【配当王】ウォルマート(WMT)の将来性:配当利回り1.10%・配当性向33%・配当金0.235ドル
- 本稿では、注目の米国配当株であるウォルマート(WMT:配当王・予想配当利回り1.10%・配当性向33%・1株当たり配当金0.235ドル)の2025年2月20日に発表された最新の2025年度第4四半期決算と配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- ウォルマートは世界最大級の小売企業であり、安定した財務基盤と高い成長性を維持しつつ、eコマースやサプライチェーン最適化にも注力しています。
- 同社は53年連続で増配を続ける配当王であり、配当性向や負債水準も健全なため、インカム投資家にとって魅力的な銘柄となっています。
- 株価は現在割高と見られるものの、財務効率や利益成長の見通しは良好であり、今後も着実な成長が期待されています。
ウォルマート(WMT)の概要
セクター:小売業
現在の株価:85ドル
時価総額:6,826億3,000万ドル
過去5年間の配当成長率:2.90%
次回配当落ち日:2025年5月9日
次回配当支払い日:2025年4月7日
予想配当利回り:1.10%
過去5年間の売上高成長率:6.80%
過去10年間の売上高成長率:5.70%
関連用語
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
(出所:筆者作成)
ウォルマート(WMT:配当王・予想配当利回り1.10%・配当性向33%・1株当たり配当金0.235ドル)は、米国アーカンソー州ベントンビルに本社を構える世界最大級の小売企業です。低価格戦略と高いオペレーション効率を武器に、消費者にワンストップでのショッピング体験を提供しており、米国内では約4,600店舗(サムズ・クラブを含めると5,200店舗以上)、全世界では1万店舗以上を展開しています。直近ではeコマースやサプライチェーンの最適化にも注力し、成長を加速させています。
また、同社の配当は安定しており、過去53年間に渡り連続して増配を継続する配当王です。過去5年間の配当成長率は2.90%、予想配当利回り1.10%、配当性向33%と余裕を持った水準です。今後3〜5年での配当成長率は7.75%と見込まれ、長期的に配当収入を重視するインカム投資家にも魅力的な銘柄です。
そして、同社は2025年2月20日に2025年第4四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。
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ウォルマート(WMT)の最新の2025年度第4四半期決算発表に関して
ウォルマート(WMT)は、2025年2月20日に発表された最新の2025年度第4四半期決算において、一時的な要因を除いたEPS(非経常項目を除く1株当たり利益)を0.66ドルと発表しました。これは前四半期の0.58ドルから13.8%の増加であり、前年同期の0.60ドルと比較しても10%の増加となっています。1株当たり売上高も、前四半期の20.983ドルから22.351ドルへと増加し、堅調な販売の勢いを示しています。
過去5年間におけるEPS(非経常項目除く)の年平均成長率(CAGR)は7.90%であり、過去10年間では5.10%の成長率となっています。業界全体の成長予測では、今後10年間で年平均約3%の安定的な拡大が見込まれており、穏やかな成長環境であることが示唆されています。
当四半期の粗利益率は24.85%であり、過去5年間の中央値である24.83%とほぼ同水準、過去10年間の中央値である24.98%と比較するとやや下回っています。
ウォルマートは自社株買いの実施によりEPSの成長を下支えしており、直近1年間の自社株買い比率は0.40%で、発行済株式数を減少させることで株主価値の向上に貢献しています。過去10年間においても、ウォルマートは継続的に自社株を買い戻しており、10年間の自社株買い比率は1.90%に達し、資本を規律ある形で株主に還元していることがうかがえます。
今後の見通しとしては、市場のアナリストの予測によれば、2026年、2027年、2028年の会計年度における売上高は、それぞれ7,055億ドル、7,371億ドル、7,719億ドルと、安定的な成長が見込まれています。また、今後の会計年度におけるEPSはそれぞれ2.618ドルおよび2.949ドルと予測されており、引き続き利益の増加が期待されています。
このような成長見通しは、ウォルマートが推進しているeコマース分野の強化やサプライチェーンの最適化といった戦略的な取り組みによって支えられており、同社が将来にわたって成長を続けていくための好位置にあることを示しています。
次回の決算発表日は2025年5月15日に予定されており、これによりこれらの予測や競争の激しい市場環境におけるウォルマートの戦略的対応について、さらなる情報が明らかになる見込みです。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ウォルマート(WMT)の財務パフォーマンスに関して
ウォルマート(WMT)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。
