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09 - 23 - 2024

やや強気
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド
やや強気
アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の現在の株価は61.36ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である77.96ドルよりも低い水準にあり、21.29%の安全余裕率(マージン)があることから、同社の現在の株価は割安である可能性を示しています。
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アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の将来性:予想配当利回り3%の注目の配当株の今後の株価見通しに迫る!

イアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、注目の配当銘柄である、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM:予想配当利回り3.25%・配当性向35%・1株当たり配当金0.5ドル)の最新の2024年度第2四半期決算発表と配当推移に関するトレンド、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。
  • そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
  • アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドは、農産物の加工と流通で世界的に有名で、油糧種子やトウモロコシの加工に強みを持つ企業です。 
  • 最新の2024年第2四半期決算では、EPSは前年同期から大幅に減少しましたが、長期的には安定した利益成長と配当の支払いが続いています。
  • バリュエーション面からも株価はやや割安であり、現在の予想配当利回りが3.25%であることを踏まえると、配当収入を重視するインカム投資家にとっては魅力的に映るかもしれません。

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の概要


レーティング:やや強気

バリュエーション:やや割安

リスクレベル:中リスク


セクター:消費財(パッケージ商品)

現在の株価:61ドル

時価総額:293億4,000万ドル

弊社算出の一株当たり本質的価値:77.96ドル

安全余裕率(マージン):21.29%

過去5年間の配当成長率:5.60%

前回配当落ち日:2024年8月21日

前回配当支払い日:2024年9月11日

予想配当利回り:3.25%

過去5年間の売上高成長率:11.40%

過去10年間の売上高成長率:3.60%


関連用語

安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。

売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。


足元の株価推移

(出所:筆者作成)

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM予想配当利回り3.25%・配当性向35%・1株当たり配当金0.5ドル)は、農産物の加工と流通における世界的なリーダー企業です。

特に油糧種子、トウモロコシ、小麦などの加工に強みを持ち、広範な物流ネットワークを駆使して世界中の作物を保管・輸送する最大級の穀物取引業者でもあります。

さらに、栄養事業では人間用および動物用の原材料を提供しており、トウモロコシを原料とする甘味料、でんぷん、エタノールの大手生産者としても知られています。

同社の財務状況は安定しており、粗利益率が向上しているほか、近年では積極的な株式買い戻しや、安定した配当支払いが行われています。

さらに、同社は現在、予想配当利回りが約3.25%と高水準にあることから、配当収入を重視するインカム投資家にとって魅力的な高配当株となっています。

また、最近の買収活動を通じて、栄養事業やサステナビリティ関連事業の強化にも注力しています。

そして、同社は2024年7月30日に2024年第2四半期決算を発表しています。


アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の最新の2024年度第2四半期決算発表に関して

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の2024年第2四半期の非経常損益項目を除くベースでのEPSEPS without NRIは1.03ドルとなり、前四半期の1.46ドルや前年同期の1.89ドルから大幅に減少しました。

希薄化後EPSも0.98ドルに下がり、2024年第1四半期の1.42ドル、2023年第2四半期の1.70ドルを下回りました。

1株あたりの売上高は45.128ドルで、前四半期の42.504ドルからは増加したものの、前年同期の46.136ドルを下回っています。

一方で、長期的なパフォーマンスを見ると、下記のチャートからも分かる通り、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は20.30%で、過去10年間の年平均成長率は12.00%となっており、強い成長が示されています。

また、今後10年間で業界は約10%の成長を予測しており、この成長見通しは同社の将来の業績にも影響を与える可能性があります。

さらに、粗利益率は7.44%で、過去5年間の中央値である7.02%をわずかに上回っており、利益率の安定がうかがえます。

加えて、同社は自社株式の買い戻しを積極的に行っており、1年間の自社株買い比率は10.80%で、発行済株式の10.80%が買い戻され、株式数を減らすことでEPSを支えています。

ただし、過去3年間の自社株買い比率は2.60%で、一貫して株主価値向上に努めていますが、過去のピーク水準からは減少しています。

そして、今後の株価見通しについては、市場のアナリストは2025年度の同社のEPSを5.304ドル、翌年には5.390ドルと予測しています。

売上高予測は今後3年間でそれぞれ87,420.46百万ドル、89,661.99百万ドル、91,577.56百万ドルと成長が見込まれています。

次の決算発表は2024年10月22日に予定されており、今後の業績や市場の期待との一致度がさらに明らかになるでしょう。

非経常損益項目を除くベースでのEPS

(年間ベース:直近4四半期の合計値

(出所:筆者作成)


