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09 - 23 - 2024

中立
ウォルマート
中立
ウォルマート(WMT)の現在の株価は79.06ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である56.24ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-40.58%とマイナスとなっていることから、割高である可能性が示唆されています。
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ウォルマート(WMT)の今後の株価見通し:配当金は0.2075ドルと増加傾向も割高?最新の業績と将来性に迫る!

イアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、注目の配当銘柄である、ウォルマート(WMT:予想配当利回り1.05%・配当性向23%・1株当たり配当金0.2075ドル)の、2024年8月15日に発表された最新の2025年度第2四半期決算と配当推移に関するトレンド、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。 
  • そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。 
  • 最新の決算では、非経常損益項目を除いたEPSが前年同期比で減少しましたが、売上高は増加しており、営業効率は安定しています。 
  • また、ウォルマートは安定した財務基盤とキャッシュフローを持っていますが、予想配当利回りは1.05%とやや低水準であり、さらに、現在の株価は割高で安全余裕率(マージン)は-40.57%となっています。 
  • 加えて、インサイダー取引では過去1年間にインサイダーによる同社株式の売却が目立つ一方で、買い付けは確認されていない点にも注意が必要でしょう。

ウォルマート(WMT)の概要


レーティング:中立

バリュエーション:割高

リスクレベル:中リスク


セクター:小売

現在の株価:79ドル

時価総額:6,355億ドル

弊社算出の一株当たり本質的価値:56.24ドル

安全余裕率(マージン):-40.57%

過去5年間の配当成長率:1.90%

次回配当落ち日:2024年12月13日

次回配当支払い日:2025年1月6日

予想配当利回り:1.05%

過去5年間の売上高成長率:6.60%

過去10年間の売上高成長率:5.20%


関連用語

安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。

売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。


足元の株価推移

(出所:筆者作成)

ウォルマート(WMT予想配当利回り1.05%・配当性向23%・1株当たり配当金0.2075ドル)は、アメリカ最大手の小売業者として、優れた運営効率と低価格商品戦略を武器に、世界中で幅広い消費者層にサービスを提供しています。

1988年にスーパセンターを開設して以来、ワンストップショッピングの利便性を追求し、現在アメリカ国内で4,600店舗以上、Sam's Clubを含めると5,200店舗以上、世界全体では1万店舗以上を展開しています。

2024会計年度にはアメリカ国内で4400億ドル以上、Sam's Clubが860億ドル、国際市場では1150億ドルの売上を達成しました。

ウォルマートは、毎週、約2億4,000万人の顧客にサービスを提供し、安定したキャッシュフローと強固な財務基盤を誇っています。

同社は、足元では、年間で1.05%の予想配当利回りを提供し、配当支払いも安定しており、配当株としての魅力があります。

最近では、成長を加速させるための戦略的買収も積極的に行っており、今後も株主価値の向上が期待されています。

そして、同社は2024年8月15日に2025年第2四半期決算を発表しています。


ウォルマート(WMT)の最新の2025年度第2四半期決算発表に関して

ウォルマート(WMT)の2024年8月15日に発表された、2025年第2四半期の非経常損益項目を除くベースでのEPSEPS without NRIは0.67ドルとなり、前四半期の0.60ドルからわずかに増加したものの、前年同期の1.84ドルからは減少しています。

一方で、長期的なパフォーマンスを見ると、下記のチャートからも分かる通り、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は15.20%と力強い成長を示していますが、過去10年間の年平均成長率は1.80%に留まっており期間によって成長のペースが異なることがうかがえます。

また、1株当たりの売上高は20.955ドルで、前四半期の19.979ドルから増加しており、強い売上高の成長力が確認できます。

さらに、最近の四半期の粗利益率は24.63%で、過去5年間の中央値である24.69%とほぼ一致していますが、過去10年間の最高値である25.65%をやや下回っています。

ただし、それでも、安定した運営効率を維持していると言えるでしょう。

加えて、過去1年間の自社株買い比率は0.50%であることから、発行済株式の0.5%が同社により買い戻されており、株数の減少がEPSの押し上げに貢献しています。

過去10年間の自社株買い比率は2.00%であり、株主への還元を重視した安定した戦略が続いていると言えます。

今後の株価見通しについては、市場のアナリストは同社の売上高が2027年には7316.77億ドル、そして、次年度のEPSは2.361ドル、翌年度は2.705ドルに達すると予測しており、引き続き安定した成長が期待されています。

