やや強気ブリストル・マイヤーズ スクイブすべて表示ブリストル・マイヤーズ(BMY)今後の株価見通し:予想配当利回り4.7%で最新決算は堅調!高配当株の将来性に迫る!
イアニス・ ゾルンパノス- 本稿では、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY:予想配当利回り4.79%・配当性向173%・1株当たり配当金0.6ドル)の最新の2024年度第2四半期決算発表と配当推移に関するトレンド、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。
- そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
- ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)は、免疫腫瘍学や心血管疾患の治療薬でリーダー的存在であり、2024年第2四半期決算では堅調な業績を示しました。
- 同社の財務パフォーマンスは安定しており、ROICがWACCを上回り経済的価値を創出していますが、最近のROEは低下しており、配当性向が高いため、配当の持続可能性に注意が必要です。
- 株価のバリュエーションでは、同社の株価は一株当たり本質的価値に対して割安に見えますが、EV/EBITDA倍率は高く、投資家はリスクを慎重に評価する必要があるでしょう。
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)の概要
レーティング:やや強気
バリュエーション:やや割安
リスクレベル:中リスク
セクター:医薬品
現在の株価:49ドル
時価総額:1013.5億ドル
弊社算出の一株当たり本質的価値:69.78ドル
安全マージン:28.36%
過去5年間の配当成長率:8.00%
次回配当落ち日:2024年10月4日
次回配当支払い日:2024年11月1日
予想配当利回り:4.79%
過去5年間の売上高成長率:10.10%
過去10年間の売上高成長率:10.10%
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の内在価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、内在価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY:予想配当利回り4.79%・配当性向173%・1株当たり配当金0.6ドル)は、心血管疾患、がん、免疫障害など多岐にわたる治療領域における医薬品の発見、開発、販売を手掛けるグローバルな製薬企業です。
特に、免疫腫瘍学に注力しており、この分野での医薬品開発においてリーダー的存在として知られています。
また、同社は心血管疾患領域でも高血圧や心不全の治療薬を提供しており、幅広い患者ニーズに応える製品ポートフォリオを持っています。
同社は総売上の約70%が米国市場に由来しており、同業他社と比較して米国への依存度が高いことが特徴です。
このため、米国市場の動向が同社の業績に大きな影響を与える要因となっています。
今後も免疫腫瘍学やその他の治療領域での新薬開発を通じて、さらなる成長と医療の進歩に貢献することが期待されています。
また、同社は2024年7月26日に2024年第2四半期決算を発表しています。
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)の最新の2024年度第2四半期決算発表に関して
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)は、2024年6月30日に終了した最新の2024年度第2四半期決算において、非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI)は2.07ドル(前四半期:-4.4ドル / 前年同期:1.75ドル)となっており、前年同期比、並びに、前年同期比で上昇する着地となっています。
また、希薄化後のEPSは0.83ドル(前四半期:-5.89ドル / 前年同期:0.99ドル)となっており、前年同期比では上昇も、前年同期比では減少という着地となっています。
さらに、1株当たり売上高は6.013ドル(前四半期:5.865ドル / 前年同期:5.34ドル)となっており、前四半期比、並びに、前年同期比で上昇する着地となっています。
一方で、長期的なパフォーマンスを見ると、下記のチャートからも分かる通り、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は14.80%で、過去10年間の年平均成長率は18.70%となっており、中長期的に継続して成長を実現していることが分かります。
加えて、直近四半期の粗利益率は75.38%で、過去5年間の中央値である76.24%をわずかに下回っていますが、依然として高水準にあり、安定した運営効率を保っているように見えます。
自社株買いに関しては、過去1年間の自社株買い比率が3%で、これは発行済み株式の3%を過去1年で買い戻したことを意味します。
そして、これは通常、発行済み株式数の減少によりEPSを押し上げる効果があります。
一方で、過去10年間の自社株買いのおける同社の戦略は一貫しておらず、過去10年間の自社株買い比率は-3.40%で、買い戻しと新株の発行が混在していたことが示されています。
今後の株価見通しについては、市場のアナリストは同社に対して厳しい予測をしており、次の会計年度のEPSは-2.131ドル、その翌年には5.851ドルへの回復が見込まれています。
