アボット・ラボラトリーズ(ABT)配当推移と将来性分析:予想配当利回り1.80%・配当性向47%・配当金0.59ドル
- 本稿では、注目の米国配当王であるアボット・ラボラトリーズ(ABT:予想配当利回り1.80%・配当性向47%・1株当たり配当金0.59ドル)の2025年4月16日に発表された最新の2025年度第1四半期決算と配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- アボット・ラボラトリーズはイリノイ州に本社を構えるグローバルなヘルスケア企業であり、医療機器や栄養製品など幅広い事業を展開しています。売上の約60%を海外市場から得ており、堅調なEPS成長と高いROICによって財務的にも健全な経営を行っています。
- 配当面では、過去53年連続で増配を続ける「配当王」として知られ、過去5年間で年率11.5%の増配実績があり、配当性向も47%と無理のない水準を維持しています。
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の概要
セクター:医療機器および器具
現在の株価:131ドル
時価総額:2,284億6,000万ドル
過去5年間の配当成長率:11.50%
前回配当落ち日:2025年4月15日
次回配当支払い日:2025年5月15日
予想配当利回り:1.80%
過去5年間の売上高成長率:5.90%
過去10年間の売上高成長率:7.30%
関連用語
売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。
足元の株価推移
(出所:筆者作成)
アボット・ラボラトリーズ(ABT:配当王・予想配当利回り1.80%・配当性向47%・1株当たり配当金0.59ドル)は、イリノイ州アボットパークに本社を置く世界的なヘルスケア企業です。心血管・糖尿病関連の医療機器、診断機器、栄養製品、ブランドジェネリック医薬品など幅広い事業を展開し、ペースメーカーや血糖測定器、乳児用ミルクなど、生活に密着した製品群で知られています。売上の約60%を米国外から得ており、グローバルに事業を展開している点が特徴です。
配当面では、過去5年で年率11.5%の増配実績があり、予想利回りは1.80%。配当性向も47%と無理のない水準で、今後の増配余地も大きいように見えます。
そして、同社は2025年4月16日に2025年第1四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)の最新の2025年度第1四半期決算発表に関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、2025年4月16日に発表された最新の2025年度第4四半期決算において、一時的要因を除いたEPS(1株当たり利益)を1.34ドルと発表しました。これは前四半期の1.21ドルから10.7%増加し、2023年第4四半期の1.19ドルと比較しても12.6%の上昇となります。希薄化後EPSは5.27ドルに達しており、堅調な事業運営を反映しています。1株当たり売上高も6.085ドルから6.294ドルへと増加しました。
過去5年間におけるABTのEPS(非一時的要因を除く)の年平均成長率(CAGR)は7.20%であり、10年間では12.10%に達しています。また、今四半期の売上総利益率(グロスマージン)は55.41%で、過去5年間の中央値である56.15%をわずかに下回っています。
同社は戦略的な自社株買いの実績を持ち、直近1年間の自社株買い比率は0.10%となっています。これは発行済株式の0.10%を過去1年間で買い戻したことを意味しており、EPSの成長を支え、株主価値を高める効果があります。なお、過去10年間の自社株買い比率は-1.70%と変動が見られ、財務戦略に応じて実施されてきました。
今後については、業界アナリストが医療セクター全体の年平均成長率を今後10年間でおよそ5%と予測しています。さらに、同社の売上高は2025年に446億1,060万ドル、2027年には515億7,347万ドルに達すると見込まれています。2025年度の予想EPSは3.973ドル、2026年度には4.565ドルへの成長が期待されています。
次回の決算発表は2025年7月18日に予定されており、同社の財務の方向性についてさらなる情報が提供される見込みです。
非経常損益項目を除くベースでのEPS
(年間ベース:直近4四半期の合計値)
(出所:筆者作成)
関連用語
EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。
非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。
希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。
1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。
粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。
自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)の財務パフォーマンスに関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。
まず、同社は、経済的価値を創出する優れた能力を備えた力強い財務実績を示しています。現在のROICは23.69%であり、WACCである8.32%を大きく上回っています。この差は、同社が資本コストのほぼ3倍のリターンを生み出していることを示しており、同社が投資から多大な価値を生み出していることを意味します。
過去10年間の中央値ROICは8.30%であり、中央値WACCの8.37%をやや下回ってはいるものの、全体的には一貫した価値創出が継続されてきたことがうかがえます。また、過去5年間のROIC中央値は13.41%と高く、アボットの資本配分戦略が効果的に機能していることを裏付けています。
さらに、同社の自己資本利益率(ROE)は最大で32.82%に達しており、株主に対して高いリターンを提供する力を持っていることを強調しています。総じて、同社の財務指標は資本を非常に効率的に活用しており、経済的価値と株主利益の向上に大きく貢献していることを示しています。
投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の比較
(出所:筆者作成)
関連用語
総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。
自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。
