリメーカーが全体の生産能力を増やさずにHBM(およびDDR5)に注力することで、中国のChangXin Memory Technologies(CXMT)が旧世代市場でシェアを拡大する余地が生まれました。

ただし、PCやスマートフォンの在庫が高止まりしている限り、旧世代製品の価格は引き続き圧迫され、短期的には厳しい状況が続くかもしれません。

HBMに関しては、現在SKハイニックス(000660.KS)がリーダーの地位にあり、マイクロン・テクノロジー(MU)が優れたHBM3Eで急速に追随しています。

サムスン電子も改良版HBM3Eでいずれ参入してくると見込まれます。

では、半導体メモリー市場の今後の展開を見守りましょう。

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