【半導体】マイクロン・テクノロジー(MU)とは?今後の株価見通しと将来性に迫る!
- 本稿では、注目の米国半導体銘柄である「マイクロン・テクノロジーとは?」という基礎的な内容から、2025年3月20日に発表された最新の2025年度第2四半期決算と配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- マイクロン・テクノロジーは、垂直統合型のビジネスモデルを採用し、AIや自動車など幅広い分野にメモリおよびストレージ製品を提供している半導体企業です。
- 同社の1株当たり配当金は0.115ドルである一方で、予想配当利回りは0.52%、さらに、配当性向9%と低く、過去5年間の配当成長率は0%であり、利益の多くを再投資に回す戦略を取っているように見えます。
- 財務指標や市場評価では割安感もある一方で、ROICがWACCを下回るなど資本効率に課題があり、今後の成長戦略に注目が集まっています。
マイクロン・テクノロジー(MU)の概要
セクター:半導体
現在の株価:88ドル
時価総額:988.4億ドル
過去5年間の配当成長率:0.00%
次回配当落ち日:2025年3月31日
次回配当支払い日:2025年4月15日
予想配当利回り:0.52%
過去5年間の売上高成長率:-0.80%
過去10年間の売上高成長率:5.10%
関連用語
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
(出所:筆者作成)
マイクロン・テクノロジー(MU:予想配当利回り0.52%・配当性向9%・1株当たり配当金0.115ドル)は、1978年にアイダホ州ボイシで設立された、メモリおよびストレージソリューションを提供する世界的な半導体メーカーです。同社は、コンピュートおよびネットワーキング事業部(CNBU)、モバイル事業部(MBU)、組み込み事業部(EBU)、ストレージ事業部(SBU)の4つの主要セグメントを通じて事業を展開しています。
CNBUは、クライアント、クラウドサーバー、エンタープライズ、グラフィックス、ネットワーキング市場向けにメモリ製品とソリューションを提供しています。MBUは、スマートフォンやその他のモバイルデバイス市場に向けたメモリおよびストレージ製品を担当しています。EBUは、自動車、産業、消費者市場向けのメモリおよびストレージ製品に焦点を当て、SBUはエンタープライズおよびクラウド、クライアント、消費者ストレージ市場向けにSSDやコンポーネントレベルのソリューションを提供しています。
同社のユニークな特徴として、垂直統合型のビジネスモデルが挙げられます。設計から製造、販売までを一貫して行うことで、製品の品質と供給の安定性を確保しています。また、AI、自動車、モバイル、データセンター、クライアントなど、多岐にわたるアプリケーションに対応するメモリおよびストレージソリューションを提供しており、これにより多様な市場ニーズに応えています。
財務面では、2025年3月31日を基準日とする四半期配当として1株あたり0.115ドルを支払う予定で、年間配当額は0.46ドル、配当利回りは0.52%となっています。ただし、過去5年間の配当成長率は0%であり、配当性向も9%と低水準であることから、同社は利益の再投資を重視する戦略を採用していると考えられます。
投資家にとって、マイクロン・テクノロジーはメモリおよびストレージ市場での強固な地位と、多様な製品ポートフォリオを有する企業として魅力的に映るかもしれません。しかし、配当株としての魅力は限定的であり、主にキャピタルゲインを狙う投資家に適した銘柄といえるでしょう。同社の成長戦略や市場動向を注視することが、投資判断において重要となります。
そして、同社は2025年3月20日に2025年第2四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。
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マイクロン・テクノロジー(MU)の最新の2025年度第2四半期決算発表に関して
マイクロン・テクノロジー(MU)は、2025年3月20日に発表された最新の2025年度第2四半期決算において、一時的要因を除いたEPSを1.56ドルと報告しました。これは前四半期の1.79ドルからは減少しましたが、前年同期の0.42ドルからは大幅に改善しています。
希薄化後EPSは1.41ドルで、こちらも前四半期からは減少したものの、前年同期の0.71ドルからは増加しました。
1株あたり売上高は7.171ドルで、前四半期の7.762ドルからはわずかに減少しましたが、前年同期の5.228ドルと比べると増加しています。
一方で、業界予測では今後10年間で年間約8%の成長が見込まれており、前向きな見通しが立てられています。
今後については、市場のアナリストはEPSの成長を予想しており、次の会計年度のEPSは6.307ドル、さらにその翌年は10.057ドルと見込まれています。
売上高も増加が予想されており、2025年には353億7,059万ドル、2026年には448億9,197万ドルになるとされています。
次回の決算発表は2025年6月26日に予定されており、同社の業績動向や成長可能性をさらに明らかにするものになると期待されています。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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マイクロン・テクノロジー(MU)の財務パフォーマンスに関して