投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。
ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。
加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)の配当に関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、安定した配当成長を一貫して示しており、過去53年間に渡り連続して増配を継続する米国株配当王の一角を担っています。そして、過去5年間では11.50%、過去3年間では6.90%の増配率を記録しています。直近の四半期配当は1株あたり0.59ドルであり、これまでの配当額から着実に増加しています。
同社の予想配当利回りは1.80%で、過去10年間の中央値である1.76%をわずかに上回っており、過去の実績と比較しても安定した投資リターンを維持していることが分かります。
財務レバレッジの観点では、同社のEBITDA有利子負債倍率は1.39と、注意ラインとされる2.0を大きく下回っています。この低水準は、債務返済能力が高く、財務リスクが低いことを示しており、同社の配当支払いの持続可能性を支える要因となっています。
配当性向は47%であり、将来の増配余地が十分にあることを示唆しています。また、今後3〜5年の配当成長率は7.06%と予測されており、業界内でも魅力的な成長性と安定性のバランスを備えた銘柄といえます。
四半期ごとの配当スケジュールに基づけば、次回の配当落ち日はおおよそ2025年7月15日頃と予想されます。これにより、投資家は今後も安定的に収益機会を享受できる見込みです。
予想配当利回り:7.32%
配当性向:64%
配当カバレッジ・レシオ:0.59倍
過去5年間の配当成長率: 3.00%
EBITDA有利子負債倍率:4.39倍
DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金
(出所:筆者作成)
Dividend Yield:予想配当利回り
(出所:筆者作成)
Dividend Payout:配当性向
(出所:筆者作成)
関連用語
1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。
配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。
予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。
配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。
EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。
配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。
配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。
配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)のバリュエーションに関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の現在の株価は131.73ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である110.18ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-19.56%となっていることから、割高である可能性が示唆されています。
直近12ヶ月(TTM)の株価収益率(PER)は17.22で、過去10年間の中央値である36.00を下回ってはいますが、10年間の最低値である12.72よりは高く、歴史的に見て割安でも割高でもない中間水準にあるといえます。一方、予想PERは25.56で、将来の利益成長への期待が含まれているとはいえ、現在の株価には一定の割高感があることを示しています。
その他の主要な指標を見てみると、TTMベースの株価売上高倍率(PSR)は5.48で、過去10年間の中央値である4.42を上回っており、売上高との比較では割高感があるといえます。EV/EBITDA倍率は21.55で、過去の中央値である19.92よりも高く、EBITDAに対して企業価値がやや割高に評価されていることが分かります。
また、株価フリーキャッシュフロー倍率(P/FCF)は36.24で、過去の中央値30.93を大きく上回っており、フリーキャッシュフローに対する株価がプレミアム評価されていることを示しています。
こうした割高傾向が見られる一方で、市場のアナリストは同社の将来性に対して前向きな見方をしており、目標株価の平均値は、現在の株価を上回る141.19ドルとなっています。同社をカバーするアナリストの数も安定しており、依然として市場からの関心が高い銘柄であることが伺えます。
これらの点を踏まえると、同社は過去の評価指標と比較してプレミアム価格で取引されている可能性があるものの、アナリストのポジティブな見通しは、将来の利益成長への期待と自信の表れであるとも解釈できます。ただし、現時点では評価の安全性が乏しいことから、慎重な判断が求められるでしょう。
(出所:筆者作成)
上記グラフにおける関連用語
Price:現在の株価
Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値
DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価
DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価
Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価
Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価
赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値
関連用語
安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。
実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。
PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。
株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。