また、売上高は今後数年間でやや減少する見込みで、2024年には468億62万ドル、2026年には442億6957万ドルと予想されています。
次回の2024年度第3四半期決算発表は2024年10月31日に予定されており、今後のパフォーマンスやこれらの予測についてさらなる情報が明らかになるでしょう。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)の財務パフォーマンスに関して
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)、加重平均資本コスト(WACC)、自己資本利益率(ROE)の観点から分析していきます。
同社は、近年、堅調な財務パフォーマンスと効率的な資本配分を実現しています。
同社の投下資本利益率(ROIC)は常に加重平均資本コスト(WACC)を上回っており、継続して経済的な価値を創造していることが示されています。
具体的には、過去5年間のROICの中央値は7.58%で、現在のROICの水準は8.69%となっており、いずれも、過去5年間のWACCの中央値である4.66%と現在のWACCの水準である4.94%を超えています。
このROICとWACCのポジティブな差異は、同社が資本コスト以上のリターンを生み出し、株主に対して経済的な価値を継続して創出していることを示しています。
また、ROICがWACCを大きく上回っていることは、同社が資本を効率的に利益に転換する能力を持ち、戦略的な財務管理がうまく機能していることを示しています。
一方で、最近の自己資本利益率(ROE)は-26.40%とマイナスに転じていますが、過去の最高値である38.18%を考慮すれば、今後の回復が期待できるでしょう。
全体的に見て、ブリストル・マイヤーズ・スクイブの財務指標は資本効率が高く、経済価値を生み出す力があることを示しており、業界内で有利な立ち位置にあると言えます。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)の配当に関して
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)は、過去数年間において安定した配当成長を示しており、過去5年間の配当成長率は8.00%、過去3年間の配当成長率は7.90%となっています。
最新の四半期では1株あたり0.60ドルの配当金の支払いを維持しており、配当支払いにおける安定性と緩やかな増配トレンドを示しています。
しかし、EBITDA有利子負債倍率が10.49倍と著しく高く、財務リスクが高まっている可能性を示唆しています。
基本的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。
そのため、この水準は、リスクの目安とされる4倍を大きく超えており、もし財務状況がさらに悪化した場合、債務返済に課題が生じる可能性があります。
一方で、予想配当利回りは4.79%と、セクター平均と比べて高水準にあることからも、同業他社と比較した場合、配当を通じて魅力的なリターンを提供していると言えます。
ただし、配当性向は173%と著しく高く、過去10年間の中央値である100.38%を大幅に上回っています。
そのため、現在の配当の水準を維持、さらに成長させるためには、今後、利益をさらに成長させる必要があるでしょう。
また、同社の配当支払いは年4回で、次回の権利落ち日は2024年10月4日であり、その次の権利落ち日は2025年1月4日と予想されます。
さらに、市場では、今後3~5年の配当成長率は4.22%と予測されており、財務レバレッジと高い配当性向の影響で成長ペースはやや鈍化すると見られています。
まとめると、ブリストル・マイヤーズ・スクイブの予想配当利回りと配当成長率は魅力的ですが、高い債務レバレッジには注意が必要と言えるでしょう。
予想配当利回り:4.79%
配当性向:173%
配当カバレッジ・レシオ:-1.37倍
過去5年間の配当成長率:8.00%
EBITDA有利子負債倍率:10.49倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)のバリュエーションに関して
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)の現在の株価は49.99ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である69.78ドルよりも低い水準にあり、28.36%の安全余裕率(マージン)があることから、同社の現在の株価は割安である可能性を示しています。
また、直近過去12カ月間の実績ベースの株価売上高倍率は2.19倍で、過去10年間の中央値の3.66倍より低く、売上高を基準とした場合に、同社の株価が割安である可能性を示しています。
さらに、予想PERは7.14倍となっており、同社の過去の予想PERの中央値である25.52倍と比べると割安であり、今後の利益同行次第では現在の株価が魅力的に見えるかもしれません。
ただし、直近過去12カ月間の実績ベースのPERはマイナスとなっており、最近の利益状況に課題があることを示しています。
加えて、直近過去12カ月間の実績ベースのEV/EBITDA倍率は28.87倍で、過去10年間の中央値の16.13を大きく上回っており、この指標からは同社の株価が過大評価されている可能性が示唆されています。
また、直近過去12カ月間の実績ベースのPBRは現在5.96倍で、過去の中央値である5.24倍より若干高く、簿価ベースでは同社の株価が若干割高と言えます。
