Big Ben tower
09 - 12 - 2024

【投資コラム】ジョージ・ソロスの手法:「イングランド銀行を打ち負かした男」ジョージ・ソロスの名言と再帰性理論を通じて彼の投資方法に迫る!

イアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、著名な米国の投資家ジョージ・ソロス氏の手法を、彼の名言とReflexivity Theory(再帰性理論)の分析を通じて詳しく解説していきます。
  • ソロス氏は、グローバル・マクロ戦略で大成功を収め、特に1992年のポンド危機で「イングランド銀行を打ち負かした男」として知られています。
  • 彼の投資理論「Reflexivity Theory(再帰性理論)」は、投資家の行動が市場に影響を与え、その市場変動が再び投資家に影響を及ぼすというフィードバックループを説明し、市場のバブルや暴落の要因となるとされています。
  • ソロス氏は、彼の投資方法において、間違いを早期に認め修正する柔軟性が成功の鍵であり、市場の不確実性に備えて複数のシナリオを考慮することが重要だと強調しています。

ジョージ・ソロス氏と彼の投資手法とは?

"I’m not better than the next trader, just quicker at admitting my mistakes and moving on."

「私は他のトレーダーより優れているわけではない。ただ、自分の間違いを認め、それを乗り越えるのが早いだけだ。」

ジョージ・ソロス氏は、ハンガリー出身の著名な投資家、フィランソロピスト、政治活動家として知られています。彼は「ソロス・ファンド・マネジメント」を設立し、主にヘッジファンドを通じて莫大な利益を上げました。特に1992年の「ポンド危機」での取引によって10億ドル以上を稼ぎ、「イングランド銀行を打ち負かした男」として世界的に有名になりました。

彼の投資スタイルは主にグローバル・マクロ戦略であり、政治や経済の動向を分析し、それに基づいて投資決定を行う点が特徴です。また、ソロス氏は自身の財産を活用し、「オープン・ソサエティ財団」を通じて人権擁護や民主主義の推進、貧困削減などの社会的な活動にも力を入れています。その影響力と活動範囲の広さから、金融界のみならず、政治や社会問題にも大きな影響を与える人物として評価されています。

そして、上記のソロス氏の名言は彼の自己認識の高さと柔軟な投資スタイルを表しています。ソロス氏は、自分の判断が間違っていることに気づいた時、迅速に対応し、損失を最小限に抑える能力が成功の要因だとしています。これは、投資家としての成功には、間違いを早期に認め、素早く行動を修正することが重要であるという教訓を伝えています。市場ではプライドを捨て、誤りを素早く修正する姿勢が大きな差を生むという考え方です。

ジョージ・ソロス氏のReflexivity Theory / 再帰性理論

世界的に有名な金融家であり慈善家でもあるジョージ・ソロス氏は、数々の取引でレバレッジを駆使したポジションを取ることで知られています。また、一方で、大胆な投資戦略や「Reflexivity Theory(再帰性理論)」の提唱者としても有名です。

簡単に言えば、ジョージ・ソロス氏のReflexivity Theory(再帰性理論)は、投資家の行動が市場に影響を与え、その市場の変動が再び投資家の意思決定に影響を与える、という循環的な関係を説明しています。これにより、投資家の行動と市場の動きが互いに影響し合うフィードバックループが生まれます。このフィードバックループは、最終的にブーム(好況)やバスト(不況)といった自己強化型のサイクルを引き起こすことがあります。

例えば、多くの投資家がある資産が値上がりすると考えれば、その資産は買われ、価格が上昇します。そして、その上昇を見たさらに多くの投資家が買いに走ることで、バブルが膨れ上がります。一方で、市場心理がネガティブになれば、売り圧力が高まり、急激な価格下落が始まり、悪循環が生まれる可能性があります。

ジョージ・ソロス氏は、バブルや市場の暴落こそが再帰性の最も典型的な例だと指摘しています。市場参加者の期待と実際の市場状況が相互に作用し、その結果として投資家が市場の極端な動きに巻き込まれることがあるのです。