株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。
EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。
PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)のリスクとリターンに関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)のリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。
まず、同社は、いくつかのリスクに直面しています。その一つは、想定よりも低い税率であり、これにより一時的に利益が押し上げられる可能性がありますが、長期的に持続可能であるとは考えにくいです。また、株価は過去10年の高値に近づいており、株価売上高倍率(PSR)も過去3年のピークに近い水準で推移していることから、割高感への懸念が高まっています。
さらに、同社の予想PERは実績PERを上回っており、これは利益の減少傾向や将来の利益見通しが楽観的すぎる可能性を示しています。また、予想配当利回りは過去3年の最低水準に近づいており、インカム投資家にとっての魅力が薄れる恐れもあります。
加えて、注目すべき点として、最近のインサイダーによる売却活動から、インサイダー・センチメントがややネガティブであることがうかがえます。
一方で、アボット・ラボラトリーズは堅固な財務基盤を維持しており、ピオトロスキーのFスコアは8と高く、ファンダメンタルズが非常に健全であることを示しています。ベニッシュのMスコアおよびアルトマンのZスコアも、それぞれ財務操作リスクと財務破綻リスクが低いことを示しており、安心材料となります。
そして、同社の営業利益率は拡大傾向にあり、売上高の成長も安定しているため、将来的な業績に対して確かな基盤があるといえます。
以上より、バリュエーションの高さやインサイダーの売却に関する懸念がある一方で、これらの健全な財務指標は、今後も力強い事業成果を継続できれば、それらの懸念を一定程度緩和する可能性があるでしょう。
関連用語
財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。
アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。
ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。
ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、3倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の3倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。
ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。
各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。
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アボット・ラボラトリーズ(ABT)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の過去1年間のインサイダー取引の動向を見ると、社内関係者による一貫した売却傾向が見られます。直近3か月間では、インサイダーによる売却が10件発生しており、購入は一切行われていません。この傾向は過去6か月間にも当てはまり、売却が10件、購入はゼロとなっています。さらに、過去12か月にまで範囲を広げても、インサイダーによる売却は15件ありましたが、やはり購入は一度もありませんでした。
このように継続的な売却行動が見られることから、インサイダーは現在の株価を売却に適した水準と見なしているか、短期的な成長見通しに対する自信を欠いている可能性があります。
ただし、インサイダーによる同社株式の保有比率は0.88%と控えめであり、同社の株式に対して社内関係者が比較的小さな持分しか保有していないことが分かります。一方で、プロの機関投資家の保有比率は78.33%と高く、大規模な投資主体からの強い関心と信頼がうかがえます。
総合的に見て、顕著なインサイダーによる売却傾向と、低いインサイダー保有比率は、今後の株価パフォーマンスを検討するうえで、投資家にとって慎重な姿勢を促す要因となり得るでしょう。
インサイダー(内部関係者)による売買
(出所:筆者作成)
関連用語
インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。
機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。
アボット・ラボラトリーズ(ABT)の流動性に関して
アボット・ラボラトリーズ(ABT)は、過去2か月間の平均日次出来高が7,779,006株となっており、市場での活発な取引と投資家の関心の高さを示す、非常に魅力的な流動性プロファイルを有しています。この出来高は、同社が非常に流動性の高い銘柄であることを示しており、投資家にとっては売買の出入りがしやすく、大口取引による株価への影響も抑えられることが期待できます。
最新のデータによると、直近営業日の出来高は5,708,517株となっており、これは2か月間の平均を下回ってはいますが、それでも十分な取引量を維持しており、依然として活発な売買が行われていることを意味しています。これにより、投資家は適切な流動性を享受できる状態が保たれています。
また、同社のダークプール・インデックス(DPI)は49.64%となっており、かなりの割合の取引が非公開市場(ダークプール)で行われていることを示しています。これは、機関投資家による取引や、大口取引が公に公開されない形で実施されている可能性を示唆します。DPIが50%近いということは、取引が公開市場とダークプールの間でバランス良く分散されていることを意味し、同社のような大型株では一般的な傾向です。
総じて、同社の流動性および取引動向は、市場環境が健全であることを示しており、個人投資家と機関投資家の双方にとって、十分な取引量と流動性が確保されているといえます。ただし、取引の一定割合がダークプールで行われている点には留意が必要でしょう。
関連用語
※ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。
※ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。
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