一方で、市場のアナリストの見解はやや前向きであるものの、同社の目標株価は51.72ドル前後で安定しているため、短期的な上昇余地は限られているようにも見えます。
以上より、これらの指標が示すように、ブリストル・マイヤーズ・スクイブは弊社算出の一株当たり本質価値の観点からは割安に見えますが、現在の利益の推移や高水準のEV/EBITDA倍率により、市場の投資家やアナリストから懐疑的な見方を受けている可能性があります。
そのため、投資家は同社への投資を検討する際には、慎重にリスクを精査する必要があるでしょう。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)のリスクとリターンに関して
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
まず、同社の財務状況は、いくつかの主要な指標を見ると一長一短であるように見えます。
第一に、総資産の成長率が14.9%と、5年間の売上成長率10.1%を上回っていることから、効率性に課題がある可能性があります。
総資産が増えたにもかかわらず、それに見合った売上の伸びが見られない場合、資産の活用が不十分であったり、過剰な投資をしている可能性が考えられます。
また、173%の配当性向は、同社が稼ぐ利益よりも多くの金額を株主に還元している可能性を示し、配当支払い能力における長期的な持続可能性に懸念を抱かせる内容です。
一方で、ベネッシュMスコアが-2.99というのは、同社が利益操作を行っている可能性が低いことを示しており、財務報告の信頼性には一定の安心感があります。
また、1株あたりの売上高と利益の成長が安定していることから、同社の事業が安定していることを示唆しています。
投資家は、同社への投資を検討する際には、これらの要素を慎重に検討し、リスクと事業の強みをバランスよく評価することが求められます。
関連用語解説
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の内在価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
関連コラム
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して
過去12か月間、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)のインサイダーによる同社株式の売買は比較的静かで、買い付けが3件確認されていますが、売却はありませんでした。
最近の過去6か月間、および、過去3か月間でもインサイダー取引は見られず、経営陣や役員による直近の個人的な投資行動は見受けられません。
一方で、インサイダーによる同社株式の保有比率はわずか0.32%で、役員や経営陣が同社の株式をほとんど保有していないことを示しています。
一方で、プロの機関投資家の同社株式の保有比率は75.94%と非常に高く、機関投資家が同社の動向に対して大きな影響力を持っていることがわかります。
以上より、過去1年間にインサイダーによる売却がなかったことは、将来の同社の業績に対するインサイダーの懸念が少ないというセンチメントを表している可能性があり、ポジティブに捉えられるかもしれません。
しかし、インサイダーによる保有比率が低いため、同社株式の動向は、インサイダー取引の動向よりも、プロの機関投資家の動きにより影響される可能性があるでしょう。
インサイダー(内部関係者)による売買
(出所:筆者作成)
関連用語
インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。
機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)の流動性に関して
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)の流動性は高く、直近営業日の一日の出来高は11,057,527株で、過去2ヶ月間の1日平均出来高は13,187,935株となっており、同社株式に対する一貫した取引があることを示唆しています。
また、同社株式のダークプール指数(DPI)は54.84%となっており、取引活動の約半分がダークプールで行われていることを示しています。
この高水準のDPIは、同社株式の価格発見への透明性と市場全体の効率性に影響を与える可能性があります。
そして、この水準は、機関投資家がこの銘柄を積極的に取引していることを示唆している可能性があります。
また、ダーク・プールにおける流動性は同社株価の安定に寄与し、株価のボラティリティを低下させるとも言えます。
しかし、DPIの割合が高いことは、取引の多くが公開市場で行われていないことを意味するため、価格変動を評価する際には、ダークプールでの取引が供給と需要の動態に目に見えない影響を与える可能性があることに留意すべきでしょう。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
アナリスト紹介
イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。
以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。
ゾルンパノス氏のその他の配当関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ゾルンパノス氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
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