05/02/2024

中立
アクセンチュア
中立
同社の売上高は伸び悩み、営業利益は減少し、利益は横ばいになっている。コンサルティング業界の需要の軟化を理由に、同社株式への短期的な私の見通しは「中立」である。
アクセンチュア / ACN / 中立:最新の2024年第2四半期決算・強み(競争優位性)分析と今後の株価予想・将来性

black smartphone near personドノヴァン・ ジョーンズドノヴァン・ ジョーンズ
  • アクセンチュア(ACN)は多国籍の大手コンサルティング・サービス企業である。
  • 同社は2024年3月21日に2024年度第2四半期決算を発表しており、売上高の伸びは鈍化し、営業利益は減少している。
  • コンサルティング業界は顧客からの需要が減少していることも踏まえ、同社株式への私の短期的な見通しは「中立」である。

アクセンチュアについて

アクセンチュア(ACN)は2024年3月21日に2024年度第2四半期決算を発表し、売上高は未達となったが、コンセンサス利益予想は上回る着地となった。

同社は、幅広いITおよびビジネス・コンサルティング・サービスを世界中で提供しているコンサルティング企業である。

売上高の伸びは失速しており、営業利益は減少し、利益も横ばいになっている点に加え、大規模なコンサルティング業界における需要の軟化も踏まえると、当面は同社株式に対する私の見通しは「中立」である。

アクセンチュアの概要と市場

アクセンチュア(ACN)は、情報技術(IT)サービスとコンサルティングを専門とするグローバル・プロフェッショナル・サービス企業である。

2023年8月31日時点で、同社はグローバルで約73万3,000人の従業員を擁し、120カ国以上、49カ国、200以上の都市にオフィスや事業所を展開している。

同社は多様な業界にサービスを提供し、戦略、コンサルティング、デジタル・テクノロジー、オペレーションなどの分野で幅広いサービスとソリューションを提供している。

そして、同社のCEOはジュリー・スウィート氏である。

また、同社が提供する主なサービスは以下の通りとなっている。

  • ストラテジー&コンサルティング:テクノロジー、データ、アナリティクス、AI、サステナビリティ能力を活用した包括的なコンサルティング・サービスを各業界のC-suiteエグゼクティブやリーダーに提供。

  • テクノロジー:サービス、プラットフォーム、AI、ブロックチェーン、ロボティクス、5G、量子コンピューティングなどの新興テクノロジーにおけるイノベーションに注力。

  • オペレーション:財務、会計、ソーシング、調達、サプライチェーン、マーケティング、セールスなど、クライアントのビジネス・プロセスの運営。

  • インダストリーX:デジタル機能とエンジニアリングや製造の専門知識を組み合わせ、クライアントの製品や製造プロセスの再構築を支援する。

  • ソング:顧客との関連性、デザイン、テクノロジー・プラットフォーム、マーケティング戦略、チャネル編成において成長と価値を提供。

アクセンチュアを取り巻く市場と競争環境

世界のコンサルティング市場は大きな成長を遂げており、今後も拡大が続くと予測されている。

モルドーインテリジェンスの調査レポートによると、2024年のコンサルティングサービス市場は約3,240億ドルに達し、年平均成長率(CAGR)4.96%で成長し、2029年には4,320億ドルに達する可能性が あると予測されている。

このような成長が見込まれる背景には、新興技術への投資の増加、デジタル戦略の需要、規制やサイバーセキュリティに関するコンサルティングのニーズなど、さまざまな要因がある。

2029年までの地域別成長率は、下図に示すようにアジア太平洋地域で最も高くなると予想されている。

アクセンチュアを取り巻くトレンドと成長要因

下記の通り、コンサルティング業界は、いくつかの主要トレンドによって形成されている。

・技術の急速な進歩とデジタル・ソリューションの統合

・持続可能性とガバナンスの重視の高まり

・ビジネス戦略におけるAI、データ分析、サイバーセキュリティの重要性の高まり

アクセンチュアの成長をリードする市場セグメント

コンサルティング市場の成長を牽引しているセグメントは下記の通りである。

・テクノロジー・コンサルティング:デジタルトランスフォーメーションと新興テクノロジーの導入が牽引。

・戦略コンサルティング:複雑な市場環境や組織の課題を克服するための支援に注力。

・財務アドバイザリー:複雑な金融規制や企業財務・リスク管理への注力により重要性が増している。

特にアジア太平洋地域は、テクノロジー分野の急速な発展やさまざまな業界における創造的なソリューションの需要に牽引され、予測期間中に最も高い成長率を示すと予想される。