関連用語

EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。

非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。

希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。

1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。

粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。

自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の財務パフォーマンスに関して

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)、加重平均資本コスト(WACC)、自己資本利益率(ROE)の観点から分析していきます。

まず、過去5年間のROICの中央値は5.48%である一方で、過去5年間のWACCの中央値は7.25%であり、これは同社が経済的価値を創出できていないことを示しています。

そして、ROICがWACCを下回っているため、同社の投資は資本コストを十分にカバーできておらず、株主価値を損なっている可能性があります。

しかし、ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC)では、同期間において17.60%と高い数値が示されており、特定の調整や基準を考慮すると、より効率的に資本を活用している可能性があります。

それでも、現在のROICは5.18%で、現在のWACCである7.14%を依然として下回っており、資本コストを超える利益を生み出せていない状況が続いています。

以上より、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドにとって、経済的価値を創出する能力は長期的な成長の鍵となります。

そのため、運営効率の向上や戦略的な資本配分を改善することで、ROICをWACC以上に引き上げ、株主価値を向上させることが必要でしょう。

投下資本利益率(ROIC)加重平均資本コスト(WACC)の比較

(出所:筆者作成)


関連用語

総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。

自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。

投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。

ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。

加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の配当に関して

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)は安定した配当成長を続けており、過去5年間で5.60%、過去3年間では7.70%という力強い配当成長を示しています。

足元では、1株当たり配当金が0.45ドルから0.50ドルに引き上げられ、堅調な財務状況を反映しています。

また、予想配当利回りは3.25%で、過去10年間の中央値である2.73%を上回っており、配当面での魅力が際立っています。

さらに、現在の配当性向は35%で、過去10年間の最低値や中央値が100%を超えていたことを考えると、より保守的な配当方針が取られていることがわかります。

そして、この低水準の配当性向により、今後の配当増加にも十分な余地があると考えられます。

加えて、EBITDA有利子負債倍率は2.36倍で、適度な範囲に収まっていますが、業界標準を考慮すると、引き続き債務返済能力を確保するための注意が必要でしょう。

今後3~5年間の配当成長率は5.67%と予測されており、これまでの成長傾向が続くと期待されています。

前回の権利確定日は2024年8月21日で、次の権利確定日は2024年11月21日と予想され、引き続き安定した配当の支払いが見込まれています。

予想配当利回り3.25%

配当性向35%

配当カバレッジ・レシオ2.63

過去5年間の配当成長率5.60%

EBITDA有利子負債倍率2.36

DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金

(出所:筆者作成)

Dividend Yield:予想配当利回り

(出所:筆者作成)

Dividend Payout:配当性向

(出所:筆者作成)


関連用語

1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。

配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。

予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。

配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。

EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。

配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。

配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。

配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)のバリュエーションに関して

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADMの現在の株価は61.36ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である77.96ドルよりも低い水準にあり、21.29%の安全余裕率(マージン)があることから、同社の現在の株価は割安である可能性を示しています。

また、直近過去12か月間の実績ベースのPERは12.27倍で、過去10年間の中央値である14.43倍を下回っていることから、同社が歴史的な水準と比べても割安であることが示唆されています。

さらに、予想ベースのPERは11.34倍とさらに低く、更なる成長が期待されています。

加えて、直近過去12か月間の実績ベースのEV/EBITDA倍率は8.16倍で、過去10年間の中央値である9.91倍より低く、さらに割安感が見られます。

そして、直近過去12か月間の実績ベースの株価売上高倍率倍(PSR)は0.36倍で、過去10年間の最低値と中央値の範囲内にあり、売上に対して適正なバリュエーションが付与されていることを示しています。

また、PBRは1.32倍で、過去10年間の中央値である1.43倍をやや下回っており、資産価値に対しても割安であることを裏付けています。

さらに、市場のアナリストの見解も安定しており、現在の目標株価は62.23ドルで、最近数か月で大きな変動は見られません。

この目標株価の安定性と主要なバリュエーション指標の分析結果から、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドの市場での認識に大きな変動はないと考えられます。