まず、同社は、優れた財務効率と価値創出能力を示しています。過去5年間におけるROICの中央値は10.92%であり、WACCの中央値である6.08%を大きく上回っています。この差から、同社が経済的にプラスの価値を効果的に生み出していることがわかります。すなわち、ROICがWACCを上回っているということは、投資によって得られるリターンが資本コストを上回っていることを意味します。
さらに詳しく見ると、現在のROICは12.04%であり、これもWACCの7.73%を上回っています。この正のスプレッドは、同社が引き続き資本コストを上回るリターンを生むプロジェクトに投資を行うことで、株主価値を創出し続けていることを裏付けています。
加えて、同社の自己資本利益率(ROE)も堅調で、現在は22.67%となっており、株主資本に対する収益性の高さを示しています。
これらの指標を総合すると、ウォルマートは資本の配分において効率的であるだけでなく、持続的な経済的価値の創出と健全な財務体質を維持する姿勢にも成功していることが分かります。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ウォルマート(WMT)の配当に関して
ウォルマート(WMT)は、過去53年間に渡り連続して増配を継続する配当王です。同社は安定した配当成長を示しており、過去3年間の配当成長率は4.20%、過去5年間では2.90%となっています。直近の四半期配当は1株あたり0.235ドルで、従来の0.2075ドルから増加しており、株主への価値還元に対する同社の姿勢がうかがえます。
予想配当利回りは1.10%で、これは過去10年間の中央値である1.77%を下回っており、将来的な利回り改善の余地があることを示しています。同社のEBITDA有利子負債倍率は1.43倍で、業界における注意水準である2倍を下回っており、財務の健全性と債務管理の良好さがうかがえます。この低い比率は、過度な財務負担を伴わずに配当の維持または増額が可能であることを裏付けています。一般的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。
今後を見据えると、今後3~5年間の配当成長率は7.75%と予想されており、配当収入を重視するインカム投資家にとっては魅力的な見通しです。現在の配当性向は33.0%で、過去の水準と比べても十分に低く、将来の配当に対する余裕があることを示しています。
次回の配当落ち日は2025年5月9日に予定されています。ウォルマートは四半期ごとに配当を実施しているため、次の配当落ち日は平日であることを考慮すると、2025年8月8日になる可能性が高いと考えられます。
予想配当利回り:1.10%
配当性向:33%
配当カバレッジ・レシオ:2.9倍
過去5年間の配当成長率: 2.90%
EBITDA有利子負債倍率:1.43倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ウォルマート(WMT)のバリュエーションに関して
ウォルマート(WMT)の現在の株価は85.15ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である58.43ドルよりも高い水準にあることから、割高である可能性が示唆されています。
また、過去12か月(TTM)ベースの実績PERは35.33倍で、過去10年間の中央値である27.22倍を上回っており、過去の水準と比べて割高であることを意味します。同様に、EV/EBITDA倍率は17.72倍で、10年中央値の13.03倍を上回っており、こちらも過大評価の可能性を示しています。
その他のバリュエーション指標を見ても、実績ベースのPBRは7.51倍で、10年中央値の4.64倍を大きく上回っており、投資家がウォルマートの簿価に対してプレミアムを支払っている状況です。また、実績ベースの株価フリーキャッシュフロー倍率(P/FCF)は54.29倍と非常に高く、過去10年の中央値である18.7倍8と比較しても、キャッシュフロー創出力に対して株価が割高であることがわかります。
一方で、実績ベースの株価売上高倍率(PSR)は1.02倍で、10年中央値の0.64倍に近く、この指標に関しては乖離が比較的小さい状況です。
このように一見割高に見えるバリュエーションであるにもかかわらず、市場のアナリストのセンチメントは依然として前向きであり、目標株価の平均値は109.25ドル前後と安定しており、ここ数か月からわずかに調整された水準となっています。この楽観的な見通しは、将来的な収益改善や戦略的成長施策への期待を反映している可能性があります。
しかしながら、現在のバリュエーション指標や安全余裕率のマイナスを踏まえると、ウォルマート株への投資を検討する際には慎重な姿勢が求められます。投資家はこれらの要素を、自身の投資戦略やリスク許容度と照らし合わせて判断することが重要でしょう。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ウォルマート(WMT)のリスクとリターンに関して
ウォルマート(WMT)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
