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09 - 16 - 2024

FRBによる利下げの株価への影響:9月のFRBの短期金利の利下げ幅は25ベーシスポイント、或いは、50ベーシスポイント?

ローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、2024年9月のFRBの利下げが、米国市場の株価に与える影響を詳しく解説していきます。
  • 強気相場が今年最高のパフォーマンスを記録し、経済の減速はインフレを健全な水準に戻すために必要なものであるとされます。 
  • 今週のFRBによる短期金利の利下げ幅が25ベーシスポイントか50ベーシスポイントかで市場の予想が分かれていることからも、FRBのパウエル議長が適切に対応できるかが焦点となっています。 
  • 一方で、ガソリン価格の下落と消費者心理の改善が続いており、経済成長の維持に期待が寄せられています。

強気派が再び市場を押し上げ、主要な市場指数は今年最高のパフォーマンスを記録しました。

雇用の成長が鈍化し、経済が停滞することで、景気拡大と強気相場に悪影響を及ぼすのではないかという懸念があった中でのことです。

確かに経済は減速していますが、崩れてはいません。

この減速は、インフレを健全な水準に戻すために必要で意図されたものであり、それが今や現実のものとなっています。

先週の8月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)の発表により、FRBが今週から短期金利の緩やかな利下げを開始すべきだと確認されました。

一部では、FRBの対応が遅すぎる、あるいは十分に積極的ではないと指摘する声もありますが、数カ月前までは「金利は長期間高めに維持すべきだ」という意見が大勢を占めていたのです。

(出所:Eward Jones

金融政策はサイエンスというよりアートに近いものです。

そのため、FRBが高金利で経済を冷やそうとする際には、ソフトランディングよりも景気後退が起こりやすいのです。

しかし、今回はうまく軟着陸(ソフトランディング)しそうです。

FRBが注目するインフレ指標は2.6%まで低下し、アトランタ連銀のGDPNowモデルによると、今四半期の経済成長率は2.5%とトレンドを上回る見込みです。

インフレへの懸念が薄れつつある中、FRBが前回利上げの際に遅れを取ったように、今回も利下げのタイミングを逃しているのではないかと、経済データに注目が集まっています。

しかし、私はFRBのパウエル議長が経済の悪化を回避できるタイミングで動いていると考えています。

S&P 500が2024年で最高の週を記録

トレーダーがFRBの利下げ期待を高める中、株式市場が上昇

(出所:Bloomberg

そして、FRBにとって思わぬ救いが現れました。

それはガソリン価格の大幅な下落です。

このタイミングでの下落は非常に重要であり、一般の消費者にとっても大きな安心材料となります。

ガソリン代が節約できれば、その分を他の自由な支出に回すことができます。

全国平均のガソリン価格が1ガロン3ドルを下回れば、実質的な消費支出の成長を維持するための重要な要因となるでしょう。

給油所での安堵

ブレント原油の価格が下落したことで、ガソリン価格が1年で最大の鈍化を見せている

(出所:Bloomberg

先週発表されたミシガン大学の調査によると、消費者心理はこれで4か月連続の改善となりました。

この傾向は、2022年夏にインフレがピークを迎えて以来、続いています。

現在、消費者は今後1年間の物価上昇率を2.7%と見込んでおり、これは2020年以来の低い水準です。

こうした背景から、今の注目点は経済成長の維持に移っています。

今週発表される小売売上高のデータが、その進捗を示す次の指標となるでしょう。

(出所:TRADING ECONOMICS

一方で、今週のFRB会合について、ひとつ心配な点があります。

それは、今週の短期金利の利下げ幅が25ベーシスポイントか50ベーシスポイントかで市場の予想が真っ二つに分かれていることです。

パウエル議長なら、どちらの選択でも納得のいく説明ができると思いますが、市場がどう反応するかを見極めるのは難しい状況です。

50ベーシスポイントの利上げは、FRBが対応の遅れを懸念しているのではないかという見方がありましたが、先週の市場の動きからすると、それが正当化されているとも思えます。

インフレがFRBの予想以上に早いペースで低下しているからです。

パウエル議長の記者会見では、この決定の背景を市場にしっかりと説明し、投資家の信頼を高めることが重要になります。

彼にはその点での実績があるので、期待できると思います。

2024年9月18日のFRB会合における目標金利の確率

現在の目標金利は5.25%〜5.50%

(出所:CME Group Inc


アナリスト紹介:ローレンス・フラー

ローレンス・フラー氏は、1993年にメリルリンチ証券でファイナンシャル・コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。その後、ファースト・ユニオン・ブローカレッジ、モルガン・スタンレー証券、INGグループで同職を務め、30年以上にわたり個人投資家顧客の投資ポートフォリオを管理してきました。

その後、2005年には長期的な目標であったFuller Asset Management LLCを設立し、独立を果たしました。さらに、2013年より米国金融ニュースサイトSeeking Alphaにて、米国投資家に対してマクロ経済・投資リサーチの提供を開始しており、現在では14,000人以上のフォロワーを獲得しております。

フラー氏は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校を卒業し、政治学の学士号を取得しております。

また、フラー氏のその他の米国マクロ経済関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、フラー氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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