総合的に見ると、安全余裕率が十分にあり、過去のバリュエーションと比較してもバリュエーションが低く、市場のアナリストの見通しは慎重ながらも前向きと言えるでしょう。

(出所:筆者作成)


上記グラフにおける関連用語

Price:現在の株価

Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値

DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価

DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価

Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価

Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価

赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値


関連用語

実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。

株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。

株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。

EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。

PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。

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アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)のリスクとリターンに関して

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADMのリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います

まずマイナス面では、過去3年間で新規に11億ドルの長期債務を発行しており、これが適切に管理されなければ財務レバレッジとリスクが高まる可能性があります。

また、最近のインサイダーによる同社株式の売買動向を見てみると、324,821株が売却された一方で、買い付けが一切行われていないことから、同社関係者が同社の今後の株価見通しに対して必ずしもポジティブに見ていない可能性も考えられます。

さらに、過去12か月で1株あたりの売上高が減少し、投資資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を下回っているため、資本の効率的な活用に課題があることが示されています。

一方で、同社にはいくつかのポジティブな要素もあり、こうした懸念を緩和する可能性があります。

まず、ベニッシュのMスコアは-2.71で、同社が利益操作を行っている可能性が低いことを示しており、投資家にとって安心材料となります。

さらに、営業利益率は向上しており、効率性や収益性の改善が見られます。

また、予想配当利回りが過去3年間でも最も高水準にあり、配当収入を重視するインカム投資家にとって魅力的な投資対象となっています。

さらに、アルトマンのZスコアも3.29と高く、財務の安定性があり破綻リスクが低いことを示しています。

総じて、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドにはいくつかの財務的な懸念があるものの、強力な営業パフォーマンスと財務の安定性により、こうしたリスクはある程度相殺される可能性があります。


関連用語

財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。

アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。

ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。

ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。

ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。

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アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

過去1年間のアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)のインサイダーによる同社株式の取引を見ると、役員や経営陣による売却が継続的に行われていることがわかります。

この12か月間でインサイダーによる同社株式の買い付けは無かった一方で、直近の過去3か月間で5件、過去6か月間では6件、過去12か月間でも6件の売却が行われています。

このことから、インサイダーは短期から中期の同社の見通しに対して慎重な姿勢を示している可能性があります。

ただし、インサイダーによる同社株式の保有比率は2.97%と比較的低く、彼らの同社に対する持ち分は少ないと言えます。

一方で、プロの機関投資家の保有比率は79.85%と非常に高く、プロの機関投資家が同社の方向性に強い影響力を持っていることがわかります。

インサイダーによる買いがない中で売却が続いている点は、投資家にとって注意すべきポイントかもしれませんが、プロの機関投資家からの強い支持が、同社の長期的な安定性に対する一定の安心材料となるでしょう。

インサイダー(内部関係者)による売買

(出所:筆者作成)


関連用語

インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。

機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。


アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)の流動性に関して

アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADMの流動性分析では、市場での取引活動と流動性が非常に高いことが示されています。

過去2か月間の1日あたりの平均出来高は2,541,361株で、安定した取引が続いていることを示唆しています。

また、直近営業日の出来高は11,487,940株に急増しており、特定のニュースや市場イベントにより、一時的な取引の増加があった可能性があります。

さらに、ダーク・プール指数(DPI)は64.91%で、取引の大部分がダークプールで行われていることを示しています。

これは、大規模なプロの機関投資家の関与や、市場への影響を最小限に抑えるために匿名での取引が多く行われている可能性を示唆しています。

DPIが高いことは価格の透明性に影響を与え、市場が活発な時期には価格変動が激しくなる可能性があります。

全体として、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドは大規模な取引量に対応できる十分な流動性を持っていますが、DPIの高さから、投資家は公開市場では見えない価格変動に注意を払う必要があります。

そして、上記の分析からも、同社への投資を検討する際には、市場の動向を把握するために、公開市場と非公開市場の両方を監視することの重要性を強調しています。


関連用語

ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。

ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。


アナリスト紹介

イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。

以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。

ゾルンパノス氏のその他の配当関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ゾルンパノス氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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