一方で、小売業界全体では、今後10年間の年間成長率は約4%と緩やかな増加が見込まれています。

次回の決算発表は2024年11月19日に予定されており、今後の財務状況についてのさらなる情報が提供される見込みです。

非経常損益項目を除くベースでのEPS

(年間ベース:直近4四半期の合計値

(出所:筆者作成)


関連用語

EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。

非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。

希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。

1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。

粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。

自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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ウォルマート(WMT)の財務パフォーマンスに関して

ウォルマート(WMT)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)、加重平均資本コスト(WACC)、自己資本利益率(ROE)の観点から分析していきます。

下記のチャートからも分かる通り、現在の同社のROICは11.51%で、WACCの7.10%を大幅に上回っていることから、資本コストを大きく超える経済的な価値を生み出していることが示されています。

そして、これは同社が資本を効率的に活用し、資金調達コストを上回るリターンを確実に生み出していることを示唆しています。

また、過去5年間のROICの中央値は8.83%で、WACCの中央値である4.93%を一貫して上回っており、長期的に株主価値を創出していることが裏付けられています。

さらに、足元のROICが過去10年間の最高水準にあることは、資本の配分や運営効率における戦略的な改善を反映しています。

加えて、過去5年間のROEの中央値が17.37%、現在のROEが19.03%であることから、株主資本に対する収益性も非常に高いことが分かります。

以上より、これらの財務パフォーマンス指標は、ウォルマートが資本コストを上回る堅実なリターンを生み出しており、投資家にとって好材料であることを示しています。

投下資本利益率(ROIC)加重平均資本コスト(WACC)の比較

(出所:筆者作成)


関連用語

総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。

自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。

投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。

ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。

加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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ウォルマート(WMT)の配当に関して

ウォルマート(WMT)の配当成長は安定しているものの、控えめな成長となっており、過去5年間の配当成長率は1.90%、過去3年間の配当成長率は1.80%となっています。

また、現在の予想配当利回りは1.05%と、過去10年間の中央値である1.85%と比べて低いですが、同社は一貫して配当を支払っており、信頼できる選択肢であることに変わりはありません。

直近の四半期では、1株あたりの四半期配当を0.2075ドルに維持しており、昨年の0.19ドルから増加しています。

そして、次の配当落ち日は2024年12月13日、配当支払い日は2025年1月6日となっており、四半期ごとのスケジュールに基づくと、その次の配当落ち日は2025年3月14日頃になると予想されます。

さらに、同社のEBITDA有利子負債倍率は1.66倍であり、これは低リスクの範囲内にあると言え、財務の健全性と負債返済能力が十分であることを示しています。

この強力な財務基盤により、今後も配当支払いを維持、あるいは、増加させる余地があると考えられます。

さらに、今後3〜5年の配当成長率は7.05%と予測されており、成長の加速が期待されていますが、これは業界の動向に沿ったものであり、株主への還元を重視しつつ、財政的な健全性を保つというウォルマートの戦略が反映されていると言えるでしょう。

予想配当利回り1.05%

配当性向23%

配当カバレッジ・レシオ:2.42倍

過去5年間の配当成長率1.90%

EBITDA有利子負債倍率1.66

DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金

(出所:筆者作成)

Dividend Yield:予想配当利回り

(出所:筆者作成)

Dividend Payout:配当性向

(出所:筆者作成)


関連用語

1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。

配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。

予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。

配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。

EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。

配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。

配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。

配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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ウォルマート(WMT)のバリュエーションに関して

ウォルマート(WMTの現在の株価は79.06ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である56.24ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-40.58%とマイナスとなっていることから、割高である可能性が示唆されています。

また、直近過去12カ月間の実績ベースのPERは41.09倍で、最高値の60.77倍には届かないものの、過去10年間の中央値である26.21倍を大きく上回っていることから、将来の成長期待を反映したプレミアムがついていると考えられます。

また、予想PERは32.28倍で長期的な中央値を上回り、依然として同社に対する市場の投資家の楽観的な見方が続いていることを示しています。

加えて、直近過去12カ月間の実績ベースのEV/EBITDA倍率は18.43倍で、過去10年の中央値である12.43倍よりも高く、企業価値が利益に対して割高であることを意味しています。

さらに、PBRは7.52倍で、過去10年間の最高値である7.67倍に近く、純資産に対しても割高感が強いことを示しています。

一方で、市場のアナリストの同社に対するバリュエーションや目標株価はやや上昇傾向にあり、最新の目標株価は80.79ドルと現在の株価をわずかに上回る水準ですが、上昇余地は限られているように見えます。