Reflexivity Theory(再帰性理論)

(出所:筆者作成)

Subjective Reality:主観的現実

Temporary Equibrium:一時的均衡

Economic Reality:経済的現実

市場は、心理的なバイアスや市場の非効率性によって、過剰反応や過小反応を引き起こすことがあります。

(出所:筆者作成)

Stock price: reflection of subjective reality:株価:主観的現実の反映

Temporary Equibrium:一時的均衡

Earnings  per Share: Economic Reality:一株当たり利益:経済的現実

ジョージ・ソロス氏の名言

1. "It's not whether you're right or wrong, but how much money you make when you're right and how much you lose when you're wrong."

日本語訳: 「重要なのは、自分が正しいか間違っているかではなく、正しい時にいくら稼ぎ、間違っている時にどれだけ損をするかである。」

解説: ソロス氏は、投資において結果が全てだと強調しています。投資の成否は正否の判断だけではなく、成功した時の利益や失敗した時の損失の大きさに大きく依存します。この考え方は、リスク管理の重要性を示しています。

2. "Markets are constantly in a state of uncertainty and flux, and money is made by discounting the obvious and betting on the unexpected."

日本語訳: 「市場は常に不確実で変動し続けており、儲けるためには、明白なことを割り引いて、予想外のことに賭ける必要がある。」

解説: ソロス氏の市場観をよく表している言葉で、市場は予測不可能なものだとしています。投資家は、表面的な情報に囚われず、意外性のある展開に目を向けることで利益を得ることができると強調しています。

3. "The worse a situation becomes, the less it takes to turn it around, the bigger the upside."

日本語訳: 「状況が悪化するほど、反転させるために必要なものは少なくなり、上昇の余地は大きくなる。」

解説: この言葉は、逆張りの投資戦略を支持する内容です。市場が悲観的であるほど、回復のためにわずかな好材料でも大きなリターンを得られる可能性が高まるという見方です。ソロス氏は、状況が極端に悪化したときこそ、投資機会が生まれると考えています。

4. "I’m only rich because I know when I’m wrong."

日本語訳: 「自分が間違っている時を知っているからこそ、私は裕福なのだ。」

解説: ソロス氏は、自分の失敗を認めることができる能力が成功の鍵だと考えています。間違いに気付いた時点で、迅速に行動を修正することで、大きな損失を回避できることを示唆しています。これは、柔軟性や自己反省の重要性を強調しています。

5. "The financial markets generally are unpredictable. So that one has to have different scenarios... The idea that you can actually predict what's going to happen contradicts my way of looking at the market."

日本語訳: 「金融市場は一般的に予測不可能だ。だから、いくつかのシナリオを持つ必要がある...市場を予測できるという考え方は、私の市場観とは相反する。」

解説: ソロス氏は、市場は予測不可能であるという信念を持っています。この名言は、投資家が常に複数のシナリオを考え、柔軟に対応することの重要性を示しています。市場の動きを正確に予測することに固執するのではなく、変化に対する適応力が重要であると強調しています。


アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス

イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。

以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。

ゾルンパノス氏のその他の配当関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ゾルンパノス氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


直近の配当関連銘柄レポート

1. エマソン・エレクトリック(EMR:配当王・予想配当利回り2%・配当性向40%)決算後株価下落で割安?今後の株価見通しと将来性に迫る!

2. ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS:予想配当利回り5%・配当金1.63ドル)の今後の株価見通しと将来性に迫る!

インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、高配当関連銘柄からAIや半導体関連のテクノロジー銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。そして、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は250銘柄以上となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。

弊社がカバーしている企業・銘柄の一覧ページはこちら
※インベストリンゴ上のいかなるレポートは、投資や税務、法律のアドバイスを提供するものではなく、情報提供を目的としています。本資料の内容について、当社は一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。具体的な投資や税務、法律に関するご相談は、専門のアドバイザーにお問い合わせください。