【投資コラム】安全余裕率(Margin of Safety:安全マージン)とは?安全余裕率の求め方と目安を徹底解説!
イアニス・ ゾルンパノス- 本稿では、バリュー投資を理解する上で不可欠な「安全余裕率(Margin of Safety:安全マージン)」の基本的な概念、さらに、求め方と目安に関して詳しく解説していきます。
- 「バリュー投資の父」として知られるベンジャミン・グレアム氏は「安全余裕率」の概念を提唱し、これは株式を本質的価値よりも大幅に割安な時に購入することで、投資リスクを軽減するという考え方です。
- 「本質的価値」は、将来のキャッシュフローを基に計算され、株式の市場価格と比較して安全余裕率が設定されます。この差が大きいほどリスクが減り、利益の可能性が増します。
- 安全余裕率を活用するためには、徹底したリサーチ、適切な余裕率の設定、忍耐強く待つこと、分散投資が重要で、これにより市場の変動や予期しないリスクから投資家を守ることができます。
ベンジャミン・グレアム氏と安全余裕率(Margin of Safety:安全マージン)とは?
「バリュー投資の父」として知られるベンジャミン・グレアム氏は、成功した投資家たちが従ってきた重要な原則を提唱しました。そして、彼の代表的な著作『Security Analysis(証券分析)』(1934年)と『The Intelligent Investor(賢明なる投資家)』(1949年)は、投資の世界に大きな影響を与えました。
グレアム氏の最も有名な概念の1つが「安全余裕率(Margin of Safety:安全マージン)」であり、彼の投資哲学の中核を成すものです。この考え方はシンプルですが非常に強力です。つまり、投資家は本質的価値より大幅に割安なときにのみ株式を購入すべきだというものです。この割安さが、予測の誤差や市場の変動、予期しない出来事から投資家を守る役割を果たします。
本質的価値とは?
では、本質的価値とは何でしょうか?本質的価値(フェアバリュー)とは、資産の市場価格ではなく、その基礎的な価値を指します。これを計算するには、資産が将来生み出すであろうキャッシュフローを見積もり、そのキャッシュフローをリスクに応じた割引率で現在価値に割り引きます。こうして得られた現在価値の合計が、本質的価値となります。
例えば、ある企業が年間10万ドルの収益を5年間生み出すと予想され、割引率が10%とすると、その本質的価値は約379,079ドルになります。投資家はまず証券の本質的価値を見積もり、それを市場価格と比較します。本質的価値と市場価格の差が大きいほど、安全余裕率が高まることになります。
もしその企業が100株発行しているとすれば、1株あたりの本質的価値は約3.80ドルです。仮に現在の株価が3ドルだとすると、安全余裕率は約21%であり、投資家は本質的価値よりも割安な3ドルで株式を購入できることになります。
安全余裕率(Margin of Safety:安全マージン)が投資家を守る2つの理由
1. 投資資金を失うリスクを減らす:本質的価値よりも安く証券を購入することで、投資資金を守ることができます。
2. 潜在的な利益を増やす:市場価格が本質的価値に近づくにつれて、より大きな利益が期待できるようになります。
安全余裕率とは、本質的価値と市場価格の差を指します。本質的価値は、企業の収益や配当、成長性などを考慮した株式の真の価値の概算であり、ファンダメンタル分析を通じて評価されます。投資家が本質的価値よりも安く株式を購入すれば、投資リスクを軽減し、将来の収益機会を高めるクッションとなるのです。
(出所:筆者作成)
日本語訳
Price/Value of Shares(縦軸):株式価格(価値)
Time(横軸):時間軸
Overvalued:割高
Undervalued:割安
“Price is what you pay. Value is what you get.” – Warren Buffett:「価格は支払うもの。価値は得るもの。」– ウォーレン・バフェット
安全余裕率(Margin of Safety:安全マージン)の重要性
安全余裕率は、次のようなリスクを軽減するために非常に重要です。
・計算上の誤差:企業の本質的価値は、さまざまな仮定や計算に基づいて算出されますが、安全余裕率はその不確実性に対するバッファーとして機能します。
・株価の変動:市場の感情や経済状況、その他多くの要因によって株価は変動しますが、安全余裕率があれば、短期的な価格の上下動から投資家を守ることができます。
・予期しない出来事への備え:経済の悪化、自然災害、企業の内部問題など、株価に悪影響を与える出来事が発生することがありますが、安全余裕率がそのショックを和らげる役割を果たします。
ポートフォリオにおける安全余裕率(Margin of Safety:安全マージン)の活用法
安全余裕率を投資戦略に取り入れるための具体的な方法は以下の通りです:
1. 徹底したリサーチ:企業の財務諸表、業界での立ち位置、成長の見込みなどを詳細に調べ、本質的価値を見積もります。
2. 適切な余裕率を設定する:自分のリスク許容度と本質的価値の信頼性を考慮して、安全余裕率を設定します。一般的には、20%から50%の範囲が適切とされています。
3. 忍耐強く待つ:市場が十分な安全余裕率を提供する価格になるまで待ちます。この忍耐は難しいかもしれませんが、リスクを最小限に抑えるためには欠かせない要素です。
4. 分散投資を行う:業界や資産クラスを分散させることで、リスクをさらに低減します。
安全余裕率(Margin of Safety:安全マージン)に関するまとめ
投資家は、本質的価値よりも大幅に割安な価格で証券を購入することで、市場の変動や予期しないリスクに対して自分を守ることができます。
そして、安全余裕率の概念を理解し活用することで、投資家は堅実で規律ある投資戦略を構築し、資金を守りつつ利益を得ることができるでしょう。
アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス
イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。
以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。
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