市場のアナリストは慎重ながらも楽観的な見方を示していますが、バリュエーション指標によると、ウォルマートの現在の株価は過去の平均と比較してプレミアムがついており、成長が市場の期待を超えない限り、ダウンサイドリスクが高まる可能性があるでしょう。

(出所:筆者作成)


上記グラフにおける関連用語

Price:現在の株価

Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値

DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価

DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価

Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価

Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価

赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値


関連用語

実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。

株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。

株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。

EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。

PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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ウォルマート(WMT)のリスクとリターンに関して

ウォルマート(WMTのリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います

まずマイナス面では、過去3か月間で54,193,654株のインサイダーによる同社株式の売却が行われている一方で、インサイダーによる同社株式の買い付けは一切確認されていないことから、インサイダーが将来の株価の上昇に対して懐疑的である可能性が示唆されます。

また、過去5年間にわたり営業利益率が年平均1.4%減少しており、収益性を維持する上で課題があることも見受けられます。

さらに、株価、PBR(株価純資産倍率)、PSR(株価売上高倍率)が過去10年の高値付近にあるため、割高感が出ている可能性があります。

加えて、予想配当利回りも過去10年間の最低水準に近づいており、配当収入を重視するインカム投資家にとってはマイナスとなり得ます。

一方で、同社の財務基盤は非常に健全です。

ピオトロスキーのFスコアは8と高く、強固な財務状況、効率的な運営、堅実な収益性を示しています。

さらに、ベニッシュのMスコアは-2.69で同社が利益操作を行っている可能性が低いことを示唆しており、アルトマンのZスコアも5.64と高く、財務的な安定性が強く破綻リスクが非常に低いことが分かります。

これらの指標を踏まえると、バリュエーション面での懸念はあるものの、ウォルマートは堅実なビジネス基盤を維持しており、現在の株価水準に伴うリスクをある程度軽減できる可能性があるでしょう。


関連用語

財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。

アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。

ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。

ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。

ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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ウォルマート(WMT)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

過去1年間のウォルマート(WMT)のインサイダーによる同社株式の売買を振り返ると、取締役や経営陣による売却が目立つ傾向があります。

特に過去3か月間では、インサイダーによる同社株式の買い付けは一度もなかった一方で、売却は25件に達しています。

この傾向は過去6か月間、および、過去12か月間でも同様で、売却はそれぞれ52件、103件発生している一方で、買い付けは依然として確認されていません。

この継続的な売却トレンドは、インサイダーが短期的に同社の株価の大幅な上昇を見込んでいない、もしくは、現在の株価水準を利用して利益を確定している可能性を示唆しています。

ただし、インサイダーによる同社株式の保有比率はわずか1.07%で、インサイダーの持ち株比率が比較的低いことが分かります。

一方、プロの機関投資家による同社株式の保有比率は34.68%と高く、同社の株式の大部分が機関投資家によって保有されていることを示しています。

インサイダーによる売却トレンドは、投資家にとって気になる点かもしれませんが、こうした動きに加え、経済全体の動向や同社の状況、機関投資家の保有比率なども併せて考慮しながら投資判断を行うことが重要でしょう。

インサイダー(内部関係者)による売買

(出所:筆者作成)


関連用語

インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。

機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。


ウォルマート(WMT)の流動性に関して

ウォルマート(WMT)は、非常に高い流動性と活発な取引が特徴です。

直近営業日の1日あたりの出来高は38,355,694株で、過去2か月の平均出来高である17,459,496株の2倍以上となっています。

この増加は、同社に関する市場の投資家の関心の高まりを示している可能性があります。

また、ダーク・プール指数(DPI)は38.63%で、取引のかなりの部分が非公開市場で行われていることを示しており、これは大口の機関投資家による戦略的な取引活動が行われている可能性を示唆しています。

※DPIが38.63%ということは、出来高の約38%がダークプールで取引されていることを意味し、市場の透明性や価格効率に影響を与える可能性があります。

このような高い出来高とDPIの数値は、同社が市場で大きな存在感を持ち、多くのプロの機関投資家が積極的に関与していることを示しています。

そして、同社の株式は高い流動性を誇り、投資家は比較的容易に売買できる一方で、価格の安定性も保たれています。

つまり、流動性が高いことで、大口の取引が株価に大きな影響を与えることなく行えるため、個人投資家や機関投資家にとって非常に魅力的な投資先と言えます。

総じて、ウォルマートの株式は流動性と安定性を重視する投資家にとって、引き続き魅力的な選択肢となっています。


関連用語

ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。

ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。


アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏

イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。

以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。

ゾルンパノス氏のその他の配当関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ゾルンパノス氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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