同社の財務状況は概ね健全であると見受けられますが、いくつか留意すべき点も存在します。ピオトロスキーのFスコアは8であり、これは同社の財務体質が強固であることを示しており、業務効率、収益性、流動性の面で健全であることがうかがえます。加えて、アルトマンZスコアは5.95と、財務的な危機水準を大きく上回っており、倒産リスクが低いことを示唆しています。
さらに、営業利益率が拡大傾向にあることから、コスト管理が効率的に行われており、収益性が改善されている可能性が高いです。
一方で、注意が必要な点として、ウォルマートは過去3年間で23億ドルの新たな負債を発行しています。現時点では負債水準は許容範囲内にとどまっているものの、今後さらなる増加がないかどうか、引き続き注視する必要があります。
また、最近のインサイダーによる売却活動では、買い注文が一切ない中で15件、合計約1,200万株の売却が行われており、企業内部に近い関係者による自信の欠如と受け取られる可能性があります。
しかしながら、ベニッシュのMスコアは-2.7であり、これは同社が利益操作を行っている可能性が低いことを示しており、投資家にとって安心材料となるでしょう。
総じて言えば、いくつかの警戒すべきサインは見られるものの、財務指標は全体的に良好であり、ウォルマートは健全な財務基盤を維持していると評価できます。投資家としては、今後も負債の推移やインサイダーの動向に注意を払いつつも、同社の堅実な財務状況には一定の安心感を持って臨むことができるでしょう。
関連用語
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ウォルマート(WMT)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して
ウォルマート(WMT)における過去1年間のインサイダー取引の動向を見ると、取締役や経営陣による売却が顕著であることがわかります。直近3か月間では、インサイダーによる売却取引が15件あり、購入取引は一件もありませんでした。これを過去6か月に拡大してみると、売却件数は29件に増加し、購入はわずか1件にとどまっています。さらに過去12か月間では、売却取引は合計82件となり、購入取引は依然として1件のみです。
このように、インサイダーによる一貫した売却傾向は、今後の株価パフォーマンスに対する自信の欠如、あるいは個人資産の分散戦略である可能性が考えられます。しかしながら、インサイダーによる同社株式の保有比率は1.09%と比較的低く、経営陣や取締役が保有している株式は全体のごく一部にとどまっています。
一方で、プロの機関投資家の保有比率は35.46%であり、ウォルマートに対する外部からの関心と投資が一定程度存在していることが示されています。
総じて、購入に対して売却が大幅に上回っているインサイダー取引の傾向は、投資家にとって懸念材料となる可能性があります。ただし、プロの機関投資家による大きな保有は、同社の安定性に対する一定の安心感を与える要素ともなり得ます。
インサイダー(内部関係者)による売買
(出所:筆者作成)
関連用語
インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。
機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。
ウォルマート(WMT)の流動性に関して
ウォルマート(WMT)は、直近営業日の1日あたりの取引量が14,754,285株となっており、中程度の活発さを示しています。これは、過去2か月間の平均1日取引量である22,178,596株をわずかに下回っており、直近で取引活動が減少していることを示唆しています。このような傾向は流動性の状況に影響を与える可能性があります。
同社は通常、取引量が多いため流動性は概ね良好ですが、最近の取引量の減少は流動性の逼迫を意味している可能性があります。取引量が減少すると、売買価格のスプレッド(ビッド・アスクスプレッド)が広がり、大口の取引を行う際の約定価格に影響が出る可能性があります。
一方で、ダークプール・インデックス(DPI)は38.26%であり、同社の取引の相当部分が取引所外(ダークプール)で行われていることを示しています。これは透明性に影響を与える可能性があり、価格発見における乖離を引き起こす要因ともなり得ます。DPIが38.26%であることは、非公開取引が比較的多く行われていることを示しており、機関投資家の関心や、取引意図を市場に見せたくない戦略が反映されている可能性があります。
総じて、ウォルマートは依然として流動性の高い銘柄ではありますが、最近の取引量の減少とダークプール取引の比率の高さは、特に大口のポジションを検討している投資家や、正確な価格での取引執行を重視する投資家にとって、注意を要する要素となっているように見えます。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
その他のウォルマート(WMT)に関するレポートに関心がございましたら、こちらのリンクより、ウォルマートのページにてご覧いただければと思います。
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