マイクロン・テクノロジー(MU)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。
過去5年間の中央値では、ROICは7.29%、WACCは9.17%となっており、歴史的に見て同社は資本コストを上回るリターンを創出するのに苦戦していたことがうかがえます。これは、この期間における企業価値の創出が限定的であったことを示しています。
直近のデータでは、ROICが8.55%、WACCが11.87%となっており、依然として資本コストがリターンを上回っている状況が続いており、現在の経済価値創出に関して懸念が生じる可能性があります。自己資本利益率(ROE)は、過去5年間の中央値である7.18%から10.22%へと改善しているものの、依然として過去の最高水準には達していません。
以上より、同社が株主価値を高めるためには、WACCを上回るリターンを継続的に生み出すことが重要です。そのためには、事業運営の効率化や戦略的な投資、コスト管理の強化などを通じて、ROICとWACCの差を埋め、安定的に資本コストを超えるリターンを確保することが求められます。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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マイクロン・テクノロジー(MU)の配当に関して
マイクロン・テクノロジー(MU)は、過去5年間にわたり配当成長率が横ばいで推移しており、1株あたりの配当成長率は5年・3年ともに0.00%となっています。これは、近年において配当金の増額が行われていないことを示しています。
また、同社の予想配当利回りは控えめな0.52%で、配当性向はわずか9%にとどまっており、利益の株主還元に対して保守的な姿勢がうかがえます。EBITDA有利子負債倍率は1.02倍であり、財務リスクは低く、債務返済能力が高いことを示しています。この水準は業界基準においても良好であり、2倍未満の比率は健全と見なされます。
過去には配当成長が見られなかったものの、今後3〜5年における配当成長率は3.82%と予測されており、将来的な増配の可能性が期待されています。過去10年間には、配当性向が100%を超える水準に達したこともあり、これが過去の配当成長を制約していた可能性があります。
セクター比較においては、同社の予想配当利回りは、公益事業や生活必需品といったより伝統的なセクターの平均利回りよりも低いのが現状です。これらのセクターは通常、インカム重視の投資家を惹きつけるためにより高い利回りを提供しています。
次回の配当落ち日は2025年3月31日に予定されており、同社は四半期ごとに配当を実施しています。したがって、次の配当落ち日は2025年6月30日と予想されています。
予想配当利回り:0.52%
配当性向:9%
配当カバレッジ・レシオ:9.07倍
過去5年間の配当成長率: 0.00%
EBITDA有利子負債倍率:1.02倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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マイクロン・テクノロジー(MU)のバリュエーションに関して
マイクロン・テクノロジー(MU)の現在の株価は88.44ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である108.87ドルよりも低い水準にあり、安全余裕率(マージン)が18.77%となっていることから、やや割安である可能性が示唆されています。
一方で、バリュエーション指標を確認すると、直近12か月(TTM)の実績PER(株価収益率)は21.21で、過去10年間の中央値である10.70よりも高く、過去の水準と比較してプレミアムで取引されている可能性があります。一方で、予想PERは12.75とされており、将来的な収益の改善が見込まれていることがうかがえます。
また、TTMベースのEV/EBITDA倍率は7.18で、10年中央値の6.19をやや上回っているものの、歴史的な平均水準に近いバリュエーションとなっています。注目すべきは、TTMベースのPBR(株価純資産倍率)が2.03である点です。これは、10年中央値の1.72より高いものの、過去最高の3.54よりは大幅に低いため、簿価ベースではまだ成長の余地があることを示唆しています。
ただし、株価売上高倍率(PSR)は3.2で、10年中央値の2.41を上回っており、売上高との比較ではやや割高感があるといえます。
しかしながら、市場のアナリストの評価は比較的安定しており、目標株価の平均値は126.18ドルとされています。ここ数か月で徐々に目標株価が下がっているものの、依然として上昇余地があると考えられています。39名のアナリストによる評価は、同社に対する市場の関心の高さを示しており、コンセンサスとしても上昇の可能性があると見られます。
総じて、一部のバリュエーション指標ではプレミアムが見られるものの、本質的価値や市場のアナリストによる目標株価を踏まえると、同社の現在の株価は割安であり、投資家にとって上昇余地のある銘柄である可能性が示唆されています。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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マイクロン・テクノロジー(MU)のリスクとリターンに関して
