やや強気ビザすべて表示ビザ(V)の今後の株価見通し:ナンシー・ペロシ氏の売却後に米国司法省の調査が始まり株価下落も、同社の将来性に期待!
ジェームズ・ フォード- 本稿では、注目の米国フィンテック銘柄であるビザ(V:Visa)の米国司法省による調査に伴う足元の株価下落理由の分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- ナンシー・ペロシ氏が同社株式を売却した後、同社は米国司法省の調査を受けて株価が下落しており、デビットカード市場の独占行為が問題視されています。
- 米国司法省の訴訟がビザの成長と収益性に与える影響が懸念されていますが、今後も市場での支配力を維持すると見ています。
- ビザの株価下落は押し目買いの好機である可能性があり、ビザの競争優位性と中期的な成長見通しに期待しています。
ビザ(V:Visa)の足元の株価下落に関して
ビザ(V:Visa)は米国司法省(DoJ:United States Department of Justice)の最新の標的となり、株価は高値から10%下落しています。今が買い時なのでしょうか?
本稿では、同社の株価に関する詳細なファンダメンタルズ分析とテクニカル分析をお届けします。
足元の下落は投資家にとって大きなチャンスとなるかもしれませんが、まずはしっかりと検討する必要があるでしょう。
本稿を読むことで分かるポイントは以下の通りです。
・米国司法省がビザを調査する理由
・今、ビザを買う/売るべきなのか?
・注目すべきテクニカルレベル
では、早速、詳細に入っていきましょう。
ビザ(V:Visa)に対するナンシー・ペロシ氏の警告
時には、著名な投資家や政治家の賢いお金の動き(売買動向)を追うだけで十分なこともあります。そして、ウォール街で最も賢い人物といえば政治家のナンシー・ペロシ氏です。
(出所:Trendpsider)
上記の図からも分かる通り、ナンシー・ペロシ氏は2024年7月2日にビザ株の売却を公表しました。そして、その数か月後、司法省がビザを反競争的行為(Anti-Competitive Practices)で提訴しました。
(出所:Guardian)
(日本語訳)米国政府、ビザをデビットカード使用の独占で提訴、「ほぼすべての価格に影響」
(日本語訳)政府は、Visaが高額な手数料で加盟店を圧迫し、潜在的な競合相手を排除することで競争を抑制していると主張しています。
米国司法省は、2021年に53億ドルのPlaid買収が阻止された後、ビザ(V:Visa)への監視を強化しています。最近、ビザのビジネス慣行を調査した結果、米国司法省はビザがデビットカード市場を独占しているとして新たに訴訟を起こしました。
これは、主要な小売業者が関わる集団訴訟で、300億ドルの和解案と一時的な手数料上限が裁判官により却下されたことに続く動きです。これらの法的措置は、ビザの決済分野における支配力への圧力が強まっていることを示しています。
市場もこのニュースに強く反応しました。それもそのはず、デビットカードはビザのビジネスの重要な部分を占めています。
ビザのカードの3分の2以上が米国ではデビットカードであるため、この訴訟は非常に大きな影響を及ぼす可能性があります。
そして、次のセクションでは以下の内容を取り上げていきます。
・ビザの事業内容と収益予測
・ビザのバリュエーション
・リスク分析:司法省の訴訟がもたらす影響とは?ビザの株価はどこまで下がるのか?
・市場と競争環境:他により良い投資先はあるか?
・ビザのテクニカル分析
・結論
ビザ(V:Visa)の事業内容
ビザ(V:Visa)は一般的にクレジットカード会社として認識されていますが、実際にはVisaNetを通じた決済ネットワークを主に運営しており、加盟店や銀行の取引を処理する一方で、顧客の資金を扱ったり融資を行ったりはしていません。収益の主な源は、データ処理、銀行向けサービス料、そして国際取引手数料です。
(出所:Seeking Alpha)
ビザの大きな競争優位は、その圧倒的なネットワークの規模にあります。42億枚以上のカードが1億の加盟店で利用可能で、この広大なネットワーク効果と高額な資本投資が、新規参入者に対する大きな参入障壁となり、ビザのグローバルな決済市場での支配力を強化しています。
ビザ(V:Visa)の売上高
ビザ(V:Visa)の売上高は堅調に推移しており、過去10年間と直近5年間で年平均成長率(CAGR)10%の成長を続けており、COVID-19の影響もわずかでした。フリーキャッシュフローも増加しており、過去5年間で年平均10%、過去10年間で23%の成長を示しています(株式報酬を含む)。
純負債は39億6000万ドルありますが、これは年間フリーキャッシュフローの約20%に過ぎず、ビザの強固な競争優位性と成長基調に支えられ、厳しい状況でも十分に対応可能です。
ビザ(V:Visa)の成長見通し
ビザ(V:Visa)の中期的な見通しは依然として好調で、過去1年間の総カード取扱額は15兆4700億ドルに達し(前四半期比+7.3%)、総取引件数も2797億件に増加しています(前四半期比+10.5%)。
(出所:EMARKETER Inc)
eMarketerの予測では、ビザは引き続き世界の決済市場でリーダーシップを維持し、米国の取引量は2024年までに6兆4400億ドルに達すると見込まれています。また、消費者信頼感の改善や連邦準備制度(FRB)による利下げの可能性により、ビザは消費者支出の増加から大きな恩恵を受けると期待されています。
(出所:The Conference Board Inc.)