アクセンチュアの最近の財務動向

アクセンチュア(ACN)の四半期別の総売上高(紫色の列:Total Revenues)は前年同期比で減少し、四半期別の営業利益(青色の線:Operating Income)も前年同期比および前四半期比で減少している。

四半期別売上総利益(紫色の列:Gross Profit)は前四半期比で減少する一方で、四半期別販売費および一般管理費(青色の線:Selling General & Admin Expenses, Total)は比較的高水準で推移している。

また、希薄化後1株当たり利益(EPS)は前年同期比で微増となっている。

(上記グラフのデータはすべて百万USD単位・GAAPベース)

また、過去12ヶ月間、同社の株価は、iシェアーズ・エクスパンデッド・テクノロジー-ソフトウェアETF(IGV)が29.2%上昇したのに対し、8.4%の上昇に留まっている。

アクセンチュアのバリュエーションとその他の指標

以下は、アクセンチュア(ACN)に関連するバリュエーションの表である

指標

企業価値 / 売上高(予想

3.0

企業価値 / EBITDA(予想

15.7

株価売上高倍率(直近過去12か月

3.0

売上高成長率(予想)

4.3%

純利益率

10.9%

EBITDAマージン

17.5%

時価総額

$193,650,000,000

企業価値

$192,520,000,000

営業キャッシュフロー

$9,300,000,000

実績EPS(直近過去12か月

$11.03

予想EPS

$12.17

一株当たりフリー・キャッシュフロー(直近過去12か月

$13.97

アクセンチュアの見通し

アクセンチュア(ACN)の市場のアナリストとの直近の決算電話会議では、経営陣の準備発言として以下の点が強調されている。

売上高の伸び

経営陣は、マクロ的な不確実性にもかかわらず、同社がクライアントの中核的な事業活動において果たす信頼と極めて重要な役割が成長を促進していることを強調し、業績を強調した。

受注残

同社は、216億ドル相当の受注残を計上し、過去2番目の高水準となった。これには北米からの100億ドルに上る多額の契約が含まれており、堅調なパイプラインと市場シェアの拡大を示している。

コストまたは経費の変更

コスト管理および事業最適化の取り組みは、厳格かつ規律ある業務アプローチを反映し、引き続き順調に推移している。これには、営業利益率が全体的に前年並みとなったにもかかわらず、戦略的分野に焦点を当てた取り組みも含まれる。

キャッシュフロー

当四半期は 20 億ドルのフリー・キャッシュフローを創出し、力強いキャッシュフローを達成した。この財務の強さは、継続的な株主還元と戦略的投資を支えるものである。

バランスシート項目

バランスシートは引き続き堅固であり、上半期に買収に 29 億ドルを投じるなど、重要な戦略的投資を支える強固な現金残高がある。

海外事業

英国やドイツでのデータやAIの専門知識に特化した買収、タイやシンガポールなどの成長市場での市場拡大など、デジタル能力を強化するための国際市場での投資活動が目立った。

トレンド

経営陣は、顧客支出の継続的な傾向について説明し、大規模な変革へのシフトと小規模プロジェクトへの裁量的支出の減少を指摘した。こうしたシフトにもかかわらず、同社は戦略的投資と強力な顧客関係により、成長を獲得できる立場にあるとしている。

収益ガイダンス

次四半期の売上予想は、為替変動による若干のマイナス影響を考慮し、162億5,000万ドルから168億5,000万ドル。通期では、現地通貨ベースで1%から3%の増収を見込んでいる。

また、質疑応答では、経営陣が、顧客企業の予算が逼迫しているため、小規模な裁量的プロジェクトよりも大規模な変革プロジェクトを優先させる傾向にあると述べた。

経営陣は、生成AIのような新技術を活用するという同社の戦略的位置づけを強調し、クライアントが包括的なデジタル変革を求めるようになるにつれて、これが将来の成長を促進すると予想している。

さらに、LearnVantageのようなプラットフォームを通じた学習・能力開発への投資についても議論が交わされ、競争力の維持と新技術への適応におけるスキルアップの重要性が強調された。

最後に、経営陣は戦略的買収へのコミットメントを再確認し、こうした投資は長期的な成長と市場における競争力の維持に不可欠であると指摘した。

以上より、アクセンチュアの売上高成長の見通し鈍化、営業利益の下方修正、収益の横ばい基調を踏まえると、アクセンチュアに対する私の短期的な見通しは「中立」である。