マイクロン・テクノロジー(MU)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
まず懸念点としては、直近3か月間のインサイダー取引において、社内関係者による自社株の購入が一切ない一方で、売却が7件、合計で66,001株が売却されていることから、経営陣内部での自信の欠如が示唆されています。また、投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を下回っており、資本配分の効率性に課題があると考えられます。さらに、過去3年間における1株あたり売上高の減少は、長期的な成長に対する懸念を示しています。
一方で、複数の財務指標は同社の基礎的な強さを裏付けています。ピオトロスキーのFスコアは7であり、財務体質が健全であることを示しています。さらに、ベニッシュのMスコアは利益操作のリスクが低いことを示唆しています。バリュエーション面では、PBR、PER、株価売上高倍率(PSR)の各指標が過去の低水準に近づいており、割安感があるように見えます。
また、アルトマンのZスコアは4.27と高く、財務の安定性を示しています。予想配当利回りも直近1年間での最高水準にあり、投資家にとっての魅力を高めています。
総合的に見ると、インサイダーの信頼感や資本効率に対する懸念はあるものの、現在のバリュエーションや財務指標を考慮すれば、リスク許容度の高い投資家にとっては魅力的な投資機会となる可能性があります。
関連用語
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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マイクロン・テクノロジー(MU)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して
過去1年間のマイクロン・テクノロジー(MU)におけるインサイダー取引の動向を見ると、同社の取締役や経営陣による一貫した売却傾向が確認されています。直近12か月では、インサイダーによる売却が29件あり、購入は一件も報告されていません。この傾向は、直近6か月においても売却が9件、さらに直近3か月でも売却が7件と継続しており、インサイダーによる弱気姿勢や利益確定の動きが続いていることがうかがえます。
ただし、インサイダーによる保有比率は1.45%と控えめであり、経営陣などが同社株を大きく保有しているわけではないことが分かります。一方で、プロの機関投資家による保有比率は78.53%と高く、機関投資家からの強い関心と支配力が示されています。この高い機関投資家の保有比率は、インサイダーによる売却傾向がある一方で、同社の長期的な見通しに対する市場の信頼感を示唆しているとも考えられます。
総じて、インサイダーによる繰り返しの売却は一部の投資家に懸念を与える可能性がありますが、機関投資家による安定した高い保有比率は、そうした懸念を一定程度緩和し、企業に対する安定性と監視体制の強さを示していると言えるでしょう。
インサイダー(内部関係者)による売買
(出所:筆者作成)
関連用語
インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。
機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。
マイクロン・テクノロジー(MU)の流動性に関して
マイクロン・テクノロジー(MU)は、最近の出来高および流動性指標からも分かるように、動的な取引環境を示しています。同社の直近営業日の取引量は16,999,219株で、これは過去2か月間の平均日次取引量である21,101,896株をやや下回っています。このことは、取引活動の減少を意味しており、投資家のセンチメントの変化や、同社株に影響を与える市場環境の変動が示唆されます。
また、同社のダークプール指数(DPI)は36.45%となっており、相当な割合の取引が取引所外で行われていることを示しています。この水準のDPIは、全取引の3分の1以上が公開市場ではなく、非公開の場で実行されていることを意味しており、しばしば機関投資家による戦略的なポジショニングや、取引意図の可視性が低いことを示唆します。
総合的に見ると、同社は比較的高い流動性を維持している一方で、現在の平均を下回る取引量と高水準のDPIは、大口投資家による戦略的な買い集めや、株価が調整局面にある可能性を示していると考えられます。投資家は、これらの指標に注視することが重要であり、今後の株価の変動性や取引パターンに影響を及ぼす可能性があるため、注意深く見守る必要があるでしょう。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
加えて、インベストリンゴの半導体セクター担当アナリストであるダグラス・ オローリン氏とウィリアム・ キーティング氏が、マイクロン・テクノロジー(MU)に関する下記のより詳細なレポートを執筆しております。
そのため、同社への理解を一層深めるために、インベストリンゴのプラットフォーム上より併せてご覧いただければと思います。
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