米国経済が好調を維持する中で、ビザも順調に成長すると見られており、アナリストたちはビザが引き続き二桁成長を続けると予想しています。
これほど長い歴史と大きな市場シェア、強力な競争優位性を持つ企業として、非常に印象的な成果と言えるでしょう。
ビザ(V:Visa)のバリュエーション
このような優良企業には高いバリュエーションがつきものです。純粋にバリュエーションの観点から見ると、ビザ(V:Visa)はかなり割高に見えます。
(出所:Seeking Alpha)
しかし、PEGレシオで見ると比較的妥当なバリュエーションとなっており、実績ベースのPEGレシオは1.55倍となっています。
そして、ビザには以下の強みがあります:
・市場での支配力
・強固な参入障壁
・将来の成長性
・高い利益率
実際に、ビザのような企業はそう多くはありません。
ビザ(V:Visa)の競合分析
クレジットカードのプロセッサ別市場シェア(2021年)
(出所:Money Crashers, LLC. )
ビザ(V:Visa)の主な競合にはマスターカード(MA)やアメリカン・エキスプレス(AXP)があります。しかし、金融のデジタル化が進む現代では、新たなプレイヤーがオンラインや小売店でもビザのビジネスに挑戦しようとしています。
そして、Apple Pay(AAPL)やペイパル(PYPL)といったデジタル決済手段がますます普及しています。
ある意味、これらがビザの本当の競合相手です。そのため、実際にビザとこれらの企業のバリュエーションを比較してみると、ビザがそれほど割高ではないことがわかります。
ビザは、より大きな市場を持ちながらもマスターカードより割安で取引されており、PEGレシオも妥当です。一方、ペイパルはかなりリーズナブルな価格で評価されている競合で、私も注目しています。
ビザ(V:Visa)を取り巻くリスク
では、司法省の訴訟はビザ(V:Visa)に対してどれほどの影響を及ぼすのでしょうか?また、司法省は具体的に何を主張しているのでしょうか?詳しく見ていきたいと思います。
(原文)..agreements are priced so that, unless all or nearly all debit volume runs over Visa's payment rails, large disloyalty penalties can be imposed on all Visa transactions. Merchants cannot afford to use Visa's smaller competitors for transactions where options do exist, even when those competitors offer lower per-transaction prices.
(日本語訳)契約は、すべて、または、ほとんどのデビット取引がビザの決済ネットワークを利用しない限り、大きな違約金を課す仕組みになっています。そのため、加盟店は他の選択肢があっても、取引毎の手数料が低いビザの小規模な競合を利用する余裕がありません。
顧客の囲い込みと反競争的行為の間の境界は非常に曖昧です。メリック・ガーランド司法長官はさらに次のように述べています。
(原文)..Visa has unlawfully amassed the power to extract fees that far exceed what it could charge in a competitive market...Visa's unlawful conduct affects not just the price of one thing - but the price of nearly everything.
(日本語訳)ビザは競争市場で請求できる額をはるかに超える手数料を不当に徴収する力を持つに至りました。この不正な行為は、一部の価格にとどまらず、ほぼすべての価格に影響を及ぼしています。
司法省の訴訟が成功すれば、手数料の引き下げや値上げの制限、反競争的行為の是正といった規制措置が取られる可能性があります。これにより競争が激化し、ビザの成長と収益性に圧力がかかるでしょう。
解決までに数年かかるかもしれませんが、すでに高いバリュエーションを受けているビザにはバリュエーションリスクもあるため、投資家は慎重であるべきでしょう。また、この訴訟により、特に国際的な規制がビザの長期的な成長を制限する可能性があるなど、さらなるリスクも伴います。そのため、投資家はこれらの要因の動向に注視する必要があると言えます。
ビザ(V:Visa)のテクニカル分析
(出所:Trendpsider)
ビザ(V:Visa)の株価は現在、200日移動平均線の少し上にあり、ここが買いの良いポイントのようにも見えます。また、取引量のサポートもあり、RSIとMACDが今週から反転し始めています。
250ドルの水準を試す可能性はあるものの、ここは買い増しの好機とも考えられるでしょう。
ビザ(V:Visa)に対する結論
結論として、私は現在のビザ(V:Visa)の株価水準は魅力的であると考えています。株価が高いのには理由がありますが、今回の下落は割安に同社株式を買うチャンスであるように見えます。
私が好きな企業の一つであるアルファベット(GOOG/GOOGL)も、長年規制当局からの圧力を受けてきましたが、それでも株価は堅調に推移しています。
ビザも最終的に罰金を支払う必要があるかもしれませんが、規制当局がビザの市場支配を根本的に崩す可能性は少ないと見ています。
そのため、ビザは今後も市場をリードし続けると見ており、私のポートフォリオの1つである「EOWポートフォリオ」に安心して保有できる銘柄であると考えています。
アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
ジェームズ・フォード氏は、エコノミストとして、過去10年に渡り、世界市場の分析に従事してきました。そして、自らを「実践的な投資家」と位置付け、資産を継続的に維持・拡大させることを目的とした、分散されたポートフォリオの構築に重点を置いています。
主に、「グローバル・マクロ」、「ハイテク」、「コモディティ」、「暗号通貨」関連銘柄に焦点を当て、ファンダメンタル分析、並びに、テクニカル分析を用いた企業分析を提供しております。
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